闇ニ花ヒラク蒼薔薇   作:サボテンダーイオウ

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標的98待ち望む未来

獄寺隼人side

 

ッチ。まさかよりにもよって、内藤ロンシャンとかいうやつが並中にきやがるとはな。

十代目の素晴らしきご活躍がほかのマフィア共の耳にも入っているという証拠だ。

 

『暇、ひま、ひまー!スモーキン・ボム。何か面白いことないかしら?』

 

しかし、十代目の身に何かあってからじゃすまされない話だ。ここはリボーンさんに言って奴のアジトの情報を聞き出し根こそぎ消し去るしかないか。

 

『あ!それいいわね。ワタシが殺ってあげましょうか?』

 

しかしそれを行うには奴と再び接触しなければならない。

朝の少ない時間での接触で奴のあのふざけた行動は日常的なものだと判断したぜ。

なら隙を狙って奴を尾行することもできるかもしれねぇ。

 

『尾行だなんてそんな面倒なことしないで、一思いに殺ってしまえばいいでしょうに』

「アア――――!やかましいっ!!お前は黙ってろっ!」

「えっ!?獄寺く、ん……どうしたのっ!?」

 

しまった、あまりのうるさいのについ、声をだしてしまった。

しかも十代目に向かって!!俺は何ということを……

 

「ハッ!?十代目!これは違います、これは……」

「なんかストレスとか溜まってんのか?だから牛乳飲めっていってるじゃねぇか」

 

うるさい、山本め。お前は話を余計ややこしくしやがるな!

また頭の中で声が響く。

姿形は見えないが、嫌な気分になるぜ。この妙な感覚は……。

 

『なんか楽しそうね』

「だからお前は引っ込んでろ!」

「お!?」

「ハッ!?」

「…ホントに大丈夫?獄寺君……」

 

またも十代目にご心配を……

 

「申し訳ありませんっ!俺は何ともありませんからご心配をおかけしました」

 

ばっと、頭を下げなんとか許してもらえることに成功した。

くそ、出てくるなよ。話が余計ややこしくなるってんだ。

 

『貴方がいちいち反応してくるからでしょ。自業自得よ』

 

てめっ、俺をなめてるなぁ!?

 

『言いたいなら言いなさいな。でもワタシのことがばれればアンタも共犯者になるのよ?

それに揚羽だって。ああ、天姫は嘆き悲しむでしょうね?だって、信じていた家族に裏切られる行為をされたんですから』

 

……お前、それ本気で言ってんじゃねぇだろうな。

 

『まさか、ワタシはどっちに転んでもいたくないもの。痛がるのはどっちにしろアンタでしょ。無論、天姫も。可愛そうな子』

 

てめぇ………。

 

『ウフフ。そんなに牙を尖らせないで。立派な牙を自らの不注意で失いたくはないはずよ。アンタは利口だもの。どれが得でどれが損になるかわかってるはず』

 

俺はぜったいお前の言うことには従う気なんかねぇ。天姫を傷つけてまで得たいとはおもわねぇ。

 

『…強情な、子。どうしてワタシと面識がある子はこんなにも真っ直ぐすぎるのかしら』

 

女は言いたいことだけ言ってあとはだんまりを決め込んだ。

考え込むように。ったく、朝からついてないぜ。

俺はため息をつかずにはいられなかった。

 

 

沢田綱吉side

 

内藤ロンシャンと出会ってからの獄寺君はどこかおかしかった。

始終ぼうっとしていて時折ぶつぶつ何か言っていたりする。

あまつさえ、声を荒げてあの調子だ。

 

「アア――――!やかましいっ!お前は黙ってろっ!」

「えっ!?獄寺く、ん……どうしたのっ!?」

「ハッ!?十代目!!これは違います、これは……」

「なんかストレスとか溜まってんのか?だから牛乳飲めっていってるじゃねぇか」

「だからお前は引っ込んでろ!」

「お!?」

「ハッ!?」

「…ホントに大丈夫?獄寺君……」

「申し訳ありませんっ!!俺は何ともありませんからご心配をおかけしました」

 

本当におかしすぎる。

俺は全然気にしてないからと、獄寺君に言いまた教室を目指すため、足を動かした。

でも視線は彼に向けて。

やっぱり獄寺君はなんか違う方へと意識を向けていた。

まるで何かと話しているみたいに。

最後には大きなため息。やっぱり何か隠している。

俺の超直観が騒いだ。

何か強烈な闇の塊がうごめいている、と。

 

言いようのない不安感に苛まれる俺だった。

 

 

教室についた途端。天姫の姿があってほっとした。同時になんで今日くらいは一緒に登校してくれなかったのかと、怒りがこみ上げる。俺が先に行くなんて酷いと抗議すれば、天姫はぽけっと一瞬間をあけ、リボーンにちゃんと伝言を頼んだはずだけどと逆に俺が面喰い黙る番。

 

くそっ、リボーンの奴。ふつふつと自分の自称家庭教師に苛立った。

 

「そういえば、気が付いた?面白い名前が存在してるって」

「……さすが天姫だな…」

 

獄寺君が感心した様子に。まだアイツと面識がない天姫も情報はつかんでいたなんて。

彼女はいつも先に起きる出来事を把握してる気がする。

気が付けば俺たちよりも前に進んでいるんだ。

 

「内藤ロンシャン……クスっ。でも私には関係のないことかもしれない。だってまったく興味すら沸かなかったしね?」

「……………天姫……」

 

ウフフフ、さも可笑しそうに微笑む天姫。

異様ともいえるその様に俺や他の二人も口を噤んでしまった。

天姫にはおかしくて笑えることでも俺たちにはさっぱり理解できない。

 

「でも褒めてあげよう。今この場所に存在できたことを、さ」

 

薄ら寒くなる笑みを浮かべた。

これで決まった。天姫は怒っている。くだらない奴が来たことにいら立っているのだ。

そうとわかったら俺たち行動は迅速だった。

なんとか天姫を宥めてことを穏便に収めようとあれやこれやとご機嫌を伺う。

 

「天姫、……はやまるなよ?」

「そうだぜ、どうせ格下相手のことだ。お前が気にする必要なんかまったくないんだ」

「……天姫…」

 

天姫は席を立ち、俺の呼び止める声に

 

「ちょっと、切り替えてくる」

 

そう言い残し教室をあとにした。

今日はまるで嵐のような前触れを感じさせる不気味な日に思った。

 

リボーンside

 

誰もいない屋上で天姫一人だけがぽつんと存在した。

 

誰も近寄せない。誰も近寄るな。

 

そう雰囲気がバシバシと伝わってくる。天姫は彼方を見つめ俺をみることはない。風が天姫の髪で遊ぶ。

 

「そうやって頭を冷やすつもりか」

「…………」

「…自分で感情をコントロールできない、か。そうやって沈黙を守っているのも、俺に余計な被害を与えないつもりか」

 

さっきの発言も内藤ロンシャンに手を出そうとした自分を恥じてか。

一時の感情に流されてしまった自分を馬鹿だと思ったか。

天姫は何も語らない。

 

「……………」

 

いい加減に自分だけ抱え込むのはやめろ。我慢できなくなった。感情に流される俺ではないというのに、気が付けば俺は天姫に銃口を向けていた。

 

「なめるなよ、天姫」

 

ごりっと、額に押し当てる。俺がこの引き金を引けば、その綺麗な肌に傷がつく。

天姫は避けようともせずに言葉を発した。

 

「どういうつもり、リボーン?」

 

声音を変えず、俺を真正面から見つめる天姫。その中に、殺気のかけらほど感じられなかった。まるでこの俺を本当の赤子に扱いやがる。

 

「嘘を隠し通せると思ったか。俺はお前をずっと見てきた。#name1#である最初から、ずっとだ」

 

最初からお前は他人の為に身を削って毎日を過ごした。

最初の頃はザンザスのため、次は骸のため。そして次はツナのため。

お前自身がお前の為に動くことはないのか?天姫は冷めきった瞳で淡々と言った。

 

「あの頃の私は何にも囚われていなかった。でも今は違う。環境が180度変わった現在、何も考えないでいることは不可能なのよ」

 

そんな諦めきった、絶望に怯えたままのお前で一生を終えるつもりか。何かできることはきっとあるはず。

 

「それがおかしいんだよ。いつもお前は何かに依存しているように思えた。今もそうだ。

どうボンゴレに有利に運ぶか、そればかり模索している。……未来のこともな」

 

俺の発言に過敏に反応する天姫。『未来』というというキーワードに関してだ。

 

「……誰から聞いた。……ランボね」

「ああ、お前には悪いが問い詰めた。お前のことを洗いざらい、すべて」

 

俺の銃を手で添え横にずらし、天姫はもう言い逃れられない事実に力が抜けフェンスに体ごと預ける。がしゃんとフェンスが音を立てる。白い肌をなおいっそう白くした手で目元を覆い、彼女は呟く。

 

「じゃあ、どうすればいいの……どうやってすべて変える?これは誰にも告げることはできないことなの。………誰にも告げる気はないわ」

「………天姫………」

 

これがお前の断片なのか。いや、もっと見えない部分もあるのだろう。

これが神天姫。決して誰の手も借りずに全てを背負いこむ。孤高の存在。

初代蒼龍姫もそうやって葛藤したのだろうか。

押しつぶされそうな環境を生き抜き、そして初代ボンゴレの前から姿を消した。

 

自分独りが悩み傷つけばすむ話だと。なおも天姫は言い募る。

 

「リボーン、悪いけど黙ってて」

「俺が素直に言うことを聞くと思ったか?」

 

俺は信じられなかった。お前がそんな弱い姿を見せるとは。

ディーノと接したお前は何か変わったんだな。少しずつ、人間らしさが浮き彫りしていく。こんなにお前は最初の印象と変わった。仮面をつけて笑顔を振りまいていた当初よりも俺の前で苦悩する姿をさらしたお前のほうがより人間らしい。

 

「……お願い、リボーン」

「………天姫、」

 

声を震わせ、まるで懇願するかのように。

 

「………誰にも、言わないで。もう、考えたくない……何も、考えたくない……!」

 

……これ以上、押しつぶされたくない……。

 

さっきまで晴れていたのに、急に天候がかわり、今はぽつんぽつんと、一滴一滴、重い水滴が屋上に降り注ぐ。それは天姫の涙を表現するかのように果てしなく地上に堕ちた。

打ち明けられないほどの闇を抱えた女。俺はこの女に傷を負わせてしまったのか。

どうしてこの役目をこんな女一人に任せてしまうのかと。

 

俺は神を呪う。勝ち取ることができない天姫との未来を同時に俺は恨んだ。

神崎天姫は未来には存在していないという事実を。

 

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