反省も後悔もしている。
母と慕う彼女は親ではない。共に暮らす彼らは血の繋がった実の兄弟ではない。
今いるここは、グレイス=フィールドハウス。 孤児院だ。
そして俺は、そこの数少ない年長者の一人 名をシェロ。
そういうことになっている。
♠♠♠♠
俺たち孤児院の朝は、朝六時に鳴らされる孤児院の鐘と
「みんな~、起きて~!朝ごはん遅れるよ~!!」
元気いっぱいのエマの声から始まる。
「ほ~ら~!シェロ
「・・・・・あと、五分だ。五分だけ・・」
「う~ん・・じゃあ五分だけだからね」
「五分経ったら、諦めてくれ・・」
「それ起きる気ないじゃんっ!?」
「zzzzz・・・」
「二度寝するな~!!」
後にシェルターで出会ったユウゴから「触角」と名付けられるアホ毛を揺らしながら俺をゆすって起こそうとする彼女はいつの頃からか、朝が弱い俺を根気強く起こそうとしてくれる。年少の子どもたちもいるのだからそっちを優先しろなんてことを言ったからか、最近ではそっちも完璧にこなしつつ起こしてくるなんて無駄に器用なことをするようになってしまった。
「シェロ兄~」「起きてよ~」「朝ごはん一緒に食べよ~」「お腹空いた~」「行こうよ~」
しまいには準備を終わらせた年少児をけしかけてくるようになったからもう大変。布団の上に座ったり跳ねられる中で寝れるはずもなく、
「降参降参。起きるからみんな布団から降りてくれ」
白旗をあげて安寧の地より出なければなくなる。これがいつもの恒例行事。
小さい子たちの準備を済ませて先に食堂に行かせ、自分も洗面台で冷たい水をかぶる。季節としては秋だが十分に冷たい水はまだ僅かに残る眠気を吹き飛ばしてくれる。
頭から数秒水をかぶり顔をあげて目に映るのは、洗面台の鏡で反射して見える最早見慣れてしまった
小さい子たちにエマやアンナ、あとギルダとかは、この髪とその色に近い優しい目が好きだと言ってくれるが自分の体って自覚が薄いから何とも言い難い。
「おはよう、シェロ兄。朝から鏡と睨めっこしてどうしたの?」
「大方、まだ眠気が抜けてねえんだろ。シェロ兄は朝にめちゃくちゃ弱いし」
声のする方向を見れば、朝食を運んでいる年長の男子が二人、相も変わらず落ち着き払ったノーマンとちょいちょいこちらをからかってくるレイ。
「おはよう二人とも。もう目は覚めたから大丈夫。さ、みんなで朝ごはんにしよう」
♦♦♦♦
俺はこの場所が仮初で、嘘だらけで、残酷な真実を短くとも甘美な幸せで塗り固められた籠の中だと知っている。
レイのように胎児の記憶と現状を照らし合わせて推理し導き出したわけでも、ノーマンやエマのように”鬼”や出荷の瞬間を見て理解したわけでもない。
それだけでなぜ妄想じゃなく転生者だと思うのか、
その証拠は俺が今いるこの世界が何よりの証拠になる。
『約束のネバーランド』
人を殺し、食す化け物”鬼”たちの住む世界。グレイス=フィールド(GF)ハウスという、子どもたちには孤児院と伝えられこの場所の真実は”鬼”たちが食用の子どもたちを育てるために作り上げた言わば人間プラント。あるキッカケでその事実を知ったエマたちが主人公であり様々な障害を乗り越え、外の世界で自由に生きようともがくストーリー。
俺はこの世界のことを、書物の、二次元の中にある物語として知っている。
そして俺は、エマともノーマンともレイとも違う、俺の考えで俺なりに独自で動く。俺が動くことで物語がどう変化するかは分からない。エマたちが全滅するような大幅な変化が起きるかもしれないし、逆に原作のように全く変化しないのかもしれない。
だからといって動かない理由にはならない。俺が知り、俺が考え、俺がこうしたいと思って行動するんだ。誰にも邪魔はさせない。
”鬼”にも、ママにも、そしてエマたちにさえも、俺の邪魔はさせない。
ここは
これはその世界で、己の命すら賭けてあることを成し遂げようとする一人の男の物語である。
ラスト部分を大幅に変更しました。