諦めた裏切者   作:柿の種至上主義

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前話のラストを大幅に変更しました。
ルートを変更したため、修正前のものは忘れていただいて結構です。


約束のネバーランドのアニメ、
ストーリーの進み具合はそのままで
2クール分やってほしかった。

もっと心理戦の描写が見たかったです(切実


始まり

 カラン、カラン

 

 ママの持つベルが食堂に心地よく響く。

 

「おはよう、私の可愛い子どもたち。こうして今日も39人の兄弟みんなで、幸せに暮らせることに感謝して、いただきます」

 

「「「「いただきます!!!」」」」」」」

 

 

 毎日時間通り、変わることなく行われる食事の挨拶を機に、おなかいっぱい食べられる温かいごはんをみんなが幸せそうに食べ始める。

 

 俺はバスケットから切り分けられたパンを一つ取り、マーガリンを塗る。あまり多過ぎないよう、それでいて満遍なく丁寧に。俺としてはもう少し多めか、これにジャムも欲しいところだがコレを食べるのは俺ではない。

 ふと右手の袖をくいっと引かれそちらを見れば、リトルバーニーを抱きかかえ小さな花を思わせるよう純粋で暖かい笑顔を浮かべるコニーの姿があった。

 

「ん、もうちょっとだけ待ってろ・・よし、ほらア~ン」

 

「あ~む・・・えへへ、おいしぃ」

 

 満足いく感じになったパンをコニーに食べさせると、花が咲いたような見ているこっちがポカポカするような笑顔を見せてくれた。周りの子どもたちが羨ましがって自分も自分もと言っているが、今日だけはコニー限定。

 コニーは幸せそうにはにかんで、俺の膝の上にリトルバーニーと一緒になって飛び乗ってきた。ドンよりも少しとはいえ長身な俺の膝にすっぽりと収まったコニーはこちらに顔を向けて、その小さい口を遠慮がちに開く。

 

「うふふ、コニーは甘えん坊さんね」

 

「だっていいでしょ、今日は」

 

「そうだな。さしずめ俺は、小さなお姫様の忠実な家来ってところかな」

 

 

 みんなで囲む暖かな食卓、俺とママがコニーだけを甘やかしているのは今日だけ。

 

 

 

 なぜなら今日は2045年10月12日

 

 

 

 コニーがここGF(グレイス=フィールド)ハウスを出ていく日であり、

 

 

 

 

 

 

 原作(壮絶な物語)が始まる日でもある。

 

 

 

 

 

❤❤❤❤

 

 朝食を終えた後に待つのは、電子機械らを用いたテスト。落ち着きのない4歳の子どもたちですら驚異的な集中をして臨んでいるこの状況。偏にママの教育の賜物だろう。前世の教育現場にママがいれば、さぞ素晴らしい教育者になれたことだろう。

 

「それじゃあ結果を返すわね。ノーマン、レイ、エマ、シェロ。凄いわ四人とも、また満点。

フルスコアよ。」

 

 驚異的な記録に子どもたちが驚き、自分のことのように喜んでくれる。

 

 

 

 断トツの頭脳を持つ天才のノーマン

 

 

 その天才と互角に渡り合う知恵者のレイ

 

 

 抜群の運動神経と学習能力で二人を追いかけているエマ

 

 

 正直この三人は普通じゃない。俺みたいに前世(セーブデータ)の引き継ぎしたようなある種の反則行為(チート)しているわけでもないのに、よく毎回フルスコア取れるとか訳が分からない。

 

 

 毎日の行われるこの勉強(テスト)が終われば子どもたちは自由時間。思いっきり遊ぶことができる。今日はノーマンに謎の対抗意識を持ったドンの発案で、ノーマン対みんなで鬼ごっこ対決になった。

 

 

 

 

☘☘☘☘

 

 シェロという人間は、ここGF(グレイス=フィールド)ハウスにおいて誰からも好かれるみんなの兄のような存在だった。ママの手伝いをよく行い、年下の子どもたちの面倒もしっかりと見る。時には悩みの相談もする。兄の理想形のような存在であった。

 

 しかしエマ、ノーマン、レイと並ぶフルスコア獲得者であり最年長組の一人ではあるが、何も彼が最年長というわけではない。

 

 年齢順で言えばレイ、シェロ、ノーマン、エマの順であるがそれでもみんなが彼のことを兄と呼び慕う。実際は年上のレイでさえもシェロ兄と呼んでいる状況に誰も疑問を感じてはいないのだ。

 

 いつだったか、誰だったかが呼び出した’シェロ兄’という呼び名。瞬く間に広がり定着したのは、GF(グレイス=フィールド)ハウスの子どもたちが満場一致で兄と言えば彼、それほどまでに大人びて見えている。ぶっちゃけ精神年齢が大人の域ではないかと、子どもたちから思われていた。

 

 

 

 

 そんな彼は今、他の子どもたちと一緒になって鬼ごっこをし、鬼役のノーマンから逃げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の背には、リトルバーニーを抱えたコニーがとても楽しそうにはしゃいでいる。

 

「こらこら、舌を噛むぞ」

 

 シェロはコニーに注意をしつつ草むらを軽々と飛び越え、時には立ち並ぶ木々を巧みに利用した立体的でアクロバティックな動きでノーマンから逃走を続ける。背中のコニーに負担がかからないよう配慮しつつ、それでいて話す余裕すらあったのだ。

 

 年下の小柄なコニーを抱えた上でエマと遜色ない機動性を発揮するシェロに、ノーマンは内心で舌を巻く。これではコニーを抱えていなかった場合はどれ程になるのか。幼少時代に体調を崩しがちで体力が多いとは決して言えないノーマンではとても捕まえられないだろう。今でさえ思考を、癖を読んで先回りをして何とかというレベルなのだから。

 

 シェロは鬼ごっこの際、必ず誰かを背に乗せて鬼ごっこをする。圧倒的なハンデとなるはずのそれを欠片も感じさせずに遊ぶ彼は、間違いなく男子陣の中でも二番目に身長の高いドンを抑え、頭一つ抜けた身体能力を有していた。

 

 

 

 それでもいつも通り、動きを読み切ったノーマンにシェロは捕まり、

 ノーマン対みんなの鬼ごっこはノーマンの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

♠♠♠♠

 

「私、書くね。手紙いっぱい書く。みんなのこと絶対忘れない。」

 

「私、ハウスを出て大人になったら、’ママ’みたいなお母さんになるの!それでね、絶対に子どもを捨てたりしないの!!」

 

 

 ママに連れられて、コニーはハウスを出て行った。

 みんなに別れを惜しまれ、涙ながらにみんなで見送った。

 

「私、ママとか家族のみんなのことも大好きだけど、それ以上にシェロ兄のこと大好きだよ。大人になっても絶対忘れないから!」

 

 コニーはハウスを出る最後に、そう言ってシェロに抱き着きその頬に小さくキスをしてかけるようにハウスの扉を出て行った。その後ろ姿からわずかに見えた彼女の耳は夜でもはっきり分かるほど真っ赤になっていた。

 コニーの大胆な行動に騒ぐ女子たち、まただと言わんばかりの笑みを浮かべる男子たち。

 

「相変わらずモテモテだな、シェロ兄は」

 

「まあシェロ兄だし、しょうがないよ」

 

 レイやノーマンまでこんな風にからかってくるのだから毎度のことながら中々収拾がつかない。

 

 騒ぐ年下たちの相手をしながらシェロは思考の一部で冷静に今後を考えていた。

 

 さあ、ここからが勝負(始まり)だ。

 




シェロ

グレイス=フィールドハウスに住む、孤児であり最年長の一人。認識番号は02194。
身長は160cm。非常に大人びており、みんなから好かれる兄のような存在。
運動能力はハウスにおいてトップであるが子どもの域は出ていない。あくまで運動能力がとても優れた子ども。エマ、ノーマン、レイとも違う考えを持っている模様。

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