狐が拾ったヤンデレ娘   作:なっち様

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連れてって

あれから三日。

結局すべての方法を並行して行うという欲張りな結論に落ち着いた。

信仰を集め、神具や神から力を奪いながら私自身も神を目指す、うん、無謀な欲張りだと自分でも思うぞ。

どれか一つでさえ人の身では一生かけて起こす奇跡だというのに。

この子はそれを分かっているんだろうか。

 

 最後の荷造りをしている森愛の姿からはどうもそう思えない。

 まるでどこか旅行に行くような気持なんじゃないかと思わせる、私に迫っていた時のような雰囲気はどこにいったのやら。

 鞄にぎゅうぎゅうと荷物を詰め込んでいる姿は神を目指す修行者ではなくいつもの私の子だった。

 

「おいおい、そんなに持っていってもかえって邪魔になるぞ」

 

「だって全部必要なんだもん」

 

こちらを見もせずに答える森愛。

女には必要なものが多いのは分かっているが、その背負い鞄がそんないっぱいになるのは明らかにおかしいと思うんだが……。

 

「あ、そうだ。

お父さん荷物少なそうだからそっちに少し入れさせてよ」

 

そんな良案を思いついた! みたいな顔をしないでくれ。

 

「嫌だね。

第一多くなると思ったからその背負い鞄を譲ったんじゃないか」

 

私の鞄は手提げにしては大きいが服を二着と財布、あとは幾ばくかの生活用品を詰めたら全然余白は残らなかったかんだから勘弁してくれ。

 

「ケチー。

それとお父さん、背負い鞄じゃなくてリュックっていうんだよ、これ」

 

「ケチって……。

恨むなら自分の整頓能力の低さを恨んで欲しいね」

 

山で暮らしてた頃なんてぼろきれ一枚しか持ってなかったのに、たった十年でこんなに変わるのだから人間とは面白いな。

 

「入った!入ったよ!」

 

 森愛が自慢げにそのリュック? を見せてきた。

 おいおい、あんまり詰め込むから縦長だったそれが丸くなっちゃてるぞ、自分で背負うってこと忘れてないだろうね?

 

「準備ができたならもう出るよ。

忘れ物は……ないだろうから、置いてく物はないかい?」

 

「ないよ」

 

  絶対あると思うんだけどねぇ。

 

「そういうお父さんこそ、忘れ物は無いの?」

 

「私? うーん、あっ」

 

「なんかあったの?」

 

「一番大事な物忘れていたよ!ありがとう森愛」

 

 奥の部屋へと向かう。

 よかった、危うく一番大事なものを忘れるとこだった。

 

「何忘れたの?」

 

 森愛もついてきたようだ。

 私は手に持つものを森愛に見せた。

 

「それって油揚げだよね、それが一番大事な物なの?」

 

 呆れた、とこぼす森愛、君はまったく分かっていないぞ。

 私にとってこれは大いに死活問題なんだからな。

 いそいそと包みごと鞄にしまう、むう、この量では三日も持たないな、またどこかで買ってこなくては。

 私が頭の中で油揚げ算をしていると森愛がしなだれかかってきた。

 

「油揚げならまた作ってあげるからもう行こうよ」

 

「……本当だろうね」

 

「あ、でも、お家から離れちゃうから台所とかは」

 

「そんなもの私がどうとでもするさ」

 

 そんな些細な事、問題の内にも入らない。

 

「じゃあ、また私が作ってあげるね!」

 

 よしこれで忘れ物も思い残すこともなくなったな。

 

「もう行こう?」

 

「そうだね、行こうか」

 

 いろいろ話し合った結果、この家は残すことにした。

 私は売って金にした方がいいと言ったんだが森愛がどうしても残すと言って聞かなかったのでしょうがなく残すことになった。

 帰ってくる場所があった方がいいとか、二人の思い出やら、二人の家だからと様々な理由を言われたが全部嘘ではなさそうだった。

 

帰ってきたときに荒れた家を見た方が悲しくなると私は思うのだが、そこは感情的な妖怪や神と即物的な人間といった種族の差だろうか。

 

 そんな私と森愛の差を埋める旅が今から始まるのだ。

 

「最初はどこ行くんだっけ?」

 

「まずは烏山を一回超えて狸の奴に会いにいくよ」

 

「ふーん」

 

 自分から聞いてきたのに興味がなさそうな返事が返ってきた。

 大事なことを言うから聞いててほしいんだけどね。

 

「その烏山には天狗が住んでいるから気をつけるんだよ。

奴らときたらプライドが高くて人を見下す癖に喧嘩っ早いんだから。

それに森愛みたいな可愛い娘をさらっちまう」

 

 攫われないようにと続けようとしたところで森愛が口をはさんだ。 

 よかった、話は一応聞いてたみたいだ。

 

「私可愛い?」

 

 頬を赤くして聞いてくる姿は本当に可愛らしいのだけど今はもっと重要な話をしてたはずだぞ。

 

「ああ森愛は可愛いよ。

だから天狗にさらわれないように私のそばをあまり離れるんじゃないよ?」

 

「うん!わかった!」

 

 嬉しさを伝えるようにいきなり腕に組みついてきた。

 

「今じゃなくて烏山でだよ、歩きづらいから離してくれ」

 

「だめ、気持ちが抑えられない」

 

 なんたってこの子はこうも単純なんだろうか。

 落ち着いた子に育ってくれたもんだと思ってたんだが。

 

「あのね、お父さん相手だと気持ちが抑えきれなくなるの。

感極まるってやつなのかな」

 

「それはよかった。

少なくとも天狗と狸の前ではおとなしくしてるんだよ?」

 

 天狗はまだしも狸の奴は人を取って食ったような奴だからな。

 この状態の森愛なんて骨までしゃぶられてしまうだろう。

 

 旅は始まったばかりなのにもう不安になってきた。

 

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