狐が拾ったヤンデレ娘   作:なっち様

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お待たせしました。

ヒロアカの二次創作書いてました


染めて

妖怪の私ならこんな山すぐに駆け抜けられるが森愛(りんな)は人間だ、私のようにはいかない。

いくら草木の邪魔は無くても傾斜のある道を歩いていれば余程登山の経験があるか訓練をしている人間でもなければ疲れてしまう、ましてや女の子だ。

なので山の半らで休憩をとることにした。

 森愛は先に進みたがったが疲れているのは一目瞭然だったので無理やりでも休ませた。

 

 しかし、足を止めれば――そのことに後悔はしてないが――うるさい奴がやってきた。

 そう、天狗だ。

 

 私の放つ妖気に誘われて、というのはおかしいか?いや、いいか私にとって天狗なんぞは蛾や蚊と変わらんのだし。とにかくやってきた天狗は開口一番。

 

「お前ら、ここを天狗の山と知っての狼藉か?こそこそと鼠のようにいれば見逃してやったものをこれ見よがしに目障りな妖気を放ちやがって」

 

 ほら、うるさい。森愛はいきなり飛んできた天狗に驚いていた。

 

「お父さん、この人がお父さんの言ってた天狗なの?」

 

「ああ、そうだよ。人間の伝承にあるのとほとんど変わらない姿だろ?」

 

 黒いカラスのような羽根に茶色い目はこの天狗が混じりっけのない純血なことを示していた。ようするに典型的な天狗。傲慢で誇り高い。

 ううん、と記憶をたどっているであろう森愛は目の前の天狗を舐めるように上から下へ見回す。天狗は飛ぶのを辞め私たちの前に降り立った。

 

「すぐに立ち去るつもりだから気にしないでくれよ」

 

「いや、そういうわけには行かねぇ、ここで引きゃあ山の主としての沽券にかかわる」

 

「じゃあ、どうすればいいんだい?」

 

「俺が叩き出す」

 

 ほらめんどくさい。でも、実力の差に気づかないってことはまだまだひよっこ天狗なのだろう。待てよ、カラスの雛もひよこなのか?

 天狗が腰の剣を抜いた。年季を感じるそれは天狗が腐っても妖怪なのだと思い知らされる。

 

「森愛」

 

 休憩の間、離していた手を森愛に差し向ける。すぐに森愛は意図を察して手を取ってくれた。

 

「危ないから私から離れるんじゃないよ?」

 

「危なくなくても離れるつもりはないよ?」

 

付きっきりというのも困るが。森愛が自衛の手段を手に入れるまではそれでいいのかもしれない。普通の人間相手でも今の森愛じゃ勝てないのだし。

 

「仲良くお手々繋いでくれちゃって、なめんじゃねえよ」

 

「悪いね、それが強者の特権なのさ」

 

 天狗の身体から妖気が漏れ出る、怒った怒った。ま、弱者に現実を教えてやるのは先達の務め。いずれの大妖怪もいまは弱い。相応の生き方ってのを教えてやるか。よしちょっとやる気になったっぞ。

 

「どこからでもかかってきなよ」

 

 死なない程度に受け流してやるからさ。

 天狗が刀を構え、じり、と足を滑らせた時だった。

 

「おやめ偉徳(だいとく)!!」

 

 また一人天狗がやってきた。

 

「かあさん!」

 

 なるほど、この天狗の母親らしい。と言うことは偉徳というのはこの天狗の名前か。こいつと違って母親の方は実力の差を感じ取れるくらいの強さはあるようだ。

 

「名のある大妖怪とお見受けします。うちの倅がとんだご無礼を働きまして、誠に申し訳ありません」

 

「別にそこまで気にしていないさ、どうってことない」

 

「そういって頂けると幸いです、お詫びと言っては何ですが私ども天狗の里でぜひおもてなしをさせていただければと存じます」

 

「かあさん、何でこんな奴にそこまで!」

 

「黙りな!あんたなんかがこの方に挑んだって百回やっても勝てないよ!そんだけ実力の差があるのも分かんないのかい!」

 

 天狗の母親は申し訳ありませんと言って偉徳の頭を押さえつけ自分と一緒に下げさせた。

 

「私は里でおもてなしの準備をさせていただきますので、案内はこちらの倅にさせます。どでは、失礼させていただきます」

 

 そう言って天狗の母親は飛び立っていった。

 

「あの人私たち行くって言ってないのに行っちゃったね」

 

「ま、今夜はどこかで止まる必要があったんだ、渡りに船だよ」

 

 狐の私は野宿でも構わないが森愛のことを思うなら泊まれるとこがあるなら泊まるべきだ。

 残された私たちは自然と偉徳へと視線が集まる。彼は機嫌悪く鼻を鳴らした。

 

「母さんが言うから連れてくけど、お前本当に強いのか?」

 

「君は弱いくせに偉そうだねぇ」

 

 妖怪としてひよっこだから弱いのはしょうがないが普通弱かったら組織でも下の位に行くし態度も相応になるもんだが。天狗の排他的な性格が外様の私たちに働いたのか?

 

「おれは頭領の息子だからな」

 

「え、そうなんだ」

 

 森愛も意外だったらしい。

 

「そういうお前らはどうなんだよ、人間と妖怪が連れ立って何してんだ?」

 

「ああ、私たちはね親子なんだよ!この人は私のお父さんなの」

 

「なんだそりゃ」

 

 まあそう思うよな、天狗の感性からしたら非常食だと思っていてもおかしくない。

 

「ま、こっちにも事情があってね。二人で旅をしてるってわけさ」

 

 偉徳は空を飛んでいきたがったがこちらに合わせて歩いて案内をさせた。私以外の妖怪や妖気に触れさせておくのは森愛の為になるだろう。それに山を歩くのもいい、旅のほとんどは歩いて移動するのだ。今のうちに慣れさせておいた方がいい。天狗が先頭で案内をしてるからかいちいち妖気を飛ばさなくても草木はおとなしく私たちに道を譲っていく。森愛はそれをずっと面白がっているがこの山で生まれ育った偉徳からすればこれが普通なのだ。人間と妖怪以前の価値観の違い。

 

「うん、どうしたのお父さん」

 

 私の視線に気づいた森愛が私を向いた。

 

「森愛の価値観とかとらえ方について考えてた」

 

「そっか私の事か」

 

 と森愛は笑った。

 

「お父さん色に染めてね、私の価値観」

 

 偉徳が人間が妖怪を見るような目で振り返ってきた。どうやら彼の親子としての価値観と私たちは違ったようだ。私もそう思うよ。

 




ヤンデレ界隈の文章力高すぎてなちょっと気後れして投稿しづらい
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