とりあえずお試しとしてあげてみて、反応が良ければ書き直して投稿しようと思っています。
続きが読みたい読みたくない。こうしたらもっと面白そう。そんな感想が頂けたら幸いです。
ナザリック地下大墳墓。
ギルド”アインズ・ウール・ゴウン”のホームであるこの地に、二人のプレイヤーがいた。
一人は漆黒のローブでその身を包む
そしてあらゆる種族の特徴を詰め込んだような、冒涜的な見た目を持つ
「モモンガさん。そろそろ時間だから行ってくるね」
「了解ですチャーリーさん。吉報を待っていますよ」
別れのエモートを交わしチャリオットは転移する。行き先は一対一専用に設けられている決闘場である。
──“あの人”はまだ来てないな。
チャリオットは自分の装備やショートカットなどの最終チェックを行う。そしてコンボの練習をしていると、目的の人物が現れる。
“歴戦”を思わせる傷だらけの白い鎧。チェインメイルは剥き出しで、襤褸の白いマントを体に纏い、無骨なショートソードを携える。そして特徴的な円筒形の兜を被るその姿は、知る人ぞ知る伝説的なプレイヤー。
彼の名はkikyou。ワールドチャンピオンの称号こそ持たないが、トッププレイヤーの一人として名を連ねられる猛者である。
この名が知れ渡るのは、ユグドラシルのサービスが開始してから五年程経った頃のこと。
その時実装された大型アップデートで、誰もが音を上げた超高難易度ダンジョン。それを誰よりも早く踏破し、彼の名が公式サイトで取り上げられた。これまで表舞台にその姿を現さなかった謎のプレイヤーの台頭に、当時のユグドラシルは沸き上がった。
それからは度々その名を見せることになるが、どれも驚愕するものばかり。
一つ。強者渦巻くPvPイベントで、数日間に渡り首位を独占。突然飽きてしまったのか途中からポイントが変動することはなかったが、それでも最終的に上位にランクインする。
一つ。悪質なPKで有名なギルドから奇襲を受けるが、その半数を返り討ちにし、圧倒的な実力を見せつける。この時の動画を見て研究をしたプレイヤー達により、今まで知られていなかった多くの高等テクニックが発見される。
そしてなによりも驚くべきは、彼がソロプレイヤーだということだ。
ユグドラシルはレベル上げが比較的容易なゲームであり、基礎ステータスでは差がつきにくい。それはつまり、数は力であるということ。そんな世界で孤高に生きた彼の姿に、多くの者が憧れた。もちろん、チャリオットもその一人であった。
「kikyouさん。今日という日にPvPを受けて頂いて、本当にありがとうございます」
チャリオットにとってkikyouとは、憧れの存在であり、どうしても超えたい壁であった。
昔公式イベントで為す術もなく敗北してからというもの、幾度となく挑み続けた。しかし勝った試しといえば、相手が手負いのときぐらいである。
そしてユグドラシルのサービスが終了するこの日、最後のチャンスが訪れる。あまり期待せずPvPを申し入れてみると、意外にも許諾されたのだった。
「こちらこそ。チャリオットさんからPvPの誘いを受け取ったとき、嬉しかったです」
「えっ……」
チャリオットは驚きのあまり硬直する。言葉の内容もそうだが、あのkikyouがわざわざボイスチャットを使って話しかけてきたことが驚きだった。
元々kikyouはリアルの性別すら分からないような謎のプレイヤーである。見た目にそぐわず優しげなその声音に、チャリオットはかつてないほど緊張した。
「やっぱり驚きました?」
「そ、そりゃまぁ……。kikyouさんの声を聴いたことのあるプレイヤーなんて、ほとんどいないんじゃないですか?」
「ほとんどというか、チャリオットさんが二人目です」
「まじか……。ちょっと嬉しすぎて、心臓バクバクしてます」
なんと自分は恵まれているのか。これではこの後のPvPに影響が……。
そんなことを考えていると、サービス終了まで残り十分という告知が流れる。
「もう時間がないですし、そろそろ始めましょう」
「分かりました。……実はこの日のために、作戦を練ってきたんです。今までの借りをここで返します!」
そしてチャリオットは斧と盾を、kikyouはショートソードを両手持ちに構える。
kikyouは常に異なる戦法を用いる。それこそシーズンを跨げば
今回のショートソード両手持ちも初めて見る構えであった。つくづく底知れない人だ、と思いながら、開始の合図を待つ。
──よし、やるぞ!
PvPを終え、いくつか会話を済ませると、kikyouは「最後に友人と会ってきます」と言って転移した。
チャリオットもナザリックにいる友人に<伝言>を繋げる。
「チャーリーさん、どうでした?」
「ふふふ、聞いてよモモンガさん。まさしく完敗。やっぱり規格外だよあの人は」
チャリオットは敗北した。完膚なきまでに叩きのめされた。
あらゆる手を考え、入念に準備し、全力を尽くしてなお敗けた。
(悔しいけど、それ以上に清々しい気分だ。あの人と最後に戦えるなんて、俺はどれだけ幸せ者か)
チャリオットは決闘場の床に座り込み、徐に周囲を眺める。kikyouが刻んだ剣の痕がそこにある。この余韻を少しでも長く味わっていたかった。
「残念でしたね。チャーリーさん、ずっと準備してきたのに」
「まぁね。でも、楽しかったよ」
ふと時計を見てみると、もう終わりまで数分しかなかった。
「ついに終わりだね。ユグドラシルも」
「……そうですね。ついに、終わってしまいますね」
「モモンガさん、次にやるゲームは決まってる?」
「いえ、全く。チャーリーさんは?」
「俺も決まってないよ。ユグドラシルⅡがあればいいんだけどさ」
当然のことかもしれない、とチャリオットは思う。サービス終了が予告されてもプレイし続け、こうして最後まで縋りつくように残っている。次のゲームが決まっているなら、さっさとそちらに移るのが普通なのではないだろうか。
「……たまに連絡してもいいですか?」
「もちろん。俺からも定期的にメールするから、ちゃんと返信してよ?」
二人は束の間に笑い合う。
「じゃあ、また会う日まで」
「うん。またね、モモンガさん」
互いに丁度良い言葉が見つからず、ありきたりな別れを告げてそのまま静かに時を待つ。
そして時計が零時を回った直後、チャリオットが目にしたのは、左右で髪と眼の色が違う、人形のような恰好をした少女の姿だった。
チャリオットはハースストーンの「悪夢の融合体」っぽい見た目を想像して頂ければ。
kikyouさんはダークソウル2の「ハイデの騎士」が元ネタです。