番外ちゃんと旅するお話(仮)   作:ミッドレンジハンター

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前回のあらすじ三行
・番外ちゃんと戦闘
・異世界に来てしまった
・なんやかんやで一緒に脱出

miiko 様 誤字報告ありがとうございます。


初めてのキャンプ

 無事にスレイン法国の警備網を突破した俺達は、人目を避けるためにひとまず近くの森に拠点を構えることにした。ただしこの森にいるモンスターを狩るため国から定期的に部隊が派遣されているらしいので、これからの方針を決めた後はなるべく早く出発する必要があるだろう。

 

 今番外ちゃんは法国に戻り、食料等の買い出しに行っている。彼女には悪いが、今は精一杯甘えさせてもらおう。

 

 さて、この時間を無駄にはしていられない。

俺はまず謎だらけのこの身体について調べてみることにした。

 

 俺の種族は融合体(アマルガム)。その名の通り、様々な種族を混ぜて出来たような見た目をしている。

 頭は魚人をモデルとした、(個人的には)丸っこくて愛嬌のある感じの緑色。

 右腕はカラクリ仕掛けで、左は筋骨隆々な人間の腕だが手首から先は猛禽類の四本指。

 背中には悪魔の翼。下半身はドラゴンで、獅子の尾がついている。

 他にもいくつかパーツがあるが、おおよそはこんな感じである。

 

 そんな混沌とした身体だが、実は各種族の特性を少しずつ受け継いでいることが分かった。

 魚特有のエラ呼吸やドラゴンブレス、何の種族の特性か分からないが夜目が効く……といった風に。他にもいくつかあるかもしれない。

 これはかなり便利かと思ったが、実際はそうでもなかった。エラ呼吸には限界があるし、ドラゴンブレスはかなり弱い。翼もバサバサしてみたが、全く飛べる気配はない。ハイレベルなコスプレ程度のものだった。

 残念感が拭えないこの身体に、更に追い打ちをかけられる。

 

「腹減った……」

 

 この身体を維持するためには、どういう訳か大量のエネルギーが必要になるらしい。

 リング・オブ・サステナンスがあれば食事も睡眠も不要だったかもしれないが、残念ながら持っていない。

 というのも、kikyouさんとのPvPに備えて、アイテムボックス中の余計なアイテムを全てギルドに置いてきてしまったのだ。

 よって今の手持ちは最低限の装備とポーション等の必須アイテムのみ。とても辛い。

 

 はぁ、と大きな溜息を一つ吐き、左手の指輪に目を向ける。

 今の自分が持っている、恐らくは最も価値の高い装備、”盾の指輪”。何の変哲もない名前だが、この世界においては非常に強力な効果を有することが分かった。

 それは、あらゆる材質と大きさの盾を自由に生み出せるというもの。指輪の耐久値がなくならない限り、何度でも使用できる。

 その有用性は計り知れない。ユグドラシルでは三種類のサイズの盾しか存在しなかったが、この世界では頭の中にイメージした盾がそのまま現れるのだ。

 

 ただし今は指輪の耐久値を回復する手段がない。回復するには鍛冶師のスキルが必要なため、緊急時のみ使用することにした。

 

 

* * *

 

 

 辺りが少し暗くなってきたので焚火の準備をしていると、番外ちゃんが戻ってきた。

 

「おかえり」

「ただいま。これ、便利ね」

 

 無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)を振って見せる。ガサゴソと漁って中から取り出したのは、テントにランタン等のアウトドア用品、そして大量の食料だ。

 それらの中には元の世界でも見慣れた野菜にパン、塩などの調味料もあった。この世界でも食材はあまり変わらないらしい。

 

 早速テントを張って寝床をこしらえる。大人一人分程度の小さなものだが、贅沢は言えない。本来なら拠点作成系のマジックアイテムを使えばいいのだが、この森ではどうしても目立ってしまう。

 それに、焚火にテントというのはいかにもサバイバルな展開で案外楽しい。

 

「よし、じゃあ夕飯作ろう」

「言っておくけど、私料理できないから」

「それはいいけど、野菜切るくらいは手伝ってくれよ?」

「えー」

 

 彼女は心底面倒くさそうな顔でこちらを見る。

 

「手伝わないと飯食わせないぞ」

「うーん……仕方ない」

 

 渋々だが納得してくれたようだ。

 しかしさっきからこの子からは女子力というものを感じない。

 法国を脱出する時は本当に酷かった。「あそこの兵士気絶させてくる」と言って飛び出した時は、”首に手刀”的なものを期待して見ていたのだが、実際は兜に一発グーパンチである。恵まれた容姿なのに勿体ない。いや、むしろアリなのか?

 

 

 

 彼女が持ってきてくれた食料と調理器具を並べて少し考える。何を作ろう。

 とにかく大量に食べたいので、やはり汁物がいいだろうか。とはいっても特段料理に自信があるわけではないので、凝ったものを作る気はない。

 そんな訳で、簡単かつ多くの具材とマッチする『豚汁』を作ることにした。番外ちゃんが持ってきた調味料の中に味噌があったのは幸運だった。どうやらスレイン法国にしかない特産品の一つらしい。

 

 大根、たまねぎ、ごぼう等数種類の野菜を切って鍋に入れ炒めたら、豚肉を投入。肉の色が変わったら水を入れ、沸騰後の灰汁を取って味噌を溶く。後は弱火でじっくり煮るだけ。最後に味を調えて完成だ。

 

「うまっ!」

「まぁまぁね」

 

 とかいいながらもおかわりしている。彼女も満足してくれたのだろうか。

 

 俺は生まれて初めてのキャンプを体験し、新鮮な野菜を使った食事を味わった。それも可愛い女の子と。これほど幸せなことが他にあるだろうか。異世界初日にして幸先の良いスタートである。

 

 この世界初の料理に舌鼓を打った後は、焚火を囲んで雑談タイムだ。

 

「ところで君は法国を出ちゃって大丈夫なの?」

「問題ない」

「あそこで何をしてたんだ?」

「丁度掃除当番だったの」

 

 嘘つけ。ルービックキューブ弄ってただろ。……ルービックキューブ?

 

「そういえば、あの時持ってたのってルービックキューブだよな?」

「ルビクキューのこと? 知ってるの?」

「こっちの台詞。この世……この辺にもあるの?」

「そもそもスレイン法国が発祥のはずだけど」

 

 彼女は六百年前に降臨した六大神と呼ばれる神が広めたのだと説明した。

 

(ルービックキューブって確か、ルービックさんが考案したのが由来のはず。てことは地球から持ち込まれたのは間違いないよな。だけどリアルでルービックキューブが生まれてからまだ二百年も経ってないだろうし……)

 

 そもそもこの世界はユグドラシルのルールが前提に成り立っている節がある。この森で出会ったモンスターは全て、ユグドラシルでのそれと完全に一致していたからだ。

 

(となると六大神は俺と同じユグドラシルプレイヤー? だとしても何故異なる時代に飛ばされた?)

 

 しばらく唸って考えてみるが全く答えが浮かばない。多分彼らもサービス終了と同時に転移したのだろうが──。

 

「ねぇ、聞いてる?」

「あ、ごめん。何だっけ?」

「ルビクキュー何面揃えられるかって話」

「あぁ、六面できるよ」

「え、ほんと!?」

 

 貸してみ、といってルービックキューブを受け取る。昔はよく遊んでいたが、今でもたまに触っているので揃え方は覚えている。右が三本指に左が四本指なので少し手間取ってしまったが、一分ほどで六面が完成した。

 

「凄い……。一瞬で完成させるなんて。六面揃えられた人さえほとんどいないのに」

「一瞬ねぇ。確か俺の記憶では、世界記録は4秒台のはず」

「なにそれ。一体どこのカミサマよ」

 

 ふん、と鼻を鳴らして否定する。信じられない気持ちも分かるが、本当のことである。

 これはスピードキューブという競技の記録だが、他にも様々な種目がある。目隠し状態で解いてみたり、片手や足で揃えたりと、嗜む程度の者にとってはまるで超人のように見えてしまう世界なのだ。それに自己ベストが10秒台の人なら割とごろごろいるらしい。一分など中級者も良いところである。

 

「やり方教えてあげようか。LBL法っていう有名なやり方があって、それを覚えれば誰でもできるようになるんだよ」

「……本当に?」

「本当本当。一月もあれば俺に追いつけるかもね」

 

 彼女の目の色が明らかに変わる。

 自分としても教えてやりたいと思う。同じ趣味を持つ人と話すのは初めてだったからだ。かつてギルドメンバーにも勧めたことがあったのだが、あまり反応は良くなかった。ルービックキューブというのは、達成感を味わえるまでが長いのだ。

 それにさっきの彼女の発言から、この世界ではルービックキューブがあまり浸透していないことが分かる。このシンプルだが奥深く、美しい造形の玩具を是非とも流行らせてみたい。

 

 

 

 更に雑談は続いた。本当はもっとこの世界について知らなければいけないことがあると思うのだが、ハイテンションになってしまいどうでもいい事ばかり話してしまう。

 

「その髪って染めてる?」

「地毛だけど」

「なんだって……」

 

 オッドアイならぬオッドヘアー。そんな人が存在するとは知らなかった。

 聞けば彼女は神の血を引く人類最強の存在なのだという。大仰な表現だと思ったが、全体的に痛い恰好だし、どうしても目覚めやすい年頃なのだろう。

 

 




纏まらない話になってしまいました。すみません。
(仮)なので投稿しましたが、書き直し筆頭です。
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