ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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これは、ほぼ気分転換に書いたお話です。
設定としては、『ハジメは仮面ライダーを知っていた』、『司にそれを再現出来る技術があった』、と言った所です。所々の場面をダイジェスト形式でお送りします。

今回はベヒモス戦の辺りです。


IFストーリー ライダー編
IF・ライダー編 第1話


これは、ハジメ達の世界に『仮面ライダー』

と言う戦士達の物語が存在し、ハジメが

それを好きで、そして、ジョーカーを作る

中で、ある会話から始まった、ちょっとした

IFの物語。

 

転移2日目の夜、私はハジメと話し合いを

していた。元々はハジメの戦闘力の低さ

を補うためのパワードスーツ開発の為の

話し合いだったのだが……。

話題が、パワードスーツの名前を

『ジョーカー』で決めた時だった。

 

「ジョーカー、かぁ。あはは。僕の

 相変わらずのライダー脳は、

 頭の中に『仮面ライダージョーカー』

 と『ジョーカーアンデッド』を描いて

 いるよ」

そう言って苦笑するハジメ。

「それは、平成ライダーシリーズ11作目

 の『仮面ライダーW』の登場ライダー

 と、同じく平成ライダーシリーズ

 5作目に登場する怪人、ジョーカー

 の事ですか?」

「うん。自分でも若干引いてるよ」

そう言って更に苦笑するハジメ。

 

「でも、やっぱり僕も男だからさ。

 そう言うヒーロー物に憧れたり

 してたんだよね」

「成程。……仮面ライダーですか」

私は小さく唸り、頭の中にある

仮面ライダーについての記憶を探る。

ちなみに、何故私がそれを知っている

のかと言うと、孤児院の子供達に

昔、仮面ライダーの本物のベルトを作って

と頼まれた事があるからだ。

「何て言うかさ、司なら本当に

 ライダーシステムとか作れそう

 だよね。なんて……」

との言葉に私は……。

「えぇ、作れますよ?」

「…………はい?」

ポツリと呟き、ハジメはしばし呆然と

していたのだった。

 

そして翌朝。私達は敢えて遅めに訓練場

に向かった。

「ん?遅いぞ二人とも。もう訓練は

 始まってるぞ」

入ると、まずメルド団長が私達に気づく。

次いで私達に気づいたクラスメイト達

だが、男子達はハジメを見るなり嗤っている。

……正直殺したいが、今は我慢だ。

 

「すみません。ハジメ用の新装備を

 準備していたら、遅くなりました」

そう言って私は下げていたケースを

掲げる。

「ん?新装備?何だそれは」

「まぁ、それは見てのお楽しみという

 事で。ハジメ、あちらへ」

「あぁ、うん」

私はハジメを連れて訓練場の一角へ行き、

そこでケースを解放した。中に入って

いたのは、平成仮面ライダーシリーズ

第5弾、『仮面ライダー剣』の登場する

4人のライダーが使ったベルトだ。

『ブレイバックル』、『ギャレンバックル』、

『レンゲルクロス』、『カリスベイル』。

更には52枚の『ラウズカード』も

入っている。仮面ライダー剣の

登場ライダーは、このラウズカードの力で

戦うのだ。

 

しかし、ハジメの体力的にまだ近接戦は

無理だな。ここは……。

「では早速実験開始です。ハジメ」

そう言って、ハジメにギャレンバックルと

ダイヤのA、『チェンジスタッグ』の

カードを渡す。ハジメは、しばしそれを

見つめてから、息を呑み、カードを

バックルに装填する。

 

すると、バックルからカードのようなベルト

が伸びて彼の腰に巻かれる。

それに、周りで見ていた生徒達やメルド

団長達が驚いて動きを止め、こちらを

見ている。

「ふむ。どうやら今のところシステムは

 万全のようですね。さてハジメ。

 いよいよですよ」

「うん。分かってる」

 

ハジメは、緊張した面持ちで、右手を

バックルのトリガーにかける。既にベルト

からは待機音声が鳴っている。

チラリと周囲を見渡せば、男子達がベルト

を見て会話している。どうやらギャレン

バックルを見て分かった者が数人はいる

ようだ。まぁ良い。

そして……。

 

「……変身」

静かに呟いたハジメがトリガーを引く。

 

『Turn up』

 

するとベルトから電子音声が鳴り響き、

ハジメの前にクワガタが描かれた青い

ゲート、『オリハルコンエレメント』が

展開される。ハジメは、ゆっくりと

それを通過する。

 

すると、彼は新たな姿、『仮面ライダーギャレン』へと姿を変えていた。

 

その光景に生徒達が驚いてざわめいている。

メルド団長達は呆然としている。

そして肝心のハジメは、自分の手足を

見回している。

私はそんな彼の前に姿見を造り出す。

 

「は、ははっ。変身、出来ちゃった」

戸惑いながらも自分の顔を触るハジメ、

もといギャレン。

そして彼は私の方を向いている。

その時。

 

「こ、これは一体どういうことなんだ?」

天之河がこちらに歩み寄ってくる。

香織や雫、坂上に谷口、中村もだ。

更にその後ろに、他のクラスメイト達も

続いている。

「お、おい新生。なんで南雲が、その、

 仮面ライダーに?」

「あぁ、これですか?簡単な事ですよ。

 私がライダーシステムを作った。

 それだけの事です。元々ハジメの

 為に、彼の戦闘力を底上げする 

 パワードスーツを作ろうと考えていた

 のですが、昨日の夜に彼と色々

 話しましてね。こうなりました」

そう言って、私はギャレンに目を向ける。

 

「原作である仮面ライダーシリーズでは、

 変身には資格や体力的な物、適性など

 があり、選ばれた者しか変身出来ない、

 と言う設定がありましたが、それは

 所詮『設定』。それを取っ払って誰

 でも装着できるようにした上で

 開発しました」

「か、開発したってそんな簡単に

 言ってるが、大丈夫なのか?」

「肉体的な影響を心配しているの

 でしたら、ご安心を。その辺りの

 対策も万全です。平成ライダーの

 ストーリーの中には、中盤や

 終盤で主人公の肉体が変質し

 人からかけ離れる、と言う話がよく

 ありますが、私がそんな危ない物

 を親友に渡すとでも?」

そう、私は仮面ライダーのシステム

を創造し、更に改良した。誰でも

使え、且つリスクは最小限にした。

 

「け、けど、何だって仮面ライダー

 なんだ?」

その時、男子の一人がポツリと

呟いた。

 

「特に深い意味はありませんが、

 仮面ライダーの戦闘スキルや技を

 本物と同様か、それ以上に再現出来れば

 魔人族など恐るるに足らずでしょう。

 例えば、『仮面ライダークロノス』の

 時間停止能力などが良い例です」

あれがあれば、一方的に敵を攻撃出来る。

まぁ、それ自体は今も鋭意開発中だが。

 

「そういう訳です。まぁ、お楽しみに

 していて下さい。『色々』と、

 お見せできるでしょうからね」

そう言って私は笑みを浮かべる。

 

最も、彼等にその力を与える気はない。

贔屓と呼ばれようと、その力を持つのは、

大なり小なり、私に認められた者だけ

なのだから。

 

その後、檜山がハジメの持っていたベルト

を奪おうとしたのでぶちのめしたりして、

何だかんだあって、オルクス大迷宮に

潜る事になった。

前日に香織がやってきたりと色々あったが、

私とハジメはそれぞれのベルトを手に、

大迷宮へと向かう事にした。

 

そして当日。

私が手にしているのは、『ジクウドライバー』。

『仮面ライダージオウ』に登場する

主人公、『常磐ソウゴ』と『明光院ゲイツ』

が装備している。『ライドウォッチ』と

呼ばれるアイテムを用いて変身する。

 

現在まで、数種のライドウォッチと

ジオウⅡライドウォッチまで完成している。

……目指すゴールは、『オーマジオウ

ドライバー』の完成だ。

 

ちなみに私がジオウ、延いてはオーマ

ジオウな理由はハジメが選んだからだ。

 

「司は、やっぱり何でも出来るし、

 『頂点』って感じがあるよね。

 だからディケイドとジオウで

 迷ったんだけど、やっぱり世界も

 創造出来るジオウって事で」

だ、そうだ。

ちなみにディケイドライバーは現在

開発途中だ。

 

一方のハジメには『ゼロワンドライバー』

を持たせてある。これは『仮面ライダー

ゼロワン』という、一番新しい

ライダーの物だ。

『プログライズキー』と呼ばれるアイテム

で戦う仮面ライダーだ。

 

ハジメが私のベルトを選んだように、私

がハジメのベルトを選んだ。

理由としては、『これからの生まれる

新しい英雄には最も新しい英雄の

力が相応しい』というのが、私の

考えた理由だ。

 

その後、私達はベルトを使う事なく、

私が再現した『ファイズフォンX』

や『エイムズショットライザー』を

駆使して戦った。ハジメはファイズ

フォンX。私はショットライザーだ。

 

ファイズフォンXなら、殺傷・非殺傷

の切り替えが出来るから、まだ明確

な殺人の覚悟の無い彼にはぴったり

だろうと考え渡した。

 

で、無事にやってきたのだが、あの

檜山がバカな行動をしたせいで、今の

私達はピンチだ。

 

橋のような構造物の上に投げ出され、

逃げるために階段方向には、骸骨の

兵士の群れ。反対側には、ベヒモス

と言う名の如何にも凶悪そうな魔物。

それだけで、彼等はパニックだ。

 

最も、私はそうでもない。私は瞬時に

彼等と魔物を分断する結界を展開する。

そして……。

 

「慌てるな」

彼等を宥めるように、静かに語り出す。

するとどうだろうか?先ほどまで

状況に怒っていた者や、戸惑い泣いて

いた者達が静まり変える。

まぁ、実際には私がオーラを

滲ませているからかもしれないが、今は

良い。

 

「慌てた所で状況が好転するわけでも

 無い。戦えないのなら、黙って

 大人しくしていろ」

「おいっ!新生何もそこまで!」

「事実を言っている。……冷静さを

 欠けば、戦場で死ぬだけだ。

 だからこそ、黙って見ていろ」

 

『ジクウドライバー!』

 

私はジクウドライバーを取り出し、

それを装着。更にライドウォッチを

取り出す。

 

そして、後ろにいるハジメに、肩越しに

振り返る。

「ハジメ。そちらの骸骨兵士は

 任せます。私はベヒモスを」

「……」

ハジメは無言で手にしていたプログライズ

キーを見つめ、握りしめる。

 

「……分かった。やるよ」

そう言うと、ハジメはベヒモスと向き合う

私に背を向け、ゼロワンドライバーを

取り出して腹部に当てる。

そして……。

 

『ジャンプ!』

 

彼は『ライジングホッパープログライズキー』を起動した。

そして、それをベルトの右側に翳す。

 

『オーソライズ』

 

するとベルトから、認証を意味するAuthorizeの

音声が流れ、続けて待機音声が流れる。すると……。

 

『ドガァァァァァンッ!!!!』

 

遙か頭上の天井を突き破り、巨大なバッタが

姿を見せた。バッタは壁や橋の上を自在に飛び

周り、時には骸骨兵士、トラウムソルジャー

を踏み潰す。

 

それを横目で確認しながら、私もウォッチを

回転させ、リューズにも似たボタン、

『ライドスターター』を押し込む。

 

『ジオウ!』

 

すると、ウォッチから電子音が流れる。

私はウォッチをドライバーの右側スロット、

『D’9スロット』に装填する。すると、私

の背後に時計の文字盤のような物が出現

し、待機音声が鳴り響く。

 

ハジメは折りたたまれていたキーを、

振って展開。

私は左手をドライバーに掛ける。

そして……。

 

「「変身(!)」」

 

私達は異口同音の言葉を発した。

 

『プログライズ!』

 

ハジメがプログライズキーを

ドライバーに突き刺す。

すると、周囲を飛び回っていた

バッタが分解され、彼の体を覆う、

黒いスーツの上を、更に覆う鎧と

なる。

 

『飛び上がライズ!ライジングホッパー!

 A jump to the sky turns to a rider kick.』

 

響き渡る電子音声。

そして、ハジメは『仮面ライダーゼロワン』

へと変身を遂げた。更に、私も……。

 

『ライダータイム!仮面ライダージオウ!』

 

ベルトを回すと、周囲の空間が歪み、世界

が一回転する。そして、私もまた、ハジメ

と同じように『仮面ライダージオウ』へと

姿を変えた。

 

こうして、この場に2人の仮面ライダーが

現れた事になる。

私達は互いに背を向けたまま、武器を

取り出す。

 

『ブレードライズ!』

 

ハジメ、ゼロワンは、アタッシュケースの

ように折りたたまれていた『アタッシュ

カリバー』を展開する。

 

『ジカンギレード!ケン!』

 

私の方も、ベルトから剣、『ジカン

ギレード』を取り出す。

 

「……ハジメ、そちらは任せます。

 私はベヒモスを」

「うん。任せるよ、司。ううん。

 『ジオウ』」

「えぇ、分かりました。『ゼロワン』」

 

そして、次の瞬間。私達はそれぞれの敵に

向かって突進した。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

シールドを突き抜けたハジメ、改めゼロワン

は、すぐさまシールドの目の前にいた一体

の体をアタッシュカリバーで貫き、そのまま

橋の外へと弾き飛ばした。それに

巻き込まれ、数体のトラウムソルジャーも

奈落に落ちていく。

そこに襲いかかるトラウムソルジャー。

だが……。

 

「はっ!」

バッタの能力を持つ、ライジングホッパー

であるゼロワンの脚力を生かし、彼は

数メートルを軽々と跳躍し、落ちた先に

いた別のソルジャーの頭を踏み潰した。

そこから更に円を描くように繰り出される

回転斬り。それが一撃で、数体のトラウム

ソルジャーを粉砕した。更に……。

 

「まだまだぁ!」

ゼロワンは新たなプログライズキーを取り出す。

 

『ファイヤー!オーソライズ!』

 

そして、それをベルトに翳す。すると上空の

穴から虎が現れ、トラウムソルジャー数体を

その牙でかみ砕く。

 

「次だ!」

 

『プログライズ!』

 

キーを差し込むゼロワン。すると黄色い

鎧が分割、稼働し。その上に虎が分解して

再構成された鎧が合体する。

彼の体から火の粉が舞い散る。

 

『Gigant Flare!フレイミングタイガー!

 Explosive power of 100 bombs.』

 

炎を操る力を手にしたゼロワンは、その手

から炎を放ち、周囲のトラウムソルジャー

を灰に変えていく。

そして、粗方片付けたゼロワンは後ろに

振り返る。

 

「僕が道を切り開くから!皆は付いて来て!」

そう言って避難を促す。最初は皆戸惑ったが、

この状況から脱出したい彼等は、ゼロワン

の後に続いた。

 

ゼロワン・フレイミングタイガーの炎が

彼等の脱出路を切り開く。

 

 

一方、ジオウ(司)はと言うと……。

「はぁっ!」

ジカンギレードがベヒモスの表皮を切り裂く。

ベヒモスは、怒りを滲ませた咆哮を上げると、

ジオウを踏み潰そうとするが、肝心のジオウ

は軽やかなステップでそれを回避しながら

ジカンギレードでベヒモスを何度も斬り付け、

血を流させる。

 

とはいえ、腐っても上位の魔物であるベヒモス。

簡単には倒せない。加えて、司がライダー

システムで戦う事は、ある意味『弱体化』

しているような物、もっと言えば、

『手加減している』ような物なのだ。

司の場合、自分自身の力を解放した方が

圧倒的な強さを発揮出来るからだ。

 

しかし、今の司はジオウとして力を振るって

いた。例え手加減していたとしても、その

武器、ジカンギレードはベヒモスを傷付け

る事は可能だからだ。

「ふんっ!」

ジオウは足を切りつけると、後ろにいる

メルドたちの傍まで下がった。

 

「……こんな物ですか。かつて最強と

 言われた冒険者が勝てなかった、

 と言う魔物は」

これまでの戦いで、司はベヒモスの強さ

を分析していた。

 

「あ、あれが、司の言って居た、

 かめんらいだー、とか言う力なのか?

 ベヒモスをあぁも簡単に……!」

後ろで戦いを見守っていたメルドは

どこか興奮した様子だ。

しかしその横では光輝が静かに歯がみ

していた。

『何故だ。何で、新生みたいな奴が、

 あんな風に、仮面ライダーになって

 るんだよ。……勇者は、俺なのに』

 

絶体絶命的な状況の中、クラスの者達

を助けたのは、普段から周りと壁を

作って居る司と、周囲から見下されて

きたハジメだ。

それが今、仮面ライダーとなって

戦い、皆を守っている。

 

ハジメのゼロワン・フレイミングタイガー

の炎がトラウムソルジャーを溶かして

灰に変える。

司のジオウがベヒモスを抑え込む。

 

仮面ライダーという英雄の姿と力を

借りて、今、2人の男が戦っていた。

 

例え、他人から与えられたジョブが、

ありきたりな物だったとしても。

 

例え、周囲から疎まれる存在だったと

しても。

 

『本物の英雄』となる素質は、誰に

でもあるのだ。

 

そう、例えば。今のハジメのように。

 

『ズバッ!』

「ぐあぁっ!」

トラウムソルジャーの一太刀が、ゼロワン

の胸に命中し火花を散らす。

その攻撃を受けて一瞬蹈鞴を踏むゼロワン。

「このぉっ!負けるかぁっ!」

だが、ゼロワンは自分を鼓舞するように

叫び、アタッシュカリバーに炎を

纏わせ、炎の斬撃波を繰り出す。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

ハジメのポテンシャルは、まだまだだ。

決して高くは無い。仮面ライダーという

力に支えられているが、技術や経験が、

戦士として圧倒的に劣っていた。

だから攻撃を貰ってしまう。火花が

散る。

 

しかしそれでも、ゼロワンは足を止めない。

 

ハジメは、マスクの下で荒い呼吸を繰り

返しながらも、決して弱音は吐かない。

 

なぜなら、その弱音が、後ろに続く者達の、

『絶望』となるからだ。

 

「仮面ライダー、なめんなぁっ!」

 

ハジメは、ゼロワンは、雄叫びを上げながら

突き進む。前へ前へと。

 

そして、その背中を追う者達。

そんな中で一部の者達は、ハジメの背中に、

ゼロワンの背中に見惚れ、そして、

思って居た。

 

『これが英雄の背中なのだ』と。

 

 

一方の司、ジオウは未だにベヒモスと

対峙していた。すると、ベヒモスの

頭部が音を立てて赤熱化した。

「何!?何だあれは!」

これに戸惑うメルド。

 

大勢の生徒達とアランを筆頭とした騎士

達はハジメに続いていたが、メルドたち

一部の騎士は、退くことを渋った光輝を

説得しようとして、光輝や雫、香織たち

と橋の中央に取り残される結果となって

しまったのだ。

 

このままでは不味い。

そう考えたメルド。だが……。

 

「ほう?それが貴様の本気という奴か」

肝心のジオウ、司は微塵も恐れて等

いない。むしろ、僅かに興味を持った

程度だった。

「ならば、こちらも1段階、力を

 上げるとしようか」

 

そう言って、彼は新たなウォッチを

取り出した。それを片手で回転させ、

スターターを押し込む。

 

『ファイズ!』

 

電子音声が響き渡る。

 

「フォトンブラッドの猛毒。果たして

 貴様に耐えられるか?」

ジオウ(司)は、静かに問いかけながら、

ファイズライドウォッチをD’3スロット

へと装填し、ベルト上部のスイッチ、

『ライドオンリューザー』を押して

ベルトのロックを解除。傾いたベルトを、

右手の親指の力だけで押して回転させる。

 

すると……。

 

『ライダータイム!仮面ライダージオウ!』

 

先ほどと同じ変身時の音声が流れる。

だが、それだけでは無い。

 

『アーマータイム!』

直後、ジオウの前に『仮面ライダー555』

を模したアーマーが現れた。ジオウは

そのアーマーの肩に手を置いた。

 

直後、アーマーが分解され、ジオウの

体に装着された。

 

『コンプリート!ファイズ!』

 

ジオウの顔の文字が、ライダーから

ファイズへと変化する。

 

こうして、ジオウは新たに、

『ファイズアーマー』を纏った。

 

「なっ!?何だあれは!?」

後ろでは、仮面ライダーを知らない

メルドが戸惑っている。

しかしジオウはそれを無視して、

ファイズフォンXを取り出す。

そして、彼はコードを打ち込む。

 

『レディ!ショットオン!』

 

すると、彼の手に、かつて仮面ライダー

ファイズが使っていた物とよく似た

武器が展開される。

 

その時、頭部を赤熱化させたベヒモス

がジオウ目がけて突進してくる。

「危ないっ!」

後ろにいた香織が叫ぶ。

 

狭い橋の上を一直線に向かってくる為、

飛ぶ事でも出来なければあれを避ける

事は出来ない。

また、避けたとしても、それは後ろ

にいる香織や雫達の死を意味する。

だから……。

 

「ふんっ!」

 

ジオウ・ファイズアーマーは大きく

跳躍し……。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

右腕に力を込め、それをベヒモスの頭部

に叩き付けた。そして……。

『ドゴォォォォンッ!!!!』

 

ベヒモスの頭を橋に叩き付けた。

 

激突時の爆音が響き渡り、逃げていた

生徒達も一度足を止めて後ろに振り返って

しまう。

 

地に顎を着ける結果となったベヒモス。

更に今の衝撃の為か、橋に亀裂が走り

始めた。

『決着を急ぐべきか』

 

そう考えたジオウは、再びファイズフォン

Xを操作する。

 

『レディ!ポインターオン!』

 

すると、彼の右足に新たな武器が展開される。

ジオウはベヒモスから距離を取り、メルド

や光輝達の傍に着地する。

「……すぐにけりを付けて後ろの

 退路を確保する。もう少し大人しく

 していろ」

「ッ!?」

『守ってやる』と言わんばかりの発言に

光輝の表情が歪む。だが、ジオウはそれを

無視して、ベルトのジオウライドウォッチ

のスターターを押し込んだ。

 

『フィニッシュタイム!』

 

更にファイズライドウォッチの方も

押し込む。

 

『ファイズ!』

 

そして、ジオウはライドオンリューザーを

押してベルトのロックを解放。

左手でベルトを一回転させると、腰を

落とした姿勢から跳躍。

ベルトから右足の武器に向かって

流れるラインの上をエネルギーが

駆け巡る。

 

そして……。

 

『エクシード!タイムブレーク!』

 

頂点まで達したジオウは、両足を

揃えた姿勢で突き出した。すると、

赤い円錐状のエネルギーが右足の

武器、『ポインター555』から放たれ、

ベヒモスに命中。その動きを封じる。

 

「はぁっ!」

そして繰り出される一撃必殺のキック技。

 

円錐へと飛び込んだジオウ。そして

必殺技、『エクシードタイムブレーク』は

ベヒモスの体を貫通してしまった。

奴の背後に着地したジオウ・ファイズ

アーマー。

 

直後、ベヒモスは技によって分子構造を

分断、破壊され、粒子となって消滅して

しまうのだった。

 

その光景に唖然となるメルドたち。

そこに歩み寄るジオウ、ファイズ

アーマー。

その時。

『バシュバシュ!』

ジオウが手にしていたファイズフォンXが

火を噴き、彼等の後ろに迫っていた

トラウムソルジャーを撃ち抜いた。

慌てて振り返り、それを確認するメルド達。

 

「呆けている場合ですか?まだ後ろに

 敵の群れがいるんですよ?」

そう言いながらも、ジオウは敵を

次々と撃ち殺していく。

 

「どうやらゼロワン達は階段の元に

 たどり着いたみたいですね」

「何っ!?」

振り返り、遠くを見ると、確かに

僅かだが、階段の下にクラスメイト達

や騎士達の姿が見えた。

 

そして、時間は少しばかり遡り……。

 

「ッ!抜けたぁぁぁぁっ!」

 

ハジメ、ゼロワンを先頭に、生徒達と

騎士達は無事、トラウムソルジャーの

包囲網を突破した。

ゼロワンは振り返り、最後尾の生徒達の、

更に後ろに跳躍すると、後ろから追って

来るトラウムソルジャーを火炎で

焼き払う。

 

『よし。皆はとにかくここまで来れた。

 ここなら敵は一方向からしか来ない。

 あとは、メルドさん達や天之河君

 たちだけだ』

そう考え、ゼロワンは騎士アランの方

に振り返る。

 

「アランさん!ここは頼みます!僕は、

 残ったメルドさん達を助けに行きます!」

 

そう言うと、ゼロワンは新たなプログライズ

キーを取り出した。

 

『ウィング!オーソライズ!』

 

すると、ファルコンが新たに現れた。

キーをベルトに装填するゼロワン。

 

『プログライズ!』

 

そして、ファルコンがゼロワンに合体する。

『Fly to the sky!フライングファルコン!

 Spread your wings and prepare for a force!』

 

ゼロワンは、飛行能力を持った『フライング

ファルコン』へと変化した。

 

「はっ!」

そして、彼は高く飛び上がった。ファルコン

の力を持つ、今の形態だからこその能力だ。

 

そして彼はトラウムソルジャーの群れを

無視してジオウとメルド、香織達の元へと

向かった。

 

ジオウはファイズアーマーのまま、ファイズ

フォンXでトラウムソルジャーを蹴散らす。

と、その時。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

速度を乗せて放つゼロワンの体当たりが

トラウムソルジャーを蹴散らす。

 

「な、南雲!?」

彼の登場に、光輝達が戸惑う。

しかしゼロワンはそれを無視してジオウ

の傍に立つと、すぐにアタッシュカリバー

を構える。

 

「ジオウ!」

 

ジオウは、すぐにその意図を理解し、自分

もジカンギレード・ジュウモードを

取りだし、ベルトからファイズライド

ウォッチを抜き取り、ギレードの

スロットへと装填した。

 

『フィニッシュタイム!』

 

次の瞬間、ジカンギレードから電子音声と

待機音声が鳴り響く。

ゼロワンも、バイティングシャークの

プログライズキーを取り出し、

カリバーに装填する。

 

『Progrise key comfirmed. Ready to utilize!』

 

『シャークズアビリティ!』

 

ゼロワンもまた、必殺技の用意をする。

「……私が先に」

「OK!」

短い意思疎通をするジオウとゼロワン。

そして……。

 

『ファイズ!スレスレシューティング!』

 

ジュウモードのギレードから放たれた

赤いフォトンブラッドの光弾が、次々と

トラウムソルジャーを灰に変えていく。

そして、ジオウの必殺技が撃ち終わった

直後。

 

「もう一発!」

ゼロワンが更に放つ。

 

『バイティングカバンストラッシュ!』

 

サメのヒレ型のエネルギーによって

作られた刃が、トラウムソルジャー

をバラバラに切り裂いた。

そして、橋の上を覆い尽くさんばかり

だったトラウムソルジャー達は、

たった2人の男たちによって殲滅

された。

 

そして……。

メルド達は歩いて橋を渡った。

「……これが、かめんらいだーの

 力か」

ポツリと呟くメルド。

 

すると。

「そうだ。……元々、仮面ライダーは

 作られた存在に過ぎない。

 それは虚像だった」

ジオウ、司が答えた。

 

「だが、その虚像を再現する事が出来れば、

 それはもはや『虚像』ではない。

 それは、『本物』となる」

 

静かに呟くジオウ。

 

彼は自分自身の体を見つめる。

 

 

神へと至った存在によって、虚像の

英雄は、『本物』となってトータス世界

に現れた。

 

これは、異世界でのちょっとしたIFの

物語。

 

    IF ライダー編 第1話 END

 




元々随所にライダーネタをぶち込んでいましたし、って事で書いたIFです。

これからもちょくちょく書いていくかもしれないので、よろしく
お願いします。

感想や評価、お待ちしています。

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