ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今回は長いです。オルクスでの戦いは、殆ど入ってます。
そして同時にこの回から原作ブレイクです



第4話 オルクスの激闘と月下の告白

~~前回のあらすじ~~

異世界トータスへとやってきてしまったハジメや

司。そしてハジメは、非戦闘職の錬成師に

なってしまう。周囲に笑われた彼を見て、司は

戦闘用強化外骨格、ジョーカーシリーズの

開発に着手し、ハジメと開発をしていく。

そんな中、彼らは訓練の一環としてオルクス

大迷宮へ挑む事になるのだった。

 

 

~~~

オルクス大迷宮。

 

それは全部で100層からなる迷宮である。

迷宮内部に出現する魔物は、階層を降りていく程

強力になる。

しかしそれは逆に、階層毎に魔物の強さを

測りやすい、と言う事でもあった。それもあり、

オルクス大迷宮は新兵の訓練や冒険者の

腕試しに最適とされていた。

 

また、魔物にはその力の核となる『魔石』を

内包しているのだ。この魔石は魔法陣を

描く際の触媒としての力もある。迷宮の

魔物は地上の魔物よりも良質な魔石を

生み出す事から、それを売って金に

しようと考える冒険者達も集まってくるのだ。

 

 

そしてハジメや私達は、その大迷宮の

側にある冒険者のための宿場町、『ホルアド』

へとたどり着いた。外は既に暗く、今日は

王国直営の宿屋で一泊し、明日から迷宮へと

潜るのだ。

 

幸運な事に、私はハジメと相部屋だった。

彼以外に親しい友人は、男では居ないし

女性では香織か、せいぜい雫くらい。

メルド団長の計らいかは分からないが、

ありがたいものだ。

 

私達は、互いの武器や戦闘時における

コンビネーションを話し合っていた。

 

ちなみに、今のハジメの頭の中には

本物の軍隊式の戦闘技術が入っている。

遠征が伝えられた日の夜、私の力で知識を

ハジメにダウンロードしたのだ。

 

「いよいよ、明日は実戦ですね。ハジメ」

「うん。そして、僕のジョーカー0と

 司の、えっと、ジョーカーZだっけ?」

「はい。私の専用機です」

「そうそれ。……僕達のジョーカーの

 初陣になるんだよね。……大丈夫、かな?」

「……ハジメ」

「あ、えっと、ごめん。司の作った

 ジョーカーを疑う訳じゃないんだけど……」

「いえ。お気になさらず。……本格的な

 実戦は、これが初めてです。恐れるな、

 と言うのも無理な話です」

と、私がハジメの言葉に頷いたとき。

 

「ん?」

私はこちらに近づく気配を感じた。

「あれ?司?」

ハジメが私に声を掛けたとき。

『コンコンッ』

ドアがノックされた。

もう既に遅い時間帯だ。私達は

若干怪訝そうな表情を浮かべた。

念のため外の人物をスキャンした。

そしてすぐに、安全だと理解した。

 

「南雲くん。起きてる?白崎です」

最初は檜山辺りか、と思っていたが、

やってきたのは香織だった。

私はハジメに目配せをした。それに

従い、扉を開けるハジメ。

 

そして扉の外に立っていたのは、

純白のネグリジェにカーディガンを

纏っただけの、少々、いやかなり

扇情的な格好の香織だった。

 

「……なんでやねん」

ハジメも、ツッコみの癖である

関西弁でツッコんでいる。

 

結局、その後香織を部屋に招いたハジメ。

そして私は備え付けられていたお茶を

出した。

「では、私は外に居ます。少ししたら

 戻ってきますので……」

私とて、他人の密会を邪魔する程無粋

では無いし、分からない程朴念仁では

無い。なので退室しようとしたのだが……。

 

「あ、待って。出来れば、その、新生くん

 も居て欲しいの」

「私も、ですか?」

「うん。お願い」

そう言われると仕方ない。

私もハジメの近くに腰を下ろした。

 

「それで、白崎さん。話って?」

「うん。実はね。南雲くん、明日の迷宮、

 南雲くんは行かずに街で待っていて

 欲しいの!皆には私から話すし説得も

 するから!だから、お願い!」

 

と、興奮気味に懇願する香織。しかし、これでは

まるで戦力外通告だ。

「香織、お言葉ですが、ハジメは

 ジョーカー0のパイロットとして

 優秀です。周りの足を引っ張るとは

 思えませんが……」

と、私はフォローを入れた。

 

「ううん!違うの!そう言う意味で

 言ってる訳じゃないの!……夢をね、

 見たの」

「夢、ですか?」

私が問いかけると、香織は静かに

頷いた。

 

「その夢の中で、南雲くんが居たの。

 でも声を掛けても全然気づいてくれなくて。

 走っても全然追いつかなくて。

 それで最後は……」

「最後は?」

 

「……消えてしまうの」

香織は、今にも泣き出しそうな表情で

そう呟いた。

 

 

私は、その話を黙って聞いていた。

するとハジメは、彼女に守って欲しいと

頼んだ。そして更に、話は続き、香織は

中学の時、ハジメを見かけていた事を

話した。

 

何でもハジメは、不良に絡まれている子供と

おばあさんを助けるために公衆の面前で

土下座をし、ジュースを掛けられようと

その姿勢を崩さなかったと言う。

 

やはり、簡単に戦争をするなどと言う

輩よりハジメの方がよっぽど信頼出来る。

香織も、ハジメの心の強さを称えていたが、

全くその通りだと私も無言で頷いていた。

 

香織は、ハジメを守ると言った。

ならば、友人として私がやるべき事は

一つ。

 

「安心して下さい、香織。私も

 ハジメの事を守りましょう。

 それにジョーカーを纏った私達

 二人なら、きっと大丈夫です」

 

「ありがとう新生くん。心強いよ」

 

その後、私達3人は少しばかりの雑談を

してから、香織は部屋を後にした。

 

……しかし、私は気づいていた。

外の通路にある、檜山の気配。そして

立ち位置的に、奴は部屋から香織が

出て行くのを見ていただろう。

 

奴の事だ。まず間違い無くハジメか

私を、いや、十中八九ハジメを恨む

だろう。

 

遠征の際、何かを仕掛けて来るか?

いや、訓練とは言え実戦。奴もそこまで

バカでは無いだろう。

 

と私はこの時思って居た。

 

しかし、この時はまだ、私の考えが覆る事を、

檜山がどうしようも無いバカである事を、

知らないのだった。

 

そして、夜。眠るとき。

「司」

「ん?何ですか?」

「僕さ、変わりたいってさっき思ったんだ。

 だってさっきのやりとり、完全に

 あべこべだったし。普通は男が女の子を

 守る~とか言う場面だよ、絶対。

 あれじゃあ僕がヒロイン扱いだよ」

「……無能と罵られる事からの脱却、

 ですか?」

「うん。僕に何が出来るかは分からないけど、

 明日は一生懸命、精一杯戦うつもり。

 ……出来るかは、分からないけどね」

と言って、ハジメは苦笑を浮かべる。

「ハジメ。今の貴方にはジョーカーの力が

 ある。そして私も居る。大丈夫です。

 所でハジメ、もし香織がピンチになったら、

 あなたは彼女を守りますか?守りたいと

 思いますか?」

「そりゃ、まぁね。あんな事言われちゃったし、

 まさか僕みたいな人に憧れてる、なんて

 白崎さんから言われちゃったら、男して

 頑張るしかないって」

そう言って、ハジメは笑った。

 

それを見て、私も……。

「その覚悟があれば、きっとハジメは

 強くなれるはずです。ジョーカーが、

あなたの思いを力にしてくれるはずです。

明日は、共に戦いましょう、ハジメ」

「うんっ。改めてよろしくね、司」

互いに、微笑を浮かべながら頷くと、

私達は眠りについたのだった。 

 

 

そして翌朝。

オルクス大迷宮の前の広場に、メルドや

光輝、香織達が集まっていた。

周囲には他の冒険者たちの姿もあるが、

彼らの中でも一際目立つ存在が二人居た。

 

白に赤のラインが入ったジョーカー0こと

ハジメと。

黒に紫のラインが入ったジョーカーZを

纏った私だ。

ちなみに、ジョーカーZとは0との

差異として腰部背面に細いコードの

ような尻尾があり、先端は鋭く

尖っている。言わば、テールスピア、とでも

呼べる装備だ。

今の私達はヘルメットも装着し、さながら

ファンタジー世界に迷い込んだSF世界の

兵士のように、はっきり言って浮いていた。

 

「な、なぁ司。僕達って、浮いてる?」

「それはそうでしょう?ファンタジー

 世界に機械のパワードスーツ。

 浮かない方がおかしい」

と、浮世離れした二人だった。

 

やがて、彼らは迷宮の入り口に向かった。

しかしそこはRPGゲームのような物とは

違い、賑わっていた。

 

入り口には受付があり、そこで入った人間の

記録を取るようだ。死者の数を正確に把握

するためのようだな。

そして、その入り口近くでは、まるで縁日の

ように多数の露天が並び商売をしていた。

 

ちなみに、迷宮に入ろうとしたとき、

スタッフの女性が怪訝そうな顔をしたので、

私とハジメが一旦ヘルメットを取ると

驚かれると言う一幕があったのだった。

 

そしていよいよ迷宮に入る。しかし中は

思いのほか明るかった。

聞いた話によれば、緑光石という鉱石が

あり、光を放っているようだ。おかげで

ランタンの類いが必要無いらしい。

 

まぁ、ジョーカーシリーズは暗視ゴーグル

の機能を実装しているから、例え暗くても

何の問題も無い。

 

そして、ドーム状の部屋にたどり着くと、

まずは天之河たちがラットマンという

人型のムッキムキなネズミと戦った。

……どうやったらあんな魔物が

誕生するのだろうか?などと思って居ると、

ラットマン達は天之河たちによって

倒された。

ちなみにこの時、雫は私が渡したヴィヴロブレード、

『青龍』を使って居た。

ラットマンなど、まるで紙を裂くように切り裂いていく。

ちなみに名前は雫が付けた物だ。

 

その後は、交代制で魔物と戦いながら

階層を降りていった。

そして、10層目にたどり着いた時。

「よぉし!じゃあ次!前衛に

 新生と南雲!」

「はい」

団長に呼ばれ、私とハジメは前に歩み出る。

「んじゃあ、ここからはお前等の番だ。

 で、お前等武器はどうした?」

「ご心配なく。今創ります」

そう言って私は指を鳴らした。

 

すると、空中に武器が次々と創られた。

 

まず、黒い大型のバトルライフル、『タナトス』。

これには炸裂弾が弾丸として使われており、

理論上、並の魔物ならば一発で破壊出来る威力だ。

反動は、通常のアサルトライフルと比べものに

ならないが、だからこそのジョーカーである。

ジョーカーの反動抑制システムによって、

高い命中率と威力を両立している。

 

次の、サブウェポンの黒いリボルバー、『トール』。

これもタナトスと同様の炸裂弾を使用しており

威力は同等だ。

 

トールを右足のホルスターに収め、タナトスの

マガジンを左腰側面のスロットの中から取りだし

装填。ボルトを引き、初弾を薬室に送り込んだ。

また、腰元背面には電動鋸のように回転する

刃を持ったナイフ、『セベク』を装備

していた。

 

互いを見合い、頷く私とハジメ。

「準備完了です」

「お、おぉ?そうか?」

と頷くメルド団長。しかし団長を

始め、同行している騎士の人達は

初めて見る銃器に驚いていた。

無理もない。

 

そして、私達は歩き出した。

 

数分後。

「ラットマンの群れだ!新生、南雲!」

メルド団長が叫んだ。

私とハジメは団長の前に出て、タナトスを

構える。

「何をっ!?」

銃を知らない団長には、私達の行動が

理解出来なかったであろう。

しかし、彼の言葉は洞窟内に響いた銃声で

かき消された。

 

『バンッ』

甲高い破裂音が響いた。

『ドパンッ!』

かと思うと、一匹のラットマンの

胴体から上が吹き飛んだ。

 

『バンッ!バンッ!ババンッ!』

洞窟内に、タナトスの銃声が響き渡り、

そのたびにラットマン達が砕け散っていく。

そして、1分もすれば全てのラットマンを

射殺した。

 

「……クリア」

「了解。ふぅ~」

私が呟くと、ハジメは息をつき私達は

タナトスの銃口を下ろした。

「メルド団長、終わりました」

私が振り返ると、メルド団長や騎士達が

耳を両手で押さえていた。

「お、終わった、か?」

「はい。もう終わりました」

そう言うと、団長達は耳から手を離し、

驚いた様子でタナトス、そして

ジョーカーを見つめている。

 

「こ、これが、新生殿が創り出した

 と言う……」

「何て力なんだ」

と、ジョーカーの力に驚いていた。

その後は、メルド団長が咳払いをした事で

皆我に返り、再び移動を開始した。

 

その道中。

「むっ。十字路か」

十字路にさしかかった。

「不味いですね団長。ここは直進ですが、

道が狭いですし、ここは縦列で移動する

しかありません。通過中に左右から襲われる可能性も」

「あぁ、そうだな」

どうやら、通過中に襲われる事を

危惧しているようだ。

 

「メルド団長」

その時、私は声を掛けた。

「良ければ皆の移動中、私とハジメで

 左右の道を警戒しますが?」

「いやしかし、大丈夫か?」

「このスーツは暗闇でも良く見える

 機能があります。それにこのタナトスならば、

 この階層の魔物でも一撃で倒せる

 でしょう」

「……分かった。では頼む」

 

「はい。ハジメ」

「うん」

「私がまず最初に左の通路を警戒します。

 サムズアップしたら移動して

 右を。安全を確認したらメルド団長に

 サムズアップで合図を。団長はそれを

 合図に移動を開始して下さい」

「分かった」

「では……」

 

そして、まずは私が移動する。

 

十字路の左側の壁に身を寄せ、

反対側を警戒しつつ、身を翻し

左側の通路に銃口を向ける。

敵影は……。無し。

「クリア」

 

『グッ』

それを確認した私は小さく呟きながら

左手でサムズアップを示す。

「合図です。じゃあ、次は僕が行きます

 から、合図をしたら行って下さい」

「あぁ」

 

次に、ハジメが掛けてきて私と同じように

反対側の通路を確認する。

「クリア」

ハジメはそう呟き、銃を右手で持ったまま

左手でサムズアップをする。

「よし。今のうちだ!二人が左右の通路を

 抑えている内に進め!」

メルド団長の声に従い、皆が縦列に

なって進んでいく。

 

そして、生徒達の列が通り過ぎようと

した時だった。

「敵発見!ラットマン複数!迎撃します!」

ハジメの叫びが無線機から聞こえ、タナトスを

撃つ発砲音も聞こえた。

そして、私の方にもラットマンの群れが

向かってきた。

「こちらも同じく。迎撃開始」

 

『バンッバンッ!』

私とハジメがタナトスを撃つ。幸いにして

狭い通路を一直線になって突進してきた為、

すぐに沈黙させる事が出来た。

 

「……クリア。ハジメ、そちらは?」

「こっちもクリア。後続無し」

無線でやり取りをしながらも私と

ハジメは通路へ警戒を続けていた。

しかしこの時、私達の背中を

女子達が頼もしそうに見ていたのを、

私達自身は知らなかった。

 

 

その後、何とか無事に20層まで到達する私達。

メルド団長の話では、ここでの訓練が

終わったら、今日は終わりとなった。

その前の小休止、と言う事で私達は

近くの岩に腰を下ろし、ハジメは

ヘルメットを取った。

 

そんなハジメに、私は水筒を差し出した。

「お疲れ様です、ハジメ」

「あぁ、ありがとう司」

礼を言って水筒を受け取ると、ハジメは

ラッパ飲みのように水を流し込んだ。

「ふぅ~~。分かっては居たけど、

 何というか、疲れると言うか、その……」

「初めての実戦です。緊張しているのでしょう」

「うん、そうかも。……それにしても、

 すごいね。このタナトス」

「一発一発が、命中時に爆発する炸裂弾です。

 しかし、これが効かなければ別の武器を

 用意しようと考えていました。杞憂に

 終わり幸いです」

と、会話をしていたのですが、視線に気づいて

そちらを向けば、香織がこちらを。いや、

ハジメを見ていた。

 

……。昨日の事も考えると、香織はハジメに

気があるのだろうか。

まぁ、他人の恋路に口出しなどしない。

恋は人それぞれ。誰が誰を好きになるか、

それは当人たちの問題。私が口を出す

事では無い。

 

そう思い、私は水筒の水を飲む。

が、その時、殺気を感じ私はすぐに

視線の主へ睨みをきかせた。

すぐに視線を逸らす主、檜山。

やはり奴か。あの視線からして、やはり

昨夜、香織が部屋から出て行く所を

見ていたのだろう。

 

まぁ良い。いざとなれば……。

そう考え、私はもう一度水を飲むのだった。

 

その後、私達は20階層の最深部まで向かっていた。

21階層へ続く階段の所までたどり着けば

今日の訓練は終了のようだ。

 

今は、鍾乳洞のような地形の場所を歩いていた。

と、その時。

急に前方を歩いていたメルド団長や天之河たちが

立ち止まった。

どうやら魔物のようだ。

そして、前方でカメレオンの擬態能力を持った

ゴリラの魔物、ロックマウントが現れ、天之河

たちと戦闘を開始した。

しかし、この慣れない足場に上手く立ち回れ無い

ようだ。そして……。

 

『グゥガァァァァァッ!!』

ロックマウントの固有魔法、威圧の咆哮だ。

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃぁっ!?」

これを喰らうと、しばし体が硬直して動けなくなる。

そして、前衛の坂上、天之河、雫がこれを

喰らってしまった。

一瞬、ロックマウントが前に出るだろうと

考えた私は、皆の頭上を飛び越え、前に出た。

しかし、肝心のロックマウントは後ろに

下がった。

何故?と思った次の瞬間。

 

ロックマウントは近くにあった岩を

見事な砲丸投げのフォームで後衛、香織達の

方へと投げた。

頭上を飛び越える岩。

『バンッ!』

『ドバンッ!』

二発目を警戒し、そのロックマウントを

撃ち殺す。そして、投げられた岩に

狙いを定めた時、私も一瞬驚いた。

 

投げられたのは、岩、ではなく岩に擬態

していたロックマウントだったのだ。

ロックマウントは両手を広げ、何やら

血走った目で彼女達に迫った。

香織や、後衛の『中村恵里』、『谷口鈴』が

短く悲鳴を上げた。

 

その時。

「うぉぉぉぉぉっ!!」

ジョーカー0、ハジメが壁を蹴る三角飛びの

要領で、ロックマウントと3人の間に割って入った。

そして、右足のホルスターからトールを抜き、

構えるハジメ。

そして……。

「喰らえっ!!」

『ドンドンッ!!』

2発。ハジメが撃ち込んだ。それを喰らって

ロックマウントは砕け散り、ハジメは壁にぶつかって

地面に落下した。

「うっ、ってて」

頭を抑えながら立ち上がるハジメ。

「南雲くん!大丈夫!?」

「う、うんっ。大丈夫。咄嗟だったから

 受け身も取れなくて……」

「良かった。怪我がなくて。

 ありがとう」

と、優しく声を掛ける香織。

 

ジョーカー0は、見た目傷もない。

咄嗟にジョーカーZのディスプレイの

ハジメのフィジカルデータを呼び出すが、

異常は無し、大丈夫なようだ。

 

そう考えながら、ロックマウントを更に

撃ち殺していく。

その時……。

 

「貴様ら……よくも香織たちを……許せない!」

そう怒りを露わにする天之河

この程度で何を怒って居るんだこのバカは。

などと思って居ると、奴はもっと

バカな行動に出た。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ。≪天翔閃≫!」

「何っ!?」

これには私も驚き、慌てて飛び退きながら、

他の皆をドーム型結界で守る。

 

そして、放たれた光の斬撃が残っていた

ロックマウントを撃破、更に奥の壁を

破壊した。

それを見て、光輝はスマイルと共に

振り返ったが……。

「バカですかあなたは」

「え?」

まず真っ先に私はバカな勇者にそう言った。

……何かもう、バカ過ぎて名字を呼ぶのも

億劫になりました。

 

「あなた、ここをどこだと思って居るんです?

 地下ですよ地下。開けた場所ならまだしも、

 こんな狭い場所であんな大技。天井が

 崩れる可能性を考えなかったのですか?」

「うっ、そ、それは……」

「新生の言うとおりだ。気持ちは分かるが、

 もう少し周囲の状況を見てから繰り出す

 技を決めろ。良いな?」

「は、はい。申し訳ありませんでした」

 

がっくりと項垂れる光輝。その時。

「あっ。あれ、何かな?キラキラしてる」

ん?

香織が、今の攻撃で壊れた壁の方を指さして

いる。私やハジメ、他の皆が彼女の

指さす方向へと目を向ける。

そこには、綺麗な水晶のような物が壁から

生えていた。

後ろを振り返れば、女子達がどこか

うっとりしている。

「あれは……。宝石の原石か何かですか?」

私は側に居たメルド団長に問いかけた。

 

「あぁ。あれはグランツ鉱石と言って

 大きさも中々で珍しい。女性に送る

 アクセサリーとして人気らしいぞ。

 俺はその辺、疎いんだがな」

と言って苦笑する団長。

「素敵」

後ろで、香織がそう呟いた。すると……。

「だったら俺等で回収しようぜ!」

突如、後ろから檜山が現れ、そう言って

壁に生えたグランツ鉱石に向かって登り始めた。

団長が止めるが、あのバカは止まらない。

 

大方、香織に送って良いところを見せよう

と言う魂胆だろう。

しかし、そんな珍しい物が、こんな浅い層に?

 

そう思った時、嫌な予感がした。

一瞬迷う。タナトスで檜山を撃ち落とすべきか?

その考えを、私は一瞬迷った。そして、それが

仇となってしまった。

「ッ!?団長、トラップです!」

 

トラップを見抜くアイテム、フェアスコープで

鉱石の辺りを確認していた騎士団員が叫ぶ。

が、一歩遅かった。

 

鉱石を中心に魔法陣が広がり、あの転移の日の

ように、私達を飲み込んだ。

 

そして、一瞬の浮遊感。私は体勢を整え

着地し、すぐにタナトスを構えて周囲を

警戒した。

 

そこは、巨大な石造りの橋の上だった。

手すりも縁石もない橋の上に、皆がいた。

そして、この状況。進むには前か後ろしか無い。

こんな場所で挟まれたら、最悪だ。

 

「お前等、すぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。

 急げ!」

団長の言葉に、生徒達はオタオタともたつきながら

立ち上がり、上に向かう階段の方へと向かった。

しかし、そう簡単にはいかない。

状況は、挟撃という最悪の事態へと突入した。

 

階段側には大量の魔物が。そちらに向かう私達の

背後には、逆に巨大な魔物が一匹現れた。

 

そして、私は前後を警戒している中、メルド

団長のつぶやきを聞いた。

 

「まさか……。ベヒモス、なのか……」

 

 

私は、後方のトリケラトプス似の怪物、

ベヒモスの危険性を、メルド団長の様子から

察知した。そして、私はすぐさまハジメの

元に駆け寄った。

彼もまた、ベヒモスを前に硬直していた。

「ハジメッ!」

すぐさま彼の肩を両手で掴むと、ハジメは

ようやくこちらを向いた。

この時ばかりは、焦りから普段よりも

声が大きくなる。

「つ、司……?」

 

「ハジメ、聞いて下さい。奴の危険度は

 かなりの物です。今すぐ、ここから

 脱出します。私があの怪物を

 押しとどめるので、ハジメはあっちの

 骸骨兵士を――」

と、言いかけたところに……。

『グルァァァァァァァァッ!』

ベヒモスの咆哮が響いた。

 

それによって我に返ったメルド団長が

矢継ぎ早に指示を飛ばす。

だが、肝心のバカ勇者は撤退を拒否

している。あのバカ……!こういう時は

戦う云々言うより、年長者、経験者の

言う事を聞くべきだろうに!

 

「ハジメッ!あなたは、前方の骸骨兵士を

 排除して下さい!」

「ッ!?司は、どうするんだ!?」

「私は、ベヒモスを倒します。

 このままでは、前後を挟まれ慣れていない

 皆がパニック状態になる。

 何としても、避けなければ……!

 ……頼めますか?ハジメ」

 

「ッ」

私の言葉に、ハジメは息をのむ。

だが……。

「あぁ、あぁ!やってやる!今の

 僕には、司がくれたジョーカー0が

 あるんだ!だから今、怖いけど、

 僕は戦う!」

そう言って、叫ぶハジメ。

私は、マスクの下で彼の勇気に笑みを

浮かべた。

「ハジメ。これを」

そう言って、パチンと指を鳴らすと、

タナトスとも、いや、実弾銃とも

違う武器が具現化した。

 

それはレーザーライフル『アテン』。

銃口のパラボラのような部分から

熱エネルギーを照射し、物体を

溶かす光学兵器だ。

これを使うには、ジョーカーシリーズの

ジェネレーターと直結しなければ

ならない。

 

「私がベヒモスを倒します。ハジメは

 奴らを」

「うん。分かった」

私の言葉に、ハジメは右手首にある

コード式コネクターをアテンに

接続しながら答える。

 

そして、私達は互いを見てうなずき合うと、

それぞれが逆方向に向かって駆け出した。

 

~~~

ベヒモスは、結界、『聖絶』が阻止しているが、

その迫力は経験の無い、つい最近まで

一般人であった彼らには、到底耐えられる物

ではなかった。

今は隊列も忘れ、がむしゃらに戦っている

生徒達。

 

そんな中、一人の女生徒が後ろから突き飛ばされて

しまう。彼女が視線を上げれば、一匹の

骸骨兵士、『トラウムソルジャー』が剣を

振り上げていた。

『死ぬ』

女生徒がそう思った時。

 

「やらせるかぁぁぁぁっ!!」

『ヴヴヴヴヴヴッ!!!』

横合いから黄金の光が照射され、トラウムソルジャー

の上半身を溶解させた。

そして、ハジメは倒れていた彼女の元に

駆け寄ると手を差し出した。

「大丈夫!?立てる!?」

「あ、う、うん」

彼の手を取り、立ち上がる彼女。

「よしっ。じゃあぁ、ウォォォォォォッ!!!」

次の瞬間、ハジメは雄叫びを

上げながら襲い来るソルジャーにアテンの

レーザーを照射しながら横へ振り、数十体を

ぶった切る。

 

その姿を、女生徒は見つめていた。

 

ハジメは、普段からやる気がなさそうで、

オタクで、男子からは特に毛嫌いされていた。

なのに、今はこうして、誰よりも戦っている。

こんな状況の中で、彼女は、彼の背中を

頼もしそうに見つめていた。

 

そして、肝心のハジメは周囲を見回す。

周囲では、生徒たちがバラバラの状態で

戦っていた。騎士達は必死に混乱を

収めようとしているが、殆ど意味を

成していなかった。

 

誰かがこの混乱を収めなければ。

その思いが、ハジメの中に生まれた。

もし、ここにジョーカー0が無ければ、

ハジメは光輝を頼っただろう。

だが、今のハジメは違う。今の彼には、

司から、次元を超越した王から

与えられた、鋼鉄の鎧が……。

 

ヒーローのように白と赤に彩られた

ジョーカー0があった。

 

そして……。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

ハジメは生徒達の先頭目がけて跳躍。

着地するとアテンで横薙ぎにソルジャー達を

なぎ払った。

 

その姿に、パニック状態だった生徒達は皆

ジョーカー0の真っ白な背中を見つめた。

その時。

 

「みんな聞けぇ!」

彼は、スーツに内蔵されていたスピーカーを

ONにした。

「後ろでは、今司がベヒモスと戦っている!

 司なら、ベヒモスを何とかしてくれる!

 だから前だけを見て、僕についてこい!」

『ファサァッ』

と、その時、ハジメのジョーカー0の

首元から、深紅のマフラーが生まれた。

 

それは、ハジメの何気ない趣味から

生まれた物だった。

 

正義マフラー、とでも言うような物への

憧れ。それがカッコいいと思って居た

ハジメの、ちょっとした遊び心を聞いて

司が付けた物だ。

 

その深紅のマフラーが、風に揺れてたなびく。

「僕が……」

 

『僕がやるしか無いんだ!司に言った

 じゃないか。この力で、誰かを守れる

 気がするって!だから!だから!

 僕が……』

 

「僕が道を切り開く!このマフラーを

 目印にして、付いてこい!!」

 

これまでの彼らしからぬ言動に、

皆が呆然となる。

 

と、そこに更にトラウムソルジャーが

召喚され、ハジメに向かっていく。

「危ないっ!」

さっき助けた少女が叫ぶ。

ソルジャーの一体が剣を振り上げる。

 

だが……。

『ガキィィンッ!』

ハジメはそれを、ジョーカー0の

左腕で防いで見せた。

 

「なめるなっ!このジョーカー0は、

 司が僕にくれた、僕だけの、切り札だぁぁ!」

ハジメは叫び、左腕を振って剣を弾くと、

力一杯、その左腕でソルジャーを殴りつけた。

『バキバキバキッ』

木の枝が折れるような音と共に、ソルジャーが

粉砕される。

 

「みんな、僕の背中を見て、付いてこい!

 生き残る為に戦え!うぉぉぉぉぉっ!」

ハジメは、アテンでソルジャー達を撃破

しながら突撃していく。

 

「ッ!そうだっ!皆南雲に続け!

 訓練を思い出せ!ここを突破するぞ!

 南雲に続けぇぇぇぇっ!」

「「「うぉぉぉぉぉぉっ!」」」

ハジメの雄志を前に、騎士アランが

生徒達を鼓舞し、騎士達がハジメに

続く。

 

 

一方、司の方は………。

 

時間は、司とハジメの二人が別れた所まで

遡る。

 

~~~

ハジメがトラウムソルジャーを相手にしていた時。

ベヒモスと対峙していたのは、メルド以下、

聖絶を展開している騎士数人と、あの駄々っ子の

バカ勇者を始めとした4人だ。

 

未だに駄々をこねる光輝と言い合うメルド。

聖絶は未だに保っているが、いつまで保つかは

分からない。

なので、私は聖絶を超えるように跳躍。

聖絶とベヒモスの間に着地した。

丁度、奴はこちらに突進しようと

後ろに下がっていたときだった。

 

「ッ!?新生くん!?」

「何っ!?新生!?」

私に気づいて香織が驚き、バカ勇者も私に

気づいた。

「何をしているんだ新生!下がれ!」

バカ勇者が叫ぶ。と、その時ベヒモスが

突撃してくる。

「危ないっ!」

香織が叫んだ。だが、この程度……。

 

「むぅんっ!」

力を込め、紫色のドーム結界を創る。

ベヒモスとドームが激突し、爆音が

響き渡る。

しかし、ドームには傷一つ付いていない。

 

ベヒモスがうなりながら後ずさりする。

私は、その隙を見逃さずにベヒモスの

胴体下まで一気に滑り込んだ。

そして、トールを抜き……。

 

『バンバンバンバンバンバンッ!』

一気に6発全弾を奴の腹にたたき込んだ。

『グルァァァァァァッ!?!?!?』

苦悶の悲鳴を漏らしながらも、ベヒモスは

私を押しつぶそうと体を橋の上に

沈み込ませた。

私は素早く脱出し、聖絶の前まで後退した。

 

しかし、炸裂弾を6発腹に喰らっても

生きているベヒモス。正直驚かされる。

だが……。その動きは鈍っていた。

今はヨロヨロと立ち上がろうとしている所だ。

ならば……。

 

私は、右手を前に翳した。

 

すると、右手の装甲が変形を開始した。

手甲が大型化し、右手全体を覆い尽くす。

 

そして、私の右手は黒い巨砲と化した。

 

「な、何だありゃぁ!?」

それを見て坂上が叫ぶ。

「馬鹿でかい、槍、か?」

同じように、メルド団長が呟く。

 

しかしこれは槍では無い。

そんなレベルの物ではない。

 

『背部ラジエータープレート、展開』

 

『ガコンッ!』

思考による命令を受け、ジョーカーZの

背面装甲が真ん中から外側に向けて開き……。

『バシュッ!』

内部からワニの背鰭のような放熱板、

ラジエータープレートを展開する。

 

『エネルギーチャージ開始』

『キュィィィィッ』

甲高い音と共に、右腕の巨砲、G・キャノンに

エネルギーがチャージされていく。

と、同時に余剰エネルギーを逃がすために

背面のラジエータープレートが赤く輝き

始める。

 

『テールスピア、及び脚部固定パイル、

 セット』

更にテールスピア、足先に内蔵されていた

パイルで石橋に突き刺し体を固定する。

 

そして、エネルギーチャージをしていると……。

 

『グ、グルァァァァァァァァァァッ!!』

咆哮を上げながらベヒモスは立ち上がった。

そして、奴は私を睨み付ける。どうやら

私を相手と定めたようだ。更にベヒモスは

咆哮を上げ、角から音を立て赤熱化させつつ、

とうとう頭全体をマグマのように煮えたぎらせ

ながら、突進してきた。

 

「それが、貴様の本気か。……だが……」

 

『エネルギーチャージ完了』

その文字が内部ディスプレイに映し

出されていた。

 

これは、私のオリジナルが獲得した力を、

私サイズで再現する為に創り出した物。

まだ機械的システムを用いた再現では、

この大きさと数秒のチャージ時間、

体の固定を要する。

 

しかし、それでも威力は自由に調整

出来る。そして今打ち出すのは、あの時、

夜の街を真っ赤に染めた一撃と同出力。

 

「私の方が、もっと強いぞ」

 

そう言った次の瞬間。

 

『ドンッ!』

文字通り、大気が震えた。

 

紫色の光の奔流が、ベヒモスへ向かっていく。

 

『ジュッ!!!!!』

そして、一切の抵抗も回避も防御も許さず、

ベヒモスはその光の奔流、『熱線』に

飲み込まれ、跡形も無く消滅した。

 

ベヒモスの消滅を確認した私は、右手を

元に戻しプレートを収納。テールスピアと

パイルを抜き取り、振り返った。

 

そして振り返れば、団長やバカ勇者たちが

驚いた表情をしていた。

いつの間にか天絶も消えていた。恐らく

効果の持続時間が切れたのだろう。

「メルド団長、終わりました」

「あっ、なっ、なっ」

どうやら、私がベヒモスを倒した事に

理解が追いついて居ないようだ。

 

「何をボサッとしているのですか?

 今の状況をお忘れですか?」

「ッ!?あ、あぁすまん。余りに現実

 離れした状況に我を忘れてしまった。

 よしっ!全員急いで階段に向かうぞ!」

「「「はいっ!」」」

彼の言葉に騎士たちが頷く。

 

だが……。

「あっ!?ねぇあれ!」

雫が何やら私の後ろを指さした。

見ると、後方に大量の魔法陣が現れ、

そこからトラウムソルジャーの大群が

現れた。

 

「クソッ!?ベヒモスだけじゃねぇのかよ!」

憎たらしげに吐き捨てる坂上。

しかし、ベヒモスに比べれば……。

私は、再びタナトスを創り出した。

 

「殿は私が。皆は早く後退を」

そう言いながらタナトスを撃つ。

「あぁ、分かっ――」

と、団長が言いかけたとき。

「待てっ!新生を置いて先になんて

 行ける訳がない!俺も戦う!」

などと、このバカ勇者は言い出した。

「なっ!?光輝、良いから早く後退

 するんだ!新生なら大丈夫だ!」

「だからって、新生一人を置いて何て!」

「誰が置いて行くなんて言ってるのよ!

 早く行くわよ!」

「いや、僕も新生と一緒に戦う!

 僕は、勇者なのだから!」

「へっ。なら俺も手伝うぜ光輝」

 

メルド団長と雫が説得しようとするが、

更に坂上までそんな事を言い出した。

 

ちっ、脳筋とバカ勇者が……!

「状況に酔ってんじゃないわよバカ共!」

雫も二人を怒鳴り出す。

しょうが無い。

 

「『良いから退け。隣に居られると、

  集中力が鈍る』」

技能、絶望の王の威圧感を持って二人に

プレッシャーを与えた。

ガクガクと体を震わせる二人。

よし、これで良いだろう。

「雫。メルド団長。あなた達の方が

 まだ現実を見ている。早くその

 バカ二人を連れて下がれ。殿は

 私がやる」

「うん!ありがとう新生!」

「すまん!頼むぞ!」

 

雫は、私に礼を言うと二人の腕を退き

走り出した。その去り際、二人は奥歯を

かみしめるように、悔しそうな表情を

していた。同じように下がるメルド団長を

後目に、私は新たなトラウムソルジャーを

撃ち殺していく。

 

 

~~~

そして、ハジメ達はと言うと……。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

『ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!!』

アテンでハジメが道を切り開く、騎士や

前衛職の者達がそれを押し広げていく。

そして……。

「ッ!抜けたぁぁぁぁっ!!」

ハジメがソルジャーの海を抜け、

更に騎士達や生徒達がそれに続いた。

 

そして、ハジメが奥を見れば、そこには

ベヒモスの巨体など、無かった。

「み、皆見ろ!ベヒモスは司が

 やってくれた!」

消滅したベヒモスが、先ほどまで立っていた

地点を指さし叫ぶハジメ。

 

ベヒモスが倒れていると言う事実に、

生徒達の高揚感が一気に増す。

「あとは、メルド団長や天之河くん

 達が戻ってくればそれで万事

 解決だ!アランさん、ここは任せます!」

「何!?南雲、お前はどこへ!?」

「司やメルドさんと合流して、助けます!」

「南雲……!」

 

その時、騎士アランははっきり言って驚いていた。

ハジメの持つ勇気にだ。

皆を励まし、ソルジャーの群れを突破し、

なお戦おうとしているのだ。

影ながら無能と罵られていたハジメが、

である。

その姿勢にアランは感銘を受けた。

「良いだろう!ここは任せて存分に暴れてこい!

 前衛組はソルジャーを近づけるな!

 後衛組は前衛組を支援!」

アランが指示を出し、ハジメは

トラウムソルジャーの上を跳躍。

その頭を踏み砕きながら司達の元へと向かった。

 

「走れ走れぇっ!」

メルド達は、前方のソルジャーを

倒しながら階段へと向かっていた。

そして後ろを見れば、大多数のソルジャーを

相手に一人戦っている司のジョーカーZの

姿があった。

 

その時。

「メルドさん!みんな!」

彼らの前にハジメのジョーカー0が現れ、

セベクでソルジャーの一体の頭を

かち割った。

「南雲!?お前どうして!」

驚く光輝。

「皆はもう階段の前までたどり着きました!

 アランさんが指揮を執ってます!後は

 僕達だけです!」

ハジメは叫びながらアテンでソルジャーを

なぎ払う。

「ッ!そうかぁっ!」

その報告に、メルドは笑みを浮かべた。

 

『全く、何て奴らだよ!お前達は!』

今、メルドの脳内には戦うハジメと司、

二人の事が浮かんで居た。

『お前等の力もそうだが、色々考えて

 動いていやがる。今なら、お前等二人の

 方が勇者だって言われても信じられそうだ!』

 

と、その時、メルドは後方の司の銃声が

近づいてきている事に気づいた。

 

振り返れば、司はいつの間にか、百を軽く

超えるソルジャーをたった一人で抑えていた。

「ちっ!?まだ来やがるか骸骨共!」

舌打ちするメルド。それを見たハジメは……。

「メルドさん!僕から一つ提案が!」

そう言って、彼は素早くメルドに作戦を耳打ちする。

 

「ッ!待て!それじゃお前達が!」

「もちろん僕と司がある程度下がってから

 です!それに、ジョーカーの脚力なら

 何とかなります!だから大丈夫です!」

そう言って、ハジメはサムズアップする。

「お前……!よぉし!分かった!

 帰ったら俺が何か奢ってやる!だから

 死ぬなよ!」

 

メルドの言葉にハジメは頷き、彼は

無線機に呼びかけた。

「司!今の話聞いてた!?」

「えぇ。聞こえていました。私も

 その提案に乗りましょう」

「じゃあ、まずは皆の道を開くよ」

「了解っ」

 

頷くと、司は跳躍しメルド達の

前まで飛ぶ。そして司はハジメと並び、

二人ともタナトスとアテンを構える。

『ドドドドドドッ!』

フルオートで放たれる炸裂弾が。

『ヴヴヴヴヴヴヴッ!』

アテンから放たれる高熱の光が、次々と

ソルジャーを打ち倒していく。

「す、すごい……」

 

そんな二人の背中を見ていた香織が呟く。

 

と、その時、ソルジャーの壁の中に一本の

道が出来た。

「よしっ!みんな先に行って!僕と司も

 すぐに追いつくから!」

「あぁ!行くぞ!」

彼の声に従い、メルド達は駆け出す。

狭まろうとする壁を、後ろからの二人の

射撃が阻止し、メルド達と光輝たちは、

無事にアランたちと合流した。

 

「団長!ご無事ですか!」

「あぁ!あの二人のおかげでな!

 それよりお前等!後衛組は今すぐ

 遠距離魔法を準備!目標は後方

 ソルジャー集団!魔法の一斉攻撃で

 橋を落とすぞ!これで最後だ!

 気張れお前等っ!」

 

メルドのかけ声に従い、後衛職の者達が

準備を始める。

 

 

しかし、この時、彼らのあずかり知らぬ所で

バカが動き出そうとしていた。

 

檜山だ。

 

檜山は、一刻も早くこの状況から逃げ出したかった。

この事態を引き起こした責任など、考えても

居ない。速く逃げたい、それだけを考えていた。

 

しかし、ここで檜山の中に憎悪が生まれていた。

 

そう、司が感づいていたように、あの日檜山は

香織を目撃し、後を付けていきハジメの部屋を

出入りするのを見ていたのだ。

檜山は、ハジメが自分より無能だと思って

疑っていない。

 

だが、香織に好意を持たれ、今もクラスメイトの

危機に獅子奮迅の活躍を見せたハジメに対し、

筋違いな怒りと憎悪を募らせていた。

無能だと見下していたハジメの活躍。そして

今も香織は、ソルジャーを蹴散らし、戦う

ハジメの背中を見つめている。

 

それが檜山には許せなかった。

 

そして、バカはバカ故にバカな行動を起こす。

 

今、攻撃魔法を雨あられのように放とうと

している。

 

上手くやれば、ハジメと、あわよくば目障りな

司も排除出来る。

 

バカな、そんな考えに薄暗い笑みを浮かべていた。

 

矮小な自分では、王の命を絶つことなど出来もしない、

などとは、一切考えずに。

 

 

~~~

私とハジメが戦っていた。そして後ろを

見れば、既に他の皆は階段側へと抜けていた。

「ハジメ、ここはもう大丈夫です。私達も

 撤退しましょう」

「うん!」

最後の攻撃、と言わんばかりに私達は

前の敵に攻撃をたたき込んだ。

そして、ソルジャーの海の中に

道が出来た。

私達は階段の方へ目がけて駆け出した。

 

ホルスターからトールとセベクを抜き、

至近距離の敵を撃ち、切り裂きながら

進む。

 

そして、直後に攻撃魔法が雨の如く

私達の背後に降り注ぐ。

このままなら、行ける。

 

ハジメも、私も、一瞬そんなことを考えていた。

 

だが……。

 

『クンッ!』

 

突然の事だった。

「何っ!?」

一発の火球が、突如コースを変えて私の前に

着弾した。

咄嗟に私はドーム結界を張り、防ぐ。

そして、すぐさま皆の方を向き、その動向に

注意を向ける。

 

「司っ!」

その時、ハジメが私に気づいて足を止めた。

そして……。

『バンッ!』

「うわっ!?」

私と同じように、ハジメの足下に火球が落ちた。

しかしジョーカー0を纏っていたおかげで

僅かにフラついただけにとどまるハジメ。

 

そして、私は今の攻撃の主を見つけた。

檜山だ。

 

バカで不良だと思って居たが、こんな状況で

ここまで出来るとは。

はっきり言って、殺意がわいてくる。

 

だが、今はそんな場合では無い。

『バキバキッ!』

後ろの方から、石橋が壊れる音が聞こえてきた。

どうやら、熱線を使ったのは不味かったようだ。

熱で強度が落ちていたのだ。

「ハジメ!走れ!」

「う、うん!」

私は叫ぶ。崩れる石橋の上に、私とハジメの

ジョーカーが全速力で疾走する。

そして……。

 

『ガラガラッ!』

石橋が崩れそうになる。

「飛べえぇっ!」

その時、メルド団長の叫びが聞こえた。

次の瞬間には、私とハジメは飛んだ。

 

一瞬、世界がスローモーションになる。

前方の橋も崩れ、崖になる。

『ガッ!』

その崖に、私に右手が引っかかった。

 

だが……。

『スカッ!』

あと少し、の所でハジメの腕が、届かなかった。

皆が、一瞬絶望にも似た表情を浮かべる。

だが……!

 

『ガッ!』

落ちていこうとするハジメの腕を、

私の左腕が捉えた。

 

「つ、司っ!」

「ふぅ……」

息を吸い込み、私はハジメを引き上げる。

「おい!無事か!二人とも!誰か手を貸せ!」

メルド団長が率先して私の腕を掴み、更に

騎士アランたちも協力し、二人は

崖の上に引っ張り上げられた。

 

息をつき立つ私と、地面に四つん這いに

なっているハジメ。

「ハァ、ハァ、し、死ぬかと思った」

やがて、呼吸を整えた。そして彼が

視線を上げれば皆がハジメを見ていた。

「あっ、えっと……」

 

立ち上がりながらも言葉に詰まるハジメ。その時。

「お前等っ!良くやったぞ!」

突然メルド団長がハジメと私の肩に

手を回した。

「わわっ!メルドさん!?」

「まさかベヒモスを倒した上、こうやって

 一人も死なせずに生きてるとはなぁ!

 奇跡だ奇跡!」

あれだけ絶望的な状況の中、それを打開した

獅子奮迅の如き活躍に、どうやらメルド団長は

気分が高揚しているようだ。

 

「だ、団長。我々はまだ迷宮の中ですよ?」

「っと。そうだった。お前等。急いで

 ここから出るぞ」

と言って周囲を見回すが、生徒達の大半は

床に座り、かなり疲れている様子だ。

 

……仕方ない。

「メルド団長、少し良いですか?試して見たい

 事があるのですが」

「ん?まぁ、別に構わないが」

「ありがとうございます」

 

そう言うと、私は右手の指でパチンと

音を鳴らした。

静かな空間に音が響いていく。

 

しかし……。妙だ。

 

今の技は、音の反響、エコーロケーション、反響定位

の応用で迷宮全体の大きさや内部構造を測る物だ。

しかし、最下層の100層目より、更に『下』がある

ように思えるが……。

 

が、今は考えている暇はない。幸いにして、

第1層入り口付近の座標と、現在地の座標は

確認出来た。

私はスッと、眼前に右手を掲げる。

「むぅん……」

 

そして、力を込める。

 

すると、空間その物が、グニャリと歪む。

これには、皆驚いている。

「つ、司っ!?何やってるの!?」

流石のハジメも驚いているようだ。

「空間のショートカット、まぁ

 ワープとか転移の類いです。

 ここと、第1層入り口近くの場所

 を繋げました。この歪みの通れば、

 向こう側は入り口です」

と、言ってみた物の、皆物怖じしている。

すると……。

「よ、よしっ!じゃあ僕が!」

と言う事で、まずはハジメが慎重に

ゆがみの中へ、手、足、体の順番で

入って行った。

 

そして、歪みの向こう側へと消えたハジメ。

しかし数秒後。

そこからハジメの、正確にはジョーカー0

の頭がぬっと出てきた。

皆がギョッと驚く。

 

「大丈夫だよみんな!普通に通れたから!」

 

と言う事で、メルド団長達のあとに香織や

勇者たちが続き、皆が向こう側へと

くぐり抜けると、私も歪みを通って

第1層に出た。

 

たどり着けば、皆が皆ぽか~んと

した表情で周囲を見回していた。

「こ、ここは間違い無く第1層。

 ハハッ、正しく神の使徒って感じだなぁおい」

と驚いているメルド団長。

 

ともあれ、ここまで戻ってくれば安全だろう。

 

ならば……。私はすぐに行動に出た。

『グイッ!』

「えっ?うわっ!!」

『ドンッ!』

ぽか~んとしていた檜山の

襟首を掴み、壁に叩き付ける。

 

皆がその行動に驚きこちらを向く。

「て、テメェ!いきなり何しやが――」

『ジャギッ』

刃向かおうとする檜山に、私はトールの

銃口を突き付けた。

「何を?だと。それはこちらの台詞だ。

 檜山」

「な、何をしているんだ新生!」

咄嗟に叫ぶ勇者。しかし無視だ。

 

「檜山、貴様だろう。撤退中に私とハジメの

 前に火球を落とした犯人は」

その言葉に、皆が目を見開く息をのむ。

「なっ!?何だよそれ!しょ、証拠

 でもあるのかよ!」

「あぁ。あるとも。ここに」

そう言って、私はヘルメットのこめかみを

左手でトントンと叩く。

 

「このヘルメットにはカメラが内蔵されており、

 録画機能を有している。私の力でPC

 とスクリーンを作れれば、今ここで

 証拠の映像をここに居る全員に

 見せても良い。証拠は、私の眼前で

 突如として軌道を変えた火球による

 攻撃があった事。そして、貴様の放った

 2発目の火球がハジメの眼前に落ちる 

 所を押さえた、映像データだ」

「ぐっ!?」

「幸いだったのは、貴様が私とハジメの

 二人を狙い、二度攻撃した事だ。

 流石に一度目の攻撃は予想外だった。

 だが、直後に魔法を放とうとしていた

 全員を見て、放たれた魔法を見て

 理解した。あの時、追尾性の火球を

 放ったのは、檜山。貴様一人だけだ。

 ありがたい事に貴様が放った攻撃は

 二つとも全く同じ物だった。だからすぐに

 分かったよ。あの攻撃の犯人は、

 貴様だと、な」

「ま、待て新生!仮にそうだったとしても、

 動機は何だ!それが分からなければ……!」

と、詰め寄るバカ勇者。まぁ、今ばかりは

こいつの言い分も正しい。しかし動機など、

わかりきった事。

 

「動機、か。まぁおおよその見当は付く。

 まず何よりも貴様が行いたかったのは、

 香織の親しい私達二人の排除、でしょう」

「え?ど、どういう、事?」

と、驚き戸惑う香織。この際だから、

言っておくか。

「香織、あなたは気づいていないようですが、

 あなたは学校でも1、2を争う程の美女です。

 そしてクラスメイトであるこの男にとって、

 ハジメとは自分より劣る無能、とでも考えて

 いたのでしょう。が、香織は普段からハジメ

 と親しげに話していた。この男は恐らく

 心の中で、『無能のハジメと香織が親しげに

 しているのが許せない。ハジメよりも

 自分の方が香織に相応しい』、とでも

 考えていたのでしょう」

「な、何を証拠にそんなデタラメ!」

咄嗟に叫ぶ檜山。

「日頃の貴様の行いを見て、精神的な

 プロファイルを行えば、簡単に分かる。

 貴様の行動ははっきり言って感情的。そして

 猪突猛進型。加えて自分の行動全てが正しいと

 思い込む、典型的な自己中心的思考。先日貴様は

 ハジメからジョーカー0を奪おうとした。

 恐らくは、それを纏い自らが活躍し、

 香織に良いところを見せるため。そして

 あのトラップであるグランツ鉱石に手を出した

 のも、アレを見て素敵と言った香織に

 プレゼントし、少しでも彼女の気を引くため。

 ……違うか?」

「そ、それはテメェの思い込みだろうがっ!」

「まだ否定するか。では更に……。

 貴様にとって、香織の側に居るハジメ。そして

 ハジメに力を与える私は邪魔な存在。

 自分こそが香織の側に居て当たり前だ、とでも

 考えているのだろう。だから彼女の側に居る

 ハジメが許せなかった。そして橋を落とす為

 に魔法をいくつも打ち出すと言う事態に、

お前はある行動に出た。それは魔法の誤爆を

 装いハジメと私を橋から落とす事。無数の

 魔法が飛び交う中で、あの火球を放った。

貴様の属性の適正は風魔法だったな?だから

貴様は思ったのだろう。『無数の魔法が

飛び交う中で、適正以外の魔法なら、バレる

可能性は無い』とでもな。

そして貴様は計画を実行に移した。 

 全ては、香織の近くに居るハジメを排除し、

 あわよくば彼女の隣に立つために、な」

「そ、そんな事の為に?」

そう、香織が呟いた。

 

「貴様のこれまでの行動は、はっきり言って

 欲望に正直過ぎる。大方、このチャンスを

 生かそうと考えた内なる自分に従い、

 あの攻撃を起こした。そんな所だろう」

「ち、違う!俺じゃねぇっつってるだろうがっ!」

 

「知っているか檜山。人間図星を言われると

 焦り、怒り、汗を掻き、視線が周囲に泳ぐ。

 そのどれも、先ほどから貴様の行動に合致

 する。……基本的な心理プロファイルの

 技術だ。私で無くとも、その道の技術を

 学んだ者なら、誰でも分かる」

そう言って、檜山に銃口を突き付ける私。

 

今の奴の態度が、全てを如実に物語っていた。

 

私の言っている事が真実だと、周囲の

皆も思い出したようだ。

 

「最低。そんな理由で、南雲君を殺そうと

 したって訳?」

雫が、侮蔑的な表情で檜山を睨む。

ハジメに助けられた女子、『園部 優花』を

始めとした生徒達が檜山を睨み付けている。

「男として、いや、人間としての

 良識を疑うぞ」

更にメルド団長や騎士達も檜山を

侮蔑的な目線を向けている。

 

檜山は、取り巻き3人の方へと視線を

向けるが、あの事態を招き、剰え

ソルジャー突破に尽力したハジメを

殺そうとした彼を庇うことは、

クラスメイト達やメルド団長達に

悪い印象を持たれ、最悪周囲から

孤立する可能性もある。

取り巻き3人に、そこまでして檜山を

庇う友情など無いのだ。

 

周囲の視線が檜山に突き刺さり、逆に

男子生徒の数人はハジメに声を掛けた。

「その、南雲。悪かったな。この前とか」

「え?」

「今日、俺らお前に助けられた訳だし。

 無能とか言って、悪かった!すまん!」

そう言って謝る男子が数人。

あの時のハジメの行動は、英雄的と呼べる

物だった。

吊り橋効果、と言う奴だろう。あの時のハジメの

活躍を見て、誰が無能だなどと言えるのか。

そして対照的に、あのような事態を招き

更にハジメを排除しようとした檜山への

クラスメイトの視線は、冷徹の一言に

尽きる物だった。

 

その時。

「クソッ!クソクソクソッ!クソがっ!!

 ふざけやがって!無能の分際で!」

檜山はハジメを睨み付けながら咆える。

「何でテメェが白崎の隣に居るんだよ!

 無能の南雲でも良いのなら、俺だって

 良いじゃねぇか!」

……。何を根拠にすればそんな考えに

行き着くのか、疑問だ。

奴の言葉に、皆戸惑う。当然だ。

どう考えても自分本位の考え。それに

納得など出来る物か。

「それが、いっちょ前にヒーロー気取りで

 調子に乗りやがって!俺は、俺は

 間違ってねぇ!」

 

がむしゃらに叫ぶ檜山に、全員の視線が

冷たい物になる。

ここまで来ると哀れだな。いや、この

男に哀れみなど不要か。

「良いか檜山。良く聞け。貴様のその

 腐った魂とウジの沸いた脳みそに

 よく刻んでおけ。香織が誰の隣に

 立つのか、誰と親しくなるのか、誰を

 想うのか、その全ては彼女自身が決める事。

そしてハジメは今日、戦い大勢の人間の命

を守った。貴様が無能と罵っていたハジメと

貴様では、『魂の格』が違う。今の貴様の

方が、よっぽど無能だ」

何故か、香織云々で勇者が頷いていたが

とりあえず無視しておく。

 

そう言うと、私はハジメの方に視線を向けた。

「ハジメ。どうする?私としてはここで

 こいつを始末していた方が良いと思うの

 だが?」

そう言うと、場が凍り付いた。

「ま、待て新生!殺すって本気で言っている

 のか!?確かに檜山はあんな事をした!

 だが殺すのはやり過ぎだ!」

「そうか?ならば精々、豚箱にぶち込んでおく

 べきだろう。あの時の檜山の行動は、

 どう考えても殺人未遂罪だ。更に短絡的な

 行動で全体を危険に晒した。戦争において、

 一人の行動が全体の危機を招き、全滅に

 追い込む恐れすらある。殺さない、と言う

 のならせめて二度とこんなバカな真似が

 出来ないよう、豚箱にぶち込んでおくべきだ。

 それに、こいつの性格を考えればまず間違い無く

 私やハジメを逆恨みする。……戦争をしようと

 言うのに、下らない私情で足を引っ張られたは

 敵わない。個人的に言って、こいつは処分

 するべきだろう」

「な、何を言ってるんだ新生!クラスメイトだぞ!?」

「クラスメイトだから殺すなと?

 こいつはそのクラスメイトであるハジメを

 殺そうとした。そして、私はあの日言った」

 

私は檜山にトールを突き付けながら語る。

「撃って良いのは撃たれる覚悟がある者だけ。

 殺して良いのは殺される覚悟がある者だけ。 

 そしてこいつはハジメを殺すために動いた。

 私は今さっき、こいつに友人諸共殺され掛けた。

 ここで私に殺されても、文句を言われる

 筋合いは無い」

そう言うと、私は引き金に指を掛けた。

 

その時。

「待って司!」

ハジメの声に、私は引き金から指を

離した。

「確かに、檜山のした事は許せない。

 でも僕はこうして生きている。

 だから、僕も今だけは見逃す」

「……今だけ、と言うのは?」

「今日ばかりは見逃す。でももし、

 また僕や司を殺そうとしたら、

 僕が撃つ……!」

微かに手を震わせながら、ハジメは

そう言った。

 

「なっ!?南雲まで何を言ってるんだ!

 殺人なんて良い訳ないだろう!?」

後ろで何かバカが喚いているが、まぁ

良いだろう。

「……」

私は無言でトールをホルスターに戻した。

「一番の被害者であるハジメがそう言うの

 なら、私も良いでしょう。だが、私も

 ハジメと同じだ」

そして、私はメット越しに檜山を

睨み付ける。

 

「分をわきまえろ。次、もしハジメや

 私、或いはその友人に手を出したら、

 例えハジメが許しても、誰が庇おうと、

 容赦なく射殺する。『次は無い』と、

覚えておけ」

 

「新生!君まで何を言ってるんだ!

 殺人なんて!」

「……これから戦争をする者の言葉とは

 思えないな。我々はここで戦争の

 訓練をしていたのだぞ?ならばどうせ、

 いずれこの手は血に汚れる。それが

 遅いか早いか、それだけの事だ」

「檜山は敵、魔族じゃない!仲間だろ!?」

「仲間?こんな身勝手な輩が仲間か。 

 なら勇者光輝、あなたが檜山を説得

 しておけば良い。二度とこんなバカな

 真似はするな、とね。私はごめんだ」

 

私が言うと、勇者はこちらを睨む。

が。

「おいおいお前等。いい加減にしろ。

 俺もお前等もクタクタだろう。とりあえず、

 宿に戻るぞ」

と言うメルド団長の声に従い、皆が

大迷宮を後にした。

 

~~~

そしてその帰り道、一人歩く檜山に誰かが

声を掛ける事は無かった。

だが、一人の女が、まるで獲物を見つけた

肉食獣のように、獰猛な笑みを

浮かべながら檜山を見つめていた。

 

その後、宿屋に戻ったハジメと司は、

食事が終わると部屋に直帰し、ハジメは

ベッドにダイブした。

「ア゛~~。疲れた~~」

「お疲れ様ですハジメ」

枕に顔を埋め気だるげに呟くハジメ。

司はベッドに腰を下ろしながらも疲れて

居る様子はなかった。

 

「……司は、疲れてる?」

「いえ。レベルとかが色々限界突破

 してるので、そこまでは」

「ははっ。だよねぇ、司はオール

 インフィニティだし」

「ですが、今日の戦いでのハジメの

 活躍も大きい。もはや、誰がハジメを

 無能などと罵れますか」

 

「うん。そう、だよね。……その、

 恥ずかしいけど、こんな事出来たのも

 司のおかげだしさ。……ありがとう、司」

「いえ。お気になさらずに。ハジメが無事

 なら、私もそれだけで嬉しい」

との言葉に、ハジメは顔を赤くするの

だった。

 

しかし、その時誰かがドアをノックした。

 

~~~

私とハジメが話をしていると、誰かの気配が

廊下を歩いていた。そしてその人物は

私達の部屋の前で立ち止まり、扉を

ノックした。

「ん?は~い」

とハジメが返事をする。

 

「あ、あの。白崎です。入っても良い、かな?」

「え?えぇ、どうぞ~」

昨日と同じようなシチュエーションにハジメは

戸惑いつつも香織を招き入れた。

 

そして、香織は先日と同じ格好だった。

 

「だからなんでやねん」

と、静かにツッコむハジメ。

 

やがて、私は茶を淹れると部屋から退室しようと

したのだが……。

「あっ。新生くんも、居て。お願い」

……いや、ここは普通二人っきりになる

雰囲気でしょう。

と、言いかけたが、何やらハジメも一人

では緊張するのか、一緒に居て、と言わん

ばかりの目をしていた。

 

二人は、しばし沈黙していた。私は側で

じっとしていた。やがて……。

「あ、あのね。南雲くん。私、南雲くんに、

 その、謝らなきゃいけないって

 思って、来たの」

「へ?あ、謝るって、白崎さんが?

 僕に?」

その言葉に、ハジメは私の方を向く。

いや、しかし……。

「失礼ですが、香織は何を謝ろうと?」

思い当たる点で言えば、転移トラップの

一件だろうか?

確かに香織はあれを素敵、と言って

それを聞いた檜山が暴挙に出た。

しかし宝石を前にした女性だ。

致し方ない。

あれは100%檜山が悪い。

 

しかし、香織の謝りたいのは別の事だった。

俯きながらも静かに語り出す香織。

「私、南雲くんに守るって約束したのに、

 結局、私は何も出来なかった。

 ロックマウントの時も南雲くんに

 助けられて、あの橋での時だって、私は

 何も出来なかった。新生くんがベヒモスを

 倒して、南雲くんは皆を助けて。それに、

 逃げるときも二人に助けられて……。

 私って、ダメだなぁ」

 

ッ!視線を上げた時、香織はその目に涙を

溜めていた。

「ごめんね、私弱くて。結局、二人に

 いっぱい助けられちゃったね」

その時、私は何故香織が泣いているのか、

理解出来なかった。

しかし……。

「そんな事ないよ」

「え?」

ハジメが香織の言葉を否定した。

「僕は、白崎さんが弱いなんて思わない。

 だって、白崎さん言ってくれたじゃない。

 僕を守る、って。誰かを守るなんて、

 簡単に言える事じゃないと思うんだ。

 僕も、今日戦ってみて分かった。

 後ろに皆がいる。だから負けられない

 って言うプレッシャー。僕はそれを、

 司がくれたジョーカー0を纏っていた

 から、負けずに戦えたんだ。それに、 

 司がいなかったらきっと僕は錬成師

 として戦いに参加して、きっと何の

 役にも立てなかったと思う」

「……」

その言葉を、私は黙って聞いていた。

今は二人だけの世界にしよう。

そう思い、私は極力気配を消した。

 

「それに、白崎さん言ってたじゃない。

 単純な力だけが強さじゃない。

 優しさとかも力だって。だから、かな。

 僕を守るって言ってくれたあの時の

 白崎さんは、その、輝いて見えた、

 と言うか、その……」

ハジメは顔を赤くし、言葉を詰まらせている。

「んんっ!と、とにかく!」

あっ、咳払いして誤魔化した。

「僕は、白崎さんは十分強いと思うよ。

 昨日白崎さんが言ったように、立ち向かえる

 事や誰かを思いやれる人が強いって事なら、

 僕の事を気に掛けて、守るって言ってくれた

 白崎さんも十分強いって思うよ!」

「ッ」

ハジメの言葉に、香織は頬を赤く染め僅かに

目を見開く。

 

すると、香織は再び俯き震えだした。

「え?あ、あれ!?白崎さん!?」

少し慌てた様子で彼女の側に寄るハジメ。

すると……。

『バッ!』

「へ!?」

何と香織がハジメを抱きしめた。

 

「し、白崎さん!?にゃ、にゃにを!?」

あっ、舌噛んでる。

「ありがとう、南雲くん」

「え?えぇ?」

「私、迷宮から帰って来て、悩んでたんだ。

 守るって言ったくせに結局守られてる

 自分って何なんだろうって。やっぱり

 私は弱いままなのかなって。でも、

 南雲くんが強いって言ってくれたのが、

 嬉しくて……」

ハジメを抱きしめ、涙ながらに笑みを

浮かべる香織。

 

しかし……。

肝心のハジメはワナワナと震え顔を

真っ赤にしていた。よく見ると香織の胸が

ハジメの胸に当たっている。

ここは一つ、ハジメに助け船を

出すべきか。

「んんっ」

気配を戻し、咳払いをすると、二人はビクッと

体を震わせて私の方を見た。

「やはり私は席を外すべきだったのでは?」

と言うと……。

「き」

「き?」

き?きとは何だろう。木の事だろうか。

等と思っていた時。

「きゃぁっ!」

『ドンッ!』

「なんでやねんっ!」

小さな悲鳴と共に香織がハジメを突き飛ばし、

ハジメはツッコみながら倒れた。

 

「……。ハジメ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫」

床の上に倒れているハジメを見下ろしながら

問うと、答えるハジメ。しかしその顔は今も

真っ赤だ。

「ハジメ、顔が茹で蛸みたいになってますよ」

「……。お願いだから見ないで」

私の言葉に顔を背けるハジメだった。

 

それから数分後。

「ごご、ごめんね南雲くん!あの時は、その、

 そう!気が動転してたというか、

 動揺していたと言うか……。その……」

「だ、だだ、大丈夫ダイジョウブ!

 全然!全く!ダイジョウブ!」

香織もハジメも、二人とも顔を真っ赤に

しながら会話している。

と言うか二人とも、テンパりすぎである。

 

「と、とにかくさ!僕は、あの日、守って

 くれるって言われて、嬉しかったんだ。

 だから僕も白崎さんを守ろうって思って

 ジョーカー0を着て頑張って――」

「え?今、私を守ろうって……」

 

「「…………」」

ハジメの話で二人は沈黙しながらまた顔を

真っ赤にしている。

成程、『砂を吐く』ような状況とはこう言う状況を

言うのだろうか。

……ブラックコーヒーが飲みたい。

 

「あ、ありがとうね南雲くん。その、

 これからも、守って、くれる?」

「も、もちろんだよ!白崎さんみたいな

 綺麗な人を守れるのなら、男として本望っ!

 ってあ!」

「「…………」」

 

どっちもどっちで自爆しまくりである。

と言うかもはや話す度に顔を真っ赤にしている。

これで脈無しって思う奴がいたら、そいつは

朴念仁を通り越して、鈍感の神であろう。

 

よし、では折角二人でたくさん自爆している

のだから、私も爆弾を投下しよう。

 

「二人はお互いの事が好きなのか?」

『『ブフゥッ!!』』

私がそう言った時、二人は紅茶モドキを

飲んでいたのだが、思いっきり私の方に

向かって吹き出した。

……しまった。言うタイミングを完全に

間違えた。と言うか汚い。目とかに

若干入った。微妙に痛い。

と言うか香織、女子としてこれは大丈夫

なのだろうか?まぁ他人に言う気は無いが。

「ゲホッ!ゲホッ!つつつ、司!?

 司君!?司さん!?ミスターツカサ!?

 なななな、何を言ってるのかな!?」

「そそそ、そうだよ新生くん!わ、わた、

 私が南雲くんを好きって、どど、どうして、

 わか、あいやっ!思うの!」

……。香織、今分かったって言いかけましたね?

 

私はタオルで顔を拭きながら呟く。

「今の二人は、何というかお互いの事で

 何十回と自爆し顔を真っ赤にしていました

 からね。あれで互いに脈無しと思う奴が

 いたら、むしろそいつの頭の中を

 覗いてみたいですよ。一般人が見たら、

 どう見てもバカップルの類いだと言うでしょう」

「ふぇ!?ばばば、バカップルだなんて

 何言ってるのさ司!」

「そそそ、そうだよ新生くん!」

「会話の度に顔を真っ赤にして自爆しまくりの

 二人が何を言うのですか。どうみても

 お互いを意識してるでしょう」

「い、いや!そ、それはその……」

「え~っと」

二人とも、顔を赤くしながら言葉を

詰まらせている。

 

ハァ、ハジメも香織も、何やらヘタレの様子。

仕方ない。では、私が二人の背中を押すと

しよう。

「そう言えば、ふと思ったのですが、今日の

 ハジメは大活躍でしたね」

「え?う、うん?」

戸惑いながらも頷くハジメ。

「あれは正に英雄と呼ばれるに相応しい物。

 それだけの戦いをしたハジメを見て、他の

 女性達がハジメを放っておくでしょうか?」

「ッ」

私の言葉に息をのむ香織。

「ハジメのジョーカー0を纏った際の

 戦闘力は、皆が見ています。そう言う意味では、

 守って貰いたい女性が強い男に近づくのは

 言わば必定でしょう。そうそう、戦う、と

 言えば同じように、死に近づくと言う物。

 そう言う時とは、得てして生物的な本能から

 子孫を残そうとします。そして男であれば、

 美しい女性と子をなしたいと思うのは普通。

 加えて香織は女神と称えられる程に美しい

 女性だ。例え檜山でなくても、香織を伴侶に

 したいと思うのは当然でしょう」

と言うと、今度はハジメが息をのみ、僅かに

拳を握りしめた。

 

「……。二人とも、考えなさい。目の前の

 相手が、自分以外に同性と結ばれる姿を」

 

私の言葉にそれを考えたのか、二人は奥歯を

かみしめるように表情を歪める。

……と言うか、香織の方は背後に般若が

見えますね。しかしまぁ、これは……。

脈あり、いや大ありですね。

 

「苛立ちますか?相手の隣に自分以外の同性が

 居る事が?許せませんか?」

「……。なんか、イラッとくる」

「私も」

どこか不機嫌そうな表情を浮かべる二人。

つまり……。

 

「と言う事は、二人はお互いが好き、と

 証明していますね」

「「……………。へ!?」」

間を置き、二人はボンッと音がしそうな程

顔を真っ赤にした。

 

「二人は相手の側に自分以外の同性が居る事に

 苛立ちを覚えているのでしょう?つまり、

 それは相手が好き、と言う思いの裏返しです」

「そそそ、それはえ~っと、え~っと!」

「もうお互い両思いなんですから今ここで

 盛大に告白して顔を真っ赤にして

 悶えれば良いんですよ。それ以前に、他人に

 取られるのは嫌なのでしょう?それで

 両思いなんだから。付き合わない理由の方が

 無いじゃないですか」

「そ、それはそうだけど~!」

「む?今香織は否定しませんでしたね?

 やはり貴方はハジメに気があるようで――」

「わ~~わ~~!新生くんストップ~~!」

咄嗟に私の口を塞ごうとする香織。

しかし私はそれを阻止し、更に語る。

 

「二人とも、落ち着いてキスする場面を

 考えなさい。あぁ当然、ハジメと香織が

 ですよ?」

と言うと……。

 

「「………」」

『『ボンッ!』』

二人は顔を真っ赤にした。

「何ですか二人は。あれですか?ピュアですか? 

 考えただけで顔真っ赤とか、それってもう

 相手が大好きって言ってるようなモンじゃ

 無いですか?付き合って何が悪いんですか?

 あぁ、私が居るからですか?じゃあちょっと

 外に居ますから。盛大に互いに告白して

 下さい」

そう言うと、私は有無を言わさず一旦部屋の

外に出た。

 

 

~~~

残されたハジメと香織。二人はお互いの

顔を真っ赤にしながら周囲に視線を向けていた。

なんやかんやでもう夜中。あの日の夜の

ように、月明かりが二人を照らしていた。

 

「あ、あのさ。白崎さん。……司はあんな

 事言ってたけど、僕で、良い、の?

 僕ってオタクだし、司がいないと何が

 出来るか分からないし、その……」

「……うん。それでも良い」

しばし間を置きながらも、香織は頷いた。

 

「もう、さっき新生くんが色々言った

 せいで想いがバレてるのなら、もう

 良いかな~って思って」

 

そう、笑みを浮かべながら呟くと香織は

姿勢を正してハジメに向き直った。

 

「私、白崎香織は、南雲ハジメくん。

 あなたの事が好きです。付き合って下さい」

 

真っ直ぐに、顔を赤くしながら告白する香織。

 

ハジメはその告白の前にワタワタと

慌てていたが、やがて彼も姿勢を正し……。

 

「僕も、僕も白崎さんの事が好きです。

 つ、つつ、付き合って下さい!」

 

そう言うと、ハジメは顔を真っ赤にしながら

頭を下げた。

 

そして……。

 

「はい。喜んで」

 

香織は笑みを浮かべながら頷いた。

 

 

そして、月下の光に祝福されながら

一組のカップルが生まれた。

 

そして司は、新たな恋の誕生の気配を

廊下で感じながら、今後二人を守り切る

決意を固めていた。

 

 

その身に宿した力、『怪獣王』の力。

『ゴジラ』の力。そして、『神』に等しい

その力に誓って。二人を守り、幸せにする、と。

 

しかし、一方で知らなかった。

檜山に対し、香織を餌に協力を持ちかけていた

人物が存在したことを。

 

私はまだ、知らなかった。

 

     第4話 END

 




って事でハジメは奈落へ落下せずに香織と恋仲に!
早速の原作ブレイクです。
あ、でも心配しないで下さい。途中からまた
原作と殆ど同じ流れになります。違うのは、
真のオルクス迷宮へ行く理由とか、オリキャラが
追加される事とか、です。

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