ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~ 作:ユウキ003
~~~前回のあらすじ~~~
ミレディ・ライセンの大迷宮をクリアし、
攻略の証をミレディから受け取った一行は
迷宮から水脈に乗って脱出した。その先は
以前訪れたブルックの町の近くの泉だった。
そこに居合わせたソーナとクリスタベルと
再会し、司とハジメ達はブルックの町で
1週間ほど休憩する事に。
そしてドタバタな1週間の後、西へと
向かうハジメ達は西の都市、フューレンに
向かう商隊の護衛依頼を受けるのだった。
私達が目指す中立商業都市、フューレンまでは
馬車で6日、1週間ほどかかる道のりだ。
日の出前に出発し、日が暮れる前に野営の
準備をする。これが基本であり、それも
既に3日目。今、私達はブルックとフューレン
のちょうど中間地点に居る事になる。
そして今日まで、襲撃などはなく、私達は
隊の後方で馬車に揺られているのが現状だ。
とはいえ、暇は暇なので、一応二人体制で
監視。他の4人が休憩、と言うローテーション
で警戒と休憩を繰り返している。
まぁ、天然のレーダーである私が居る限り、
敵がくればそれだけで分かるのだが。
そんなこんなで平和な3日目の夜。
依頼における冒険者たちの食事は自腹。
つまり、『自分達で用意しろ』、だ。
なので普通の冒険者たちの食事は簡素だ。
量を持ってきてもがさばるし、道のりを
考えれば生ものなど早々持ち歩ける物
でもない。腐ってしまったり、魔物などを
おびき寄せてしまう可能性もあるからだ。
そして、冒険者である以上、食事中とはいえ
周囲への警戒は怠るわけにはいかない。
商隊の面々からしたら、側で警戒心むき出し
の冒険者達と食事はしたくない、と言うのも
あって、基本はそれぞれ離れて食べるのが
基本だ。ちなみに、そんな簡素な食事ばかり
だからこそ、冒険者は報酬を貰った後に
町などでその金で豪華な食事を食べるらしい。
つまり、簡素な食事をそれぞれ済ませる。
それが基本だ。
しかし、『基本』など知ったことではない。
私達にはそんな『基本』など覆す力と道具が
ある。
で、結果的にどうなったかと言うと……。
「はい。生姜焼き定食とカツ丼定食、
それとカツカレーです」
と、白いシェフの格好をした私は冒険者たち
が座る鉄製のテーブルの上に『注文の品』を
並べていく。
「おぉ!美味そうだ!」
「ガツッガツッ!んっ!うめぇ!」
「美味い!美味い!!」
冒険者たちは、出された品を早速
がっつく。
「司さ~ん!そろそろパスタが茹で上がり
ますよ~!」
「はい。分かりました」
仮設の厨房で調理をしているシアから声が
掛かると私は足早に厨房に戻り、別の品、
パスタ、カルボナーラを器に盛り付ける。
更に、ちょうど出来上がったピザ、
チーズフォンデュ用の溶けたチーズと
様々なパンを乗せた器を、女性冒険者の
待つテーブルへと運んでいく。
「お待たせしました。カルボナーラと
マルゲリータピザ、それとチーズ
フォンデュのセットです」
「わぁ!美味しそ~♪」
目の前に並ぶ、普通の、こう言った依頼を
受けている時では絶対口に出来ないであろう
料理に、女性冒険者たちも目を輝かせて
いる。
「それでは、ごゆっくり」
そう言って、私は一礼をして厨房に戻る。
厨房に側には、鉄製のテーブルと椅子が
いくつも置かれ、冒険者や商隊の面々が
思い思いの料理を堪能していた。
当然、ハジメ達もだ。
「シア。あなたは先に食べていて良い
ですよ。後は大体デザートくらいしか
注文が来ないので」
「はい。ではお先にですぅ」
シアは頷くとエプロンを外し、自分用の
料理を手早く創るとそれを手にハジメ達
の方へ向かった。
それを見つつ、私はこうなった経緯を
思い出していた。
さっき言った通りこう言った任務中の
冒険者の食事は、質素や簡易という言葉が
似合う程度の物だ。
そんな中、初日の夜。私達だけは違った。
今のように仮設の厨房とテーブルを私が
創って、温かい出来たての食事を6人で
食べていたのだ。周囲との食事の質の差は、
まさに雲泥の差だった。
そしてそれは2日目の夜も同じ事。
冒険者たちは羨望のまなざしで、涎を
滝のように流しながらこっちを
見ていた。そこでシアが……。
「あ、あの~。良かったら皆さんも一緒に
食べます?幸い、食材は色々あるので、
大丈夫ですけど……」
視線に耐えかねた私以外の5人。そして
シアの提案で、彼等にも私達と同じ
料理を出す事にした。
そして冒険者達は、それはもう首が
千切れるんじゃないかという勢いで
首を縦に振っていた。
と、言うわけで急遽私とシアのレストラン
が始まった。
提供する料理は、和洋中、全てだ。
日本料理から中華料理、台湾料理やイタリア料理、
フランス料理、ドイツ料理などなど。
文字通り、世界中の料理を提供した。
とはいえ、この世界の人間からしたら
知らない料理もたくさんあるので、写真と
説明付きのメニュー表も創る羽目になったが。
まぁそこまで苦ではないし、好きでやっている
ようなものだ。
酒だけは、酔ってしまったり二日酔いになると
面倒なので提供していない。が、それ以外、
例えばメインディッシュや珍味、酒のつまみに
なりそうな料理など、ジャンルを問わず
提供している。ドリンクの方は、酒がない
分コーラやサイダー、お茶、紅茶、ジュース
などを多岐にわたり提供している。
ちなみに、料理を出していたときに。
「か~美味ぇ!それにしても、なんだって
こんな美味い料理創れるのに
冒険者なんかやってんだ?店出しゃ、
儲かりそうなのにな!」
と、そんな言葉を貰った。
そして案の定と言うか、野郎たちはそんな
美味い料理を作ってくれるシアを口説こう
と色々言い出すのだが……。
「もう!何度も言いますけど、私はハジメ
さんのものです!あと、しつこいと
明日から料理作ってあげませんからね!」
「「「「すいませんでした~~!」」」」
肝心のシアに胃袋を掴まれている男達は
その一言で大体頭を下げるのだ。
ちなみに、私の方はと言うと……。
「どうぞ。デザートの、白桃とクリームチーズ
のデザートピザです。それでは、ごゆっくり」
デザートの一皿を、女性冒険者たちのテーブル
の上に置くと、私は厨房へ戻った。
その際に……。
「ん~。美味しい」
「そうね~。ハァ。私はあんな風に料理が
出来る彼氏が欲しいな~」
「うんうん。そうよね~。……家庭的な
男性も、悪く無いわね~」
と言う会話が聞こえてきていた。
ちなみに、幾人かの女性冒険者には恋人と
思われる男性冒険者がいて、シアや香織に
言い寄ろうとしていた恋人を殴り
飛ばしたりしていた。そしてこの会話。
何とも不憫というか。いや、しかし恋人が
居るのに他の女に鼻の下を伸ばす男たち
も同罪か。
と、私は考えていた。まぁ、私への
高評価は悪きはしないが。生憎と、今の
私にはルフェアという女性がいる。
それ以外は、はっきり言って大した興味
も無いのだが。
などと思いつつ、私は自分の食事を
作って、ハジメ達の所へ行くのだった。
ちなみに周囲の安全を確保するため、
キャンプ周辺を覆い尽くすシールドを
展開していた。
これを初めて使ったときは、面倒だった
ので古代遺跡で発見したアーティファクト、
だと嘘を言っておいた。
またモットーが私の方に視線を送っていたが、
とりあえず無視した。
そして更に二日が経過した。フューレン
まであと1日だ。しかし、その日、とうとう
襲撃者が現れた。
真っ先に気づいたのは、レーダーを展開していた
私だった。それとほぼ同タイミングで気づいた
のが、シアだ。
「敵襲です!数は百以上!森の中から来ます!」
彼女の叫びに、冒険者達の間に緊張が走る。
そんな中、護衛のリーダー的存在である
ガリティマが悪態をついている。
無理もない。ここは、大規模都市へと続く、
言わば物流の主要道路。そこでこれほどの
敵が襲ってくるなど、普通ならありえない。
と言わざるを得ない。
だが、魔物の百や二百。我々の前では雑魚だ。
私は前に展開する冒険者達の間を抜けて
前方にでる。
「総員、戦闘態勢。これより魔物を迎撃
する」
「ッ!?待て!青のお前達だけじゃ!」
ガリティマが声を掛けるが、無視して私は
左手首のジョーカーを音声コマンド無しで、
スイッチを押すだけで起動する。
やはり音声コマンドがあると無いとでは、
数秒の差が出るので、音声コマンドの有無
を選択出来るようにしておいた。
漆黒のジョーカーZが私の体を包み込む。
そして、それを見ていた冒険者たちが
驚く中、ハジメ達も冒険者達の間から
出てきつつ、ジョーカーを纏っていく。
「香織、ルフェア、ユエ。二人は弾幕を張り
敵を近づけるな。シア、ハジメは
インターセプターとして二人の弾幕を
超えてきた物を倒せ」
と、指示を出したとき。
「司」
ユエが私に声を掛けた。
「何です?」
「試して見たい技がある。良い?」
「そうですか。分かりました。
作戦を一部変更。敵集団はユエの
攻撃でなぎ払う。4人は私と共に
ユエの援護、並びに万が一にも取り
こぼした敵が居た場合、それを
撃て」
「「「「「了解っ」」」」」
ハジメと香織がタナトスを構え、シアは
アータルをバスターモードにして
構えている。ルフェアもその両手に
バアルを握り、準備万端だ。
私も、タナトスを取り出し構える。
と、そうだ。ユエに言っておかなければ。
「ユエ。魔法を使う際には詠唱を忘れずに。
今までのノリで無詠唱だと、周囲に
何かと怪しまれますから」
と、私はジョーカーの通信でそう伝えた。
「ん。分かった」
と言うと、ユエのジョーカー・ウィザード、
タイプUが森の方へと右手を翳す。
「来たれ、大いなる蛇よ、空を呑み、海を呑み、
大地を呑み、全てを喰らい尽くせ。その顎で
全てを引き裂け。蛇の王よ、今ここに、
顕現せよ」
彼女が詠唱をすると、そのタイプUの各部に
埋め込まれているクリスタルのような
魔力増幅ジェネレーターが光を放ち始める。
そして、彼女のタイプUから魔力が吹き出し、
それが空中で一つになり、光を放ちながら
次第に形を作る。
そして、現れた名を、ユエが呟く。
「≪八岐大蛇≫」
そして、それ、八岐大蛇を覆っていた
光が霧散すると、そこから魔力によって
形成された、漆黒の多頭蛇、八岐大蛇が
宙に浮いていた。
「な、何だよあれ!?」
驚き、ユエ、つまり味方の技であると分かって
いても冒険者達は後退る。
そして森から出てきた魔物達も、八岐大蛇
に睨まれ、その足を止めた。
そしてユエは、静かに右手を掲げ、そして……。
「穿て、雷撃……!」
彼女の言葉と共に振り下ろされた右手。
すると、八岐大蛇の、8つの頭が
一斉に口を開いた。そして……。
『『『『『『『『カッ!!!』』』』』』』』
その口元が光ったかと思うと、一斉に
口から雷撃が放たれた。8つの雷撃が、
ジグザグに空間を裂いて飛び、魔物の
集団に命中した。
雷撃を喰らった魔物が蒸発する。
運良く初撃を避けた個体が逃げようと
商隊に背を向けるが、当然ユエは逃がす
つもりは無い。
逃げようとする群れを、雷撃が追いつき
蒸発させる。
8つの雷撃が魔物の集団に襲いかかり
殲滅するのに、10秒も必要無かった。
魔物が全て消滅すると、同じように
八岐大蛇を霧散させるユエ。
後に残ったのは、雷撃が抉り、さながら
焦土と化した大地だけだった。
一応、撃ち漏らしの為に迎撃態勢を
取っていたが、無用のようだ。私達は
静かに銃口を下ろした。
皆がその大地を見て、ぽか~んとしている。
「ゆ、ユエちゃん?あれ、は?」
と、若干引き気味に問いかけるハジメ。
「あれは、八岐大蛇。私が考えた、今の
最強必殺技。……もう一つ、新しいのを
試したかったけど、それはまた今度」
そう説明しながらも、どや顔のユエ。
どうやらハジメに見て貰えてご満悦の
ようすだ。
彼女の創り出した八岐大蛇。あれは言わば、
魔力で出来た物体。つまり、あの多頭蛇は
魔力そのものなのだ。
そしてその魔力を使って、攻撃をするのだ。
分かりやすく言えば、
『魔力』で『創られた』、『魔法を放つ砲台』。
と言った所だ。
ちなみに彼女の言っていたもう一つの技、
と言うのは雷属性の上級魔法と重力魔法を
掛け合わせた雷の龍、『雷龍』という彼女の
オリジナル技だ。
元々八岐大蛇は、この雷龍の完成後、さらに
ユエが完成させた物だ。
八岐大蛇を形作る場合、ユエ個人の魔力量では
足らず、私と言う魔力タンクから魔力を
供給される。或いはジョーカーを纏う事で
魔力が増幅された状態でなければ使えない。
文字通り、限定条件下でしか使えない、
彼女の超必殺技だ。
まぁ、とにかくユエの超必殺技で魔物は消滅
したので、私はガリティマ達の方へと
振り返る。
「何を呆けているんですか?敵は倒しました
し、移動を再開しないのですか?」
と、問いかけると……。
「「「「イヤイヤイヤ!待て待て待て待て!」」」」
しかし、何やら彼等は慌てだした。
「何か?」
「いや何かじゃないだろう!?さっきの魔法は
一体なんなんだ!?」
「いや、私に聞かれても」
と、私は私に詰め寄るガリティマにそう
呟きながら、ユエの方に視線を向けた。
ちなみに、その側では野郎共が、ユエは
女神、で納得していた。
どういうことなのだ……?
「あれは、私のオリジナル」
「お、オリジナル?自分で創った魔法って事か?
上級魔法、いや、もしかしたら最上級を?」
「……違う。あれ自体は魔力の塊」
「あ、あれが魔力の塊だって?一体何を
どうやってそんな……」
「それは秘密」
と、ユエが説明すると、ガリティマは
視線を私の方に向けた。
「まぁ、彼女の魔法には驚いたが、
こっちも十分驚くに値するんだよなぁ」
そう呟きながら、ガリティマは私のジョーカー
を見ている。
「……それも、アーティファクトなのか?」
「えぇ。そんな所です」
一々パワードスーツについて1から説明する
のも面倒なので、とりあえずアーティファクト
と言う事にしておこう。
と、私は考えました。
その後、特に襲撃などはなく、周囲から
驚き、畏怖、尊敬などの視線を送られつつ、
ついに私達はフューレンへと到着した。
と言っても、その入り口である東門には
6つの入場受付がある。フューレンに入る
ためにはそこで検査、言わば持ち物検査を
受ける必要がある。
そして今、商隊はその順番待ちをしている
所だ。
私は馬車の屋根の上に座り、遠くに見える
受付に視線を向けるが……。
この様子ではまだまだ時間が掛かりそうだ。
そう考え、私は屋根の上から馬車の中を
のぞき込んだ。
「どうやら、まだまだ時間はかかりそう
ですね」
私がのぞき込んだ馬車の中では、ハジメ達が
トランプゲームで時間を潰していた。
「そっか~。まぁ、気長に待つしかないか」
そう呟くハジメ。その時。
「やぁどうも」
「あっ。モットーさん」
不意に、馬車にモットーがやってきた。
それに気づいて名を呼ぶ香織。
「用件はなんです?シアとルフェアは
売る気はありませんよ?」
「えぇ。それはもう分かっております。
しかし……」
と、呟きながらもモットーの視線は私達の
指、正確にはそこにある宝物庫に向けられた。
「……。欲しいのか?これが?」
「本音を言えば、宝物庫『も』です。私
としましては、あの戦闘の際に皆さんが
纏った鎧と、結果的に使いませんでした
が、見た事も無い武器。私としては、
それら全て、興味があります」
「……。残念ながら、武器『まで』売る気は
ありません。万が一、私達の敵になる
かもしれない存在に渡る事を危惧して、
武器『を』売買する気はありません」
「……今の言葉、武器以外なら良いの
ですかな?」
「……袋を持ってきて下さい。出来るだけ
大きいのを」
「は?はぁ?」
疑問符を浮かべながらも、モットーは一旦
戻ると袋を持って戻ってきた。
「これで良いのですか?」
「えぇ」
私は、モットーから中くらいの袋を貰うと、
その口を開き、その上に右手を翳した。
次の瞬間、その掌が光り輝くと、掌から
指輪、宝物庫が現れ、袋の中に落ちていった。
「なっ!?」
これには驚くモットー。
「私には、あなた方から見れば摩訶不思議な
力がいくつもありましてね」
そう言いながらも、宝物庫の生産を私は
止めない。
「例えば、アーティファクトが一つあった
としましょう。私はそれに触ることで、
それがどんな原理で動いているのか、
構造さえも一瞬で理解してしまうの
ですよ。そして、後は無から有を生み出す
力があれば……。こんな芸当も可能なの
ですよ」
そう言う頃には、袋の中は宝物庫で
満たされていた。これ以上入れると口を
縛れないかもしれないので、9割ほど
袋を満たし、私は手を止めた。
「宝物庫。全部で10583個。これを
あなたに渡しましょう」
「い、一まっ!?ま、待って下さい!?
これが全て!?そんなバカな!?」
「信じられませんか?まぁ試して見ても
構いませんよ?ここで。……と言っても、
これの全てを試すのには、一人では
何時間かかるか分かりませんが」
「そ、そんなバカな……!?これが、
全て宝物庫?」
モットーは、驚きに満ちた目で袋の
中身を見つめていた。
「ん?ッ!こ、これは!」
そして、その中のいくつかを取り出した。
「ん?あぁ。それですか。……宝物庫
も一応指輪なので、少々宝石を
あしらっておきました」
今、モットーの掌の中にある宝物庫には、
ルビー、ダイヤモンド、エメラルド、
アイオライト、アゲート、オニキス、
オパール、ガーネット、ターコイズなどなど。
様々な宝石で煌びやかに装飾された
指輪、宝物庫があった。
「宝物庫の機能だけではなく、あなたの事
です。それも、売り物としようとしていた
のでしょう。なので、指輪自体にも
価値を付けておきました。それなら、
例え宝物庫としての機能が無くても、
指輪として十分高額で売れると思いますが?」
と言うと、モットーは、戸惑いと喜びが
ごちゃ混ぜになったような表情で私を
見ている。
「あ、あなたは!?一体……?!」
「私ですか?……そうですね。人の皮を
被った『何か』、とだけ言っておきますよ。
少なくとも、これくらいの事は出来る、
何かですが」
と言って、私は掌に数多の宝石を創り出す。
「す、凄い……!」
と、呟いた直後、モットーは戸惑いの表情を
浮かべた。
「し、しかし、これだけの数を貰っては。
正直、私の全財産を支払っても、対価
として相応しいかどうか」
「あぁ、別に金は必要ありませんよ」
「えぇ!?」
と言うと、モットーはとても驚いた。
「これでも、自分達の食い扶持は自分達
で稼げています。なので、あなたには
金以外でお願いしたい事が二つほど
あります」
「ッ。な、何でしょう?」
「まぁそうかしこまらずに。
……一つは、情報の収集です」
「情報、ですか?」
「えぇ。商人であるあなたなら、特定の
場所に長期間止まる事は無いでしょう。
なので、訪れた先で何か怪しい動き、
或いはそれに準ずる物があったら、
貴方はそれを書き記すなりして、
情報を保存しておいて下さい。
私達は、その情報を宝物庫の対価
として、いずれ取りに行きます。
もう一つは、もし万が一にも私達が
頼った時は、できる限りで構いません。
私達をサポートする事。……これで
どうですか?」
「ほ、本当にそのような事で良いの
ですか?これほどの物を、こんなに
貰ったと言うのに?」
「えぇ。……物を無限に生産出来る
私にしてみれば、宝物庫でさえも、
道ばたに転がる小石と同じ。
創ろうと思っただけで手に入る」
そう言いながら、私は更に一個。
宝物庫を創り出した。
「これで人脈が得られるのなら、
むしろこちらが儲けた、と言っても
良いでしょう。それで?どうしますか?
この取引、乗るか、降りるか」
「……乗ります」
静かにモットーは頷いた。
「では、取引成立だ」
そう言って、私は今し方産みだした宝物庫を
モットーに投げ渡した。
それを慌ててキャッチするモットー。
「プレゼントですよ。中には、様々な
宝石が入っている。好きに売りさばくと
良いでしょう」
「……宝石でさえ、あなた様にとっては
道ばたの石ころと同じですか。
……恐ろしいお方だ」
「良く言われます」
そう言って、私は肩をすくめる。
「やれやれ。これは思いがけない収穫
です。しかし、あなたの怒りに触れて
いたらと思うと恐ろしい。危うく
竜の尻を蹴飛ばす所でした」
そう言って、深く息を吐くモットー。
ちなみに、竜の尻を蹴飛ばす、と言うのは
この世界の諺だ。
竜とは、今から500年ほど前に滅んだと
言われる、竜と人の姿を使い分ける事の出来る
種族、『竜人族』を指した言葉だ。
この竜は、体の殆どが鱗に覆われており、
鉄壁の防御力を誇る。しかし、ごく僅かな
弱点として、目、口内とならんで尻の辺り
には鱗がない。鉄壁の防御力の彼等は一度
眠ると、大概の事をしても起きないのだ。
しかし、唯一、尻を蹴られると一気に目覚めて
烈火の如く暴れるらしい。
つまり、手を出さなければ安全なのに、
手を出して痛い目に遭う愚か者、と言う風な
諺なのだ。
その後、オットーと竜人族の話やユエの八岐大蛇
について警告のような事を言われた後、彼は
宝物庫の入った袋を背負って去って行った。
それを見送る私達6人。
「良かったの司?宝物庫をあんなに量産
しちゃって」
「宝物庫自体は、あくまでも物を収めるだけ
です。それに、あれも全て私の創造物です。
万が一敵がそれを使ってきたのなら……」
そう言って、私は指を鳴らす動作を真似する。
「これですぐに消せますから」
「あの程度じゃ、司の障害になんかならない
訳か」
「まぁ、ツカサお兄ちゃんだからね」
ため息交じりに頷くハジメと相槌を
打つルフェア。
「と言うか、もうお金稼ぐなら司くんが
宝石創って売った方が早いんじゃない?」
「……一週間くらいで億万長者になれそう」
「と言うか司さんなら、普通にお金創れ
ますよね」
香織、ユエ、シアの順にそんな事を言っている。
ちなみに、シアの言うような事だけはしない。
貨幣の際限ない増産は貨幣そのものの価値を
低下させる。そうなると、物一つ買うに
しても、大量の貨幣が必要だ。
テレビで、物を買うのに一輪車に紙の束を
大量に乗せて居る人を見たことがある
だろうか?ようはあれと同じ事になる
からだ。
しかし、と私は周囲に視線を向ける。
何やら周囲からシアやルフェア、果ては
香織とユエにまで、少々不愉快な視線を
感じる。……この視線、中々に不愉快だ。
彼女達の美しさに、バカな事をする輩が
出てこない事を祈る。
と、私はフューレンで何かが起る予感と、
それに対して、一々対応するのが面倒
だから何も起らなければ良いが、と
考えていた。
しかし、そんな事は不可能だと、中に
入って思い知らされたのだった。
第28話 END
次回はフューレン市街でのお話です。
感想や評価、お待ちしています。