ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今回はウルの町の防衛戦です。


第35話 ウル防衛戦

~~~前回のあらすじ~~~

ウルの町へと迫る、総数5万超えの魔物の軍勢。

当然の如く町はパニックに陥りかけるが、豊穣の

女神と呼ばれる愛子の言葉で一応のパニックは

回避され、そこに司が呼び寄せた、Gフォース

の派遣艦隊が到着。司たちと合流したパル達は、

すぐさま防衛ラインの構築を開始。

そんな中、司を王の器だと感じたティオは、

戦いを前にこれから彼等に同行する事を

願い出るのだった。

そして、ティオの申し出を司が受け入れた

直後、魔物の群れが接近していることが

偵察に出ていた兵士達から伝わり、司は

部下二人と共に、ヴァルチャーを駆って

飛び出すのだった。

 

 

空中へと飛び上がり、プテラノドン似の

魔物の群れへと向かう私達のヴァルチャー。

「各機、聞いてくれ。恐らく親玉だと

 思われる個体の上に、黒いローブを

 纏った人物が居る。恐らく、今回の

 騒動の現況だ。そして、そいつは

 私やハジメのクラスメイトの可能性が

 ある」

私の言葉に、僚機の二人が息を呑む音が

聞こえた。しかしそれも一瞬だ。

その理由を聞いたりする時間は無い。

「愛子先生からの依頼で、このローブ

 男を、殺さずに捕らえろ、との依頼が

 あった。殺さず、と言うのは普通に

 殺すより難しいだろうが……。 

 私なら問題も無い。そうだろう?」

『『はいっ!元帥っ!』』

二人から元気の良い返事が返ってくる。

 

さて、そろそろプテラノドン似の魔物の群れ

と接触する。

「お前達は私の援護を頼む!私はとにかく

 ローブ男を魔物の主から落とす!」

『『了解ッ!』』

「行くぞ、戦闘開始ッ!」

 

翼状のスラスター。ヴァリアブルウィングを

折りたたみ、スラスターの推進力を一点に

集中。爆発的な加速で魔物の群れへと突っ込む。

私の1番機に、他の2機が続く。

 

そして、私は先ほどの内に改修しておいた、

ショートバレルのレールガンを構える。

長い砲身は空気抵抗も大きい上に

取り回しも悪い。なので、突貫工事

ではあったが、何とか砲身を切り詰めて

ショートバレル化したのだ。

命中精度と有効射程は幾分か下がるが、

そこは私の腕でカバーする。

 

『カチッ!』

操縦桿のスイッチを押し込む。

『ドドウッ!』

すると両腕のレールガンから砲弾が

放たれる。

放たれた砲弾は、魔物の胴体に命中にその肉体

をバラバラに吹き飛ばす。

 

私は前方から向かってくる魔物だけを撃ち抜く。

後ろからも何匹かが反転して追ってこようと

するが……。

『『ドウッ!ドウッ!』』

「俺等も居るんだよ!」

「墜ちろぉ!蚊とんぼ!」

後ろの2番機と3番機からの支援攻撃がそれを

撃ち落とす。

 

そして、私は主と思われる魔物に接近し、その

すぐ側を交差した。

するとスラスターの圧倒的な推進力が生み出す

突風に煽られ、ローブの男が魔物の上から

吹き飛ばされ、落下していった。

 

もし仮に奴が清水なら、この程度はどうにかなる

だろう。とりあえず、逃げるだけの足は奪って

おいた。

私は、ヴァリアブルウィングを展開し急速反転。

更に手足の遠心力を利用した、『能動的質量移動

による自動姿勢制御』、つまり『AMBAC』の

力で反転し、プテラノドン似の魔物の主の

背後を取った。

 

逃げようとする主だが、もう襲い。

その後ろにぴったりと張り付いたヴァルチャー

のレールガンから放たれた砲弾がそのボディ

を挽肉に変えた。

さて、後は残った配下の魔物を掃討し、

制空権を確保するだけだ。

「2番機、3番機、制空権を取るぞ。

 続け……!」

『『了解ッ!』』

私達は、残りの空の魔物を狩り始めた。

 

 

一方、空での戦いが始まったばかりの頃、

地上では陸生型魔物の群れが、ウルの

町を踏み潰そうと向かって来ていた。

だが……。

 

『カッ!』

先頭の魔物があるラインに到達した時、

地面が光り輝き……。

『『『『『『ドドドドォォォォォンッ』』』』』』

まるで噴火かと思う程の爆炎が上がった。

 

地雷原に魔物が踏み入ったのだ。

とは言っても、現代で戦車などの破壊に

使われる地雷と比較しても、威力は

数十倍は上回っている。

理由は、フレシェット弾と同じだ。

 

フレシェット弾とは、無数の矢の形をした

子機をばら撒く爆弾の事だ。

文字通り、矢の雨が降り注ぐ。これは

本来、対人用に使われるケースが

多いが、今回はその無数の矢を、下から

魔物達の腹に、至近距離でぶち込んだ

訳だ。

しかも、司の設計開発によって、威力は

普通のフレシェットとは比べものに

ならない。

劣化ウランの矢が、魔物達の体を貫いた

のだ。

 

これだけで、先頭の魔物集団は撃退された。

しかしそれは全体から見ればほんの

数%に過ぎない。現に先頭集団の屍を

踏みつけながら、次の集団が現れる。

 

しかし……。

『『『『ドドウッ!ドドウッ!』』』』

『『『『『バシュシュシュシュッ!!!』』』』』

それを砲兵部隊の多脚戦車と、壁上の

ルドラ改からの一斉射が襲いかかる。

 

爆発に次ぐ爆発。地雷原と砲弾、ミサイルの

嵐が魔物の集団に襲いかかる。

運良くその砲撃を切り抜けた魔物が、

更に前進するが、無駄だった。

「そこぉ!ですぅ!」

 

砲撃で出来た爆炎を抜けた直後、魔物を

アータル・バスターモードのビーム砲が

撃ち貫く。

更に数体が砲撃を突破するが……。

「行かせぬっ!」

ティオが、両手の先から竜化状態で

放ったのと同じ黒いブレスが放たれ、

魔物を撃ち抜いていく。

 

「おぉ!ブレスを使っても、全く

 倦怠感が来ぬ!これは良いのじゃ!」

司に渡された魔力供給用リングのおかげで、

今のティオも魔力が底なしだ。なので、

連続して使うだけで相当疲弊する

ブレスをいくら使っても疲れない。

その事に驚きながらも、ティオは砲撃を

続ける。

 

「なぎ払え、八岐大蛇」

更に、ユエの召喚した漆黒の多頭蛇、

八岐大蛇がその顎から無数の魔法を

放った。

炎の槍、『緋槍』。真空の刃を纏った竜巻、

『砲皇』。氷で出来た針の雨、『凍雨』。

それだけでも十分な威力を持って

魔物に襲いかかっているが、それだけ

ではない。他の5つの頭も、口から

火炎弾や巨大な氷の砲弾、雷撃。

風の刃を放ち続ける。

 

はっきり言ってユエ一人でも砲兵部隊の

攻撃に勝るとも劣らない攻撃の威力と密度を

誇っていた。

 

だが、それだけでは無い。

 

魔物達は、地雷原を突破しユエやシア達を

迂回しようとする。だが……。

『ドバンッ!』

「命中」

その魔物の頭を、壁上で腹ばいの姿勢、且つ

ミスラのバイポッドを展開した状態で保持

していたパルの狙撃が吹き飛ばした。

 

更に他のハウリアの兵士達や、G・アシッドを収めた

アシッド・グレネードを放つガーディアン達の

攻撃が襲いかかる。空中でまき散らされた

G・アシッドが魔物の体を溶かし、ミスラの

狙撃が肉体を引きちぎる。

 

そして、ここで最も活躍したのが……。

『ドバンッ!』

「命中、次」

『ドバンッ!』

「命中、次」

スナイパーとしての才能を開花させ

つつあった香織だ。

 

『鷹の目』、と言う表現が合いそうな程の

狙撃技術で、次々と魔物を撃ち殺していく

香織。

『やりますね香織さん。俺もスナイパー

 として、負けてられねぇぜ!』

そして、その近くでミスラを構えていたパルも、

司にその才能を見いだされた事からか、

香織にライバル意識のような物を抱きつつ、

ミスラで次々と魔物を撃ち抜いていく。

 

更に……。

「北東部1時の方角!敵魔物3!一班が

 対応して!続いて北西部10時の方向!

 九班対応急いで!これ以上回り込ませるな!」

命中精度より弾の数を優先したハジメは、

Eジョーカー形態となり、背中のチェーンガン

を撃ちまくりつつ、データリンクから送られる

データを元に、今最も厄介な魔物を割り出し、

周囲に指示を飛ばす。

 

砲撃の来ない東や西側、南側に回り込もうと

する魔物達。無論そこにもガーディアン部隊

を配置しているが、主戦場の北側に

比べれば、弾幕の濃さは雲泥の差だ。

故に、行かせまいと抜けようとする魔物を

探し、指示を飛ばすハジメ。

 

ルフェアは……

「行かせないっ!」

左右へ逃れようとする魔物に対し、ルフェアは

Eジョーカーフォームとなり防壁の上を

走り回っていた。

今は東側に抜けようとする魔物の集団に対し、

Eジョーカーのチェーンガンから銃弾の雨を

放っていた。

2門のチェーンガンから放たれた銃弾が魔物を

穿つ。

「よし!次っ!」

そして、それを確認したルフェアはすぐさま

別の部隊の援護に向かう。

 

 

空で戦う司たち。防壁から砲撃するハジメ達。

地雷原を越えてきた魔物を直接葬るシア達。

 

そして……。

「こちらヴァルチャー1号機、空の魔物を

 殲滅完了。ホバーバイク部隊出撃せよ」

『こちら航空攻撃部隊了解!』

空の魔物を掃討し終え、私は待機していた

ホバーバイク部隊へ通信を繋げた。

 

既に魔物の掃討は佳境に入っていた。

掃討率は60%を超えている。そして、

更にここで退路を塞ぐためにホバーバイク

部隊を展開する。

 

「行くぞ野郎共!ついに俺達の出番だぜっ!

 ひゃっはぁっ!」

……何やら通信機の向こうから、某世紀末の

ような声が聞こえるが無視しよう。

 

防壁の内側、ウルの町の空き地に待機していた

ホバーバイク部隊が、ピンク色の炎をスラスター

より吹き出しながら上がってくる。

そして、防壁を6時の方角とするのなら、

ホバーバイク部隊は8時と4時の方角。

つまり、魔物の群れを左右から挟み込む形で

上空から機関砲を撃ちまくる。

 

三方向からの一斉射。更に……。

「私達も行くぞ……!」

『『了解っ!』』

私達のヴァルチャー小隊も上空から

レールガンを撃ちまくる。

 

 

正しく、『鉄の暴風』。そう呼ぶに相応しい攻撃が

続いていた。

 

そして、その鉄の暴風と呼ぶに相応しい攻撃

の様子は、司が町の中央に設置した巨大

モニターで人々に見せられていた。

時折、爆風によって血と硝煙の臭いが街中に

流れ込むが、人々は魔物が蹴散らされる度に、

そんな事お構いなしに声高に叫ぶ。

 

そして特に注目を集めたのが、ヴァルチャー

3機だった。空からの攻撃に防ぐ術が無い

魔物達は、その体を引き裂かれていく。

そして、その後ろ姿は町の人々からも

見えていた。

 

ショートバレルの1号機は、町の住民から

すれば、一機だけ腕が短いのが他の2機

と比べてすぐに分かった。そしてその

2機が、腕の短い、つまり司の1号機を

支援するような動きを取る事から、

住民達には、1号機が3機のリーダー

であるとすぐに分かった。

 

そして、まるで魔物を、赤子の手をひねるが

如く、容易く倒していく姿は、正しく

天から舞い降りた死神のようだった。

 

これは司の知らぬ事だが、のちにウルでは、

町を救った伝説として、『漆黒の死天使』

と言う話を残すほど、ウルの町の人々に

ヴァルチャーの存在を深く刻まれていた。

 

 

そして、掃討率が90%を超えた頃。

『こちら砲兵隊!残弾0!我射撃不能!

 繰り返す!我射撃不能!』

15台の多脚戦車の車長をしている兵士達

から、次々と弾切れの報告が上がる。

私はチラリとヴァルチャーのレールガンの

残弾表示に目をやるが、その数は既に

二桁を切っていた。

 

「……そろそろ、か」

多脚戦車部隊の残弾が無い。ヴァルチャー3機

も、3機合わせたとして50発も残っていない。

「砲兵部隊に通達。お前達は砲撃を中止。

 同時にホバーバイク部隊も後退し防壁

 付近まで移動。……残敵は、私やハジメ達が

 撃ち倒す」

『『『『了解っ!』』』』』

「ハジメ、香織、ルフェア。聞こえて

いましたね?」

『うん。ここはパル君に任せて僕達は前に出て

 ユエちゃん達と合流するよ』

「では、私も合流します」

 

私はコンソールパネルを操作し、ヴァルチャーを

自動操縦にする。

「2番機3番機は後退。1番機を頼むぞ」

そう言って、私はハッチを開ける。

『お任せ下さい元帥!』

「あぁ。では、行ってくる」

 

そして、私はハッチから飛び降りた。

高度は優に数百メートルはあるが、問題無い。

『ドゴォォォォォンッ!!』

私は、爆音と砂煙を上げ、クレーターを

作りながら着地する。

 

そして、片膝を地に着いた姿勢から立ち上がる

と、私の左右にハジメ、香織、ユエ、シア、

ルフェアが並ぶ。

 

両手にグリムリーパーを具現化させたハジメ。

ミスラを両手で持つ香織。

各部のクリスタル、ジェネレーターを光らせ

オーラを滲ませるユエ。

巨大なアックスモードのアータルを肩に

担ぐシア。

両手にバアルを握りしめ前方を睨む

ルフェア。

 

そして、私達6人の姿を、ティオは一歩

引いた所から見つめている。

『……これほどまでに精強なる強者を、

 果たして私は見た事があっただろうか?』

ティオは、ハジメ達の背中を見つめながら

過去を思い返す。

その答えは、否だ。

 

彼女は、更に振り返る。

ティオの背後にそびえる、漆黒の防壁。

ホバーバイク部隊と戦車部隊、アーティファクト

級の鎧を身に纏った、屈強な亜人の兵士達。

千を軽く超える、ガーディアン達。

 

彼女が再び前を向けば、その全ての先頭に、

司の背中がある。

如何なる戦場にあっても、絶対強者として

君臨する、その背中が。

それは正しく、人々を導く指導者の背中。

『あぁ、そうだ。マスターこそ……』

 

彼女に初めて敗北をもたらした強者にして、

数千の軍勢を率いて、数万の魔物を容易く

倒し得る、その漆黒の背中の持ち主こそ……。

『≪王≫と呼ばれるに相応しい存在だ』

 

ティオは、改めて思う。彼の事をもっと側で

見てみたいと。

そして、更に思う。王の隣に立つハジメ達の

ように、自分もいつか、王と肩を並べたい、と。

 

 

敵の残りは、後は精々5千と言った所か。

私達にティオを加えた7人ならば、どうと言う

事は無いだろう。

「さて、そろそろ終わりにするとしますか。

 この防衛戦も」

「うん。けりを付けよう」

ハジメの声に、皆、それぞれの武装を構える。

 

そして……。

「殲滅、開始っ!」

私のかけ声に合わせて、一斉に飛び出した。

 

まず先行するのは、突進力に優れたシアの

タイプSCだ。

背中のブースターを煌めかせ、魔物の群れに

一直線に向かっていく。

「串刺しですぅっ!」

そして、彼女の持つアータルが変化し、

槍、ランスモードになった。そのまま

速度を緩める事無く突進していくシア。

そして、ついにアータルの穂先が魔物の

肉体を捉えた。シアはそのまま突き進み、

何体もの魔物を貫いていく。それは、

さながら串に団子が刺さっていくかのように。

と、その時、彼女の右側から魔物が一匹、

飛びかかる。

だが、シアは動揺する事無く、右手をそちらに

向ける。彼女の腕部には大きな筒のような物が

装着されていた。その時。

『ドバンッ!』

筒の中で光が瞬き、無数の矢、フレシェットが

放たれた。無数のフレシェットが、魔物の体を

貫く。

 

これは、司が創り出したMASの武装の一つ、

『フレシェット・カタパルト』だ。

殆ど銃身と呼べる物が存在しない発射機から、

無数のフレシェットを放つこの武装は、

『狙って当てる』という事は出来ない。

発射直後からフレシェットが不規則に拡散

するからだ。

だが、それが至近距離だったなら、話は

別だ。大凡3~4メートルの距離ならば、

フレシェットは相手に当る。つまりこれは、

至近距離で相手を迎撃するための武装だ。

そして、シアはそれを使いこなしていた。

 

そのまま突き進むシアの背中を狙って、魔物が

飛びかかるが……。魔物は気づかない。

自分もまた、敵に背を向けている事を。

『ドンッ!!!』

その魔物を、香織のミスラが放った19ミリ弾

が吹き飛ばす。

 

そのまま香織は、ボルトアクションを動かし、

次弾を放つ。香織がミスラを放つ度に、

魔物の体が吹き飛ぶ。

すると香織を驚異と判定したのか、魔物たちが

香織の方へと向かっていく。だが……。

 

『『バババババババッ!!』』

「行かせないっ!」

香織に向かう魔物に、ルフェアがバアルの

銃弾をたたき込んだ。

その時、ルフェアに魔物の爪が迫る。

 

だが……。

『バッ!』

ルフェアは、大きく跳躍する事でそれを

回避。眼下の魔物目がけていくつものバアルの

銃弾をたたき込んだ。

その時、ブルタールが近くの魔物の死骸を

ルフェア目がけて投げつける。

しかし、彼女はそれを、空間を蹴って回避。

更に空間をジグザクに突進し、そのブルタール

に突進。

「はぁっ!」

突進力をそのままに、ブルタールを

蹴飛ばす。

更にブルタールの体を蹴って跳躍。再び

上空からバアルの銃弾を雨の如く降らせる。

 

そんなルフェアの戦い方は、正しく、

『蝶のように舞い、蜂のように刺す』という

表現がぴったり当てはまる物だった。

何も無い空間を華麗に飛び回り、相手の

隙を見つけると鋭い一撃を放つ。

それが今のルフェアの戦い方だった。

 

更に、彼女が相手をしているのとは

別の魔物が香織に向かうが……。

「行かせるかぁっ!」

その前にハジメが立ち塞がる。

グリムリーパーのガトリングが火を噴くが、

その掃射を超えた魔物がハジメ目がけて

爪を振り下ろす。

「おぉぉぉっ!」

ハジメは雄叫びを上げ、左手のチェーンソーで

爪を受け止め逸らす。

そして、攻撃を受け流しがら空きの首筋に

右手のガトリングを撃ち込む。

血飛沫をまき散らしながら倒れる魔物。

「さぁ、挽肉になりたい奴は、掛かってこい!」

ハジメが叫び、魔物達と戦う。

 

一人突出しているシアは、魔物の群れを突っ切る

と、ランスモードの槍を地面に突き刺し、

さながら棒高跳びのような動きで

地面を抉りながら反転。

着地すると、魔物目がけて再び突撃

していった。

それを迎え撃とうと、後ろの方に居た

魔物達がシアに向かっていくが……。

 

「穿て。八岐大蛇」

不意に、頭上からユエの声が響いた次の

瞬間、雷撃が雨の如く降り注いだ。

シアに近いのを除き、彼女に向かっていた

魔物達の7~8割が雷撃によって

消滅した。

 

「おりゃぁっ!」

シアは、突進してきた魔物をアックスモード

のアータルでたたき割ると、頭上を見上げる。

そこには、宙に浮く八岐大蛇の、その一頭の

上に優雅に立つユエのタイプUの姿があった。

「相変わらず、ユエさんの殲滅力には

 勝てませんねぇ、っとっ!」

アータルを肩に担いだシアは、後ろから

飛びかかってきたブルタールの拳を避けると、

振り向きざまに右手のカタパルトをその腹に

突き付け、撃ち放った。

「私も、うかうかしてられないですねっ!」

そう叫ぶと、シアは魔物の殲滅に向かう。

 

ハジメ達が戦う側では、ティオも戦っていた。

とは言っても、内容はブレスによる後方支援。

と言うか砲台のような物だ。

そしてティオは砲撃を行いながら、司の

戦いに時折目をやっていたが……。

 

『異常、と言うべきなのかのぉ』

彼女をして、そう思うほどの物だった。

 

魔物の中に、奇妙な連携能力と、まるで先読み

の能力でもあるのか、黒い体毛と紅い四つ目の

狼型の魔物がいた。

それは、かつてオルクス大迷宮の101層で

確認した二尾狼に匹敵するほどの強さを

持っていた。つまり、こいつらだけでも

並みの冒険者、数十人、もしかすると

数百人を倒せる可能性がある。なにせ、101層

の魔物となれば、ベヒモスと同格か、

もしくはそれ以上なのだから。

 

とは言っても……。

『ドシュッ!』

司の手刀が魔物の一匹の体を貫いた。

その時、群れを超えてその狼型が司に

飛びかかる。

司は空いている右手の裏拳で対応しようと

する。すると狼型の魔物はその腕に

噛みつこうとした。

 

が、次の瞬間にはテールスピアによって

頭を貫かれていた。

司の戦いは、こうだ。

『相手が攻撃を読む事が出来ても、それに

 対応出来ない、コンマ数秒よりも早い

 攻撃を繰り出す』。

それだけだ。

 

リミッターを解放した司の速度は、生物の

それではない。

襲いかかると、初撃は先読みで回避した

かに見えた。だがすぐさま神速の如き速さで

繰り出されたテールスピアが、先読みされる

よりも早く魔物の体を貫く。

ましてや、繰り出される拳はフェイント。

司には、狼型がその先読みを理解し反応した

瞬間、攻撃をキャンセルし別の攻撃を

放つのだ。

拳に見せかけテールスピアで。

逆にテールスピアに見せかけ拳で。

避けた、と思った瞬間に全く別の攻撃が

飛んでくるのだ。

司の力の前には、先読みも殆ど意味を成さない、

と言う事だ。

 

そして、司の戦いっぷりに恐れを成したのか

狼型の魔物が逃げようと、他の魔物を盾にして

反転する。

しかしそれを許す司ではない。

次の瞬間、彼を中心に重力場が形成される。

それは半径数百メートルにも及ぶ物。いくら

先読みでそれが来ると分かっていても、

逃げられなければ意味が無い。

そして、数百匹の魔物が、重力に押しつぶされ

大地のシミとなった。

 

 

「ん?」

数百に及ぶ魔物を排除した時、私は一匹だけ

逃げる四つ目狼を見た。すると途中でローブの

男がその狼に飛び乗るのを確認した。

「逃がすかっ」

 

私は空間を歪め、狼目がけて手を伸ばした。

当然奴は気づいた。だがそれ故に、次の一撃、

テールスピアの一撃を避けられなかった。

突如目の前に出現した腕を跳躍して避けた

次の瞬間、同じく空間を歪めて放った

テールスピアの一撃が、狼の腹部を深々と

貫いた。

 

そして貫いたままの狼とローブ男を、空間の

歪みを使って私の前まで引き寄せる。

テールスピアを抜くと、ドッと言う音と

共に狼とローブ男が落ちる。

 

私はローブ男の方に歩み寄る。

「ッ!?く、来るなっ!」

すると私に気づいたのか男は手にしていた

メカニカルな杖を私に向けた。

……しかし、今の声と奴の持つ杖。

あれは私が清水に与えた物だ。

 

私は、一瞬で男との距離を詰める。

「ひっ!?」

『ドッ!』

驚き悲鳴を漏らす男の腹部に一撃。

当然手加減はした。

男、清水は体をビクンと震わせると、

白目を剥いて気絶した。

 

気絶した男を地面に横たえ、ローブの

フードを取るが……。

 

「やはりか」

男は、間違い無く清水だった。

と、そこへ魔物の討伐を終えたハジメ達が

やってきた。皆、大した怪我は無い様子だ。

「ハジメ、それに皆も。どうですか?」

「魔物の大半は倒したよ。少しだけ

 北の山の方へ逃げていったけど」

「そうですか。まぁ、5万の軍勢の90%は

 討伐出来たのです。十分でしょう。

 今回はあくまでも防衛が目的ですし、

 逃げるのを追う事も無いでしょう。

 ……それに、黒幕は捕らえましたし」

私の言葉に、皆が私の足下の清水に目を

向ける。

「……清水君」

「司の予想が当ったんだね」

どこか戸惑いながらも名を呼ぶ香織と

呟くハジメ。

 

「……彼については、先生達を交えて話す

 事になるでしょう。……しかし、彼は

 少なくともティオを操り、間接的とは

 言え5人の冒険者を殺しています。

 ……間接的、だからと言って私はこの

 男の罪にならないとは、考えていません」

清水は、既に5人の人命を奪った。

間接だから、などと言う理由は言い訳には

ならない。

……いざと言う時は、私が射殺する。

 

「ともかく……。パル」

戦いは終わった。私は防壁の上のパルに

通信を繋げた。

「戦いは終わった。……お前が報告する

 んだ」

『はい。分かりました』

 

 

通信を受けたパルは、防壁の淵に立つと

ウルの町を見下ろす。防壁の近くにも人は

集まっており、皆がパル達を見上げている。

パルは深呼吸をしてから大きく息を吸い込んだ。

 

「聞けぇ!ウルの町の人々よ!」

そして彼は高らかに叫ぶ。

「魔物の群れは無事に退けられた!!

 もう町は安全だっ!」

パルは叫ぶが、人々には実感がわかないのか、

戸惑いざわめいている。

「お前達は、生きている!それが、勝利の

 証だ!」

 

やがて、パルの言葉が届いたのか、人々の

ざわめきが大きくなる。

「勝利は我らの手の中に有り!

 勝ち鬨を上げろぉっ!

 おぉぉぉぉぉぉっ!」

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

パルは、手にしていたミスラを頭上に

掲げる。後ろに居たハウリアの兵士達も、

手にした武器を高く掲げ、雄叫びを上げる。

 

「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」

そして、彼等に続いて街中でも男達が雄叫びを

上げ、女達は嬉し涙を漏らしていた。

 

司のヴァルチャーが、漆黒の死天使として

話を残す結果となったように、パル達の存在も

また、強く民衆の心に刻みつけられた。

そして、パル達の事を、『鋼鉄の英雄』と

町の人々が呼び始めるのは、少し先の話。

 

 

こうして、戦闘は終わった。遠くでパル達と

民衆の雄叫びが聞こえる。

……元々、パル達を呼び寄せたのはGフォースの

力と私の力を人間たちに理解させる為だ。

5万の魔物の軍勢を退けるなど、この世界の

一般的な軍隊を総動員しても無理だろう。

 

そう、彼等に無理な事を、私達は『出来る』と

知らしめる。それが目的の一つだ。

要は核抑止論と同じだ。『こちらが撃てば撃たれる』。

核抑止を一言で言えば、この言葉が似合う。

そして、撃たれたらひとたまりも無い。

故に、核兵器を安易には使えない。

だが前提条件として、核兵器を撃たれた場合の

被害の大きさを理解しておく必要がある。

 

私は、今回の事を通して、トータス世界に

私達の力を示した。これによって、

『我々を敵にする事の危険性』を改めて示そう

と言う考えだった。

我々の力、もっと言えば破壊力を奴らに示し、

戦う事を躊躇わせる。それが、パル達を

呼び寄せた目的の半分でもある。

 

まぁ、上手くいったようで何よりだ。

後は適当にG・フリートとGフォースの名前

を教えておけば、勝手に広まるだろう。

 

で、最後に残った問題は……。

「清水の処遇、か」

私は足下で気絶したまま縛られ、転がっている

清水に目を向けた。

 

さて、こいつはどうなる事やら。

 

そう考えながら、私達はウルの町の方へと

戻っていったのだった。

 

     第35話 END

 




次回は清水の事についてです。
結構オリジナルな展開になると思います。
お楽しみに。

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