ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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感想でつまんないと言われたのと、夏休みが終わって大学の後期が
始まったのが合わさって最近失速気味です。

もしかしたら次回は、気分転換で書いた幕話みたいなのを
投稿するかもしれません。


第46話 這い寄る魔の手

~~~前回のあらすじ~~~

カトレアを退けたハジメと司たち一行はホルアド

の町を後にし、その直前司は雫のタイプCの搭載

されていた司の思考ルーチンがベースのAIに

肉体を与えて蒼司を作り出した。雫達の

お目付役として彼等の仲間になる蒼司。そんな

蒼司と司に、雫は密かに思いを寄せ始めるの

だった。

 

 

カトレアの襲撃の後、事が事だけに、蒼司を

含めた一行は、愛子先生や清水達と共に一路

王都へと戻った。

そんな彼等に課された課題が、対人訓練だ。

改めて自分達が何をしようとしていたのかを

ホルアドの一件で知り、これまで攻略組に

参加していた生徒達の大半は落ち込み

気味だった。しかしそれでもやるしか無い。

と言い聞かせ、彼等は対人訓練を

行っていた。

 

それは、ある日の蒼司の一言から始まった。

 

「別の戦力を用意する?」

「あぁ。……お前等の大半は人を殺せない。

 抵抗がある。それは重々承知だ。正直、

 そんな奴らを戦場に連れて行った所で

 役に立たねぇしお前等の立場を

考えると、弱点としてつけ込まれ狙われる

だけだ」

訓練場に集まった光輝達や清水達を前に語る

蒼司。

彼の言葉に光輝が密かに歯がみする。

「だからこそ、ガーディアンとハード

 ガーディアンを王国軍に貸与し、

 更にジョーカーも提供するのさ」

「え!?蒼司、それホントなの!?」

蒼司の言葉に驚く雫。

 

「あぁ、もちろん本気さ。……今回の一件で

 魔人族が本格的に動き出したのは

 間違い無い。本格的な開戦も近いだろう。

 ……そう考えると、躊躇いって言う物を

 一切持たないガーディアン達と、既に

 実戦に慣れている兵士や騎士にジョーカー

 を与える。ジョーカーを纏えば、

 最弱だったハジメがトラウムソルジャー

 の群れを突破出来る位には強くなったんだ。

 それに、あの頃と比べても最新版の

OSにアップデートしたジョーカーの

戦闘効率は高くなっている。お前達

が人殺しになれるより、ずっと確実に

王国軍は強くなる。そうなれば、

お前達は最悪戦う必要なんてない」

『戦う必要は無い』。そんな言葉に彼等は

驚き、若干瞳に輝きが戻った。

 

「で、でも待って!」

しかしそれを雫が止める。

「私達が必要無いって事は、お払い箱って

 事でしょ!?そしたら、帰れないんじゃ」

「た、確かに。……戦争の勝利貢献の代価

として帰還を願う以上、戦わないと

言うのは……」

雫の言葉に、考え込む永山。

周りの者達の空気も落ち込む。

 

「その点は心配ない。今現在オリジナル。

 つまり司と仲間であるハジメ達が帰還方法

 を探して旅をしている。生憎、情報漏洩を

 警戒して詳しい事は言えないが、不可能

 ではない。それがオリジナルの意見だ」

「ち、ちょっと待てよ!不可能ではないって。

 そんな無責任な事言ってんじゃねよ!!

 あいつがダメだったら、どうするんだよ!?」

蒼司に食ってかかる近藤。

 

「無責任、ね。だが、テメェ等だけじゃ地球

 帰還は無理だ。現状お前達が帰還を果た

 せるだろう方法は二つ」

そう言うと、蒼司は人差し指を立てた。

「一つ。イシュタルの言葉を信じ、戦争に

参加して魔人族を皆殺しにして

この世界にお前達を呼び寄せたエヒトに

頼るか」

 

更に中指を立てる蒼司。

「二つ。司たちが地球帰還方法を確立

 するまで待っているか。……戦争と

 殺しに慣れて、不確定な神に祈るか。 

 司たちが方法を確立するのを待つか。

 そのどちらかだ」

「不確定?どう言う意味だ」

光輝が蒼司に問いかける。

 

「思い出して見ろ。俺達に地球帰還の

 可能性を示したのは誰だ?イシュタルだ。

 エヒト本人じゃない。ましてや、確約書

 なんて物も存在しない。イシュタルは

 言った。エヒトの意思次第だと言った。

 戦争に勝って、救世主になった者の

 願いを、無碍にはしないだろうと言った

 だけで明確な帰還の証拠になる事は

 何一つも無い。これを不確定と

 言わないで、なんて言う」

『まぁ、帰還させてくれないであろう

 証拠の方が、多く揃ってるんだけどな』

そう蒼司は頭の中で呟いた。

 

「そ、そんな事は無いだろ!俺達は

 それを信じてここまで戦ってきたんだ!

 今更!」

「信じてきたからって、それが現実になる

 訳じゃねぇぞ」

光輝の言葉を、蒼司はそう言って押さえ込む。

 

「……現実ってのはな、残酷なんだ。お前等

 自身、エヒトによる帰還の可能性を

 信じていたから戦ってきたんだろう?

 ……帰れないかもしれない。そんな現実

 から目を背けるために、不確定な可能性を

 信じて、いや、信じるしか無かったから、

 それに縋るように信じ続けた」

蒼司の言葉に、辻など女子が震え出す。

 

しかし……。

「だが、だからこそその信じる相手を

 変えるだけだ」

「え?」

呆けた声を出したのは、園部だ。

「まず第1に、よ~く思い出して見ろ。

 司には、離れた空間同士を繋げる力が

 ある。要は、この能力をレベルアップ

 させて、異世界同士を繋げるゲートを

 創れれば、俺達は帰れるって訳だ。

 加えて、この世界に俺達を召喚したのは、

 恐らく神様が使う神代魔法だ。司たち

 はその情報を得るために各地を巡って

 いる。……幸いな事に司は、魔力が

 無限大だ。適性に関しては、まぁそこは

見つけてみない事には分からん。

……ともかく、今司やハジメ達は帰還に

向けて動いている。

 戦うのが嫌なら引きこもって彼奴らの

 迎えを待つも良し。或いは両方の

 可能性にかけて、戦争に参加しながら

 エヒトのよる帰還と司による帰還。

 その双方を待つのも良いだろう」

 

「つまり、戦うか。それとも怯えているか。

 って事ね」

静かに答える雫。

「そうだ。ガーディアン達やこの国の人間に

 戦争を任せるもよし。覚悟決めて戦うも

 よし。……全部自分で決めろ。選択肢は、

 いつだってオープンだ。言ったろ?自分で

 選択出来ない者は戦場で決断出来ずに

 死ぬってな。……さぁ、どうする?」

 

問いかける蒼司。すると……。

「俺は、戦うべきだと思う」

真っ先に声を上げたのは、永山だ。

「帰還の可能性が高い方に賭けたい。そして、

 選択肢が選べるのなら、エヒトと司。

 その両方に賭けるために戦う」

「戦場に出る以上、命を落とすリスクは

 増えるぞ?それが、両方、或いはエヒトに

賭ける事の対価だ」

「あぁ。それでも、帰る為だ。……それに、

 開戦したら俺達は真っ先に狙われそうだ。

 その時の為に、訓練は必要だろう?」

「確かにな?他の連中はどうだ?」

 

蒼司が問いかけると、他の者達も皆戦うと

言い出した。彼等としても、帰還の確立を

少しでも高くしておきたいのだろう。

「分かった。……んじゃ、当面ガーディアン

 とハードガーディアンの供給は無しだ。

 ……お役御免にされちゃぁ、不味いからな」

 

そうして始まったのが、対人訓練だった。

 

そんなある日の事。雫は青龍を下げて颯爽と

王宮の廊下を歩いていた。そのすぐ後ろを

歩く蒼司。

すると雫を見るなり顔を赤らめるメイドや

令嬢の姿がチラホラあり、逆に蒼司に

敵意と言うか、嫉妬のような視線が

突き刺さる。

 

「改めて思うけど、雫って同性に人気

 あんのな?」

そう言って笑みを浮かべる蒼司。

「ハァ。笑い事じゃないわよ?年上の人

 にお姉様なんて呼ばれるの、ホント勘弁

 して欲しいわ」

「……。相変わらず問題は山積みか。色々と」

「えぇ。色々とね」

と、一瞬どこか遠い目をする雫。

 

「にしても、メルドさんと愛子先生、話が

 あるって言ってたのは何なのかしらね?」

「さぁな」

『まぁ、大凡検討は付くが』

そう考えながら、蒼司は雫の後に続いた。

 

そして、愛子の部屋の前にたどり着いた二人。

『コンコンッ』

「はい?」

雫がノックすると、中から愛子の声が

聞こえてきた。

 

「八重樫と蒼司です。入ってもよろしいですか?」

「えぇ、どうぞ」

「失礼します」

ドアを開けて中に入る二人。中には、愛子、

清水、メルドの3人が待っていた。

 

愛子に促されるまま椅子に腰を下ろす二人。

「それで、先生から話というのは?」

「はい。……実は、私も先日メルドさんから

 聞いたばかりなのですが……。

 教会内と王国内部で、新生君を異端者として

 認定しようとする動きがあるそうです」

「ッ!?本当ですか!?」

驚く雫。無理も無い。彼女を始め、ここに居る

面々は司の武力を知っているからだ。

「ほ~?奴ら、オリジナルと戦争でもしよう

ってのか?旦那は止めなかったのかい?」

そう言ってメルドに話題を振る蒼司。

 

「無論、私も騎士アラン達も止めた。兵に

 どれだけ被害が出るか、分かった物

 ではない」

「まぁ、アイツはやろうと思えば国だって

 消滅させられっからなぁ。それが

 分かってて戦争したいって言うなら、

 まぁ死ぬだけだな」

「ちょっ!?蒼司そんな無責任な!」

と、テーブルを叩きながら立ち上がる雫。

「俺に怒るなよ。連中がオリジナルと

 戦争をするって言い出したんだ。

 俺に言わせりゃ、それで死んだとしても、

 それは選んだ奴らの責任だ。

 ……まぁ、無能な上のせいで殺される

 兵士なんてのはよくある話だがな」

「おい蒼司。いくら恩人と言えど、陛下を

 侮辱するのは許さんぞ?」

蒼司の言葉に、鋭い目を向けるメルド。

すると……。

 

「何か、可笑しくないか?」

その時、黙ったままだった清水が静かに

口を開いた。

「え?どう言う意味ですか?清水君」

「いや。王様たちって新生の力を知ってる

 訳だろ?ベヒモスの件もしかり。ウルの

 町の件もしかり。今回の件もしかり。

 確か、前に異端者認定しようとした時

 って、延期の話が出てたよな?

 人族に仇成した時がくれば、その時に

 異端認定すれば良いって。それを信じれば、

 新生が人族に仇成す事をしたって

 事になるけど、それって何だ?或いは、

 それを無視して異端認定しようと

 しているのか?」

と言う清水の言葉に、蒼司以外の3人が

確かに、と呟きながら考える。

 

すると……。

「……。いよいよ、奴が出張ってきたって

 所かねぇ」

ギシッと背もたれに体を預け、天井を

見上げながら呟く蒼司。

「奴?誰のこと?」

それを聞いていた雫が問いかける。

 

「ん~。そうだな~。この話、一番

 ダメージがでかいのはメルドの旦那

 だろうな~」

「わ、私だと?一体どういうことだ?」

首をかしげるメルド。その時、愛子は

ハッとなって思い出した。

 

この世界、トータス人が信仰している

神の、狂気の真実を知れば一番驚くのは

トータス人だ。つまり……。

「ま、まさか!?もしかしてエ」

「はいストップ!」

驚き、立ち上がる愛子。しかし次の瞬間、

蒼司が指を鳴らして周囲に結界を作り

出した。

 

「落ち着けよ先生。今大声でそんな真実を

 ぶちまけると、色々不味いぜ?どこで

 誰が聞いてるか、分かったもんじゃ

 無いからな?」

「あっ。ご、ごめんなさい」

謝りながら席に座り直す愛子。

 

「ちょっと蒼司。あなた、何を知ってるの?

 何を隠してるの?」

「聞きたいか?正直、心理的ダメージは

 大きいかもしれんぞ?」

「ッ。そんなに?」

「あぁ。何せ、俺達がここに居る、本当の理由

 であり、この世界の天地をひっくり返すような

 超絶ヤバい真実だからな」

 

その言葉に、雫は清水やメルドを見る。二人とも、

僅かに迷ってから頷く。

それに頷き返す雫。

 

「じゃあ、聞かせて頂戴。その超絶ヤバい真実

 って奴を」

「OK。……んじゃ、覚悟して聞けよ?」

 

 

そうして、蒼司は語り始めた。神エヒトが

この戦争をゲームと捉えている事。召喚された

彼等は、言わば『新しい駒』である事。

かつてこの真実を知り、神に挑んだが敗れた

存在、『反逆者』の烙印を押された『解放者』が

居たこと。更に、それに付随して、司たちが

その解放者の居城であった大迷宮を巡り、

帰還のヒントである神代魔法を集めている事。

 

そして、今回の一件、エヒトの介入が始まった

のかもしれない、と言う事だ。

 

「そ、そんな……」

そしてやはり、一番ダメージを受けたのは

メルドだった。

「……我々の信じた神が、狂っているだと?」

「あぁ。奴、エヒトにとっちゃこの世界 

 その物がチェスの盤上。そこに住まう人間

 は、恐らく魔族も含めて、全員が駒に

 過ぎない。当然、光輝達も、そして雫。

 お前もな」

「ッ!?そん、な……」

 

「オリジナルは、オルクス大迷宮の、100層

 より更に下に続く、真の大迷宮を突破し、

 名前の元となった、解放者の一人、

 オスカー・オルクスの残した映像記録を 

 見る事で真実を知った。ハジメ達もな」

「じゃあ、まさか……」

「仮に戦争に勝ったとしても、奴が俺達を

 帰すとは思えない。むしろ頑張って戦争

 に参加したのに、帰れないと知って

 絶望する俺達を見て嗤う。そんな所

 だろう。……そう言う腐った野郎なんだよ。

 この世界の神は」

「で、では!聖教教会は!イシュタル達は!」

「奴らはエヒトの操り人形さ。雫達は気づいて

 無かったかもしれないが、初めて召喚された

 時、お前等色々テンパって喚いてただろ?

 あの時イシュタルは、まるで神であるエヒト

 に呼ばれた事を何故素直に喜べないのか、

理解出来ない。そんな目でお前等を見てたぜ?

 コレに気づいたのは、ハジメとオリジナル

 だけだ。……奴は狂気的なまでにエヒトを

 信じている。そこを利用されて、今じゃ

体の良い操り人形って訳さ。それに聖教

教会の考え、亜人や魔人族への差別意識。

これってむしろ戦争を煽ってるようにしか

見えねぇだろ?」

 

そこまで言うと、蒼司は出されていた紅茶

を飲んだ。

 

「とどのつまり、この世界の住人はみんな、

 狂った神を喜ばせるための、喜劇の

 役者。奴は役者が何人死のうがどうでも

 良い、最低最悪のクソ野郎って訳だ」

すると……。

『ダンッ!』

「ふざけやがって!俺達は駒なんかじゃ

 ねぇ!」

机に拳を叩き付け、怒りに震える清水。

 

そんな彼を、隣に座っていた愛子が

背中をさする事で宥める。

「……清水。覚悟はあるか?」

蒼司が彼に問いかけた。

「覚悟?」

清水への問いかけに、疑問符を漏らす

雫。

 

「そうだ。……敵は神。それも狂ってる

 と来た。そして解放者の前例だ。

 エヒトは、解放者が敵になった、もっと言えば

 駒の役目を放棄した時点で、世界の

 人間に殺させようとしたくらいだ。

 ……最悪、俺達はこの世界の人間全て

 から、神の敵として追われる事に

 なるだろう」

「……」

清水は答えない。

「オリジナルは、もしそうなればこの世界を

 滅ぼしてだって、ハジメ達を守る。

 そして恐らく、この場に居る4人もな」

「ッ。それはどう言う意味だ?蒼司」

「オリジナルも俺も、この場にいるお前達の

 事を信頼している。ジョーカーを託したのは

 その証の一つだ。……それで、どうする?

 この現実を嘘と断じるか。真実だと信じ、

 戦うか。……アンタ等は、どっちを選ぶ」

 

蒼司の問いかけに、しばし皆が黙り込む。

その時。

「俺は、戦う」

最初に呟いたのは、清水だ。

「俺は、決めたんだ。俺を助けてくれた恩師を、

 先生を必ず守るって。だから戦う。神が

 敵で、先生を狙ってきたとしても、もう、

 逃げるもんか。……戦ってやる……!

 神だろうが何だろうが、守り抜いてやる!

 絶対に!」

「清水君」

その答えが、愛子をも動かす。

「私は、教師です。私は、皆と一緒に、

 元の世界へ、地球へ帰りたい。そのために

 出来る事があると言うのなら、全力で 

 取り組むだけです。戦う事は、出来ない

 かもしれませんが」

 

「いや。それで良い。……皆、ここで今

 こうして居る理由がある。……旦那。

 アンタはどうして騎士になったんだ?」

「……私は、民を、人々を、未来ある

 子供達を守る為に。騎士になった。

 ……蒼司。神は、いやエヒトは、

 そんな子供達の未来を、踏みにじる

 と言うのか?」

「さぁな。会った事もねぇ野郎だ。

 だが、人の死を見て嗤ってるような

 野郎だ。子供達の事なんざ、どこにでも

居る羽虫程度にしか思ってねぇと思うぜ?」

「そうか」

 

そう頷き、しばし俯くメルド。だが……。

「ならば……。神がこの国の人々の未来に

 暗雲をもたらすと言うのならば、

 私は戦う。この国を、祖国に生きる人々を

 守ると誓った、一人の騎士として」

 

その答えに、蒼司はピュゥっと口笛を

鳴らす。

「全く。オリジナルが仲間として認めるだけ

 あるぜ。皆カッコいい事言いやがって」

そう言って、クックッと笑う蒼司。そんな

彼の視線が、雫に向く。

 

「で?お前はどうする?雫」

「ッ。どうって。……現実的な問題として、

 勝てるの?神様になんて」

「勝てる」

雫の言葉に、蒼司は開口一番に答えた。

 

「って言うか、多分オリジナルの司なら

 余裕だと思うぜ?」

そう言って笑う蒼司。

「そ、そんな楽観的な。証拠はあるの?」

「う~ん。明確な証拠があるわけじゃねぇが、

 司には、大まかに分けて9段階の力が

 ある。これは上がっていく程ヤベー力だ」

「それで、どうなの?彼はエヒトに勝てるの?」

「司の強さ。あれは普段からセーブしている物

 だ。理由は簡単。あいつの力にこの大地、

 いや、この世界が耐えられないんだよ」

 

「……。はぁ?」

呆けた声を出す雫。

「今、あいつは9段階までの力を宿している。

 そして今、10段階目まで進化を続けている

 途中だ。……で、段階を説明するとだな。

 司は、本気を出せば物理法則の一切を無視

 出来る。メルドの旦那以外に分かりやすく

 言えば、無から有を作る事なんて造作も無い。

 それこそ、一瞬で核爆弾を作り出す事もな」

「ッ!?それ本当なの!?」

「お、おい。かくばくだんって何だ?」

驚く雫と理解出来ないメルド。

 

「核爆弾、っつうのは、一言で言えばデッカい

 火の玉だ。最も、爆発すりゃ、王国を

 一瞬で消滅させられるほどの、やべぇ代物

 だけどな」

「ッ!?一瞬で、だと?」

「あぁ。ブラックホールにビッグバン。

 超新星爆発並みのエネルギーを一瞬で具現化

 し、攻撃として放つ事が出来る」

「う、宇宙創造のエネルギーを操れるって。

 何だよそれ」

「司は第7形態の時点で、既に体内に

 『宇宙』と呼べる物を宿していた。それだけ

 の事さ」

驚く清水に、そう語る蒼司。

 

「ガンマ線バースト、って知ってるか?

 超新星が爆発したとき、そこから膨大な量の

 ガンマ線が放出される。これが発生したとき、

 超新星から5光年以内の惑星表面にいる

 生命体は、全滅する。……司は、『普通の』

 超新星爆発が引き起こす物以上の

 ガンマ線バーストだって使える。言っちゃ

 なんだが、生命取っては天敵なんてもんじゃ

 ねぇよ。神が敵になったからって、

 恐れる事はねぇ。所詮は高々惑星一つの

 神様。……こっちには宇宙宿した王様が

 付いてるんだ。負ける訳ねぇよ」

蒼司の言葉に唖然となる雫達3人。

メルドに至っては色入ちんぷんかんぷん

で頭を捻っていた。

 

「まぁ、色々説明したって分からねぇか。

 だったら俺から一言。『司は出来ない事を

 出来るとは言わない』。これだけは

 覚えておけ」

蒼司に言葉に、4人はハッとなる。

「アイツは勝てると思ってる。だったら

 勝つさ。司は、オリジナルはそう言う男だ。

 そして俺も、勝算の無い戦いはしない主義

 でね。勝てると思って居るから、今日ここで

 お前等に真実を話した。それだけよ」

 

そう言って、蒼司は再び紅茶を飲む。

 

「さて、それじゃ話を戻そうじゃないか。

 王国の話だが、旦那と先生は直に王様達に

 会ったんだろ?どうだった?」

「どうだったと聞かれても。……そう言えば、

 陛下も周りの人も、以前と比べて、その、

 どこか可笑しい気が……」

「愛子殿も、ですか?実は私も、何やら陛下の

 様子が可笑しいと感じていたのです」

愛子先生の言葉に同調するメルド。

 

ふむ、と顎に手を当てる蒼司。

「……もしかすると、洗脳か、或いは意図的

 に天啓か何かを見せる事で、狂信者として

 取り込んだか……」

「では、まさか陛下や側近達は……」

「エヒトの傀儡にされた、と見ても

 可笑しくはねぇだろうな。さっき

 話した通り、解放者達はエヒトが広めた

 神の敵という法螺話に騙された人間に

 攻撃され、守るべき人間を攻撃出来ずに

 敗れたって話。要はその再来。 

 正確には、それの小規模な再来だ。

 まぁ最も、司の場合敵なら容赦無く殺せる

 からな。無意味っちゃぁ無意味なんだが……」

と言って視線を巡らせ、愛子を見ると、

愛子は蒼司を睨んでいた。

 

「んんっ!ま、まぁ俺達が止めれば良いだけの

 話だな。うん」

「あっ。蒼司、もしかして愛子先生弱点?」

「黙らっしゃい。……とにかく、現状の確認だ。

 現在王とその側近は、まだ未確定だが、

 恐らくエヒトかその手先によって洗脳か

 何かで操られている可能性が高い。

 現状、それを知るのは俺達5人であり、

 止められるのもまた俺達5人だ。

 そして清水。お前は闇魔法を極めてる

 から、もしかしたら色々頼るかもしれん。

 プレッシャーを与えるようで済まんが、

 いざって時は頼むぞ」

「あぁ……!」

「それと、俺達はここでこうしてエヒトと

 戦う算段を話し合ってる訳だが、この

 結界を超えてエヒトの野郎が俺達の会話を

 聞いてる可能性もある。更にプレッシャー

 をかけて悪いが、お前等、絶対に気を抜く

 なよ?何があるか分かんねぇぞ。特に、

 先生は戦闘力が皆無だ。清水、先生の

 事頼むぞ」

「任せておけ。きっちり守ってやる……!」

 

「とにかく、今後の方針は決まったな。

 俺達5人の目的は、エリヒド王をエヒトの

 洗脳から解除し、王国と司たちとの戦争を

 回避する事だ。ただし、全員ひっそりと

 動け。と言うか今はまだ普段通りにしてろ。

 目を付けられるのは、避けたいからな。この

 5人以外には、絶対に喋るな?情報漏洩

 だけは、絶対に避けなきゃなんねぇからな」

蒼司の言葉に4人が頷く。

「ま、過度な心配は要らねぇよ。いざとなったら

 国民全員、司が国でも創って抱え込みゃ

 それで万事OKよ」

との言葉に、4人は若干ずっこけた。

 

「く、国を作るって。そんな簡単に……」

「え?イヤイヤ簡単だろ?空いてる土地に

 要塞設置してそこに人入れりゃそれで

 OKだろ?」

「その要塞創るのにどれだけの物資と

 人力が!……って、司なら指ならして

 一発で要塞創れそう」

「「「確かに」」」

雫の言葉に頷く愛子、清水、メルドの3人。

「ま、そういうわけだ。いざとなりゃ、

 司をエヒトだとか適当に偽って国

 創ってそこに人を避難させりゃそれで

 良いんだよ。ま奥の手だけど。

 とにかく、過度な心配すんなって事さ。

 安心しろ、宇宙を宿した王様の分身が

 居るんだ。そうそう奴らの好きには

 させねぇよ。ま、とりあえず今日は

 このくらいで解散しようや」

と言う蒼司の言葉に、4人は疲れた

表情で頷いた。

それを確認した彼は結界を解除した。

 

「それじゃあ先生。お茶、ごちそうさま

 でした。行こうぜ?雫」

「あ、え、えぇ」

席を立つ蒼司に続いて、同じように席を立つ

雫。その時。

≪そんじゃ、くれぐれも口にチャックする

 のを忘れないようにな≫

その場に居た全員に、蒼司からのテレパシー

が届くのだった。

 

こうして、愛子、清水、メルド、雫の4人は

自分達が置かれている本当の状況を理解

するのだった。

 

 

しかし、そんな日の夕方。

愛子は清水を伴って食堂に向かっていた。

「あの、何もそんな四六時中私の傍に

居なくても良いんですよ?」

「何言ってるんすか先生。俺達は愛ちゃん

 護衛隊ですよ?先生を護衛しなくて

 何するんですか!」

そう言って意気込む清水。肝心の愛子は……。

「あぁ、とうとう清水にまで愛ちゃん

 呼ばわり」

と、そこを気にしていた。

「ちなみに城内での護衛はローテーション式

で明日は園部さんです。俺は毎日でも

良かったんですけど、皆が譲らなくて。

一人1日って形になりました」

「あ、アハハ。そ、そうですか」

護衛隊のガチ度に若干引き気味の愛子。

 

その時。

『バッ!』

不意に前を歩いていた清水が、何かを感じた

かのように前方を睨みながら愛子を庇う

ように右手で愛子を制止した。

「清水君?どうし」

どうしましたか?と言おうとした愛子。

しかし彼女は、前方に立つ人影に気づいて

言葉を途切れさせた。

 

現れたのは、銀髪の修道女の姿をした女だ。

夕陽のオレンジ色に染まる廊下の光景と

相まって、どこか絵画的な美しさを醸し出す。

しかし、清水の中では、本能が警鐘を

鳴らしていた。

 

『何だ。あいつ。……普通じゃない!』

そう悟った清水は、躊躇わずにジョーカー

のスイッチを押し込み、即座に展開する。

 

「ほう?それが、イレギュラーの作り出した

 鎧ですか?」

『ッ!?イレギュラー!?司の事か!?』

「テメェ、一体何者だ!?ッ!?」

清水は、ジョーカーの力で女をスキャンした

が得られたデータに驚いた。

 

「テメェ、人間じゃねぇな!?」

警戒心を高めながら、清水はガーディアンを

召喚し自分もノルンを抜く。

「……厄介ですね。その鎧。……しかし目下

 の目的は、畑山愛子。貴方を捕らえ、

 イレギュラーをおびき寄せる餌になって

 貰う事」

「ッ!?先生を囮に司をおびき寄せて殺そう

 ってのか!?させるかよ!」

咄嗟にノルンを構える清水。ガーディアン達も

ライフルを構える。が……。

 

『ダッ!』

ガーディアン達の壁を超え、女は一瞬で

清水のタイプコマンドとの距離を詰めた。

「なっ!?」

「排除」

驚く清水目がけて、繰り出される裏拳。

『ドゴォッ!』

「がはぁっ!?」

清水はそれを左腕でガードしたが、パワーを

殺しきれずに引き飛ばされ壁に激突した。

「清水君!」

叫ぶ愛子。

 

反応が遅れたガーディアン4機がライフルの

銃剣を手に斬りかかるが、女はその攻撃を

よけ、瞬く間にガーディアンをパンチとキック

だけで破壊してしまう。

 

ガシャンッと音を立てて崩れ落ちるガーディアン。

そして、女が愛子に振り返る。

「あ、あぁ……」

驚き、恐怖し、動けない愛子。と、その時。

『コロンコロンッ』

「ん?」

女の足下に、筒状の物がいくつも転がって

来た。

 

すると……。

『『『ブシュゥゥゥゥッ!!!』』』

突如として筒状の物体から大量の煙が放出

された。

「これは……」

突然の事に驚く女。それは、殴り飛ばされ

ながらも清水が放ったスモークグレネードだ。

 

「先生ッ!逃げろッ!走れぇぇぇぇぇっ!」

「ッ!」

次の瞬間、清水の叫びが聞こえ、愛子は

走り出した。

「無駄な事を」

女は、『一度は見失った』愛子の気配を

探り、見つけた。

 

「そこですね」

床を蹴り、瞬く間に距離を詰める女。

驚き、振り返る愛子。しかし……。

『ドッ!』

「うっ!?」

当て身を放たれた愛子は、避ける事が出来ず

に、うめき声を上げると力無く倒れそうに

なった。女は、すぐさま愛子を肩に担ぐと、

凄まじい速度でその場を後にした。

 

「ぐっ!?先、生」

清水は、揺れる視界の中で、女が愛子を

攫っていくのを見ていた。

 

「ちく、しょぉ……!

 畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

夕暮れの王城に、清水の慟哭が響き渡った。

 

 

一方その頃、愛子を抱えて逃げる女。

しかし女は気づかなかった。気絶している

はずの愛子の口元が、『笑みを浮かべている』

事実を。

 

その笑みの正体を知る者は、ほんの一握り

だけだった。

 

果たして、愛子の笑みの正体とは、一体

何なのか?

 

     第46話 END

 




って事で愛子は原作通り……。ではないんですね~これが。
いや話的には原作通りに見えますけど、実際は
違うんですよ。まぁそこは後のお楽しみ、と言う事で。

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