ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今回はほぼアンカジでのオリジナルの話です。


第49話 同盟締結

~~~前回のあらすじ~~~

謎の毒素に汚染されたオアシスの水によって、大半

の人間が苦しむアンカジ公国。ハジメや司は彼等を

助ける為に動き出した。司の生み出した解毒剤。

更に彼の魔力を吸収する力。人の治癒力を瞬間的に

高める力を利用し、瞬く間にアンカジ公国は

救われた。そんな中で公国の人々は司の異常な

力に恐れと畏怖を抱きつつも、彼に手を合わせる

のだった。事態終息後、宮殿での会食に招かれた

司たち。そこで司は、ランズィ達に軍事同盟を

持ちかけるのだった。

 

 

「軍事同盟、ですか?」

「えぇ。そうです」

驚きつつも問い返すミスタービィズに私が

答える。私は、食事を終えているハジメと香織、

ルフェアやシアに頼んでミュウを連れ出して

貰った。ハジメ達が遊ぼうと言うと、私の方を

見てきたので、遊んでおいで、と言って促す。

残ったのは私とティオだけだ。

私は改めて2人の方を向く。

「今回の一件で、魔人族がアンカジを狙って

 いるのは明白です。そこで我々、つまり

G・フリートとアンカジ公国が同盟を

結びます。我々の側から提供するのは、

兵力、医療技術、物資などです」

「兵力?と言うと?」

「私達G・フリートには、一般兵として

 ガーディアンという鋼鉄の兵士を居ります」

そう言って、パチンと指を鳴らせば私の後ろに

2体のガーディアンが現れ、ランズィ公達に

対して敬礼をした。

「おぉ!これは……!?」

驚き、席を立つランズィ公。そのすぐ傍の

ミスタービィズや、周囲の執事やメイド達も、

驚いている。

「彼等は人ではありませんから、病になる

 事も疲れる事もありません。加えて、武装

 には銃という現在この世界には存在しない

 兵器を持たせてあります。そうですね。

 アンカジの規模から考えて、最低限でも

 5個師団。合計で10万体と言った所

 でしょうか?」

「じゅ、10万!?司殿は、それだけの兵力を

 用意出来ると言うのですか?!」

「彼等は人ではありませんから。その体を

 創り上げ、後は戦うために必要なデータを

 中に入れるだけ。そして武装を持たせれば、

 兵士のできあがりです。人が数年で一人前と

 なるのに比べて、ガーディアンならば数日で、

 いえ、早ければ1日で実戦に投入出来ます。

 加えて、彼等は恐怖を感じません。痛みもです。

 敵を恐れず、死を恐れず、いざとなれば自分が

 盾となって味方を守る。壊れても新しく

創れば良い。『兵士』として理想的な存在です」

「……その、理想の兵士を司殿ならば10万も

 用意出来ると言うのか。……正直、

 信じがたい」

私の言葉に難しい顔をするランズィ公。しかし……。

 

「信じがたい。が、君なら簡単に用意できそうだ」

次にはため息交じりにそう呟いた。

「それで?司殿はそんなガーディアンの大部隊を

 我々に与えて下さると言うのですかな?」

「えぇ。それと、我々の持つ医療技術もです。

 ガーディアンは現在、戦闘用のデータを

 搭載していますが、そのデータを書き換えれば、

 医療用ガーディアンの配備も可能です。

 更に、この世界にはない薬の類いも、我々

 ならば簡単に生産出来ます。これらの

 医療技術、医療物資に加えて、こちらで

 用意出来る物があれば物資として提供

 しましょう。それ以外にも、必要があり

 こちらが対応可能な事案であれば、優先して

 協力する事も可能ですが?」

 

と言う私の言葉に、二人は顔を見合わせる。

「……正直、司殿たちが我が国の味方になって

 くれるのであれば心強いが、同盟という以上

 は我々に対価をお望みと思われる」

「えぇ。そうです」

「その対価とは一体?貴方たちは何をお望み

 なのだ?」

「我々がアンカジ公国に対して行う要求は

 2つです。一つは、ガーディアンたちの

 保管庫や医薬品製造。物資の貯蔵や

 兵器開発を行う基地建設のための土地を

 提供する事。二つ目は、いざと言う時に

 私達の後ろ盾になる事。以上です」

「そ、それだけですか?本当にそれだけ

 で良いのですか?」

私の提案に、ミスタービィズは驚いたように

席から立ち上がる。

 

「えぇ。それだけです。お金も地位も名誉も 

 必要ありません。今、私達が欲しいのは

 後ろ盾なのです」

「後ろ盾、ですか。とても貴方方には必要な物

 とは思えませんが?」

「えぇ。確かに、絶対に必要かと聞かれれば、

 NOと答えるでしょう。いざとなれば、私は

 世界だって敵に回す事が出来るし、そして

 勝利するだけの算段がある」

ここで、少々脅しまがいに言っておくか。

 

「敵となった物に、私は容赦しない。例えば、

 あの毒素にしてもデータはこの中にある」

そう言って、私はこめかみに人差し指を

当てる。

「あれを改造、いや改良し、即効性の致死毒に

 してばらまく事だって不可能ではない」

「……それは、脅しですかな?」

ランズィ公が、険しい表情で私を睨んでいる。

周囲の執事達もだ。

ティオが、その視線に玄武の鞘を掴むが、

私は手を上げてそれを制止する。

「まさか。例えばの話ですよ。……ただまぁ、

 私は敵を容赦無く虐殺出来るとだけは

 言っておきましょう」

対して私は、冷酷な笑みを浮かべる。

 

「……本当に、恐ろしい方だ。貴方は」

やがて静かに呟くランズィ公。

「えぇ。自覚しています。私はどうも感情

 が希薄なようで。善意や良心と呼べる物を、

 どこかで捨ててしまったようです。しかし、

 知性は持ち得ています。だからこそ、

 同盟を持ちかけているのです」

「司殿。改めて聞くが、何故同盟を?

 貴方ほどの力があれば、後ろ盾は必要無い

 と貴方自身が言っているではないか」

「えぇ。そこは順を追って説明しますが、

 私は以前、聖教教会に喧嘩を売った、

 と言っても良い行為をしました。

 私と共に居た亜人ルフェアを、エヒトを

 侮辱したと言う謂われのない罪で死刑に

 しようとしたので、それに思い切り反発

 する形でハジメや香織と共に、王国と

 聖教教会から離反しました。彼等から

 すれば、私達は目の上のたんこぶです。

 人の救世主であった使徒たちが、

 亜人の方を庇ったなどとは、世間体を

 考えればよくありませんからね。

 と言うか、私達もルフェアを庇った罪で

 死刑にされるところでした。おかげで

 何の抵抗もなく離反出来ましたが」

教会への反発は驚くべき事だったのだろう。

ランズィ公は僅かに眉をひそめ、ミスタービィズ

は驚愕の表情を浮かべている。

「……貴方たちは、聖教教会を敵にした、と?」

「まぁ、実質その通りです。そして、教会の

 信者は世界規模で存在する。それを考えれば、

 その信者たち全員が敵となる可能性が

 あります。当然、私に殺される可能性も、

ですが」

ランズィ公の言葉に私は応える。

 

「しかし、私は別に虐殺を望んでいる訳では

 ありません。ハジメや香織、2人の精神

 衛生上、それは余り良い選択ではありません。

 2人は無為な殺戮を好みませんから。

 ……しかし、明確な敵となった場合、私は

 2人が何と言おうと、敵を殺します。敵は、

 ですが」

「成程。話が見えてきた。万が一、君たちと

 教会側が戦争を始めた時、手を出すな。

 と言う事かね?」

「えぇ。もちろん可能であれば、味方して

 くれる方が良いですが、最悪敵に

 ならなければそれで良しとしましょう。

 ランズィ公とて、私のような化け物に

 国民を喰われたくはないでしょう?」

「……ハァ」

私の言葉に、ランズィ公は深く息をついた。

 

「天使と悪魔は紙一重、と言う事なのだろうな。

 アンカジを救った天使が、殺戮をも辞さない

 悪魔だったとは」

天使と悪魔、か。

「お言葉ですが、私はどちらでもありませんよ。

 私は、ただの『化け物』です。それで?

 如何でしょうか?」

「……。司殿の提案。受けるメリットは大きく、

 そして断り敵となった時のデメリットがそれ

 以上に大きいのも事実。……分かりました。

 その同盟、受けましょう」

「ありがとうございます」

 

私は席を立ち、ランズィ公と握手をした。

ここに、アンカジ公国とG・フリートの

軍事同盟が締結された。

 

 

その後、私達は細かい打ち合わせをした後に

部屋を後にした。

私の後ろに続くティオ。

「マスター。お見事な手腕でした」

「なに。大した事ではない。交渉とは相手を

 如何に納得させるかだ。そして、その為には

 こちらが提示したメリットとデメリットを理解

 し、メリットの方が大きいと思わせる

 だけで良い。実際、彼等は私の力を間近で

 見ている。私を敵に回す事の危険性を十分に

 理解している」

「そのために、あのような『演出』を?」

ティオの言う演出、とは治癒の光をばらまいた

時の事だろう。しかし……。

「気づいていたか?流石はティオだな」

「お褒めにあずかり、恐悦至極に存じます」

そう言って、僅かに頭を下げるティオ。

「確かにあれは演出の意味もあった。

 彼等親子は国民を重んじる、領主の器だ。

 そして故に、国民への危険は極力避けようと

 する」

「そして、だからこそ国民を守る為にマスター

 との対立を避けた、と言う訳ですね?」

「あぁ。あれは私と言う力の大きさを知らしめる

ための演出だ。しかしおかげで、アンカジ公国が

 いざと言う時敵として参加しないと言う

 状況が出来た。いざと言う時、トータス世界の

 人間全てを敵に回さねばならない可能性を

 考えれば、アンカジを中立の立場に持って

行けただけでも収穫だろう」

「はい。……しかし、話には聞いていましたが、

 愚かな者達ですね。その者達はマスターの力を

 知っていて尚、姫やマスター、ハジメ殿を

 死刑にしようとしたのですか?」

「そうだ。まぁ恐らく、私が邪魔だったのだろう。

 奴らにしてみれば、トップはあのバカ勇者の

 方が良いらしいからな」

「……あのクズの事ですか」

と、ティオは心底嫌そうな表情を浮かべる。

 

「そうだ。奴は愚直なまでにイシュタルの言葉を

 信じ、戦争のせの字も知らないくせに戦争に

 参加すると言い出した。しかもなまじカリスマ

 があるから、状況にパニックを起こし掛けて

 いた生徒達が彼に賛同する立場を示した。

 つまり、あのバカを操ると言う事は、生徒達を

 操るに等しい、と言う事だ」

「あの勇者はさしずめ、教皇イシュタルの飼い犬

 ですね。主を信じ、従順に従う。あれでは

 孤高の狼の方がまだ気高い存在と言えます」

犬。犬、か。

「くっ、ははっ……!成程、確かにアイツには

 お似合いの称号だ。クククッ」

私はティオの表現に思わず笑みをこぼした。

 

雫や香織には悪いが、確かにあれは『イシュタルの

犬』だな。奴はイシュタルの言った言葉を信じて

戦争参加を表明した。自分が殺しをしようと

していると、考える事も無くだ。思考停止も

良い所。自分の正義こそが全てと思って居る

ようでは、並みの悪人より尚更質が悪い。

加えて、あれだけ息巻いておいて実際には

敵1人殺せないとは。あれでは『うどの大木』。

いや、奴にこんな表現を使ったらうどに失礼か。

うどは食べられるし薬にもなる。あんな奴より

よっぽど優秀だ。

自分の発言に責任を持てない。その時々で

主義主張が変わる。覚悟も上辺だけ。

外面は良くても中身はポンコツ。

 

う~む。

「改めて思うと、よく奴が勇者になれた物

 だな」

「ですね。ステータスプレートも見る目が無い。

 あんなクズよりもマスターの方が勇者に

 相応しいと言うのに」

「そうか?しかし私は勇者など向かんよ。

 やることが色々残忍なのでな」

「そうでしょうか?仲間を守る為ならば、

 国を敵に回す事も辞さないと言う姿勢。

 世に言うダークヒーローにぴったりかと

 存じますが?」

「……ダークヒーロー、か」

ティオの言葉を聞きながら、私は歩く。

 

やがて、たどり着いたのは宮殿の傍のプール

だった。その中でミュウが泳ぎ回り、

プールサイドに立つハジメ達が彼女を見守って

いた。

「あっ!パパ~!」

その時、ミュウが私に気づいたのかプールから

上がるとトテトテと走ってきて私に飛びついた。

「お話、終わったの?」

「えぇ。もう終わりましたよ」

私は服が濡れるのも構わずに彼女を抱き上げた。

 

「司、どうだった?」

「無事に同盟締結です。こちらから提供するのは

 物資とガーディアンなどの防衛戦力。

 向こうが提供するのは、『いざと言う時』中立の

 立場と基地建設の土地です」

いざという時、と言うだけでハジメ達はどう言う

意味なのか分かっていたので、息をついた。

「これで少なくとも、アンカジは色んな意味で

 大丈夫、って事だね」

「えぇ」

 

その後、私達は宮殿の一角にある部屋へと

やってきた。毒素除去の功績から、私達は宮殿

への滞在を許されているのだ。

そこで私達8人はお茶をしつつ、私は彼等に

ランズィ公から依頼されていた事を話した。

「静因石?それって確か……」

「えぇ。彼等が魔力暴走を止めるために使おう

 としていた特殊な鉱石です。ランズィ公たちに

 大火山へ行く事を話したのですが、その際

 出来れば静因石を持ち帰って欲しいとの事

 でした。もちろん正式な依頼で、持ち帰った

 量に応じた報酬を払うとの事でした」

「そっか。それで司、グリューエン大火山には

 いつ発つの?」

「それなのですが……」

私は呟きつつ、私の膝の上でジュースを飲んでいた

ミュウに目を向けた。

「?パパ?」

ミュウも私に気づいて振り返り首をかしげた。

 

ミュウはまだ幼い。いくらセラフィムがいるからと

言って、大迷宮の探索は危険を伴う。ミュウの

安全を第1に考えれば、ミュウをセラフィムと

もう1人、誰かとこのアンカジで待っていて

貰った方が良い。だが……。

 

「ミュウ。聞いて下さい。これから私達はとても

 危険な所に行かなければなりません」

「うん」

「そしてそこは、セラフィムが一緒だったと

 しても、ミュウにはとても危険な場所なの

 です。最悪、命を落とすかもしれません」

「うん」

彼女は、戸惑い俯きながらも頷いている。

ハジメ達は、何も言わずに私とミュウの会話を

見守っている。

「だからこそ、私は聞きます。ミュウは、

 『どうしたいのですか?』」

「え?」

私の質問に呆けたのは、ミュウ自身だ。

「パパ、ミュウに行くなって、言わないの?」

「もちろん、私としてはミュウに危ない事を 

 して欲しくはありません。でも、だからと

 言って、ミュウのやりたい事、したい事を

 拒むのは、本意ではありません」

「ミュウ、パパ達と一緒でも、良いの?」

「えぇ。ミュウが、貴方がそれを望むなら」

 

私の言葉に、ミュウは少し悩む。やがて……。

「ミュウ、パパと一緒が良い」

「危険ですよ?」

「うん。でも、パパと、せらちゃんが

 守ってくれるって。ミュウ、信じてるから」

「そうですか。……ではミュウ。私達と共に、

 行きましょう」

そう言って、私は右手を差し出す。

「うん!パパッ!」

ミュウが両手でその手を握り返した。

 

 

確かに、危険はあるだろう。だが、それでも

私は彼女を、ミュウを守る。なぜなら私は

ミュウのパパなのだから。

そう、私は決意を固めていた。

 

その後。

「……良かったの?ミュウちゃんを連れて行くの」

ミュウが香織やシア達と遊んでいる時、傍に

座ってお茶を飲んでいたハジメが私に

問いかけてきた。

「確かに、ハジメの指摘も最もですが、だからと

 言ってここに残すことも不安だったので」

「どうして?ここは毒素の件も片付いたし、

 皆司の力を知ってるよ?その娘のミュウちゃん

 に手を出して司の逆鱗に触れるような人は

 居ないと思うけど……」

「えぇ。そこはハジメの言うとおりだと

 思いますが……。ハジメ、疑問に思い

 ませんか?あの巨大バチュラム、

 正確にはそのコアは、どうやってアンカジ

 のオアシスに潜入したのですか?」

「え?……そう言われてみれば、確かに。

 仮に地下水脈からここまで来たのなら、

 そっちも汚染されてないと可笑しいし。

 う~~ん」

「……魔人族が運んだ、とは考えられませんか?」

「ッ!」

 

私の言葉に、ハジメは驚きこちらを見ている。

「まさか、魔人族が何らかの方法でここに

 侵入して、バチュラムのコアを?」

「えぇ。恐らく」

「でも司。アンカジはその周囲を結界で

 覆ってるんだよ?魔人族が入ってくれば

 管理者であるランズィさんが気づく

 はずだよ?」

「それはあの結界を『通れば』の話です。

 例えば、転移してきたとか?」

「ッ!?」

「確かにあの結界は透過した物に悪意が

 あるなどすれば反応しますが、それが

 無いのに、オアシスが汚染された、と言う

 事は、何者かが転移系の魔法を使って

 アンカジ内部に侵入したとも考えられ

 ませんか?」

「そ、そうか。確かにそれなら……」

「そして。この事件の下手人がアンカジ内部

 に潜伏していないとも限りません。

 そして私達は奴らの計画を潰した憎き敵。

 一矢報いようとミュウを狙う可能性がゼロ

 ではありません」

「た、確かに。そう考えると、ミュウちゃんを

 ここに残していく方もちょっと不安だね」

「えぇ。奴らは大迷宮で雫達を勧誘しています。

 いくら魔物が強力とは言え、ッ」

その時、ある考えが私の中で浮かんだ。

 

そして私は、改めて現在持っている情報を

総合して考え始めた。

突然魔物を使役し出した魔人族。野良では考え

られない、戦闘に特化した力を与えられた魔物。

真の大迷宮クラスの魔物。そして……。

大迷宮下層に現れた、あの女魔人族。

まさか……。

 

「司?どうしたの?」

「……ハジメ、そもそもな話、魔人族は魔物を

 どうやって従えていると思いますか?」

「え?それって、さっき司が言ってた、

 魔物を1から創るか思い通り強化する

 って言う力の話?」

「えぇ」

「う~ん。僕自身司の言うとおりだと

 思うよ?だって野良を捕まえて従えさせる、

 って言うのとは明らかに違うし」

「そうですか。……では、私が上げた二つの

 力があるとして、それはどんな力だと

 考えますか?」

「え?……そりゃぁ、普通の魔法とかじゃ

 無いよね。そう言うアーティファクトでも

 あるのか、或いはそんな凄い魔法が……」

 

そこまでたどり着いたハジメは、すぐさま

目を見開いて私を見た。

「ま、まさか……!」

「えぇ。恐らくハジメが予想しているのと

 同じです。まさかとは思いますが、

 魔人族が、『神代魔法』を入手していると

 したら。たった今、その仮定を思い

 浮かんだのです」

「ッ!?……そう思った、根拠は?」

「まず何よりも根拠として上がったのは、

 あのオルクスで遭遇した女の魔人族です。

 彼女が待ち伏せをしていたのは、ダミー

 の100層の、それこそ最下層付近です。

 だが、通常待ち伏せとして理想的なのは、 

 狭い道で前後を挟んで両サイドから

 一気に押しつぶす事。加えてあの

 大迷宮は上下の移動に階段を使う必要が

 あります。そして、極論を言ってしまえば、

 勇者達が下層に潜っている間に、上層と

 下層を繋ぐ魔法陣を破壊して、階段を破壊。

 生き埋めにしてしまえばそれで良い。

 仮に生き埋め状態から脱出出来ても、弱った

 所を更に仕掛けると言う手段も、魔人族側が

 取れる作戦の一つです」

「確かに。でも、奴らはそれをしなかった。

 それは……」

「えぇ。この作戦で階段や魔法陣を壊して

 しまうと、後々『自分達』が使えないかも

 しれないから。つまり、魔人族は大迷宮の

 試練の先に、『神代魔法』がある事を知っている。

 そう考えるべきでしょう」

「……。じゃあ、もしかしたら……」

「大迷宮で魔人族と鉢合わせ、と言うシナリオも、

 考慮すべきでしょうね」

『コクンッ』

 

ハジメは、私の言葉に無言で頷くのだった。

更に……。

「あれ?でも変じゃない?」

「何がですか?」

「大迷宮に潜って、試練を突破したのなら、

 この世界の真実を知っているはずだよね?

 なのに何でこんな事をしてるんだろう?」

「そうですね。考えられる点としては、やはり

 洗脳でしょう。恐らくエヒトは、人類側は 

 自分の名前を使って。魔人族側は別の神の

 名を使うか、或いは別の神を信仰させ、

 その別の神を裏から操る、と言った形を

 しているでしょう。だからこそ、例えば

 魔人族側に真実を知る者が現れたとしても、

 洗脳や記憶の改竄を行い、真実を忘れさせる

 などしているのでしょう」

私の言葉に、ハジメはどこか悲しそうな表情を

浮かべた。

 

「結局、魔人族も奴らにとっての駒って

 事なのかな」

「……ハジメ」

「うん、分かってる。魔人族は僕達人間を

 敵として見ている。だから容易に和解出来る

 なんて思ってない。……ただ、やっぱり

 彼等も被害者なんだって事は、覚えて

 おきたいんだ」

「……ハジメ、どうかその優しさを

 忘れないで下さい。戦争は狂気の沙汰。

 人を変えてしまう。だからこそ、

 貴方は変わらないで下さい」

「うん。分かってるよ。なんてたって、僕は

 G・フリートの良心だからね」

そう言って、ハジメは笑みを浮かべる。

やがてしばし間を置き……。

 

「ねぇ、司。この世界は、この先どうなると思う?」

「……少なくとも、エヒトが居る以上、

変わる事は奴が許さないでしょう。人は亜人や

魔人族を憎み、逆に彼等は人を、異なる種族を

蔑み憎む。この世界その物が他種族への

憎悪を煽り続ける。負の連鎖は止まるところを

知らない。そして凄惨な戦場で絶望しながら

死んでいく者達を見て、奴は嗤っている」

 

「『何よりも悪しきは、神にあらざるもの

 神と認めることなり』」

そんな中でポツリと呟くハジメ。

 

「ティレンティウスの言葉ですか」

ハジメの語った言葉は、紀元前のローマに存在した

劇作家、プビリウス・ティレンティウス・

アフェルの言葉だ。

「ジョーカーのデータベースを漁っている時に 

 少しね。……この世界の人達は、認める神を

間違えたんだよ。今のこの世界のあり方が、

それを証明している」

 

「異なる者を異端と蔑み、見下し、争い、

 憎悪し、それを深め、終わりの見えぬ

 凄惨な争いへと突き進む。その憎悪は

 相手を滅ぼすまで終わる事の無い。

 輪廻のように、この世界は憎悪が

 巡り続けている。そして、それを助長する

 者こそが、エヒト」

「うん」

 

ハジメは、頷くと近くでミュウと遊んでいる

香織やシア、ユエやルフェア、ティオに

目を向けた。

 

「司」

「はい」

「……僕は戦うよ」

ハジメは、真っ直ぐ私を見つめる。

「今の僕には、守りたい人がたくさん居る。

 香織、ユエちゃん、シアちゃんと言う

 愛する人。ルフェアちゃんやティオさん

 と言う、大切な仲間。そして、司という

 『盟友』」

「ッ、私が?」

私は、ハジメの言葉に一瞬驚いた。

 

「……初めてこの世界に来た時、最初は、

心のどこかで喜んでいたんだ。魔法が

現実に存在する世界。ラノベを読む者

なら、多分憧れる夢の世界。……でも、 

ここで現実を知った。夢は所詮夢。

魔法が使えても、亜人が居ても、そこ

には必ず血なまぐさい争いと憎悪が

存在している。そしてこの世界に

来て、改めて自分達の生活がどれだけ

平和だったのかを思い知った。

……温かい食事に、何気ない日常。

ありふれた普通。僕はそんな普通に

戻りたい。皆と一緒に。皆で平和に

暮したい。一緒に笑っていたい。

 ……例えそれが、叶えるのが

 難しい夢だとしても、僕は諦めない。

 僕は僕の夢のために戦う。エヒトと」

「ハジメ……」

 

彼の瞳に宿る決意は、本物だ。今までの旅の

中で、ハジメの魂は刃物を研磨するように、

磨かれてきた。戦いを経験した彼は、世界の

残酷さを知った。その上で、隣に愛する人々が

居る事の幸せを知った。普通という生活が

どれだけ貴重なのかを知った。

そして、だからこそ磨き上げられた魂が、

彼の体に宿る。

 

「僕は、諦めないよ。司。エヒトが

 邪魔してきたって、戦って、

 ぶっ潰してやる……!」

ハジメは、ギュッと拳を握りしめる。

 

明確な決意。戦う意思。……そうか、

いつの間にか、ハジメは立派に成長して

いたのだな。

そう思えば、感慨深い物がある。

 

そうだな。私にも今、守るべき、愛する人が

居る。だから……。

 

「ハジメ、それは私も同じです。

 だからこそ、共に戦いましょう」

そう言って、私は右手を差し出す。

「愛する人を守り、平和なあの日々へ

 戻る為に」

「うん。戻ろう。皆で一緒に。あの日々に」

ハジメは、決意を浮かべた表情で、私の手を

握り返した。

 

 

男達は、決意を新たにしていた。

愛する人たちを守り、生き延びて、そして、

自分達が望む未来を実現させるために。

 

 

 

毒素の浄化の一件の翌日。

司は極秘裏にランズィ達と同盟を締結。しかし

アンカジ公国にも聖教教会の司祭と神殿騎士が

常駐している以上、発表はまだだった。

ランズィは、発表を司たちが静因石を持ち帰った

時にすると約束していた。

 

そして、アンカジ公国のゲート前。

そこにはバジリスクが止まっており、その前

にはハジメと司たちが集まっていた。

更に周囲では、それを遠巻きに公国民が

見守っていた。

 

「総員傾注」

やがて、ハジメ達7人を前にした司が口を

開いた。

「これより我々は、大迷宮の1つ。

 グリューエン大火山へと向かう。

 知っての通り、大迷宮は危険だ。

 特にこれが初めての大迷宮である

 ティオと、セラフィムがいるとは言え

 ミュウが同行する。これに関しては

 私が最大限サポートするが、ハジメ達

 も万が一の時は二人のサポートを

 お願いしたい」

「うん……!」

「任せて!」

頷くハジメと香織。シアとユエ、ルフェアも頷く。

 

「よし。ではこれより、我々G・フリートは

 グリューエン大火山へと向かう!

 乗車!」

「「「「「「「了解(なの)!!!!」」」」」」」

ミュウを始めとした、7人の威勢の良い返事が

周囲に響く。

 

そして、私達はバジリスクに乗り込む。

目指すは、次なる大迷宮、グリューエン大火山。

「行くぞ……!出発!」

エンジンを唸らせながら走り出すバジリスク。

 

こうして、私達の新たな大迷宮攻略が

始まった。 

 

     第49話 END

 




次回からグリューエン大火山でのお話です。お楽しみに。

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