ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~ 作:ユウキ003
~~~前回のあらすじ~~~
襲いかかってきた魔人族の男、フリードを退けた
G・フリートの一行は無事、新たな神代魔法、
空間魔法を入手する事に成功。彼等はそのまま、
魔人族による大迷宮破壊を危惧し、その足でまず
はミュウの生まれ故郷である海上の町、エリセン
へと新型艦のアルゴで向かう。
そしてミュウは、数ヶ月ぶりに母、レミアと
再会を果たすのだった。
エリセンの町の、レミアとミュウの家に
一泊した翌日の午前中。私はレミア、ミュウと
一緒に出かけていた。
と言っても、レミアは車椅子に乗っているし、
補助として香織、私と同じように荷物持ちで
ハジメやシアも同行している。
大勢で動くと、周りの迷惑になる、と言う
事で、ティオ、ルフェア、ユエは家で
留守番をしている。
「ごめんなさいね、香織さん。わざわざ押して
貰って」
「いいえ。気にしないで下さい。レミアさん
も、歩けるようになったとは言え、
まだまだ危ないですから」
「ありがとうございます。シアさんや、
ハジメさんも、わざわざ荷物持ちを
してくれるなんて」
「こちらこそ。昨日は美味しいご飯を
ごちそうして貰いましたし、その上
泊めていただいたんですから。
これくらいは恩返ししないと。
ね、シアちゃん」
「はいっ!荷物持ちなら任せて下さい!
どんな重い物でも持ち上げて見せますぅ!」
と、レミアは、皆をさん付けで呼ぶの
だが……。
「ふふっ。『あなた』のご友人は皆さん、
とても頼もしく優しい人達なのですね」
レミアは私だけは『あなた』と呼ぶのだ。
それだけで周囲の視線が凄まじい事に
なっている。
一度は周囲で、『あなたってのはほら、あれ
だよ。別に夫のあなたって意味じゃないさ』
と、めちゃくちゃ動揺しながらそう言って居る
海人族の男が居た。
のだが……。
「あら、レミアちゃん。その人かい?
ミュウちゃんを連れてきたって言う
冒険者は」
「はい。わたしの新しい夫です」
レミアの良く行く店でそんなやり取りを
したもんだから、男達はやっかみと嫉妬の
視線を私に送り、女達は黄色い悲鳴を上げる。
「その件を承諾したつもりは無いのだが……」
と彼女に訴えても……。
「あら?そうなのですか?」
と、とてつもなく悲しそうな顔をされ、
今度は女達から鋭い視線が飛んでくる。
ハァ。……本来女難の相があるのはハジメ
だけのはずなのですが……。
「司、今失礼な事考えたでしょ?」
「いえ?全く」
そう言いながら私は明後日の方を向く。
「……それは僕の目を見てから言って欲しい
んだけど?」
と、私達はそんなやり取りをしつつ、レミア
が買った荷物を運んでいた。
とは言え、私達はここに遊びに来た訳ではない。
昼食後、私はハジメ達にレミアとミュウの護衛
をお願いした後、一人で海に潜った。
以前、ミレディから教えられた場所、エリセン
から西北西に約300キロの地点。そこが
メルジーネ海底遺跡のある場所とされていた。
私は第4形態となり、海底を泳いで進む。
今の私の、この姿ならば私達の世界の高速艇
以上の速度が出せる。目標地点にたどり着く
のに、1時間も掛からない。
たどり着いた目標地点を精査していると、何やら
他の部分よりも深度が浅い部分があった。更に
エコーなどを使って調べると、何やら通路や空間
のような場所を確認するが、入り口らしき物は
発見出来ない。
……何らかの方法で扉を開け、と言う事なの
だろう。
その時ふと、私はミレディに言われた『月と
グリューエンの証に従え』という言葉を
思い出していた。
ふと、海面に目を向ければ、まだまだ太陽が
上空でサンサンと輝いている。
どうやら大迷宮に入るには夜しかない
ようだ。……幸い、魔人族らしき反応や
奴らによる破壊工作の痕跡も発見出来ない。
どうやら奴らはここの事を知らないのだろう。
そう考えた私は、念のため、警戒用の水中
レーダーを海底にいくつか設置に、エリセンへと
第4形態のまま泳いで戻っていった。
その後、エリセン付近で第9形態に戻った私は、
何食わぬ顔でミュウとレミアの家に戻った。
のだが……。
「ッ!!!!」
「あらあら」
家に戻ると、キッチンでルフェアがレミアに
鋭い視線を送りながら、何かを調理しており、
対するレミアはその視線を受け流しながら
何かを調理していた。
「ママ~!がんばれ~!」
母であるレミアを応援しているミュウ。
一体何がどうなっているのだ?
「これは、どういう状況ですか?」
「あ、司お帰り」
私が声を掛けると、ハジメ達が私に気づいた。
「ただいま、と言うべきなのでしょうが、
これは?」
「あ~、え~~っと、料理対決、で良いの
かな?」
と、自信なさげに答えるハジメ。
まぁ、ルフェアが敵対心むき出しな時点で
対決かどうか怪しい。
何でも、私が海洋に調査に行っているとき、
レミアが『旦那様のために、ご飯の用意を
しなきゃ』みたいな事を言ってしまい、
堪忍袋の緒が切れたルフェアがレミアに
勝負を挑んだようだ。
それで始まったのがこの料理対決らしいが……。
「さぁさぁ始まりました!『運命の人は怪獣!?
可愛い婚約者ルフェアちゃん』と!
『出会って数日!でももうあなたにぞっこん!
未亡人レミアさん』!そんな二人の料理対決!
解説のユエさん、如何でしょうか!」
「ん。ルフェアはずっと司と旅をしていたから
司の好きな物を知ってる。でもレミアも
ずっと料理をしてきた腕があるから、
ルフェアより料理の腕は上かもしれない」
「ほうほう。つまり勝負の行方は分からない、
と言う事ですね!」
「……。何ですか?あれは」
私の視線の先では、何やらシアとユエが
ノリノリで解説をしている。
「う~~ん。ま、まぁ、悪乗り、かなぁ?」
と、苦笑を浮かべながら首をかしげるハジメ。
ちなみに夕食の時、私が審判となって二人の料理
を食べる事に。ジャッジの結果は、僅かに腕の差
でレミアに軍配が上がった。
しかし肝心のルフェアはと言うと……。
「負けないっ!絶対に!負けないんだから!」
逆にやる気の炎を燃やしていた。まぁ結果的に
良い方に進んだ、のか?と私は首をかしげる
のだった。
エリセンの町を訪れてから数日後。この日まで、
私は新兵器の開発をハジメと相談しながら
行っていた。水中での使用も想定した、
銛のような形の銃弾を発射する水陸両用銃、
『エーギル』や腕部に外付けで設置する、
スーパーキャビテーティング魚雷発射管、
『アハティ』など、様々な装備を開発。更に
ジョーカー全機の背面に着脱式のウォーター
ジェット推進器を装着。
加えて水中で酸素を確保するために、
海水に溶けた酸素、いわゆる溶存酸素を取り
込むための魚のエラのようなフィルターを
追加で設置。ジョーカーを水中でより円滑に活動
させるための改造を行っていった。
そして、その日。私達はエリセンの町の桟橋
の上で既にジョーカーを纏っていた。遠目には
海人族が何人も集まって私に嫉妬の視線を
送っているが、所詮有象無象の視線。無視
している。
そして、私達を前にするミュウとレミア。
しかし、そんな中でミュウはどこか悲しそう
な表情を浮かべていた。
しかし、これは仕方無い。
話しは、一旦昨日の夜へと戻る。
その日の夜、私達は明日の朝にエリセンを発って
メルジーネ海底遺跡に向かう旨を話した。
すると……。
「じゃあ!ミュウも一緒に行くの!」
彼女が真っ先にそう叫んだ。
「ダメです」
そして、誰よりも早く私がそれを拒否する。
「な、なんでなの!?パパっ!」
「……ミュウ、貴方は確かに一度、グリューエン
大火山で私達と共に大迷宮を攻略しました。
しかしそれは、貴方が母親であるレミアの
元に帰るため過程、道筋に過ぎません。
しかし、ミュウはこうしてエリセンへと
戻ってきた。……ミュウ、私が言っている
事を酷い、と思うかもしれませんが……。
ミュウがもう私達と一緒に大迷宮に行く
理由がありません」
「で、でも!パパ、ミュウが行きたいなら
良いって!」
「確かに、アンカジ公国ではそう言いました。
ですがあの時とは状況が違います。
曲がりなりにも、ミュウから父と慕われている
からこそ、言わせて貰います。ここに、
レミアを一人にしていくつもりですか?」
「っ」
ミュウは、息を呑み俯く。
「ミュウは、グリューエンで言っていましたね。
ママを、レミアを心配させないくらい強く
なれたら、今度は自分がレミアを守るんだ、と」
「うん」
静かに頷くミュウ。レミアは息を呑んだような
表情を浮かべるが、直後に僅かに涙ぐむ。
しかし、肝心のミュウの表情は優れない。
ならば、仕方無い。私は、彼女の椅子の前に
回り込んで、彼女の前で跪き、その顔を
のぞき込む。
「ミュウ。聞いて下さい。貴方には、セラフィム
がいる。だから私達がメルジーネ海底遺跡を
攻略している間、セラフィムと共にレミアを
守ってあげて下さい」
「ミュウが、せらちゃんと、ママを?」
「えぇ。そうです。……メルジーネ海底遺跡を
無事攻略したら、必ずここへ、皆で戻って
来ます。だから、待っていて下さい」
「パパ、ちゃんと帰ってくる?」
「えぇ。約束します」
そう言って、私は右手の小指を差し出す。
それを見たミュウも、自分の手を見つめてから、
おずおずと私の小指と自分の小指を絡ませ合う。
「私たちは、メルジーネ海底遺跡へと
行ってきます。だから、その間にミュウは
レミアを守ってあげて下さい。約束、
出来ますか?」
「うん。約束、するの。パパ達が帰ってくる
までミュウがママを守るの」
そうして、私達は約束を交わした。
戻って現在。
ミュウは、約束はしたものの、それでもまだ
一緒に行きたそうにしていた。
やがて、私達の前に、海底に潜行し待機していた
アルゴが浮上してくる。私が皆に頷くと、
全員が歩き出す。すると……。
「パパァ!」
後ろからミュウの叫びが聞こえ、振り返る。
そこでは、今にも泣きそうな表情ながらも、
笑みを浮かべるミュウの姿があった。
「いってらっしゃい!」
そう言って、ブンブン手を振っているミュウ
に、私は右手の小指を立てる。
ミュウもそれを見て約束を思い出したのか、
上に突き上げた右手の小指を立てる。
それを確認した私達はアルゴに飛び乗り、
メルジーネ海底遺跡を目指してエリセンを
出発した。
そして、1時間と掛からずにポイントに到着した
私達は、ミレディの言葉に従って月が昇る夜まで
待った。
そして、夜になったのだが……。
「月とグリューエンの証に従え、と言う事
でしたが……」
私達はアルゴの艦橋で、テーブルの上に
グリューエンの証を置き、それを囲むように
立ちながら証に目を向けていた。
「普通に考えれば、この証とここの穴が
怪しいよね」
そう呟くハジメ。グリューエンの証は、
サークルの内部にランタンを持った
女性が彫られている。しかしそのランタン
の部分がくりぬかれているのだ。
どう考えてもそこが怪しい。
「う~~ん。その穴の部分を月に
翳す、とか?」
首をかしげながらも呟く香織。
しかし、ここは『思い立ったが吉日』、だ。
「ここで考えても仕方ありません。とにかく、
思いついた事をやってみましょう」
と言う訳で、私達は早速アルゴの艦上に移動し、
月に向かってペンダントを翳した。
ちょうど、くりぬかれた場所から月が覗き見える。
そのまましばらく待っていると、ランタンに変化
が現れた。ランタンの部分が、まるで月の光を
吸収するかのように、徐々に徐々に光が満ちていく。
この演出に、香織やシア、ルフェアはおぉ、と
驚嘆の声を漏らす。
「何だかファンタジーテイストの演出だね」
ハジメも、私の手にあるペンダントを見つめながら
目を輝かせている。
やがて、しばらくするとランタンを光が満たした。
すると直後に変化が現れた。ペンダント全体が
光を帯び、そこから海面の一点に向かって光が
伸びる。
まるで、『光の指し示す方へ行け』と言わんばかりだ。
「成程。ミレディの言って居た証に従え、と言う
のはこの光に従え、と言う事ですか」
光が伸びていく先は、恐らく海底。そして、
そこにあるであろう大迷宮の入り口だろう。
「総員、すぐさま艦内へ。これよりアルゴは
潜行し大迷宮入り口に向かいます」
「「「「「「了解」」」」」」
私達がアルゴの艦内に戻るとすぐさまアルゴ
は潜行していく。艦橋へと降りれば、正面の
操縦席前の強化ガラスの窓を突き抜けて
海底へと向かう一筋の光。
私はパイロットシートに座ると光の指し示す
方向に向かうようにアルゴを調節する。
暗い、海の底へと潜っていくアルゴ。
この暗闇ではライトを点灯した所で
効果が薄いので、地形レーダーなどを
使用しながらドンドン下へ下へ潜っていく。
「……まるで、闇の底に沈んでいくみたい
だね」
「うん。ちょっと、不気味だね」
後ろで真っ暗な海を見つめながら若干
震えているハジメと香織。そう言えば、
香織はお化けの類いが苦手だったような。
しかし今は気にしていられない。
しばらく進んで居ると、ある場所に
たどり着いた。
そこは歪な岩壁が並び、さながら山脈の
ように連なる場所だった。
光は、その一点を指し示していた。
「減速。……岩壁に接近します」
アルゴの速度を落とし、ゆっくりと岩壁に
近づいていく。すると、ペンダントの光を
受けた岩盤がゴゴゴゴッと音を立てながら左右
に割れ、そこが大迷宮の入り口となった。
「これはまた、随分と凝った入り口だね」
苦笑半分、興奮半分。と言った感じで呟く
ハジメ。
「そうですね。しかし……」
あの岩盤の扉のサイズからして、これ以上
アルゴで進むのは無理そうだ。
ここかはらジョーカーでの移動になる。
私達はすぐさま外と繋がる気密室へ行き、
そこで水中用の装備を備えたジョーカー
を纏う。装備の状況を確認し終えると、
バルブを開いて部屋に水を入れる。
部屋を水で満たし、各員の状況を確認。
全員が水に慣れさせ、同時に装備が正常に
稼働している事を確認する。
「各員、傾注。ここから先はアルゴを
使わずジョーカーを纏ったまま移動
します。水中という環境では普段通り
の動きは出来ないので、戦闘時はそれを
注意して下さい」
『『『『『『了解』』』』』』
無線機に呼びかけると、皆の返事が返って
来る。水中でのやり取りも、普通に喋った
のでは声は届かないのでこれに頼る事
になる。
「それでは、ハッチを開放します」
私は壁際のスイッチを押す。するとガコン、
と言う音と共にハッチが解放され、私達は
薄暗い海へと飛び込む。
背中のウォータージェット推進器によって、
空を飛ぶように海中に浮かぶ。
更に、私に続いてアルゴを出るハジメ達。
『う~~ん。地面に足が付かないって言うの、
何か怖いですぅ』
普段から陸上での戦いを基本とするシアには、
地に足が付かない水中は確かに戦いづらい
フィールドだろう。
「水中では陸地のように踏ん張りが効き
ませんからね。その辺りも注意
して下さい」
そうやって話している間に、私達は入り口の
前に集まる。
開かれた扉の先に広がるのは、漆黒の闇。
正しく、一寸先は闇だ。
だがそれでも、進むだけだ。
「総員傾注、中には何かあるか分からない。
また、陸上や空中とも勝手が違う状況だ。
絶対に気を抜かずに行くぞ」
「「「「「「了解っ!」」」」」」
「よしっ。突入開始」
私のかけ声に従い、私を先頭に7機の
ジョーカーが背中の推進器を使って暗い
洞窟の中へと入っていく。
7機のジョーカーのメット側面のライトから
放たれる光が周囲を照らすが、それでも焼け石に水
状態で、周囲は暗いままだ。
エーギルを装備し、周囲を警戒しながら進む私達。
その時。
「むっ。全員、一旦停止して下さい」
私のかけ声で全員がその場に停止する。
「前方、海水の流れが激しくなりつつあります。
このままではバラバラになってしまうので、
私がシールドを展開します。全員その中に」
『『『『『『了解』』』』』』
私が直径6メートルほどのシールドを展開すると、
皆が中に入ってくる。この中は海水が無いので、
皆は着地し息をつく。
「ふぅ。普通に呼吸出来ると分かっていても、
真っ暗な深海か。」
「何だか、息が詰まるね」
2人とも、汗を流しながら息をつく。シアと
ルフェアにも目を向けるが、2人もどこか
緊張をほぐすように深呼吸をしていた。ティオも
どこか落ち着きが無い。唯一ユエは安心
しているようだが、しかしここは海底。
かつてオリジナルとして海底を住処としていた
私に比べれば、彼等はこの環境に慣れてはいない。
彼等に現代のダイバーのような経験は無い。
ならばこれらの反応も仕方無いか。
「ここからはシールドに乗って移動します。
行きましょう」
シールドの搭乗したまま前進すると、突如海水
の流れが速くなり、一定方向へ流される。
とりあえず今は流れに逆らわずに流される事に
した。
すると、しばらくしてレーダーに反応があった。
後方から近づいてくる物体、魔物のようだ。
「司」
「えぇ。私のレーダーでも確認しました。
ハジメ、アハティの実戦テストです。
お願いできますか?」
「うん。任せて」
そう言うと、ハジメはシールドからアハティ
を装備した両腕だけを後ろに出す。
アハティのスーパーキャビテーション魚雷には
多目的誘導システムが装備されており、発射
された弾頭はジョーカーのレーダーなどから
データを受け取り自動で敵を追尾する。
「アハティ、発射!」
ハジメが叫ぶと、ボシュボシュッと言う独特な
音と共に数発の魚雷が発射される。
白い泡の尾を引いて向かっていく魚雷。
数秒の静寂。そして……。
『『『ドドォォォォォォォンッ!!』』』
背後で爆発が瞬いた。
レーダーを確認するが、どうやらこれだけで
相手を全滅させられたようだ。
「よしっと。司、アハティは大丈夫そうだね」
「ありがとうございますハジメ。おかげで
アハティの実戦テストが出来ました。
どうやら問題なさそうですね。
後は、エーギルのテストのために
もう2、3匹出てきてくれると良かった
のですが。まぁ仕方ありませんね。
先に進みましょう」
そう言って私はシールドを進める。
「……相変わらず思うのじゃが、マスターに
掛かれば大迷宮も形無しじゃのぉ」
「いや、まぁ、うん。警戒するに越したことは
無いんだけど、そうだね。司の力が
強すぎるから、大迷宮攻略も楽なんだ
よなぁ」
と、ティオの発言に頷くハジメ。
「……良いのだろうか?大迷宮攻略がこんな
あっさりしてて」
「良い、んですかねぇ?」
「……良い、んじゃない?」
「良いのかなぁ?」
ハジメの言葉に、次々と首をかしげるシア、
ユエ、ルフェアの3人だった。
その後、私達を乗せたシールドはずっと
流されていた。が……。
「あれ?ここ、さっき魔物を倒した所?」
外の壁際に引っかかっていた魔物の残骸を
目にして呟くハジメ。
試しに私は壁際にマーカーを何個か、
色分けして打ち込む。
しばらくすると、やはりマーカーの場所に
戻ってきた。
「どうやらハジメの読み通りですね。私達は
今同じ場所をグルグル回っているようです」
「って事は、僕達は進んでないって事だけど、
まさか道を間違えた?」
「その可能性は否定出来ませんが、もしくは
現状に変化をもたらす仕掛けがあるのかも
しれません。大迷宮の扉しかり、この
ペンダントしかり。このメルジーネ海底
遺跡は、何というかギミックが満載です。
何か無いか、全員で良く探してみましょう」
「「「「「「了解」」」」」」
その後、私達はグルグルと回りながら壁際
を調べていく。
すると……。
「むっ?マスター、あそこを」
「ん?」
ティオが壁の一点を指さす。そこに視線を向け、
シールドを近づける。すると壁にメルジーネの
紋章が刻まれている場所を発見した。
発見した場所の近くにマーカーを差し込み、更に
周り調査していくと、合計で5つの紋章を
発見した。
「ふむ。紋章が5つ、ですか。ハジメ。
ゲームやこう言った仕掛けに一番詳しい
のは貴方だと私は考えます。そこで
貴方の意見を聞きたいのですが」
「うん、分かった。推察だけど、多分
あの紋章に何かをすると次へ続く道が
開けるんだと思う」
「道、ですか?」
ハジメの言葉に首をかしげるシア。
「うん。ここで重要になってくるのは
ペンダントだと僕は思う。この海底遺跡
まで道を指し示したのも、その扉も
開けたのも。全てペンダントだ。だから
ペンダントを翳すとかしてみれば、
道が開けるかも知れない」
「成程。私もハジメの意見に賛成ですね。
早速、試して見ましょう」
私は手にしていたペンダントを紋章に翳す。
すると、やはりハジメの読み通りペンダント
から紋章に光が照射され、紋章が光を放つ。
そのまま移動しては紋章に光を照射していく。
ペンダントに溜まっていた光も照射を行う
事に減少していき、最後の1つに照射を
行った時点で空になった。
直後、ゴゴゴゴッと言う音と共に壁が
真っ二つに割れ、新たな道が開かれた。
「やはり、ハジメの考えが正解でしたか。
皆、突入しますよ」
「「「「「「了解」」」」」」
私達は、開いた入り口から先へ進んだ。
しかし、進んだ先では水路が下方、真下
へ向かっている。しかし……。
「全員傾注。この先、海水が無くなります。
空間のようですね。横穴なども無いので
シールドを解除します。総員、警戒しつつ
着地用意」
「「「「「「了解」」」」」」
私の言葉に皆が頷き、ハジメや香織、ルフェア
はエーギルを構え、シアはアータル。ティオは
玄武。ユエも魔法をいつでも撃てるように
している。
「シールド解除」
私達を守っていたシールドが消え、皆の体を
海水が一瞬で包む。
そのまま流れに沿って下方へ向かっていたが、
突如として、まるで下方に海面が現れたかの
ように、私達はその境界面を突き抜けた。
海中から空中に投げ出された私達は先にあった
地面に着地。
私やハジメは着地と同時に前転。すぐさま
周囲にエーギルを向け警戒を行う。
着地した香織やルフェアたちも、同じように
装備を構え、周囲を警戒する。
「各自、状況報告」
「ハジメ、異常なし。敵影を認めず」
「私も大丈夫」
「こっちも、何もいないですぅ」
「ん。周囲には、何もいない」
「妾もじゃ。異常なしじゃ」
「敵は、いないみたいだね」
ハジメや香織、シア、ユエ、ティオ、ルフェア
からの報告を聞きつつ周囲を警戒するが、
どうやら今のところ敵はいないようだ。
周囲を見回すが、ここは半球状の空間だ。
上を見上げれば、そこに海面がある。
まるで直上に海があるようだ。
更に周囲を見回せば、奥に向かう通路が
ある。
しかし、直後に感じ取る敵の気配。
即座に私は皆を覆うシールドを展開した。
刹那の合間を置き、シールドに着弾する攻撃。
それは水の魔法。『破断』だ。それがまるで
雨のように降り注ぐが、シールドには傷一つ
付かない。
「直上!敵襲!」
着弾の爆音に負けないほどに大きな声で
叫ぶハジメ。
「見つけた!天井部分にたくさん張り付いてる!」
続けて、スカウトモデルの索敵性能を生かして
敵を見つける香織。そのデータはデータリンクを
通してすぐさま私達に送られる。
「まるでフジツボの化け物みたいだね!
ユエちゃん!」
「任せて」
叫ぶハジメの声に応え、ユエが火球を放つ。
「妾も行くのじゃ!」
さらにティオも続き、二人の放った火球が
天井付近にいた魔物を焼き払う。
火に焼かれたフジツボの魔物が、ボトボトと
落下してくる。
そのまま敵を焼き払う事数分。
新手を警戒するが、どうやらこれだけの
ようだ。
改めて私は奥の通路に目を向ける。
これまで、大迷宮をいくつも攻略してきた
からこそ分かる。
あのフジツボは、所詮挨拶代わり。
ここに来るまでは、単なる前哨戦でしかない。
「さて、では改めて。どうやら我々は海底
洞窟らしき場所に足を踏み入れた。ここ
からが本番だろうと私は考える。
皆、決して気を抜かないように。本番は、
ここからです」
「うん。行こう」
私の言葉にハジメが頷き、他の皆も無言で
首を縦に振る。
そして彼等は、各々の武器を構える。
ハジメは両腕のグリムリーパーを。
香織はアルテミスを。
ルフェアは両手にバアルを。
ユエは両手に力を込める。
シアはアータルを握りしめる。
ティオは玄武の鞘を握りしめる。
私はタナトスを取り出す。
そして、私が静かに歩き出せば、皆が続く。
ここに、私達の新たな大迷宮、メルジーネ
海底遺跡の攻略が始まった。
第53話 END
この先は香織の立ち位置が原作と違うのでかなりオリジナル、
かもしれません。
感想や評価、お待ちしています。