ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~ 作:ユウキ003
あと、序盤でシンゴジ第6形態が出てきますが、これは『巨神兵東京に現わる』の巨神兵にシンゴジ第4形態の尻尾と背鰭をプラスした感じです。
~~~前回のあらすじ~~~
海底遺跡でエヒトが引き起こした惨劇を
目の当たりにするハジメと司たち。
彼等はそれを突破して無事に神代魔法
の一つ、『再生魔法』を入手する。
直後に大迷宮を強制的に離脱
させられた彼等だったが、そこに
ゼリーモンスターこと悪食が
襲来するのだった。
今、私達はアルゴの開いた後部ハッチの
淵に立っていた。
眼下の海、その海上にはあの巨大な
クリオネもどきが今も居座り、こちら
を見上げている。
「では、手筈は先ほどの通りに。
まずは私が降下して注意を引きます。
皆はその隙にホバーバイクで周辺を
包囲。包囲網が完成次第、奴を
総攻撃して消滅させます」
「「「「「「了解」」」」」」
皆の返事を聞き、私は前に向き、
そして前に倒れ込むようにしてアルゴ
から飛び降りた。
そして、私は降下しながらも自らの力。
ゴジラ『第6形態』の力を
発動する。
次の瞬間。私の体が光に包まれ、肉体が
再構成される。
そして、『それ』は宙に浮くように現れた。
『それ』は人型であった。だがその姿は、
『異形』の物であった。
異様な頭、細い手足。背中には無数の背鰭、
尻尾も生えている。
それこそが、シン・ゴジラ第6形態だ。
人の形をしたそれ、『ゴジラ第6形態』の
背鰭が紫色の光を放つ。すると、その体が
空中でフワリと停止する。
その体は優に200メートルを超える巨大な
物であった。現在の悪食の大きさが
30メートル前後である事を考えれば、
その7倍近く大きい。
しかしそれでも恐れを感じていないのか、
悪食はゴジラ第6形態、司に向かって
触手を射出する。
≪無駄な事を≫
その時、その場に居たハジメ達6人の
頭の中に司の声が聞こえた。
これは、形態変化によって、人のように
口から声を発する事が出来なくなった司が
テレパスで声を届けているからだ。
そして、司の言う通り、触手は彼に
向かって言った。
だがその行く手は、司の周囲に存在する
無色透明なシールドに阻まれ突破する事
は不可能であった。
そんな司の巨大な姿に見とれていたハジメ達。
≪皆、私が注意を引いている今のうちに
周辺に展開を≫
「っと。そうだった」
そこに司のテレパスが届き、皆我に返った。
「行こう」
ハジメの言葉に、彼女達が静かに頷く。
そして全員がホバーバイクに搭乗し、アルゴを
発進。悪食を囲うように周囲へと展開して行く。
悪食は司に集中しており彼等に気づかない。
そして、彼等は悪食を半円状に包囲した。
「司。こっちは全員配置に付いたよ」
≪了解。では、総員モードGの発動を≫
「分かった。行くよ、皆」
ハジメの声に皆が緊張した面持ちだ。
なぜなら、これまでモードGを1度も
使った事が無かったからだ。
そして……。
「「「「「「モードG、解放!!」」」」」」
6人の声が広い海原に響く。
と、次の瞬間。
『『『『『『カァァァァァァァァッ!!』』』』』』
6人のジョーカーが赤い光を放つ。
それに気づいて、悪食が周囲に触手を
伸ばすが……。
≪させん≫
いつの間にか悪食を覆うように展開
されていたドーム型シールドによって
阻まれてしまう。
その間に、6人のジョーカーが変わっていく。
まず全機の背中にあった不要なパーツが
一旦消滅する。
シアのブースターなどがそうだ。
更に、背面装甲板が中央から左右にスライド
する。すると、開いたパーツの間から
新たな、背鰭のようなパーツがせり上がる。
更に尾てい骨の辺りからも鋼鉄の太い尻尾
が現れる。
そして尻尾にも背鰭のようなパーツが
せり上がる。
更に両腕、両足の外側にも無数の背鰭の
ようなパーツが展開される。
これら背鰭に似たパーツは、全てが
放熱板であり、同時にエネルギー
増幅器であった。
ジョーカーのコア、ジェネレーター
より引き出したエネルギーを増幅し、
循環させる。
ハジメ達は、初めてのモードG起動に
戸惑いながらも自分たちの体を
見つめる。
「これが、ジョーカーの最強の力、
モードG……!」
「力が、溢れてくる……!」
驚くハジメと香織。
「これなら、行ける……!」
「よっしゃぁ!やったるですぅ!」
笑みを浮かべるユエとシア。
「これが、マスターの力の一部。
これほどの物とは……!」
「お兄ちゃんの力に包まれてる……!
不思議な感じ……!」
更に何故か恍惚とした表情をメットの
下で浮かべているティオとルフェア。
≪皆、今の状態ならば自力で飛行する
事も可能です≫
そう言うと、次の瞬間6人のジョーカーが
ホバーバイクを離れて宙に浮かび上がる。
それを確認した私は、G・ブラスターに
巻き込まれないようにホバーバイク達を
アルゴに無人飛行で戻す。
そして、前を向けば今もあの怪物が
シールドを破ろうと触手を四方に
伸ばしているが……。
≪バカめ。リミッターを外した
今の私のシールド強度は、あの時とは
比べものにならん≫
その証拠に、奴はシールドを溶かすことが
出来なかった。
≪皆、早々に決着を付けるとしよう。
G・ブラスターの用意を≫
『『『『『『コクンッ』』』』』』
私の言葉に皆が頷き、そして右手を
前に翳す。
すると、ジョーカーの右腕装甲が変形し、
それはやがて人の大きさの数倍はある
巨砲、G・ブラスターとなった。
だが、以前ハジメがライセン大迷宮で
展開した時とは違い、砲身の上部に
背鰭のように放熱板が列を成して並んでいた。
6人はG・ブラスターに左手を添える。
それを合図に内部にある粒子加速器が音を
立てて回転し始める。
すると、G・ブラスターとジョーカー
本体の背鰭が紫色の光を放ち始める。
それを確認した司、ゴジラ第6形態もまた
その口を開く。
すると、その口腔内にあった『機関』が
前進し、回転を始める。
それは、機械の形をしていた。
有機物の、人という生命の形の中にある
無機物の機械。
本来ならば生物が獲得するはずの無い力を
その手に持つ物。
それが『ゴジラ』である。
第6形態の背鰭が紫色に発光する。口腔内の
機関もそれに合わせて、同じように
紫色の光を収束していく。
更に、それに付随してハジメたちもまた、
最大火力を放とうとしていた。
そして……。
≪撃て≫
長の指示が下った。
『『『『『『カッ!!!!』』』』』』
次の瞬間、6人の右腕を包む巨砲から
紫色の熱線、『放射線流』が放たれる。
更に……。
『ビィィィィィィィッッ!!!!』
第6形態の口から放たれた、かつての
オリジナルのゴジラ第4形態の、
放射線流を上回る破壊力を秘めた光、
『プロトンビーム』が放たれた。
7方向から迫る光。悪食を閉じ込めた
壁は、司が創り出した物。つまり外側から
攻撃を通す事も可能なように調整済みだ。
そして同時に、そのドームは、攻撃の余波
が周囲に拡散するのを防ぐ、防壁でも
あった。
7つの光が悪食に命中したその瞬間。
悪食は『蒸発』した。
凄まじい閃光と爆発がドームの壁を
破らんとするが、壊れはしなかった。
それを確認し、ブラスターの銃口を
下げるハジメ達。
「やった、のかな?」
周辺を警戒するハジメ。その時。
「周辺に奴らの反応はありませんよ」
彼の隣に光球が降りてきて、それが
人型となり、服を着た第9形態、即ち
司となった。
そしてその言葉を聞いた6人もまた、
モードGとG・ブラスターを解除。
すると戻ってきたホバーバイクに
跨がった。
「ふぅ、呆気ない物じゃの」
そんな中でヘルメットを取り、息をつくティオ。
「普段からマスターが力をどれだけ
セーブしているか。そして、
セーブしてなお、どれほど強いのか。
改めて理解させられる戦いで
あったのぉ」
そう言って、驚嘆の感想を漏らすティオ。
しかし、驚嘆しているのは彼女だけでは
無かった。
「モードG。……凄かった」
「はい。なんかこう、今なら山でも
拳一つで壊せそうな感じが
しました」
膨大な『力』をその身に纏った
ユエやシア、更にはハジメ達も驚きを
隠せなかった。
「……あれが、ゴジラの力の一端
なのか」
「司くんの細胞を取り込んだ
ジェネレーター、ってだけで
あれだけのパワーが出る
なんてね」
「これが、ゴジラの力」
ルフェアは小さく呟くとヘルメットを取り、
自分の愛する人を、司を、何者にも
害される事の無い強さを持つ男を、
頬を赤く染めながら見上げる。
他の5人も、尊敬と驚嘆を込めた視線で、
自分達の傍の宙に浮く男に、
『新生司』という名のゴジラたる男に
見つめるのだった。
その後、司たちはアルゴでエリセンへと
戻った。
そして、宙に浮かぶアルゴからエリセンの
桟橋へと飛び降りた時だった。
「パパ~!」
前方の群衆の中からミュウの声が
聞こえてきた。
大人たちの足下をすり抜けてきた
ミュウは、司を見つけると笑みを浮かべて
彼に向かって駆け出した。
「パパ~!お帰りなの~!」
飛び込んでくるミュウを、私は優しく
抱き留める。
「ただいまミュウ。元気にしていましたか?」
「うん!ママとせらちゃんと、待ってたの!」
「そうですか」
と、私はミュウの言葉に優しい笑みを浮かべる。
何やら後ろの方で……。
ハジメ達が「過保護が悪化してる」とか言って
いるが無視しよう。
そう考えていた時。
「あなたっ!」
再び群衆の方から声が聞こえた。
すると人混みをかき分けてレミアが姿を
見せたが……。
『ガッ!』
「きゃっ!」
何かに躓いたのか、レミアが前のめりに
倒れそうになる。
私は咄嗟に空いていた左手で彼女の体を
抱き留める。
「大丈夫ですか?レミア」
「えぇ。ありがとうございます、あなた」
レミアは私の手を支えにして姿勢を
戻す。
「ご無事で何よりでした。お怪我などは
されていませんか?」
「なに。心配はいらない。怪我など
してはいない」
私はただ事実を語っていた。すると……。
「そうですか。あっ、そうそう」
何か思い出したかのような表情の
レミア。次の瞬間。
『チュッ』
彼女は私の頬にキスをした。
「おかえりなさいませ、あなた」
そう言って頬を赤らめるレミア。
すると遠巻きの群衆の中から黄色い悲鳴
と嫉妬の歯ぎしりの音が聞こえてきた。
しかし……。
「あ~!ママズルい~!ミュウも
パパにチュ~する~!」
『チュッ!』
すると、右手で抱いていたミュウも
私の頬にキスをした。
ちなみに……。
「ッ!ッッ!!!」
後ろではルフェアが鬼神のオーラを
浮かべていた。
そのすぐ後ろで震えるハジメ達。
「い、一難去ってまた一難」
「ここここ、怖いです~!
大迷宮の亡霊より怖いですぅ!」
互いの手を取り合って震える
ユエとシア。
「う、うむ。流石はマスターの姫。
見事な殺気じゃ。
わ、妾の膝が笑っておる」
そう言って膝がガクガクなティオ。
「こ、怖いよ~ハジメくん」
香織はブルブルと震えながらハジメに抱きつく。
しかし……。
『香織も似たような時あるでしょ~!』
肝心のハジメは内心、そんな事を考えていた
のだった。
こうして、私達はエリセンの町へと
戻ってきた。
それから、6日の時が流れた。
海底遺跡の大迷宮を攻略した事もあって、
休暇と言う意味合いもあった。
しかし、そんな中で私は頭を悩ませる事態
になっていた。
残りの大迷宮についてだ。
あと残っている大迷宮3つ。当初は条件が
揃っていなかった『ハルツィナ樹海』。
魔人族の領内にあるとされる『氷雪洞窟』。
そして、『神山』だ。
そう、大迷宮の一つがあそこにあったのだ。
改めて思うのが、『面倒な』の一言だ。
私達は聖教教会と対立している立場にある。
私達が神山に行くのならば、乗り込んでいく
しかない。だが、ここで奴らと対立して
しまえば、エヒトやイシュタルの思うつぼ
だろう。奴らは大手を振って私達を神の敵、
つまりかつての解放者たちのように敵として
喧伝する事が出来る。
そうなると、潜入を考えた方が良いのかも
しれないが……。
ともかく、神山について取れる選択肢は
『強行突入』と『潜入』のどちらかだろう。
しかし、問題がもう一つあったのだった。
その日、エリセンの海でハジメ達が
それぞれ水着姿でミュウと楽しそうに
遊んでいる。
見ている側としては微笑ましい光景だが、
しかし、ミュウにパパと慕われている身
としては悩ましい所だ。
本来、ミュウとはここまでだ。彼女は
このエリセンに帰るために私達と旅を
していた。しかしだからといって
きっぱりと別れられるかと言われると、
NOなのだ。
私が別れ話を切り出そうとすると、彼女は
泣きそうな表情になる。
かと言って、ずっとここに滞在している
訳には行かない。
私達には、果たさなければならない目的がある。
しかし……。
と、私が悩んでいると……。
「ん?」
海面下から近づいてくる反応があったので、
咄嗟に足を開いた。
『ザバッ』
突如として桟橋の淵に座る私の股の間から
レミアが顔を出した。
「レミア、私に何かようですか?」
「えぇ。少し、お話がしたくて」
「そうですか」
と、私が頷いても、レミアは私の股の間
から動こうとしない。
まぁ良い。
「ありがとうございます、司さん。
貴方達のおかげで、私もまたこうして
泳ぐ事が出来るようになりました。
それに、無事にミュウと再会する
事も出来ました」
「お礼は、もう十分に受け取っています。
ですから礼は不要です」
この6日間、ずっとレミアとミュウの家で
世話になっている。十分な対価だ。
「いいえ。あなた達からいただいた恩は、
返しきれる物ではありません」
そう言って視線を、ミュウ達の方へと
向けるレミア。
それにつられて私も視線を彼女達の方
に向ける。
そこではミュウが皆と楽しそうに、
笑みを浮かべながら遊んでいた。
「あの笑みを取り戻して頂いたのも、
司さん達のおかげです。だから……」
再び視線を戻せば、そこではレミアが
真剣な表情を浮かべていた。
「どうか、ここから先へ進んで下さい。
あなたは、あなたの成すべき事を
して下さい」
「……私が去れば、ミュウは悲しむでしょう」
「そうかもしれません。ですが、以前ならば
甘えてばかりだったミュウが、私を
守ると言ってくれるまでに成長
したのは、きっと皆さんと旅をした
からなのでしょう。そして、ミュウは
ついつい甘えてしまいますが、
それでも『行かないで』とは一言も
言っていません。あの子も、分かっている
んです。司さん達には、行かなければ
ならない所があるのだと」
「……分かりました。では、今日の夜、
はっきりと伝えます。
『明日、エリセンを発つ』と」
「では、今晩はごちそうにしましょう。
司さん達とのお別れ会ですから」
お別れ会、か。
本当に、それで良いのか?……いや、
良いわけがない。
「違うぞレミア、別れではない」
「え?」
「……確かに私達は一度ここを離れる。
だが、それは別れを意味するの
ではない。全てに片を付けて、
終わったのなら、私はまたハジメ
達と共にここを訪れる。
それは、『別れ』ではない」
すると……。
「分かりました。では、いずれまた、
再会する日を祝して、前祝い、と言う
事にしましょう」
「あぁ、その方が良い」
そして、夜。
私は明日、ここを発つ事をミュウに話した。
いずれまた、ここへやってくる事も。
「ミュウ、また、パパと会える?」
「えぇ、もちろん。全ての戦いが
終わったのなら、私はここへ
戻ってきます」
そう言って、私は泣き出しそうなミュウを、
私の膝の上に座らせた。
「これは別れではありません。いずれまた、
私はここに戻ってきます。それまで、
私達は別の道を歩くだけです。私達の道
と、ミュウとレミアの道。それはまた、
遠くない未来で必ず交わり、同じ方向へ
進んでいくのです」
「道?う~ん、良く分かんない」
「ははは、少し表現が抽象的でしたね。
でも、これだけは覚えて置いて下さい
私達は、必ずまたここに来る、
と言う事です」
私の言葉を聞くと、ミュウはハジメ達の
方へと視線を向ける。
「ハジメお兄ちゃんたちも、また
来てくれる?」
そんな彼女の言葉に、ハジメ達は
笑みを浮かべながら頷く。
「もちろん。こうして出会ったのに、
明日別れてそれっきり、なんて
悲しすぎるよ。そんなの僕は
嫌だな」
「そうだね。折角出会って、一緒に
旅したんだもん。だからもっと、
一緒に居たいよ」
「ん。……私達は、またここに来る」
「そうです!さっさと戦いを終わらせて
またここに遊びに来るですぅ!
何なら父様たちも連れてくるですぅ!」
「そうじゃな。……紡がれた絆。
それは大事にしなければならぬ物じゃ」
「もちろん。これは別れじゃ無いから。
私達はまた、ミュウちゃんの所へ
戻ってくるよ。……それに私、
料理対決でレミアさんに負けたん
だから!勝ち逃げは許しませんよ
レミアさん!」
ハジメ、香織、ユエ、シア、ティオ、
そしてルフェアは笑みを浮かべながらそう呟く。
更に言えば、ルフェアはレミアの事を
ライバルとして認めているのか、
再び勝負を挑むつもりのようだ。
「あらあら、それでは、私もお料理の腕
を磨かなければいけませんね」
そしてレミアもまた、笑みを浮かべるのだった。
その後の事だった。私のアイデアで写真を
撮る事にした。
当然写真を知らないトータスのメンバーは
出来上がった写真に驚いていた。
しかし、そこには私、ハジメ、香織、
ルフェア、ユエ、シア、セラフィムを
抱いているミュウ、レミアの全員が
映っていた。
今、ミュウはその写真を大事そうに
持っている。
「ミュウ、待っていて下さい。
戦いを終わらせて、またここに
戻ってきます。そしたらまた、
皆で一緒に遊びましょう。
何時間でも、何日でも、
何ヶ月でも」
「うん!パパ、約束だからね!」
「えぇ、約束です」
そう言って、私はミュウと小指を
絡ませ合い、『指切りの約束』を
するのだった。
そして翌日、私達は人形状態の
セラフィムを抱くミュウとレミアに
見送られながら、アルゴに乗り込み
エリセンの町を後にした。
その後、アルゴの艦内にて。
「ねぇ司。良かったの?」
「何がですか?」
「いや、だって僕達は元の世界に
戻る為に戦ってるんだよね?
もし、元の世界に戻れたとしても、
またこの世界に来られる可能性は」
「確かにその懸念はありますが、ハジメ。
私に不可能があると思いますか?」
そう問いかけると、ハジメは驚いて
から笑みを浮かべた。
「そうだったね。司に掛かれば、
世界を行き来するのなんて出来そうだね」
「えぇ。だからこそ、心配無いのですよ。
私達は必ず、再びミュウ達と出会う。
これは決定事項ですから」
そう言って私は笑みを浮かべるのだった。
エリセンの町を朝出発し、1時間ほどで陸地に
到達し、そのままアンカジ公国へと向かう。
アンカジ公国では静因石の回収を依頼されて
いたが、大迷宮攻略を優先したため、納入が
遅れていた。既にアンカジを発って1週間
以上経過している。既に毒素の件が解決
しているとは言え、急いだ方が良いだろう。
アルゴの速度を持ってすれば、その日の
内にアンカジ公国に到達するのは可能
だった。
とは言え、アルゴで直接乗り付けると
色々問題があるので、アンカジ公国の
郊外(と言っても砂漠)でバジリスクに
乗り換えてアンカジ公国へと向かった。
そして、アンカジ公国に近づくと、入り口
には以前来た時には見られなかった
商人らしき者達が列を成していた。
恐らく、王国の救援部隊に便乗する形で
来たのだろう。
私達はそんな列の最後尾に並んだ。
……相変わらず装甲車を知らない商人達
は驚いているようだが、無視する。
そのままノロノロと列の最後尾を
進んで居ると、向こうから兵士が数人
走ってきた。
「あれ?司、前から」
「迎えでしょうかね。私が対応します」
そう言って、私はバジリスクの運転席
から降りる。
そんな私の姿を見ると……。
「あぁ!やはり救世主様たちだ!」
兵士の一人が私に向かって救世主と
言った。……どうやらアンカジで私の名は
好意的に広まっているようだ。
その後、私達は兵士たちに案内されて
列の横を素通り。入場門へと入った。
そしてそこに入れば、兵士達が私達の事を
見て救世主、救国の英雄などと言って
深く頭を下げている。
香織やハジメはその様子に戸惑い気味だ。
その後、私達は待合室らしき所へ通された。
そして20分後。ミスタービィズを連れた
ランズィ公がやってきた。
「新生殿。それにハジメ殿たちも。
よく戻られた」
「ランズィ公、ミスタービィズも。
お久しぶりです。遅くなりましたが、
依頼されていた静因石の納入を」
「あぁ。すまない」
私は宝物庫の中から、大量の静因石が
収められた袋を取りだし、二人の従者に
渡した。彼等は予想外の重さに驚き
ながらもそれを運び出していった。
その後、私達は念のため土壌検査をする事に
した。ハジメの提案だ。あの時はそこまで
手が回らなかったが、念のためという
彼の言葉に私が同意したのだ。
私達はオアシス周辺の土壌を調査したが、
あの時神水擬きをオアシスに入れたおかげ
だろうか。
土壌の汚染は残っていなかった。
「ふぅ、杞憂だったみたいだね」
「えぇ。まぁその方が良いのですが」
と、ハジメと話をしていたときだった。
何やら、不穏な気配が近づいてきた。
それに気づいたのか、真っ先にティオが
玄武の鞘に手をやる。
次いでシアやルフェア、ユエ、ハジメと
香織がその気配に気づく。
気配の元は、如何にも偉そうな格好の
司教らしき男と100人の武装した
神殿騎士たちだった。
奴らはズカズカとやってきて私達を
半円状に包囲する。
すると、白い法衣姿の男がその中から
現れた。ただならぬ雰囲気に、咄嗟に
私達と男の間に割って入るランズィ公。
「ゼンゲン公、こちらへ。彼等は危険だ」
「フォルビン司教、これは一体何事だ。
彼等が危険?毒素に犯された我が国を
救ってくれた英雄たちですぞ。
彼等への無礼は、アンカジの領主として
見逃せませんな」
そう言うと、フォルビンと呼ばれた司教は
その口から私達が異端者認定を受けている
事を伝えた。
それに驚くランズィ公。
まぁ、私達の方はそれらしい動きが中央で
あると蒼司から報告を受けていたので、
ついにか、程度の認識であった。
どうやらこの連絡は今朝方届いたらしい。
そしてあの司教。どうやら私達を倒して
その功績から中央、即ち神山に戻る
腹づもりのようだが……。
「舐められた物だな」
「……何?」
疑問符を浮かべる奴を余所に、私は
ヴィヴロブレード、朱雀を宝物庫から
取りだす。
「雑兵を100人揃えた程度で私達を
倒そうなどと、随分と舐めている
な。司祭」
私の言葉に、騎士達が怒ったのか
ガチャガチャと鎧を鳴らす。
「なんなら今ここで試すか?
貴様の部下と、私達の実力の、
決定的な違いとやらを」
そう言って、私が朱雀を抜こうと
したその時。
「待たれよ、新生殿」
ランズィ公がそれを止めた。
そして、彼はそのまま周囲を見回す。
私も周囲を見回せば、そこにはアンカジの
住民達が集まっていた。どうやら仰々しい
騎士連中に興味を引かれたのか集まってきた
ようだった。
「新生殿、ここで、貴殿と交わした事を
皆に伝えたいと思う。どうだろうか?」
「……良いのですね?それは、最悪
あの連中と手を切る事になりますが?」
「ふっ、何を今更。……万が一の時は、
君らを頼っても構わないかね?」
「もちろん。……如何なる敵でも撃滅
出来るよう、アンカジを守る為に
最大限の協力をしましょう」
「そうか。……ならば、決まりだ」
そう言ってランズィ公は笑った。
「貴様等!先ほどから何をごちゃごちゃと!」
我慢の限界だったのか叫ぶフォルビン司教。
その時。
「聞けぇ!アンカジの人々よ!」
ランズィ公の声が響き渡った。
それにつられて更に大勢の人々が
やってくる。
「かつて、多くの者が汚染されたオアシス
の毒に倒れた!だが、それを救ってくれた
者達が居た事を、諸君等は覚えている
だろう!そんな彼等が!私に言った!
アンカジ公国を守る為に、力を貸そうと!
今、この場で皆に伝える!
アンカジ公国領主、ランズィ・フォウワード
ゼンゲンは、救国の英雄達、G・フリート
と同盟を締結する!」
その叫びに、集まっていたアンカジの住民達は
驚く。
更に司教と神殿騎士達が戸惑う。
「ば、バカな!その者達は異端者だぞ!
異端者と手を組むと言うのか!ゼンゲン公!」
「異端者?違うな。彼等はアンカジ公国を
救うために力を尽くした英雄!あの日、
私も、民達も!彼等の力に救われた!
恩義に仇で応じるなど、恥さらしも
良い所!彼等をそちらに渡す事は無い!」
「ちぃっ!異端者に肩入れするなど!ならば
ゼンゲン公!貴公も異端者だ!騎士達よ!
奴らも異端者だ!」
そう言って、右手を掲げる司教。
それが攻撃の合図だったのか、騎士達が
剣の柄に手を添える。
だが……。
『カンッ!カンカンッ!』
次の瞬間には、騎士達に周囲のアンカジの民
達から石が投げつけられた。
どうやら、我々のした救援活動は無駄では
無かったようだ。
司教が、私達が異端者認定された事を
叫べば、石を投げる彼等の手が止まる。
だが……。
「聞け!我が愛すべき公国の民達よ!
我々を救ってくれた英雄を、奴らに
引き渡し処刑させるのか!それとも、
彼等の恩に報いるべきなのか!その
選択を私は迫られた!そんな中で
私は、彼等を!救国の英雄を守る
事にした!諸君等はどうか!
どちらを選ぶべきか、自分の心で、
頭で!考えて欲しい!」
そう叫ぶランズィの言葉に、人々は
再び石を投げ始めた。
彼は口々に、私達を擁護する発言を叫んだり、
更にあの時何もしなかった教会への不満を
爆発させていた。
「司、僕達のやってきた事は、無駄じゃ
無かったんだね」
「えぇ」
安堵したような表情を浮かべるハジメに
私は頷く。
そして、男は悔しそうな表情を浮かべて
撤退していき、騎士達も慌ててそれに続いた。
その後、私達は宮殿へと招かれた。
「しかし、良かったのですか?ランズィ公。
同盟締結の際、後ろ盾になって欲しいとは
申しましたが、何もあそこまで大々的に
する必要は無かったと思いますが?」
「良いのだ。あれこそがアンカジの総意
なのだ。この国の者達の大半がG・フリート
によって救われた。その恩義を皆忘れて
など居ない。それに、私が諸君等を
司教に差し出したとあっては、私の方が
アンカジの総意によって殺されかねない
からな。……それに、君は敵に容赦が無い
とあの時言って居たからな。あれだけの
力を持つ君を敵に回すのは、やはり
恐ろしいものだよ」
「そうですか。……分かりました。では、
正式に同盟締結、と言う事ですね。
明日からすぐに防衛部隊用の基地等の
建設作業に入ります」
こうして、私達G・フリートとアンカジ公国
は正式に同盟を締結するに至った。
そして、私達はそれから二日ほどアンカジ
に滞在した。
その間に、私はアンカジ公国のシールドの
外に大型のシールドジェネレーターを
設置。これで砂嵐から基地を守る事が出来る。
そしてそこを基点として周辺に基地施設を
一瞬にして建造。
ガーディアンの生産、修理施設やハルツィナ
ベースとの通信を行う通信棟。
レーダー施設。輸送機やアルゴが着陸
可能な大型ヘリパッドに滑走路。
それらを管理する中央管制塔。
更にアンカジ公国内部へと続くルートも
建設。これで人々は両方をスムーズに
行き来できる。
その後、私達は様々なサービスを開始した。
一つはガーディアン部隊の派遣サービス。
アンカジ公国は外に出ればサンドワームが
潜む砂漠が広がっており、ここを超えるだけ
でも命がけだ。
なので、ガーディアンやハードガーディアン、
バジリスクで編成された護衛部隊などを
依頼主に派遣するサービス。
一言で言えば傭兵としてガーディアンを
派遣する。
次に、職業訓練校を開設。
ここでは調理師や医師、更には兵士や
冒険者としての勉強が出来る。
他国との交流が難しいアンカジ公国で
技術や産業を発展させるためには
必要な物だとハジメが考えたからだ。
他にも、アンカジ公国では手に入りにくい
物資の販売。私達の世界にある技術の
提供など人々の生活を豊かにするために
あらゆるサービスを始めた。
とは言え、やり過ぎると他の商売を
している人々の収入源を奪ってしまう。
なので、彼等とは『業務提携』を
行った。
例えば販売店ならば、客が注文した物が
店頭になかった場合、アンカジ公国に
隣接する基地、『アンカジベース』の
物資販売部門からお客に物を卸す。
それを仲介した店は物の料金の2割を
販売部門に納めるだけでも良い。
医療も、町医者では治療不可能であった
場合にアンカジベースの医療部門への
紹介状を書いてもらうと言う形にした。
そうやって、私達はアンカジ公国発展の
ために出来る事をしたが……。
「う~ん、今更に思うけど、このまま
行くとアンカジ公国が最強の国に
なっちゃいそうだね」
「ちょっとやり過ぎちゃったかな?」
首を捻るハジメと苦笑を浮かべる香織。
しかし、やり過ぎだろうか?
私達がした事と言えば……。
他国を滅ぼせるくらいの軍隊を提供して。
魔法に加えて現代の医療技術を提供して。
ありとあらゆる物資の供給ルートを提供して。
後は精々新時代を担う若手教育の為に
学校を作ったくらいである。ちなみに
この学校では、冒険者訓練用にメルド団長
の動きをトレースしたガーディアンや、
私の知識を持ったガーディアンを教師
として置いている。
ここを首席で卒業できれば、その道の
プロレベルになれる程度である。
これがやり過ぎなのだろうか?と
皆に聞いてみると……。
「「「「「「うん、やりすぎ」」」」」」
だそうである。
……何故だ。
まぁ、そんなこんなでアンカジ公国を
味方に付けて、更に色々貢献した私達。
ちなみに、それ以外にあった事と言えば。
ユエやシア、香織、ルフェア、ティオが
何とも扇情的な衣装をランズィ公の
奥方より送られたらしい。何でも香織達が
私達の世界の化粧品をプレゼントした事
へのお礼として貰ったらしい。
見た目は、ベリーダンサーが着るような
露出度の高い衣装であった。
ちなみに、これを見たハジメが、普段は
(ベッドの上で)羊だったのにこの衣装を
見て狼になり、自分から栄養ドリンクや
防音用のジェネレーターを私に要求
してきた。
ちなみに私も狼になってルフェアを
抱いた。
その時。
「ま、マスター。どうか、どうか
この卑しき家臣にもご寵愛を」
ハジメが香織、ユエ、シアとしていて。
私はルフェアとしている。そんな中で
一人だけ蚊帳の外になっていたティオが
珍しく涙目で懇願してきた。
しかし、今のところ私はルフェア一筋だ。
そう言おうとした時。
「う~ん、ティオお姉ちゃんなら別に良いかな~?」
肝心の我が妻、ルフェアがOKを出した
のだ。
「あ、ありがとうございます姫!
このご恩、一生忘れません!」
そう言ってルフェアに頭を下げるティオ。
「ルフェア、良いのですか?」
「うん。ティオお姉ちゃんだって一緒に
旅してきた仲間だもん。仲間外れは
可哀想だよ。あっ、でも正妻ポジは
譲らないからね♪」
「は、はいっ!構いません!
大いなるマスターのご寵愛を
受けられるのならば、不肖ティオ・クラルス。
例え愛玩奴隷の地位であろうと、甘んじて
受け入れます!」
そう言って目がガチなティオに内心
戸惑いつつ、その日からティオは私の
愛人になった。
そして2日後、私達はランズィ公や
ミスタービィズといったアンカジの民たちに
見送られながらアンカジを出発したのだった。
いよいよ奴らと相まみえる戦いが、そこまで
迫っているとは知らずに。
第56話 END
次回から王国での戦いです。展開は所々オリジナルを予定しています。
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