ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今のところ、意欲が沸き上がってるのでしばらくは投稿スピードが上がると思います。
まぁ何時失速するか分かりませんけど……。


第58話 真夜中の戦争 前編

~~~前回のあらすじ~~~

東へと戻るハジメと司たち。そんな中で

彼らは偶然にもメルド達、愛子、リリィの

計8人と合流する。王城での不穏な動きを、

エヒトの動きと考えた司は敵の情報を

得るために王都へと向かうのだった。

 

 

今、私達は2台のバジリスクで王都へと

向かっていた。

 

状況を整理すると、こうだ。

 

現在王城では、不穏な動きが二つある。

 

1つはエリヒド王を始めとした側近たちなど

王国の重鎮たちの異様なまでのエヒトへの

信仰心。

これはおそらく清水と愛子先生を襲った

謎の女、名称を『X』と仮定しよう。

このXはおそらくエヒトの手先だろう。

おそらく、私達があの海底遺跡で見たように

Xが何らかの方法で王国重鎮を洗脳したの

だろう。

 

もう一つは、メルド団長が懸念していた

王城内で最近見かける、どこか機械的な

兵士や人々。

こちらについては蒼司から情報を得て

いるので、『誰が』『何を』しているのかは

分かっている。

 

ちなみに、王都へと向かう道中に私は

騎士とリリアーナ王女にエヒトの真実を

話した。当然彼らは茫然となり、何人かは

嘘だと言っていた。

だが、私が録画していたオルクス大迷宮の

オスカーの言葉、更に海底遺跡で見た

狂気の映像をジョーカー越しに見せると、

しばし茫然としていたが、メルド団長に

説得された。

 

そして更に、国王がそのエヒトの手の者に

よって洗脳されている可能性も伝えた。

 

その上で、王都での作戦を立てた。

 

「聞いてください。我々の王都での任務

 は二つです。一つは愛子先生救出に

 見せかけた敵勢力の誘因。つまり敵を

 誘い出し、これを倒して情報を入手

 します。もう一つはエリヒド王や

 その側近たちの洗脳の解除。これが

 王都での我々のやるべき事です。

 そのため、部隊を二分します」

「二分?どのようにだ?」

「まず、敵の誘因には私とティオが

 向かいます。次いで、メルド団長たち

 6人とリリィ王女。香織の8人は

 王城での洗脳解除を。シアと

 ユエ、ハジメは万が一に備えて王都で待機。

 その時々によって仕事が異なる、

 遊撃部隊です。ルフェアは

 バジリスクに残り愛子先生を護衛。

 良いですね?」

 

「「「「「「「「「「了解っ」」」」」」」」」」

私の指示に皆が従う。

 

 

そして、あと少しで王都と言う時。

「司、聞いておきたいのだが、王宮

 内部で見られる不穏な者たちは、

 あれもエヒトの仕業なのか?」

「いえ。あれはエヒトとは無関係です。

 というより、下手人は別にいます」

と、私はメルド団長の質問に首を横に

振って答えた。

 

「その口ぶりからして、すでに下手人は

 分かっているようだが?」

「えぇ、もちろん。蒼司が報告を

 上げてくれたおかげです。その事に

 ついては、任せてください。

 一応は『身内』のようなもの。

 片はこちらで付けます」

「何?身内だと?どういう事だ司」

私の言葉に、メルド団長だけでなく

ハジメたちが戸惑う。

 

「その不穏な動きの元凶は、我々

 異世界組の中の、二人です」

「えっ!?」

私の言葉に真っ先に反応したのは先生だ。

 

その後、私はその不穏な動きの正体を

事細かく教えた。

 

更には、『檜山大介』が騎士たちを襲って殺し、

その死体を『中村恵里』が降霊術によって

操っている事。更にはひそかに王都郊外で、

死体を経由して魔人族と接触していた事などなど。

 

それら全て、蒼司の監視下にあったのだ。

 

嘘だと叫びたそうな先生に、私は檜山が

騎士を殺す動画。更にはその死体に降霊術を

中村が掛けている動画を見せた。

 

「そんな……!どうして、こんな……!」

顔面蒼白の愛子先生。ハジメと香織は戸惑い、

メルド団長たちは拳を握りしめている。

 

「……奴らには、ケジメをつけさせます。

 それと、ハジメ、ユエ、シア。3人は

 先ほど遊撃部隊と言いましたが、中村が

 魔人族と接触している以上、外から

 仕掛けてくる可能性があります。

 その時は……」

「僕たちで魔人族を撃て。って事だよね?」

 

ハジメが、どこか低い声で呟く。

 

「……えぇ」

 

私はただ、小さく頷くのだった。

 

「司くんは、どうするの?二人の事」

その時聞こえた香織の問いかけ。

私はその声を聴き、ちらりと後ろの

愛子先生へと目を向ける。

彼女は俯いたままだ。

「……その時々、状況に応じた対応をする。

 とだけ言っておきます。殺すにしろ。

 倒して捕縛するにしろ」

 

愛子先生は、全員での地球帰還を望む

だろうが、それがどうなるかは私達次第、

という事だ。

 

だからこそ……。

 

「香織、ハジメ。これだけは言っておく。

 いざという時は、躊躇いを捨てろ。

 躊躇っていたら、守れる命も

 守れない。もし、檜山と中村が

 立ちふさがり、敵として現れたの

 なら、そこに私がいなかったら。

 躊躇うな。その躊躇いで、誰かが

 命を落とすかもしれないのだから」

 

「「………」」

私の言葉に、二人は何も言わない。

 

その様子を確認しつつ、私は前方を

見据える。

既に夜。周囲は暗い。それでも……。

 

「見えてきたぞ。王都だ」

 

前方に見える、文明の明かりが灯った町。

 

そこが、戦場になろうとしていた。

 

 

 

その後、司たちは予定通り別れた。

 

司はティオを伴って、愛子救出のふりを

しながら神山へ。

ハジメはユエ、シアと共に魔人族襲来に

備えて王都各地へ。

メルドたち、香織、リリィは王を目覚め

させるために王城へ。

ルフェアは愛子と共に王都の中に

停車しているバジリスクで彼女の護衛を

している。

 

 

 

そして、神山にて。

 

今、私とティオはジョーカーの重力制御装置を

使って神山の上を目指して飛んで行った。

 

そして、最上部にある二つの塔の間にある

場所に着地したとき。

 

「待っていましたよ、イレギュラー」

どこからか声が響いた。

ティオは玄武の鞘に手をかけながら声が

した方。塔の天辺に目を向けた。

 

そこには、ドレスのような甲冑の、銀髪の女が

立っていて、その片腕には愛子が抱えられていた。

 

「貴様。……エヒトの手下か」

「はい。我が名はノイント。神の使徒として、

 主の盤上より不要な駒を排除します」

その言葉にティオが玄武を抜きかけた時。

 

「動かない方が賢明ですよ」

そう言って、ノイントは右手を愛子先生の頭の

上に置いた。

「この者がどうなるか、わかりますね?」

それは暗に、変な動きをすれば愛子先生の

頭を潰す、という脅しであった。

「くっ!?卑劣なっ!」

ティオは、静かに鞘から手を放す。

 

と、その時。

 

『バキィィィィィィンッ!!!!!』

「ッ!?なんじゃ!?」

遠方から何か大きな物が割れるような轟音が

響き、大気が僅かに揺れる。

 

すぐさま私の方にハジメ達からの報告が届く。

それは、王都を守る結界が破壊された音

らしい。そして同時刻、魔人族率いる

軍隊の侵攻が始まったらしい。

 

下ではハジメ達がそれに対して戦闘を

開始したようだ。

 

「どうやら魔人族が王都へ攻めてきた

 ようですね」

そう言って、私はノイントの方に視線を

向ける。

 

「これも貴様らの主の言う、お遊びの

 一環か」

「えぇ。呼び寄せた駒の中に、ひときわ

 面白い物が居たので、好きなように

 させよ、との命令がありましたので」

「成程。……怒りを通り越して清々しさ

 すら覚えるよ。貴様らの主の、

 外道っぷりにはな」

 

「御託はそこまでですよ、イレギュラー」

そう言って、その場でターンをするノイント。

すると奴は背中から銀色に輝く一対の

翼を広げた。

更にガントレットを光らせ、右手に大剣を

召喚する。

 

「イレギュラー、貴方はここで排除

 されるのです」

ノイントがそう呟くと、どこからか

歌声が聞こえてきた。

 

視線を向けると、近くにある教会らしき場所から

声が聞こえてきた。これは中に居るイシュタル

と聖教教会の司祭たちが『覇墜の聖歌』という

相手に状態異常を引き起こす魔法を

使っていたのだ。

 

この歌を聞いたティオが僅かにメットの

下で苦悶を漏らす。最も、私には

こんなものは効かないが。

「……念には念を、と言った所か」

「えぇ。あなたの力は強大。ゆえに

 万全の態勢でもって、貴方を駆逐する。

 あなたも、あのイシュタルのように

 駒としての自覚をもっていれば、

 もう少し長く生きられた物を」

 

その言葉には、憐れみと嘲笑が混じっている

ようだった。

 

「貴様っ!我がマスターを愚弄するかっ!」

ノイントの言葉に激高するティオ。

「例え何者であろうと、全ては主の駒」

そう言って、ノイントは大剣を掲げる。

 

おそらくあれで私を真っ二つにするつもり

なのだろう。

 

「……死ぬ前に、言い残すことはありますか?

 イレギュラー」

「ふむ。ならば貴様の主とやらに伝えろ」

そう言って、私はマスクの下で笑みを浮かべる。

 

「貴様はゲームが好きらしいが、ゲームの

 腕は低いな、と」

「?」

私の言葉に、ノイントは一瞬、なぜそんな

事を?と言わんばかりに僅かに首を

傾げた。

 

と、その時。

 

「「これくらい見破れないようだから……」」

「ッ!」」

 

 

その時、ノイントは二つの場所から司の

声を聴いた。一つは眼下の司。

もう一つは……。

 

「「お前は負ける」」

 

180度回転した、普通ならあり得ない状況で、

尚且つ無表情でこちらを見上げる愛子から

だった。

 

次の瞬間、ノイントが対応するより

早く、愛子の体が解けて流体化ナノメタル

となってノイントの鼻、口、目、耳から

スルリと体の中に入っていった。

 

「あっ、がっ。な、何、が……」

苦しそうに呻くノイント。

 

「貴様が誘拐したのは、本物の愛子先生

 ではない。愛子先生の精巧な偽物だ。

 ……すべては、エヒトの手先である貴様

 をここにおびき寄せるための演技だった、

 と言う訳さ」

「な、に……?」

「まさか、身近に私の分身の蒼司が居て、

 貴様の誘拐を見過ごすとでも思った

 のか?」

そう言って、私は息を吐き……。

 

「だとしたら舐められた物だな」

 

殺気を込めて、ひどく底冷えする声を

発した。

「ぐっ、あ、あぁっ……!」

その間に、ノイントは無表情ながらも

苦しみの声を漏らす。

「どうだ?内側から肉体を食い破られる

 感想は?……いかに貴様が強大な力を

 持っていようと、防げない攻撃には

 対処できまい?」

「がっ、ぎっ、あ、がぁ……!」

 

今、奴の体内ではジワジワとナノメタルが

体を侵蝕している。

直に、食い破られるだろう。

 

そして、私は静かに空を見上げる。

 

「見ているか?狂乱の神エヒト。

 貴様の手下と言えど、私に掛かれば

 この通りだ」

そう言って、私はマスクの下で笑みを

浮かべるのだった。

 

と、その時、不意に聞こえていた耳障り

な歌が途切れ、次いで私たち目掛けて

魔法が飛んできた。

 

だが……。

「はぁっ!」

その全てを、ティオの魔力を纏った

玄武が切り払った。

「マスター、お怪我は?」

「無い」

ティオの言葉に答える。見ると、先ほどまで

歌っていたイシュタルらが、驚愕と戸惑い

を浮かべた表情のまま次々とこちらへ、

教会から魔法を放ってくる。

 

その時。

「マスター、奴らは私にお任せを」

「頼めるか?」

「御意」

「そうか。ならば任せる。それと、あの教会は

 強固な結界で守られているようだ。

 気を付けろ」

「はっ!」

 

そう言うと、ティオは玄武を鞘に納め、

モードGを開放しG・ブラスターを装備。

更にメットを解放し、どうやらブレスも共に放つ

ようだ。

 

「これで、吹き飛べっ!!」

 

そう叫んで直後、G・ブラスターと彼女の

ブレスが放たれた。

二つの光が教会に向かって直進し、結界に

衝突。

 

したと思った次の瞬間には結界を破壊し

教会内部に着弾。盛大な火柱を上げながら

教会を木っ端みじんに吹き飛ばして

しまった。

 

爆風が私達の所まで届く。

あれではイシュタル達も死んだだろう。

まぁその方が都合がいい。

その様子を見つめながら、私はもがき

苦しむノイントへと視線を移す。

 

「あっ、うっ、はっ」

どうやらナノメタルが脳に至ったらしい。

既にビクビクと震え、虚ろな目で

宙を見上げているだけだ。

そしてついに、その体が全てナノメタルと

なった。

 

物質を侵食し増殖するナノメタルを一度でも

取り込んだのなら、私からの侵蝕解除

コードが送られない限り、全ての者は

ナノメタルに取り込まれる。

 

そして、私は宙に浮いていたナノメタルに

手を伸ばし、それを取り込んだ。

すると次の瞬間、ノイントの中にあった

記憶がデータとして私の中に流れ込んできた。

 

それを見る限り、やはりエリヒド王はこの

ノイントの技の一つ、『魅了』の効果で

洗脳されたようだ。

そして、過去に存在した虐殺などにも、

このノイントがかかわっていたようだ。

という事は、海底遺跡で見た銀髪の

人物は、やはりノイントだったようだ。

更に言えば、エヒトは中村のやっている事を

フォローしていた。

中村は、あのバカ勇者を手に入れるために

こんなバカげた事をしでかしたようだ。

 

 

しかし、肝心のエヒトの居場所は分からず

じまいだった。どうやらノイントの最後の

あがきらしい。

 

生物ではなく人工物であったノイントは

分解の力が使えたようだ。そしてその

力で脳の一部を破壊し、記憶データを

抹消したらしい。

 

まぁ、別に構わない。これで奴らに私の

力を見せつける事が出来た。少しは奴らも

こちらの力を思い知った事だろう。

 

そこへ。

「マスター、終わりました」

ティオがモードGを解除し、ブラスターを

しまって戻ってきた。

「大丈夫か?ブラスターとブレスの

 双方を使ったようだが?」

「はい。問題ありません。魔力の方は

 マスターからいただいた供給リングが

 ありましたし、モードGもすぐに解除

 しましたから」

「そうか。……しかし、戦いはまだ

 始まったばかりだ。ティオ、お前は

 魔人族の部隊と戦うハジメ達の

 援護に行け。私はメルド団長たちと

 合流し、このバカ騒ぎの大本を

 倒してくる」

「御意っ」

 

そう言うと、踵を返すティオ。しかし、

直後にその足が止まる。

振り返るティオ。

 

「どうした?」

「マスター、あれを!」

そう言ってティオが指さした先。見ると、瓦礫の

上に禿げ頭の男が立っていた。

しかし問題は、その姿が透けて見える事だ。

「立体映像の類か?」

「どうします?マスター?」

問いかけてくるティオ。その間に、男はまるで

滑るように動き出し、瓦礫の山の向こうへと

向かった。

 

まさか……。

「行くぞティオ。もしかすると、大迷宮かも

 しれん」

「え!?」

「ミレディ・ライセンから教えられたのだ。

 大迷宮の内の一つは、ここ神山にあると」

「何と!?分かりました!」

歩き出す私に付いてくるティオ。

 

そして、追いかける事数分。目的地に

たどり着いたのか、男は瓦礫の山の

一点を指さす。

何度か声をかけてみたが、答えない所を

見るに問答する事は出来ないのだろう。

 

私達は無言で男が指さした場所に立つ。

すると、周囲の瓦礫が浮かび上がり、

その下から光り輝く大迷宮の紋章が

現れた。

 

そして、私達は光に包まれてどこか

へと転移した。

 

転移した先は部屋だった。中央に魔法陣が

あり、他には台の上に古びた本がある

だけだった。

 

「まさか、いきなりゴールですか?」

「あぁ。なぜここに飛ばされたのかは

 謎だが、急ぐぞ。外では戦闘が

 続いている」

「御意っ」

その後、私達は新たな神代魔法、

『魂魄魔法』を入手し、置かれていた本

から攻略の条件の情報だけと、攻略の

証の指輪をゲットし、大迷宮の紋章を

通って元の場所に戻った。

 

「少し回り道してしまったが、先ほど指示した

 通りだ。ティオはハジメ達と合流し

 魔人族を殲滅しろ。私はあの屑二人を

 始末してくる」

「御意」

 

そう呟くとティオは大きく跳躍して麓の

王都へと降下していった。

 

私は一人そこに残る。

 

「……今度こそ、恨まれるかもしれないな」

 

そして、そう呟くと私もティオの後を追って

王都へと神山から飛び降りたのだった。

 

愛子先生に、今度こそ恨まれる事を覚悟

しながら。

 

 

一方、王都は今混乱に包まれていた。

 

王都は外敵からの防衛策として3枚の巨大な

結界に覆われている。しかし、その1枚目が

破壊され、今2枚目も破壊された。

 

破壊を行ったのは、フリードの相棒である

白竜ウラノスだ。最も、ウラノス単体で

破壊できるほど結界が脆くなっているのも、

中村の暗躍があったからこそだ。

 

その様子を王城の廊下から見ていた

メルド達。

「クソッ!?このタイミングで仕掛けて

 来たのか!」

結界が壊される事に歯噛みするメルド。

 

彼らには国王を正気に戻すという任務が

あるが、このままでは祖国の都が魔人族に

蹂躙されてしまう。

その事実にメルドだけでなく、騎士たち5人

も歯がゆい思いだった。

 

その時。

「あのっ!なら騎士の皆さんだけでも 

 前線に行ってください!」

「ッ!何?」

「今の騎士団の皆さんのジョーカーにも

 私達と同じ、ブースト状態になれる

 モードGがあるはずです!モードG

 なら、きっとあの大軍相手でも勝てます!

 それに前線にはハジメくんたちも

 いますし!」

「……そうだな。よしっ。ホセ!

 お前が指揮を執ってハジメ達と

共闘し魔人族を迎撃しろ!私はこのまま

香織や王女と共に国王陛下の洗脳を解き

に向かう!」

「「「「「「了解っ!」」」」」」

 

そう言うと、5人は窓を開けてそこから

跳躍し、市街地へと向かった。

 

「行きましょう。私達には、私達の

 やる事があります」

香織の言葉に二人は頷き、3人は駆け出した。

 

 

そして、王都の外では迎撃戦が始まっていた。

 

事前に魔人族襲来の可能性があったため、

ハジメは王都の石の外壁の更に外にガーディアン

やハードガーディアン。多脚戦車の

ロングレッグ、更にはガーディアン達が

操作する重機関銃陣地、高射砲陣地を

作り上げ、その指揮を執っていた。

「各部隊は弾幕を絶やすな!

 あとそこの王国軍兵士の人たち!

 僕たちは敵じゃないから撃たないで

 くださいね!敵じゃないですからね!」

ハジメは、安定性に優れるエンハンスド

ジョーカー、Eジョーカー形態となって

ミサイルランチャー、ルドラを撃ちまくって

いた。

そんな中で、砲声に負けないくらい大声で

叫ぶハジメ。

 

彼は外壁に居る王国軍の兵士に言っていたのだ。

ハジメ達は異端者認定を受けた身。いわば

お尋ね者だ。まぁこの状況で魔人族や魔物

と戦っている彼らをどうにかしようと

思う者は居らず、というかそもそも事態を

理解しきれていない者も多かった。

 

そんな中でハジメは、遠めに見える、魔物から

落下する魔人族を見ながらも歯噛みし、今は

守るべきだ時だ、と自分に言い聞かせ

ながらルドラの引き金を引く。

 

 

一方で魔人族の軍勢は、ハジメ達の

世界の、魔法にも勝る威力を持った

高射砲やミサイルの雨に撃ち落されていた。

陸から迫る魔物たちも、ロングレッグの

レールガンから放たれる砲弾で貫かれ

血肉を大地にまき散らしていた。

とはいえ、相手も大多数の部隊。

魔法などで応戦してくる。

 

対魔法戦闘も考慮したロングレッグなどは

まだ良いが、対空砲火の陣地などはそうも

行かず、次第に対空砲の数が減っていく。

 

「今だっ!一気に突破しろぉ!」

それを隙と見た魔人族の男が叫び、飛行型

の魔物にのった魔人族たちが対空砲火を

すり抜けて、王都上空へと侵入した。

 

直後。

 

「『蒼天・乱舞』……!」

ユエの、炎属性の最上級魔法、蒼天を

無数に作り繰り出す彼女のオリジナル技、

蒼天・乱舞が魔人族に襲い掛かった。

 

青白い火球に焼かれて、消し炭になって

崩れ去る魔人族と魔物。

それを見ていた魔人族は、仲間を殺された

怒りから、市街地の塔の上にいたユエに

狙いを定める。

そして魔法を放とうとした刹那。

 

『ヴィァァァァァァァァァァッ!!』

突如として、ユエとは別方向から放たれた

ビームが魔人族を飲み込み消滅させる。

「な、何だっ!?」

戸惑いながらもビームの来た方へと

視線を向ける魔人族の男。

 

だが、次の瞬間、横へと薙ぎ払われた

ビームの光に飲まれて、消滅した。

それは、離れた後方にて、アータル・

バスターモードを構えたシアによる

砲撃だった。

 

無限の魔力を無限にエネルギーに変える

アータル・バスターモードならば、

ビームを照射し続ける事も可能だ。

ビームで上空の敵を薙ぎ払うシア。

 

「くそっ!?下だ!下方に逃げて

 躱せ!建物ギリギリの高度を飛ぶんだ!」

咄嗟にそう判断し、指示を飛ばした

魔人族の指揮官は優秀な方だった。

 

建物に近い角度でバスターモードを

放つと、ビームの熱量で街が火事になり

兼ねないのだ。

 

しかし……。

「う~ん、本当なら町ごとやっちゃっても

 良いんですけど、そんな事したら

 ハジメさんに嫌われちゃいそうですし。

 ここは!アータルの新機能の出番ですぅ!」

そう叫び命令を送るシア。

 

すると、バスターモードの砲口が変化し

ガトリング砲のような多連装機関銃のように

なった。

だが、それだけではない。

キュルキュルと音を立てて回転する新たな

アータル、『ラッシュモード』。

 

ラッシュモードは、魔力をエネルギー弾を

銃弾として放つ。いわば魔力式ガトリング砲だ。

 

そんなラッシュモードに、司はあるシステム

を組み込んだ。

それは、グリューエン大火山で待ち伏せて

いたフリードの配下を全滅させた、

『全方位追従式レーザー攻撃システム』、

『タルタロス』だ。

 

『ラッシュモード、≪ホークアイ

 システム≫起動……!』

脳波で命令を飛ばすシア。

すると、ジョーカーのメット内部の

ディスプレイに、次々と標的がロックオン

されていく様が映し出される。

シアのジョーカー、タイプSCの

耳はセンサーとしての機能がある。

これに更にカメラからの情報を合わせて

敵をロックオンする。

それが鷹の目、ホークアイシステムだ。

 

「喰らいやがれですぅっ!これが私の

 新必殺技、『フルメタルレイン』ッ!」

 

『ガガガガガガガガガガガガガガガガッ』

シアが引き金を引くと、雨の如き数の

銃弾が、しかも誘導されながら魔人族と

魔物に向かって行った。

 

誘導された弾丸は、ピラニアの如く獲物に

群がり、その体を一瞬でバラバラに弾き飛ばす。

シアが銃身を左右に振れば、それだけで大勢の

魔物と魔人族が肉片と血飛沫になって町を

汚していく。

 

ちなみに、この攻撃で街に血の雨が降って

住民が更にパニックになったという。

 

そして、粗方敵を消し飛ばした事で、仲間の

大半を溶かされた魔人族は警戒して高度を

取った。

今後ろに戻ればハジメが指揮する対空陣地が

まだ生きていて落とされる。かといって

前に進めばユエとシアのバカみたいな攻撃

で消される。

 

正しく、前門の虎後門の狼、的な状況に

魔人族は歯噛みしていた。

 

と、その時。

「ッ!ユエさん!」

未来視の力で予知したシアが叫び、ユエ

は考えるより先に後方へと飛び退った。

 

直後、何もない空間に光の膜が発生し、

極光が放たれた。それは先ほどまで

ユエの居た塔の上部を溶かし、更にいくつ

もの家屋の屋根を吹き飛ばした。

 

「やはり予知の力か。忌々しい」

その時、ゲートを通って、白竜ウラノス

に跨った魔人族の男、フリードが

現れた。

 

最も、奇襲を躱されて苛立たし気だったが。

 

宙に浮くユエの傍に合流するシア。

一方フリードの方にも、飛行型の魔物に

乗った魔人族が集まる。その数はおよそ

30程度。

 

「やはり貴様らは危険だ。先ほどまでの

 殲滅能力。忌々しい人族の地で散った

 仲間のためにも、貴様らはここで殺す!」

殺気を込めた視線を向けるフリードと

魔人族たち。

 

しかし……。

「ってな事言ってますけど?どうします

 ユエさん?」

「……この前、大迷宮で司にコテンパンに

 された事、もう忘れてるみたい。

 負け犬のくせに。ぷぷぷっ」

動じていないシア。ユエは口元に手を当て、

挑発のつもりか小さく笑う。

 

それによって魔人族の男たちは表情を

歪める。

「だがっ!あの男はこの場には居ない!

 貴様らだけはここで殺してやる!

 総員、用意っ!」

フリードの掛け声に従い、魔人族たちは

魔法を使う為に詠唱を始める。

 

だが、それを前にしてもユエとシアは、

何やらシアがユエに耳打ちしているだけだ。

『舐めた真似を!だが、それが貴様らの

 命取りだ!』

「放てぇっ!」

フリードの号令によって、魔人族が

一斉に魔法を放つ。

 

更にウラノスも極光を放った。

前方から殺到する魔法と極光。

だが……。

 

「「モードG!発動!」」

2人の声が重なった直後。二人の体から

溢れだした紫色のエネルギーの放射に

よって極光も、すべての魔法も、

2人に到達する事なく霧散してしまった。

 

その事実に、魔人族だけでなくフリード

まで一瞬愕然となった。

 

「一つ、良い事を教えてあげる」

そう言っているユエは掌のビームの砲口

からエネルギーをたぎらせる。

「お前は、私達の本気をまだ知らない」

 

「さ~てと」

更にシアもアータルをアックスモードに

切り替えて肩に担ぐ。

「死にたい奴は掛かってこい!ですぅ!」

 

そんな挑発のような言葉に、しかし魔人族が

感じたのは恐怖だ。

 

ジョーカーから溢れ出る圧倒的なエネルギー

の奔流。更に展開された背びれと尻尾、

両手両足の背びれのような放熱板。

放熱板からは絶えず熱気が迸り、彼女たちの

背後をユラユラと揺らめかせる。

 

 

魔人族たちは、完全な奇襲を想定していた。

 

壊れる事の無いと人族が思っている結界を

壊して侵入し、蹂躙する。

そんな未来を考えていた。

 

だが、それは所詮、奴らが都合のいいように

解釈しただけ。

『きっとうまくいく』、『これで国を一つ

落とせる』、『忌々しい人間どもは血祭だ』。

 

そんな事ばかり考えていた魔人族の前に、

今二人の少女が立ちふさがった。

 

神を超えた獣、ゴジラの細胞から生み出される

エネルギーを纏った少女たちが。

 

「狩り、開始」

ポツリと呟くユエ。

その言葉を合図に、シアとユエが魔人族に

襲い掛かった。

 

ゴジラの加護を受けた乙女たちによる、

『狩り』が始まった。

 

     第58話 END

 




って事でしばらくは王都での戦いです。あと、シアの必殺技の
フルメタルレインの元ネタはゲームです。
ヒントはタイタンフォール2です。
分かる人いるかなぁ。俺あれ大好きなんだよなぁ。

って事で感想や評価、お待ちしています。

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