ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今回は帝都とか帰り道での話だったり、司の演説が殆どに
なってます。


第69話 戦い終えて

~~~前回までのあらすじ~~~

Gフォースによる帝都攻撃が行われた。

武器や装備の力で帝国兵を上回った

Gフォースは快進撃を続け帝都中の

亜人族奴隷を解放。皇帝ガハルドも

パーティー会場でカム達と戦うが

呆気なく倒され、帝都はGフォースの

凶化型MOABによって吹き飛んだ。

かに見えたが、住民はハジメと香織の

力によって助けられ、帝都も司の

再生魔法で元に戻るのだった。

 

 

帝都攻撃から数時間が経過。私は

皇帝ガハルドに改めて、今後一切

樹海への攻撃をしない事と亜人を

奴隷としない事を使った誓約書に

サインさせ、さらにこれに血判を押させた。

この誓約書は更に2枚コピーされ、

フェアベルゲンの長老衆の1人、

アルフレリックに渡すつもりだ。

もう一枚はGフォースのハルツィナ・

ベースに保管。原本は帝国に置いておく。

 

これで、仮に帝国が原本を破棄しても

問題無い。

 

更に、この話をしているとき、ハジメの

提案で、Gフォースと帝国側で取引を

行う事になった。

Gフォースは、樹海で討伐した魔物の

素材を帝国に売り、外貨を獲得する。

これによって、Gフォース、延いては

樹海の閉塞的な環境打開と、人間と

亜人の相互理解を深めるためだと

ハジメは言っていた。もちろん、

昨日今日で人間の亜人に対する差別

意識が変わるわけではないが、ハジメ

曰く『千里の道も一歩から』らしい。

まぁ特に断る理由がないので私は

OKを出し、ガハルドも、

『もう好きにしろ』という投げやりな

態度でOKを出した。まぁ詳しい

話はまた後日に、となったが。

 

その後、ガハルドから亜人関係の宣言が

出されたが、反発は少なかった。

まぁ、町一つ簡単に吹き飛ばす敵と

事を構えようという勇気のある奴はもう

帝国に残っていなかった。

 

その後、亜人達を乗せた揚陸艇部隊が

ハルツィナ・ベースに全機到着したと言う

連絡を受けた。これで、私達の戦いは

終わったな。

 

「では、そう言う事だ」

そう言うと、私は立ち上がった。

「私達はそろそろ失礼するよ」

私はそう言って皆に目配せすると、

ハジメ達が頷く。

 

「ったく、散々好き放題やって行った

 くせに終わったらハイさよならかよ」

「あぁ、どうせ、私達が帝都に居ては

 貴様等の心労に繋がるだろうからな。

 早く出て行ってやろうと言う事だ」

「あ~そうだな!早く出て行けこの!

 しっしっ!もう二度とテメェ等に

 この国の門は潜らせねぇからな!」

そう言ってガハルドは私達を追っ払う

ように手を振っている。

 

そして、ハジメ達が出て行く時。

 

「……優しさが欠けていた。か。

 だから俺は、あんな風に負けたのか?」

ポツリとガハルドの呟きが聞こえた。

 

「私の世界で、こんな言葉を残した

 作家がいる」

「ん?」

私はガハルドに聞こえるように語る。

 

「『タフでなければ生きていけない。

 優しくなければ生きている資格がない』。

 だそうだ。これを当てはめるなら、

 貴様も私も生きている資格がない

 そうだ」

「はっ。テメェと一緒にするんじゃねぇよ」

私の言葉を、ガハルドは笑った。

だが……。

 

「優しくなければ生きている資格も

 ねぇ、か」

彼はどこか、遠くを見据えながらそう

呟くのだった。

 

それを最後に、私は部屋を後にした。

 

その後私達は帝都郊外からオスプレイに

乗り、上空に来ていたアルゴ1に

搭乗しハルツィナ・ベースを目指して

戻っていった。

 

そんな道中。

私は自分の部屋、艦長室でのんびりしていた。

操縦はオートパイロットに任せている。

そんな時だった。

『ピンポーン』

「司、居る?」

不意にインターホンが鳴り、

マイクを通して声がした。

「えぇ。どうぞ」

私が促すと、戸が開いて雫が入ってきた。

しかし彼女は入り口の前で立ったままだ。

 

「どうしました?座らないのですか?」

と、声を掛けるが立ったままだ。

「雫?」

再び声を掛けた時。

「ごめんなさいっ!」

突然彼女が頭を下げたのだ。

正直、これには困った。

 

「雫?何故頭を下げるのですか?」

「……あの時、私は何も知らずに、貴方の

 事を叩いて。その事を謝りたくて……」

あぁ。あれか。

「そうでしたか。しかし、別に謝る

 必要はありませんよ」

私は雫にそう言うと備え付けの

冷蔵庫からジュースのボトルを出し、

コップに注ぐ。

 

「え!?で、でも、私は……!」

「帝国側にハジメ達の行動を悟られまい

 と、あの2人が避難誘導をしていた

 事実を話さなかったのは私です。

 それに、普通の人間、いえ、雫の

 性格を考えれば女子供すら無表情で

虐殺しようとしていた私に怒りを 

 覚えるのは、想像できる事でしたから。

 どうぞ?」

そう言って私はコップをテーブルの

上に置く。

「あ、え、えと、ありがと」

雫は戸惑いながらも席に着く。

私はその向かいに腰を下ろした。

 

「それに、本音を言えば、ハジメが

 動いていなければ本当に帝都を 

 民諸共吹き飛ばしていましたから。

 ……あの時は演技でしたが、

 あと少し何かが違っていたら、

 私は帝国を滅ぼしていたでしょう。

 ですから、私は雫に殴られても

 文句は言えませんよ」

「ッ、ご、ごめん」

「……まぁ、謝る必要はありませんよ。

 雫の性格は知っていてなお、あの

 発言をしたのですから」

そう呟く私だが、雫はどこか戸惑っている

様子だった。

 

「……ねぇ。これが、戦争、なの?

 私、戦いが終わってから思った、

 ううん。思いだしたんだ。司がこっち

 に来たばかりの頃、戦争がどう言う

 行為なのかって。

 多くの命を、この手で屠っていく覚悟

 を、司は私達に問いかけていた

 よね?」

「そうですね。それが、戦争です。

 雫も、聞いたでしょう?Gフォース

 の兵士達の、狂気の叫びを」

「……うん」

「あれこそが戦争の狂気です。闘争の闇。

 憎悪の先の先、血みどろの地獄。 

 それこそが戦争です。

 どれだけ指揮官として私が居ようと、

 押さえ込める憎悪には限界がある。

 それがあの時、一気に吹き出した

 のです」

「それが、戦争なんだよね。

 あの狂気の声を聞いて、ようやく私

 は、『本当の戦争』をまだ知らなかった

 事を理解した気がするわ」

「そうですか」

 

「……私、ダメだね。自分では覚悟とか

 口にしておきながら、未だに自分で

 人を殺した事が無い。もしかしたら、

 私は心のどこかで蒼司や司に

 甘えているのかもしれない。

 自分で手を汚したくないから、2人を

 頼っているのかもしれない。

 ……私って、ダメだなぁ」

そう言って、どこか落ち込む雫。

……ここは私が一肌脱ぐべきか。

 

「血に汚れる事を恐れて何が悪いん

 ですか?」

「え?」

「それは人間として当然の反応ですよ。

 ましてや血と暴力と無縁な現代の

 日本で育てば、そうもなります。

 どこの誰が、平和の国で育った後で

 そう簡単に殺人の覚悟を持てると

 言うのですか?無理でしょう。

 むしろ、簡単に覚悟が持てたら

 その方が異常です」

そう言って、私はコーヒーに口を

付ける。

「ましてや雫は女の子です。本音を

 言えば、貴方には刀よりも美しい

 ドレスが似合うと私は思いますよ」

「ッ!!」

その時、雫は顔を真っ赤にした。

 

 

この時、司は分からなかったが雫は

司に女の子発言されて、心がキュンキュン

していた。

かつて、お姫様と王子様に憧れていた

彼女だからこだ。

「つ、司、それは……」

「失礼。少々恥ずかしい事を

 言いました。……ですが、今の

 言葉は私の本音です。戦わなければ

 生き残れない世界ならば、戦う事は

 必要ですが、それでも、皆が

 血に汚れる必要は無いのです。

 ……もし、元の世界に戻った時、

 人を殺してしまっていたら、雫は

 良心の呵責やストレスに

 苛まれるかもしれません。私は、

 そうやって壊れていく友人を、

 雫を見たくは無い」

「司」

彼の言葉に、雫の心臓は高鳴る。

 

『あぁ、お願い止まってよ。なんで

 こんなにドキドキするの?

 やだ、司に心臓の音聞こえちゃう』

雫は内心戸惑っていた。だが、次の

言葉がトドメとなった。

 

「私は、雫に幸せな道を歩んで欲しい

のです。そのためなら、私は汚れ役を

 進んで引き受けましょう」

 

「ッ!ほ、ホントに?」

雫は、真っ赤な顔をで問いかける。

「えぇ。私は友の為ならば、喜んで

 茨の道を突き進みましょう。

 それが、貴方が幸せを得る助け

 となるのなら」

 

それから先、雫は殆ど何も覚えて居なかった。

 

自分の部屋に戻った時覚えて居たのは、

高鳴る胸の鼓動と真っ赤になった頬の熱さ。

荒い呼吸。そして……。

 

「もう、ダメ。好き。好きなの。司ぁ」

ベッドに飛び込んだ彼女は、頭の中に

残り続ける台詞と彼の顔を思い浮かべ

ながら、切ない表情で司の名前を

呼ぶのだった。

 

 

雫が急に立ち上がって部屋を出て行った後。

少ししてアルゴはハルツィナ・ベースに

到着。

 

「お帰りなさいませ、元帥」

それを先に戻っていたカムとパルほか

数名の兵士が出迎えてくれた。

ハジメ達と天之河たちはパルの案内で

来客用のゲストルームへと向かった。

 

私はカムと少し話があると言って、

皆を先に行かせ、今は2人で基地の

中を歩き回っている。

 

「カム」

「はい。何でしょう」

「ハジメの願いを聞いてくれた事。

 感謝する」

 

あの戦いで、Gフォースは3方向から

帝都を攻撃した。普通に考えれば4方向

から攻撃をすれば帝都を確実に包囲

出来ただろう。だがそれをしなかった

のは、ハジメがカムを説得したからだ。

ハジメの説得で、帝都民の逃げる

ルートとして一区画の包囲を解いたのだ。

 

「いえ。元はと言えば、我々もハジメ

 殿に助けられた身。シアから以前

 聞きました。ハジメ殿は、真っ先に

 私達を助けると提案してくれた事。

 そして更に、ハジメ殿は元帥に

 鍛えられた自分の経験を私達に語り、

 我々を励ましてくれました。

 あの、樹海での10日間の時も、

 何度ハジメ殿に励まされた事か。

 それを思えば、ハジメ殿には

 元帥に勝るとも劣らない

 大恩人。その願いを無碍には

 出来ますまい。……それに、これで

 良かったと言う自分も居ます」

 

「と言うと?」

「戦いから戻ってきた者達の何人かが、

 どこか空しそうな表情をしています。

 ……彼等は身をもって、復讐の

 空しさを知ったようです」

「……敵を殺しても、仇を殺しても。

 死んだ家族が帰ってくる訳でもない。

 まして、敵がいなくなれば、

 憎むべき相手もいなくなるのだからな」

「はい。私自身もまた、そんな空しさを

 覚えました。やり遂げたはずなのに、

 どこか冷めている自分が居ます。

 もちろん同胞や亜人たちを解放出来た

 事には喜びを感じているのですが、

 何とも……」

「そうか。……いや、それで良いのだカム。

 そして、もう二度と、人が亜人を奴隷

 とし、亜人が人を憎む世界を終わらせる

 のだ。カム・ハウリア。改めて

 貴殿に辞令を言い渡す」

「はっ!」

 

私の言葉に、カムはビシッと敬礼をし、

私は彼に向き直る。

「これから貴殿は、亜人族を守る守護者、

 ガーディアンの長として、亜人を、

 この樹海を守るのだ」

「はっ!その任務、謹んでお受け

致します!元帥!」

「うむ。良き返事だ」

その時、私は思った。『この名』を

彼にも伝えるべきだな、と。

 

「カム。折角だからお前に話しておこう」

「はい。何でしょう」

「新生司、と言うのはあくまでも私の

 この姿の名前だ。そしてそれは、

 本当の名前、即ち真名でなはない。

 この私の真名を知っているのは、

 私が真に信頼している仲間や友人

 だけだ。……この名を知る事は、

 その人物のために私は全力で

 手を差し伸べる証とでも

 思って欲しい」

「ッ!そのような、栄えある一員

 に選ばれた事、光栄であります!

 元帥!」

「そうか。では改めて名乗ろう。

 我が名は『ゴジラ』。それが私の

 本当の名だ」

「ゴジラ……!それが、元帥の

 本当の名なのですね!?」

「うむ。そして付け加えるのなら、

 G・フリートとGフォースのGは、

 ゴジラの頭文字から取った物だ。

 ……そしてもう一つ。Gフォース

 のGには意味がある」

「と言うと?」

「このGはGuardian。即ち 

 守護者のGなのだ。ゴジラのG

 と守護者のG。Gフォースの

 Gは、その二つのダブルミーニング

 だったのだよ。お前達Gフォース

 は私の仲間であると同時に、この

 樹海を、亜人を守る守護者なのだ」

「ッ!そのような深い名前をお付け

 になられていたのですね!元帥!

 いえ、ゴジラ陛下!」

 

「あぁ。そんな所だ。……それより、

 皆を集めて欲しい。今の名前の

 意味と、そして、彼等の今後の

 あり方について、私から話して

 おきたい」

「ははっ!仰せのままに!陛下!」

 

そう言うと、走り去るカム。

 

さて、やるか。

私は決意を固め、彼の後を歩いて追った。

 

ハジメは結果的に帝都民を助けたが、

それに反感を持つ兵達も居るだろう。

だからこその演説だ。

さて、どうなる事やら。

 

私が外にたどり着くと、そこでは既に

基地に居る数百人の兵士達が集まっていた。

私はカムが用意した壇上の上に上がる。

「総員、敬礼っ!」

『『『『『バババッ!』』』』』

カムのかけ声で皆が敬礼する。チラリと

目を向ければ、少し離れた所にハジメ

や天之河たち、リリィが居た。

 

「皆、休んでくれ」

私が言うと皆が手を下ろす。

「改めて私から労いの言葉を送りたい。

 帝都での戦いは見事であった。

 無事、奴隷となっていた亜人族を

 助ける事が出来たのは、皆の力が

 あってこそだろう。そして今、

 戦い終わって疲れている中集まって

 貰った事に感謝する。なので、

 単刀直入に聞きたい。

 今回の戦いで亜人達を助ける事は

 出来たが、同時に帝都民の大半は

 戦火を逃れた。……諸君等の中には

 その事実に『何故』と憤っている

 者も居るだろう」

 

私の言葉に、ハジメが苦い顔をし、

香織たちがそんな彼を宥めている。

 

「諸君等の憤りは理解する。だが、

 カムに話を聞くと、戻ってきた兵士

 たちの中には虚無感を感じている

 者も多数いるそうだ。それも分かる。

 なぜならば憎むべき敵が、

 あんなにも呆気なかったからだ。

 更に言えば、復讐をしても、死んだ

 家族が戻ってきたか?恋人が

 戻ってきたか?答えはNOだ」

私の言葉に、何十人かの兵士達が

俯く。どうやら彼等こそが、特に

復讐の空しさを実感した者達のようだ。

 

「帝国は樹海や亜人へ手を出すことを

 止めた。つまり諸君等は最大の

 敵を撃ち倒した事となった。

 では諸君、次はどうする?答えは

 簡単だ。次の敵を探すだけだ。

 だが、次の敵とは誰だ?

 別の人族の国か?魔人族の国か?

 いや、違う。敢えてここで私は

 言いたい。諸君等の次なる敵は、

 この世界の常識だ」

すると、私の言葉に彼等は動揺する。

『常識?どういうことだ?』と言った

風な会話がそこかしこで聞こえる。

 

「現在、この世界において亜人は

 人族に劣る者、と言った風な

 常識が蔓延している。つまり、

 諸君等はこの常識をぶち壊すのだ。

 知っての通り、この世界では人種

 による差別が横行している。私の

 世界もそうだ。どこの世界に行っても

 差別は必ず存在する。だが、それが

 全てかと聞かれたならば、NO

 だろう。どこかで必ず、手を取り合う

 者達は居る。例えばブルックの町。

 そこで私はある女性と出会った。

 彼女はシアと出会った時、嫌な顔

 など一つもしなかった。むしろ、

 ハジメに泣かされたら自分の所へ来い。

 その時はハジメをぶん殴ってやる

 とまで言っていたよ。ブルックの

 町は亜人にも寛容で、実に面白い

 町だったよ。そうでしょう?シア」

「はいっ!キャサリンさんはとても

 いい人でした!亜人だからって私を

 差別したりしませんでした!」

私が声を掛ければ、シアが嬉々とした

表情で語る。

 

「多くの命を奪ってきた私が言うと、

 皮肉に思えるだろう。だが、考えて

 見て欲しい。諸君らの憎しみは、

 どこかで断ち切るべきではない

 のか?君たちの子供達。更にその

 子供達にまでその憎悪を継承

 させるのか?それはおかしいと私は

 思う。だからこそ、今ある常識を

 破壊するのだ。今の君たちでは

 人と手を繋ぐ事は出来ないかも

 しれない。君たち自身がそれを

 拒絶するだろう。だが、次の世代

 ならば、更に次の世代ならば

 どうだろうか?」

その試みを目指したのは、何も

私だけでは無い。

 

「私は、メルジーネ海底遺跡で

 過去にあった惨劇を見てきた。

 その中で、人の王が亜人や

 魔人族と対話をし、和平を

 結ぶ所までこぎ着ける姿が

 あった。……残念ながら、

 それはエヒトの妨害で

 水の泡になってしまった。

 ……終わりの無い憎しみ。

 親から受け継がれる憎悪。

 それを、諸君等の手で破壊する

 のだ。……私の言葉は理想に

 聞こえるだろう。だが、誰かを

 憎んで生きるよりは、誰かと

 手を繋いで生きていくべきでは

 ないだろうか。……私には、

 最初ハジメと香織たちといった、

 少ない友人しか居なかった。

 だが、そんな私でも、今はこうして

 諸君等に慕われ、今こうして

 君たちの前に立っている。

 旅の中で多くの人々と出会った。

 私を好きだと言ってくれる女性

 と出会った。……告白しよう。

 私は元の世界に居たとき、生きる

 理由を見いだせずにいた」

 

これは、本当の事だ。

ゴジラから人間に擬態したが、私は

その先の理由を見いだせずにいた。

だからダラダラと人として生きていた

だけだった。

 

「だが、この世界に来て、私は

 生きる理由を見いだした。そして、

 旅の中で友たちと絆を深めた。

 愛する人と出会い、日々、彼女と

 愛を確かめ合っている」

私の言葉にルフェアは赤面しているが、

もう少しだけ我慢してもらおう。

 

「私は、この世界に来て『誰かと 

 手を繋ぐ暖かさ』を知った。

 彼女のためならば、如何なる

 困難にも立ち向かおうと私は

 思えたのだ!彼女のためならば、

 この命すら削る覚悟だ!そうやって、

 私は変わる事が出来た!」

 

私は、孤独な怪物であった。

誰からも恐れられ、拒絶されてきた。

 

そんな私が、ルフェアと手を繋ぎ、

その温かさを知る事が出来た。

 

「だからこそ、今私は声高に

 叫ぶのだっ!常識を変えろ! 

 世界を変えろ!今度の君たちの

 敵は常識だ!世界だ!

 君たちの子供達が、誰かを憎み

 殺し合うのではなく、『誰かと

 手を取り合う未来』を作るために、

 今を生きる君たちが戦うべきではない

のか!?私はそう、君たちに問いかけたい!」

 

私はそこまで言って、静かに口を閉じる。

すると……。

 

「子供達の、未来のためにっ!」

不意に、列の中にいたパルが拳を

突き上げた。更に……。

「未来のためにっ!」

「み、未来のためにっ!」

次々と兵士達が拳を突き上げる。

 

「「「未来のためにっ!」」」

 

「「「「「「未来のためにっ!!」」」」」」

 

「「「「「「「「「未来のためにっ!!!!」」」」」」」」」」

 

兵士達の叫びに、天之河たちが仰天

している。

 

どうやら、兵士達の賛同を得られたようだ。

 

やがて、声が収まる。

「皆、ありがとう。皆からの言葉。

 とても嬉しい物であった。

 そんな皆に、私の事と、Gフォース

 の事を話そう。

 私には真名、真の名前がある。

 その名を、『ゴジラ』と呼ぶ」

 

「ゴジラ?」「ゴジラって?」

と、兵士達がゴジラという単語を

繰り返していく。

「皆の部隊の名前、Gフォースの

 Gは、このゴジラの頭文字を

 取って名付けた物だ。

 だが、このGにはもう一つの 

 意味がある。それは守護者、

 ガーディアンのGだ。

 そんな君たちに、私は、命令

 ではなく、願いを言う。

 聞いて欲しい」

命令ではない。との言葉に彼等が

戸惑うが、すぐに緊張した

面持ちで聞く姿勢となる。

 

「ガーディアンの意味は、君たちに

 亜人の存在と未来を守る守護者

 になって欲しいと言う意味を

 込めて付けた物だ。……未来

 と言う物は不確定だ。それでも、

 そこに夢を見て、追いかける事が

 生きる事だと私は思う。

 だからどうか、君たちには、

 亜人の子供達が誰かと手を取り合って

 笑い合える未来のために、今と言う

 時間で戦って欲しい。それが、

 私の願いだ」

 

そう言って、私は頭を下げた。皆が

驚く。だが、やがて……。

 

「ゴジラ陛下!万歳!」

ふと、カムの叫びが聞こえる。

 

「ゴジラ陛下!万歳っ!」

更にパルの声が。

「「ゴジラ陛下!万歳っ!!」」

更に古参のハウリア兵達の叫びが

聞こえる。

 

そして……。

 

「「「ゴジラ陛下っ!万歳っ!」」」

 

「「「「「ゴジラ陛下っ!万歳っ!!」」」」」

 

四方から聞こえる、ハウリア兵たちの

万歳三唱。

 

更に、カムが壇上へと上がってくる。

 

「皆!陛下の言葉を聞いたな!

 今日から私達は、亜人を下に見る

 人間達の常識と!今の世界のあり方

 と戦うのだ!全ては平和な、私達の

 子供達のために!亜人族の守護者

 として、私は、亜人族の、素晴らしき

 未来のために戦う事を、ここに

 宣言する!」

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」」」」

カムが右手を突き上げれば、皆が

それに続く。

 

こうして無事、演説は終了したのだった。

 

その後、すぐさまカムが中心となって

より良い未来を考えるために

対策チームが作られた。そして

幸運な事に、演説を耳にしていた

リリィの提案で、王国もそれに

協力するよう、いずれエリヒド王に

取り付けると言っていた。彼女は私の、

『より良い未来のために今戦うべき』

と言う姿勢に感銘を受けたのだと言う。

私はこの話を聞いた時、内心、自分の

事を『策士だな』と自嘲した。

 

この世界で、私ほど平和という言葉が

似合わない男もいないだろう。

何せ、私は既に何十と言う人間を殺して

きた。更に言えば、前世でどれだけの

人間を焼き払ってきた事か。

そう言う意味では、本当に、私には

平和と言う言葉が似合わないだろう。

……だが、それでも、カムや仲間達

が平和になれるのなら、私は

いくらでも平和という嘘を謳おう。

 

と、私はそんな事を考えていた。

今は、私達7人と天之河達4人、蒼司、

リリィの合計13人が一室に集まっていた。

「司様、あんな事も仰るのですね。

 ちょっと意外でした」

そう言って笑みを浮かべるリリィ。

「普段の私は、物騒な事を言っている

 のですから、その反応は仕方 

 ありません。ですが、それでも彼等

 の上官として、彼等の幸せを

 望んでいるのです。……血に汚れる

 者は、少ない方が良い。誰か一人が

 汚れ役をやれば良いように、ね」

そう呟く私に、ハジメ達はどこか

俯く。

 

「ごめん司。何か、僕のやった事の

 尻拭いをさせたみたいで。

 やっぱり、皆の中には僕が帝都の人達

 を助けたのに、納得してない人達が

 いたんだよね?だから、あんな……」

「いえ。ハジメのせいではありません。

 ……どのみち、彼等は帝国を倒した事で

 次の目標を見失っていました。

 そんな彼等に私は次の目標を与えたの

 です。……それも、長く苦しい目標を。

 なればこそ、責められるのは私です」

 

その言葉に、ハジメは……。

 

「ねぇ司。今の司は、周りの人の分まで

 罪を背負おうとしてない?」

「はい?」

ハジメの言葉に、私は正直戸惑い、

首をかしげた。

 

「なんて言うかさ。帝都の時も悪役に

 徹しているみたいだったし。今

 だって僕が起こした問題も自分の

 責任にしてるみたいに聞こえるよ?」

罪を、引き受けている?私が?

そうだろうか?そんな認識は

無いのだが……。

この時、私は悩んだ。

「そ、それは……。どうなのでしょう。

 自分でも良く分かりません。

 ただ、何というか……」

 

「う、嘘だろ?」

「あの新生が、戸惑っているだと?」

私の様子に坂上と天之河まで戸惑っている。

谷口もあんぐりと口を開けている。

すると……。

 

「そっか。きっとそれは、司くんが

 仲間思いな証だよ」

「え?香織?」

私は香織の言葉に戸惑った。

「……あぁ、成程」

「そう言う事ですかぁ」

「ユエ?シア?」

二人とも納得した様子だ。

 

「確かに、マスターは仲間思いじゃな」

「うんうん」

更にティオとルフェアも頷いている。

どういうことだろうか?

ますます私は分からなくなった。

その時。

 

「要はさ、司は仲間の事が大切で

 大切で、めちゃくちゃ心配性なんだよ。

 そうやって、何でも自分で引き受けよう

 とするくらいにさ」

「私が、心配性?」

と、首をかしげると……。

 

「まぁ、確かにな」

私の分身である蒼司が肯定した。

「雫達の護衛にわざわざ自分の分身

 おいたり、自分が認めた奴には

 攻撃も防御もチートなジョーカー

 与えたりしてるしな。

 確かに見方によっちゃ、子供が

 心配でしょうが無い親みてぇ

 だよなぁ?」

「そうですわね。私にも、こんな腕輪を

 プレゼントし、守って下さいましたし」

更にリリィもクスクスと笑みを浮かべている。

 

「心配性、なのだろうか。私は」

と、私は首をかしげる事しか出来ないの

だった。

 

と、その時。

『コンコンッ』

部屋のドアがノックされた。

「む?どうぞ」

「失礼します」

私が促すと、扉が開いてカムが入ってきた。

だがその後ろに一人の客がいた。

 

「アルテナ様」

ぽつりと客の名を呟くルフェア。

相手は森人族の族長、アルフレリックの

娘、アルテナだった。

「カム。なぜ彼女がここに?」

「はい。実は先ほど、亜人達をフェア

 ベルゲンに送り届けた輸送隊に

 ついて来たらしく、アルフレリック

 の使者、だそうですが……」

とカムが言うと……。

 

「新生司様。このたびは多くの同胞、

 更には数多の亜人達をお救い

 頂いた事、心からお礼申し上げます」

そう言ってアルテナは甲斐甲斐しく

頭を下げた。

 

「私に礼は無用です。亜人族解放を

 実現したのはGフォース。つまり

 カム達です。礼を言うのなら、彼等に」

「存じております。しかし、そんな彼等 

 の誕生は、新生司様在ってのこと。

 新生様の存在が、巡り巡って私達

 亜人を助けたのです。だからこそ、

 お礼を申し上げます。新生司様」

「そうですか。……それで、アルフレリック

 の使い、との事でしたが、用件は

 何でしょうか?」

「はい。実はお祖父様が、皆様と一度

 会って話がしたいとの事でした。 

 新生司様やお連れの皆様をフェアベルゲン

 に招きたいとの事でしたので、私が

 使者としてこちらに」

そうか。ならばちょうど良い。

 

「分かりました。我々も、実は

アルフレリックに提案したい事が

あったので。その招待を受けましょう。

カム、バジリスクを回してくれ。

フェアベルゲンに向かう」

「了解しましたっ!」

敬礼をし、カムは出て行く。

 

その後私達は2台のバジリスクに分乗

してフェアベルゲンに向かっていた。

 

 

そして、そんな中で……。

「なんで、あいつが。あいつばっかり。

 俺は勇者なんだ。そうだ。俺は

 必ず、神代魔法を手に入れるんだ。

 必ず……!」

バジリスクの後ろの席で、ブツブツと

呟く光輝の姿に、気づく者は

居なかったのだった。

 

     第69話 END

 




次回はフェアベルゲンでの話です。

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