ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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遅くなりましたが、最新話です。展開はオリジナルです。


第74話 告げる思い

~~~前回のあらすじ~~~

引き続き、ハルツィナ樹海の大迷宮を攻略

しているハジメや司たちの一行は、媚薬

効果を持つスライムの海を難なく突破し、

次なる階層へと降りた。そこで待っていた

のは、ゴキブリ型の魔物であった。

更に魔法を放つボスゴキブリ。司はその

魔法から皆を守ろうとするが、それが

仇となって、新生司という存在の奥底

に眠っていた、『ゴジラの破壊衝動』が

覚醒し、暴走してしまうのだった。

 

 

『ゴアァァァァァァァァァッ!!!!』

 

ゴジラの咆哮が、階層一帯に響き渡る。

憎悪と殺意を乗せたその咆哮に、

ハジメ達は恐怖と畏怖を感じ、その体を

震わせる。

 

かつて、オルクスでヒュドラと戦った時、

司はヒュドラの咆哮に対して、ゴジラの

咆哮を返し、ハジメ達を鼓舞した。

 

だが、今はその逆だ。

咆哮に乗せた敵意が、ハジメ達の体を

貫き、彼等の恐怖を煽る。

 

そして、漆黒の怪獣王は、その瞳で

小さき者達、大切な仲間を、憎悪に

満ちた目で見下ろす。

 

それだけで、ハジメ達の体は金縛りに

あったように動かなくなる。

 

それこそが、怪獣王の覇気。

怪獣王のプレッシャー。

怪獣王の、絶対的な力が成せる事。

 

「う、ぐっ!ク、ソォ!」

蒼司が立ち上がろうとするが、頭の

中で暴れ叫び回る破壊衝動で、立って

いるのがやっとだ。

 

尻尾をユラユラと揺らしながら、ゴジラ

はハジメ達を見下ろしていた。

と、その時。

 

『ギチチチチチチッ!!』

 

結果的に背中を見せてしまっていたハジメ

達の背後にいたボスゴキブリが、羽を

広げて飛び上がった。

更にその周囲を中型のゴキブリと、無数の

ゴキブリたちが囲む。

 

だが……。

「バカ、がっ」

蒼司が脂汗を浮かべながらそう呟いた。

刹那。

 

『『『『カカカカカカッ!!!!』』』』

 

ゴジラの口と背鰭と尻尾の先で光が瞬いた。

次の瞬間。

 

口、尻尾の先、背鰭から、カクカクとした

動きで直角的に曲がる幾十、幾百もの、

紫色のレーザーが放たれた。

 

口からはまるでレーザーバルカンのように。

背鰭からはまるで対空機銃のように。

尻尾からは、まるで主砲を撃ちまくるように。

 

正しく戦艦。

正しく要塞。

そう思わせる程の、濃密な砲撃が繰り出される。

 

レーザーの雨が、ゴキブリたちに襲いかかった。

瞬く間にゴキブリたちが蒸発していく。

ボスゴキブリは、何とかゴキブリたちを盾

にして攻撃を凌いでいる。

だが、それだけだ。

 

万物を焼き払うレーザーの雨が、ゴキブリ

達を確実に削り取っていく。

すると、ボスゴキブリは自分の周りを

ゴキブリたちで球状に覆い、盾とした。

 

だが、それも小手先の策に過ぎない。

それを確認したゴジラは、レーザーの

照射を止めると、口を大きく開け、

その中に黒い球体を生成し始めた。

 

「ッ!?」

それを見た蒼司の表情が青ざめる。

「全員ッ!今すぐ床に死ぬ気でしがみつけ!

 でねぇと、『あれ』に飲まれて死ぬぞ!」

「な、何だよ!あれってっ!」

叫ぶ蒼司に声を荒らげる光輝。

「バカっ!あれは、『マイクロブラックホール』だっ!」

 

だが、蒼司の言葉に、皆が呆然となる。

そして次の瞬間、顔面蒼白になりながら、

彼等は各々に出来る事をし始めた。

 

ハジメや香織、ルフェアは何十と言う層の

シールドを展開。ユエはシールドに加えて魔力

の結界を作る。シアはアータルを槍状に

して地面に突き刺し、それを抱くように

している。

ティオや光輝、雫などは玄武や聖剣、青龍

を床に突き刺してしゃがみ込む。鈴も結界

を準備し、龍太郎は拳を床に突き刺して

アンカー代わりにしている。

そして各々が準備を終えた、刹那。

 

『ドウッ!』

 

ゴジラの口から、黒い塊が発射された。

突き進んだ黒い光球、マイクロブラック

ホールは、ゴキブリたちの眼前で炸裂し、

膨張。同時に圧倒的な重力場でもって、

ゴキブリたちを飲み込む始めた。

次から次へと飲み込まれていくゴキブリたち。

そして、最後はボスゴキブリも、だ。

 

必死に羽を羽ばたかせて逃げようとするが、

光さえも捕え、逃がさぬその重力に、

羽虫如きがあらがえる訳も無く、

黒き重力という死神の腕に捕らわれた

ボスゴキブリは、ブラックホールに

飲み込まれ消えた。

 

そして、ゴジラとゴキブリたちの間に居た

ハジメ達は、必死に耐えていた。

「踏ん張れよお前等!あれに飲み

 混まれた死ぬぞ!だから死ぬ気で

 耐えろ!ここで死んだだけなら、

 あとで司が生き返らせてやっからよ!」

「その言葉全然安心出来ないっ!!」

蒼司の言葉に雫がツッコむ。

とは言え、周りはそれを聞いて笑う

どころではなかった。

 

だが、黒き闇の恐怖は終わった。

 

やがてゴキブリが全滅すると、ブラック

ホールもまた自然消滅する。

 

吸い込まれそうな闇の消失に、鈴や

龍太郎達は息をつく。だが……。

 

 

『グルルルッ』

 

前方から聞こえたうなり声に、彼等

はハッとなって前を向く。

 

そこでは、ゴジラがハジメ達を見下ろして

いたのだ。その視線に、彼等の体が再び

震え、硬直する。

「く、クソッ!何だよこれ!?どうする

 光輝!」

その時、状況に理解が追いつかない龍太郎

が叫び、その声で光輝は我に返った。

そしてすぐさま、思考を巡らせる。

 

『どうする?どうするどうするどうする!

 考えろ!考えろ!逃げるのか!?

 戦うのか!?』

そう考えながら、光輝はゴジラを見上げる

が、すぐに悟る。

『無理だ。勝てる訳、無い』

相手の圧倒的な威圧感に、闘争心など

沸いてこない。正しく蛇に睨まれた蛙、だ。

そのプレッシャーを前にしただけで、

戦意は音を立てて崩れ去る。

 

そして、その恐怖から、光輝は一歩

後退る。

「に、逃げよう」

更に光輝は、震える口でそう呟いた。

「ッ!?本気で言ってるの!?」

それにハジメが食ってかかる。

「暴走しているとはいえ、あれは司

 なんだ!置いていける訳!」

「じゃああの『化け物』をどうする

 つもりなんだ!?」

「ッ!今、なんて言った!」

光輝の『暴言』に、ハジメがジョーカーの

腕力でもって彼の襟首を掴み上げる。

 

「どんな姿になろうと、司は司だ!

 僕の親友だ!誰であろうと、それを

 罵る事は許さないっ!」

「テメェ!止めろ南雲!」

怒声を張り上げるハジメ。それを止めよう

更に声を張り上げ、二人を引き離そうと

ハジメに掴みかかる龍太郎。

 

そして、彼が突き放すようにハジメの

押しのける。

それによってハジメが数歩下がる。

「新生があんなに為ってるんだぞ!?

 ここに残ったって、あいつに

 殺されるだけだろ!?」

「だからって!置いていけるか!

 司は僕達を守ってあぁなったんだ!

 無責任に、自分達だけ逃げられるか!」

言い争うハジメと龍太郎。光輝も、

逃げるべきだ、と言わんばかりの表情だ。

 

対してハジメやその後ろにいる香織や

ユエ、ルフェアたちは、『逃げる事など

論外』と言わんばかりの表情だ。

その時。

 

「バカ、今、俺等が言い争ってる、

 場合じゃ、ねぇだろ」

大量の汗を浮かべながら、蒼司が二人の

間に割って入り、ケンカを仲裁する。

「逃げる、つってるが、やめとけ。

 ぐっ。……今、ここでオリジナルを、

 放っておいたら、必ずこの大迷宮を出て、

 暴れ回る。樹海や、ハルツィナ、ベース。

 更には、王国や帝国。ありと、あらゆる

 場所を、あいつは破壊しながら、暴れる。

 暴走する、破壊衝動のままに、な」

その言葉に、シアやティオがジョーカーの

メットの下で表情を青くする。

 

「そしたら、エヒトとの戦い、どころ 

 じゃねぇ。俺達が、元の世界に帰る

 以前に、こっちの世界が、破滅、

 しちまう」

「だ、だったら止めないと!」

蒼司の言葉に戸惑いながらも声を荒らげる雫。

 

「そう、だ。ここで、あいつを、

 オリジナルを止めるしかねぇ……!」

そう言って、ゴジラと化した司を見上げる

蒼司。

「け、けどよぉ!?相手はブラックホールを

 ぶっ放してくるような相手なんだぞ!?

 俺達でどうにか出来る訳!?」

「いや、大丈夫だ」

相手の危険性に戸惑い、及び腰になって

いる龍太郎だが、それを蒼司が否定する。

 

「あいつは、今も俺達を、睨み付ける

 だけで、攻撃はしてこない。多分、

 ゴジラという本能に、新生司と言う、

 理性が、抗ってんのさ」

「抗う?」

「そうだ。アイツが、今ギリギリの所で、

 本能を抑え込んでる、今が、チャンスだ。

 とにかく、一度、アイツを殴って

 正気に、戻さねぇと、やべぇ。

 破壊衝動が、ドンドン大きくなって

 やがる。早いとこ、片付けるぞ」

 

そう言って、ハジメ達の方を向く蒼司。

「分かった。やろう」

 

そして、ハジメが一歩前に出る。

「正気かハジメ殿!?姿が変わった

 マスターが相手なのだぞ!?」

するとティオがそう叫ぶ。

「分かってる……!分かってるよっ!

 今も、体の震えが止まらない」

ハジメのジョーカーが、カタカタと

震える。

しかし、ハジメは「でも」と呟き

ながら右手で左手を押さえ付け、強引に

震えを止める。

 

「ここで、司を止めなきゃ世界が滅ぶ!

 『司が生み出した今』って言う世界を、

 司自身が滅ぼしてしまう!だから、

 それを僕達で止めるんだ!」

ハジメは、司であるゴジラを見上げながら

叫んだ。

 

「G・フリートも、ウルの町での事も、

 王国で大勢の人を助けたり、ミュウちゃん

 を助けたり。司は、これまで多くの命を

 守ってきた!それを、司自身が

 壊してしまう前に!僕達で司を『止める』!」

ハジメは叫び、自分自身を鼓舞する。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

そして、彼は雄叫びを上げながらジョーカー

最強の力、モードGを解放する。

 

ハジメのジョーカー0から紫色のオーラが

吹き出し、金属の尻尾と背鰭、背鰭状の

パーツが四肢に展開される。

 

「止める!絶対に!」

そう言ってハジメは大きく息を吸い込む。

そして……。

 

「司ァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

あらん限りの声で叫んだ。

すると……。

『グルッ、ルゥッ』

ゴジラが一瞬、苦しむように呻いた。

「ッ!?南雲君の声が、届いた?!」

それに驚いている雫。

 

「そう言う事、だ。お前ら、今まで

 一緒に旅してきた、だろ?だったら、

 その旅で、紡いだ絆をっ!

 声と力にして、あいつにぶつけろ!

 それが、アイツをたたき起こす方法だ!」

そう言って作戦を伝える蒼司。

 

「だったらぁっ!」

すると、次の瞬間ハジメが飛び出した。

 

『ゴアァァァァァァァァッ!』

それに反応してゴジラが口からレーザー

の雨を降らせるが、それは乱れ打ちと

言っても過言でないほど、精度の

低い物だった。

 

「これくらいならっ!」

そう言ってレーザーの雨を掻い潜って

ゴジラに接近するハジメ。

 

「司っ!僕は、感謝してるよっ!」

 

そして叫ぶハジメ。それだけでゴジラ

の動きが鈍る。

「向こうの世界でも、僕の友達で

 居てくれた事!そして、この世界に

 来て、皆に笑われていた僕に、手を

 差し伸べてくれた事!司が

 いたから、僕は生きてここまで来る

 事が出来たんだっ!だからこそ、

 今ここで伝えるっ!」

 

「ありがとうっ!司っ!」

 

『グゥッ、クァァァァァァッ!』

 

ハジメの言葉に、司が、ゴジラが、

まるで泣いているカのように切ない咆哮

を上げる。

しかし、それでもゴジラは再びレーザー

の雨を口から放つ。

ハジメは咄嗟に、それをモードGの

エネルギーを前面に収束させ、シールド

にする事で防いだ。

 

「グッ!?」

モードG発動中だが、それでもゴジラの

熱線は、レーザーはジョーカー0を

大きく後ろへ押し戻す。

だが、それでもハジメは諦めない。

 

「司は、どんな存在であろうと司だ!

 僕達の大切な仲間だ!

 だから、絶対に見捨てたりなんてしない!

 司が自分を見失ってしまったって言う

 のなら……!」

そう言って、ハジメは空間を蹴って飛ぶ。

 

「ぶん殴ってでも!司を正気に戻す!」

 

そして、再び襲いかかってくるレーザーの

雨を掻い潜り、ハジメはゴジラの眼前に

躍り出た。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

そして、彼は振りかぶった拳を振り下ろした。

『ドゴォォォォォォンッ!』

ゴジラの頭に拳が命中し、その巨体が

蹈鞴を踏む。

 

しかしゴジラはすぐさまハジメを睨み、

その口に熱線のエネルギーを収束させる。

だが……。

 

『ドドンッ!』

次の瞬間、顔の周囲に命中した攻撃の影響で

ゴジラは怒号にも悲鳴にも似た咆哮を上げ

ながら集めたエネルギーを霧散させて

しまった。

 

「ッ!?今のはっ!」

ハジメは驚きながらも、攻撃の主、

香織の方へと視線を向けた。

 

そこでは、同じようにモードGを発動

した香織が、両手に一丁ずつミスラを

持ち、構えていた。

 

「そうだよね、ハジメくん」

そう言うと、香織は片方のミスラを投げ捨て、

もう片方を両手で持ち、ボルトを操作して

次弾を装填する。

 

「これまでの旅の中で、私達は何度も

 司くんに助けられてきた。司くんが

 いたから、どんな時でも私達は

 戦いに勝つことが出来た。……その

 事を感謝しているのは、ハジメくん

 だけじゃないよ?……だから!」

そして、香織は再びミスラの狙いを

ゴジラに定める。

 

そして、彼女のジョーカーから溢れ出た

オーラがミスラ全体を覆い、その性能を

飛躍的に強化する。

「止めるよっ!私達がっ!」

『ドンッ!』

 

次の瞬間、ミスラから強化された19ミリ弾

が発射される。それは、一般的な艦砲射撃

の威力を更に超える物であった。

『ドゴォォォォォォンッ!』

 

『ゴアァァァァァッ……!』

攻撃が腹部に命中し、ゴジラは苦悶の叫び

を漏らす。

しかし、次の瞬間には、すぐさま体勢を

立て直して口から放射線流を放った。

 

が……。

「行け……!『黒淵球』……!」

次の瞬間、ゴジラと香織の中間地点に突如

として現れた黒い球体が、放射線流を

飲み込んでしまった。

 

それは、ユエの新必殺技、『黒淵球』だった。

これを一言で説明すれば、ブラックホールだ。

重力魔法を操る事が出来るユエだからこそ、

司という無限の魔力リソースを生かして

マイクロブラックホールを作る事が出来るのだ。

そして、今はその黒淵球で放射線流を飲み

込み無力化したのだ。

 

そして……。

「私は、ある意味貴方に助けられたのかも

 しれない。司」

静かに、しかし確かに聞こえる声で、ユエが

語り出す。

 

「司が居たから、ハジメが大迷宮の、私の

 封印されていた場所まで来れたのかも

 しれない。司がハジメを守ってくれた

 から、ハジメと私は出会う事が出来た。

 ……暗い孤独から、ハジメが、司が、

 皆が私を救い出してくれた」

 

そう語るユエの周囲に、漆黒の蛇神、

八岐大蛇が顕現する。

 

「……楽しかった。皆と一緒に旅をして、

 ハジメや香織、司が教えてくれた

 見た事もない、ハジメ達の世界に心を

 踊らせたりもした。一緒に美味しいを

 食事を食べた。……その思い出は、

 今だって、私の中にある。

 司たちが私を助けてくれたから、

 今私はここにいる。……だからこそ、

 私も戦う。この思いで、貴方を、

 司を止める……!」

 

次の瞬間、八岐大蛇が口から火炎や

電や風の刃や氷の砲弾を、雨あられと

打ち出す。

モードGによって強化されたその攻撃

の威力は、簡単に地形を変える程の

物だ。だが、それでもゴジラの体表を

貫く事は出来ない。

 

今度は、ゴジラが口にエネルギーを収束し、

光線ではなく、光球として放った。

一点に収束されたその紫色の光球は、全て

を消し去る熱量を持っていた。だが……。

 

「させないですぅっ!」

次の瞬間、光球の前に立ち塞がった、

モードGを解放したシア。

彼女は圧倒的なまでのエネルギーを

その手にしたアータルに纏わせ、

光球に叩き付けた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

アータルと光球がぶつかり合い、衝撃が

周囲に拡散する。それだけで、ハジメ達の

足場になっている枝に亀裂が走る。

「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

そして、その競り合いにシアが勝った。

真っ二つになった光球が霧散し消滅する。

 

「司さん。私だって、とってもとっても、

 感謝してます」

そして、次はシアが思いを打ち明ける番だ。

「司さんのおかげで、私の家族は強くなる

 事が出来ました。大切な物を守れる

 くらいの、世界一強い亜人族になる事が

 出来ました。父様も、パル君も、みんな。

 司さんが居たから、強くなれたんですっ!」

 

そう言って、シアは空間を蹴ってゴジラに

突進。口から放たれるレーザーの雨を、

背中のブースターを吹かして回避し、

掻い潜り、その眼前に接近する。

 

「そして、私もぉっ!」

 

次の瞬間、アータルの刃部分がアックス

モードからハンマーモードに変化し、

ゴジラの横っ面をひっぱたいた。

『ドゴォォォンッ』という爆音が

響き渡る。

 

「私も、司さんに出会って、皆さんに

 出会って、こんなに強くなれました!

 皆と一緒だから、どんなピンチだって

 へっちゃらでしたっ!その感謝の

 想い、どんな時だって、忘れた事は

 無い、ですぅっ!」

更にもう一打。アータル・ハンマー

モードが振るわれ、ゴジラの頭部に

叩き付けられる。

 

『ゴアァァァァッ……!?』

頭部に攻撃を食らい、ゴジラの体が

僅かにフラつく。

 

それでもやはりゴジラだ。

どれだけ攻撃を受けようとも、すぐに

体制を立て直し、反撃してくる。

今はまだ、司と言う理性とゴジラという

本能がせめぎ合っている段階だからこそ、

攻撃の精度は低い。だが、それでも

当るときは当るのだ。

 

『ドドォォォンッ!』

「くぅぅぅっ!?」

レーザー数発がシアに当る。

シアは咄嗟にアータルを盾にして直撃は

防いだが、後ろに押し戻されてしまい、

着地した。

そして、ゴジラはその瞬間を狙ってシア

目がけて放射線流を放つ。

 

が……。

「させは、せぬっ!」

次の瞬間、横合いから放たれたティオの、

G・ブラスターによる砲撃が、放射線流と

ぶつかり合い、せめぎ合う。

だが、それだけではない。

 

「妾には、ブレスもある事をお忘れか!」

ティオが手を翳し、そこからブレスを放つ。

モードGの後押しを受けて数十倍に強化

されたブレスが、ゴジラの体に命中し、

放射線流の照射を止めさせる。

 

ゴジラは、忌々しげに呻きながらティオ

を見下ろす。

だが、それでもティオは動じない。

 

今度はティオを焼き払おうと言うのか、

ゴジラが再び口にエネルギーを貯める。

そんな中で……。

 

「マスター。妾は、マスターと出会えた

 運命に感謝しております」

ティオは、構えを解くと静かに語り出す。

 

「自らを強者と驕っていた妾は、マスター

 と出会う事でその驕りを捨て、今は

 こうしてマスターを主と仰ぎ、共に

 旅をしています。旅の先々でマスターの

 起す奇跡を見る度、妾は貴方様への

 忠誠を何度も誓ってきました。

 その力は敵となる全てを引き裂き。

 守るべき物を、必ず守り抜く。

 それは即ち、『全てを滅ぼす事が出来、

全てを守る事が出来る力』。それこそ

が、ゴジラのゴジラたる所以。マスター

がマスターたる所以。如何なる敵にも

屈しない大いなる力の化身。それ

こそが、ゴジラであり、マスター」

 

そう言って、ティオは静かにゴジラを

見上げる。

と、次の瞬間、ゴジラがティオ目がけて

放射線流を放った。

 

「大いなるマイマスターよ。貴方様が

今、苦しんで居られるのなら。なればこそっ!」

しかし、それもティオの強化されたブレス

で相打ちとなってかき消される。

 

「大いなる獣の神、ゴジラに仕えたる忠臣!

不肖ティオ・クラルス!大いなる

 マイマスターの為、今は全力の想いと

 力で持って、御身の敵となりましょうぞ!」

そう言って、全身から紫色のオーラを放出する。

 

次の瞬間、ティオが飛び出し、ゴジラの

顔面を思い切り殴りつける。

『ドゴォォォォォンッ!』という爆音が

響き渡り、空気を震わせる。

 

咄嗟に反撃しようとするゴジラ。だが……。

 

「妾も同じですぞ!マスター!マスター

 に出会い、仕え、その力と強さ、そして

 優しさに、妾は惚れたのじゃ!」

『ッ!?』

叫ぶティオ。すると、ゴジラの動きが一瞬

鈍くなる。

 

「妾の偉大なるマスター!その力に!

 その心に!誰が何と言おうと、

 マスターは、世界最強にして絶対の、

 最高で、最善で、最大の、王たる存在じゃ!

 何度でも妾は叫ぶ!妾は、偉大なる

 覇王!新生司!またの名を、ゴジラに

 仕える忠臣、ティオ・クラルス!」

そう言うと、彼女は自分の右拳を左胸の

装甲板に叩き付けた。

 

「この体、この魂の一片まで!

 全てマスターに捧げた、龍である!」

 

『グッ、ゴアァァァァッ……!』

 

ティオの叫びに、ゴジラが苦しそうに呻く。

それは、司という理性がゴジラの本能に

抗っている事に他ならない。

 

だが、直後。ゴジラの体表から四方八方に

レーザーが放たれる。

それはもはや乱射だった。狙いも付けず、

唯々、四方八方に撃ちまくっているだけだ。

 

「ぐっ!あと、あと一押しだっ!」

咄嗟に結界を張って全員を守る蒼司が

叫ぶ。

 

そして、最後となれば、『彼女』しかいない。

 

静かに、彼女、ルフェアが結界の外へと

歩み出る。

「ッ!?危険だ!戻って!」

咄嗟に光輝が声を上げるが、そんなの

お構いなしにルフェアはゆっくりと、

しかし確実にゴジラの方へと歩み寄っていく。

 

もはや錯乱状態と言っても良い程に、

苦しみの咆哮を上げながら周囲にレーザー

を撃ちまくるゴジラ。

それがこの広大な空間の壁や大樹の枝

を撃ち、焼いていく。

 

正しくレーザー雨。しかしその全てが、

『当らない』。

ルフェアの近くに着弾する事はあっても、

彼女に掠りもしない。

 

「……お兄ちゃんは、ずっと、人間が

 憎かったんだね」

そんな中で、彼女は静かにゴジラへと

語りかけ始めた。

 

「自分自身を汚染して、苦しめて、

 ゴジラという存在にした人類が。

 ……でもね、お兄ちゃん。

 私は、不謹慎かもしれないけど、

 その過去を否定したくない。

 ……だって、お兄ちゃんがゴジラ

 にならなかったら、こうして

 私とお兄ちゃんが出会う事だって

 無かったんだよ?」

 

その言葉に、ゴジラはびくりと体を

震わせる。

 

「ううん。それだけじゃない。

 お兄ちゃんがゴジラとして、ここに、

 この世界に来たから、救われた人

 だって、きっとたくさん居る。

 ミュウちゃんや王国の人達だって

 そう。お兄ちゃんが居たから、

 助けられた人達だって居る」

 

やがて、ルフェアはジョーカーの

装着を解除する。

そしてゴジラも、次第に体から

レーザーを放つのを止め、眼下の

ルフェアを見下ろしている。

 

大きな巨獣を、たった一人の小さな

少女が見上げる。

それは、蟻が人間を見上げるような物。

それだけのサイズの違いがあった。

 

ゴジラはその脚を少し動かすだけで、

ルフェアの命を簡単に奪えてしまう。

だが、ゴジラは、司は、そんな事は

しない。ただ静かに、ルフェアを

見下ろしているだけだ。

 

「確かに、勝手な人ってたくさんいる。

 私を身勝手に捨てた親もそう。

 亜人を奴隷としか思ってない人間も

 そう。皆、最低な奴らばっかり。

 お兄ちゃんをゴジラにした奴らだって、

 自分の都合でお兄ちゃんを苦しめて、

 なのに自分達は苦しい思い一つしないで。 

 周りに苦しみを押しつけて、楽して

 生きてる。……考えるだけで、私は

 そいつらを殺したくなる」

 

そう言って、ルフェアは拳を握りしめる。

だが、直後に彼女は『でもね』と呟く。

 

「お兄ちゃんが、ゴジラになったから、

 私はお兄ちゃんと出会って、お兄ちゃんに

 救われたの。お兄ちゃんを大好きに

 なれたの。お兄ちゃんの、奥さんになれたの。

 ……酷い奥さんだよね。お兄ちゃんの

 苦しい過去を、否定じゃなくて肯定

 してるなんて」

そう言って、苦笑を浮かべるルフェア。

 

「でもね、今のお兄ちゃんが居たからこそ、

 私はここで生きていられる。あの日、

 お兄ちゃんに助けられたから、ここで、

 こうして立っていられる。

 ……そして、孤児で孤独だった私は、

 お兄ちゃんに救われて、そして……」

 

ルフェアは、静かにゴジラに向かって

両手を広げる。

 

「私は、貴方(ゴジラ)に出会って、貴方(ゴジラ)に恋をした」

 

そんな彼女の言葉に、ゴジラは苦しそうに

うめき声を漏らす。

 

そんな中、ルフェアは部分的にジョーカーの

脚部を展開。内部にある重力制御装置を

使ってふわりと浮かび上がると、ゴジラの

眼前まで浮かび上がった。

 

それに気づいて、ゴジラは眼前のルフェア

を見つめる。

 

「私は、お兄ちゃんがどんな存在だった

 としても、愛してる。どれだけ

 血に汚れていても、どれだけ人を

 憎んでいても。……人でなかった

 としても」

 

そう、呟きながらルフェアはゴジラへ、

あと少し手を伸ばせば触れる距離まで

近づく。そして、静かに口先に

触れる。

 

「私、ルフェア・フォランドは、

 何時如何なる時でも、苦しくても、

 貧しくても、いつでも」

 

『チュッ』

 

ルフェアが、ゴジラの口先に口づけをする。

 

「私は、未来永劫、ゴジラの妻として、

 ゴジラと共に歩むことを、誓います」

 

それは、紛うことなく彼女の意思。

確固たる決意であった。

 

そしてその告白は、破壊衝動に負けそう

になっていた、司を覚醒させるのに、

十分な言葉となった。

 

『ゴアァァァァァァァッ……!!』

 

静かな叫びを上げるゴジラ。

 

やがて……。

 

『パァァァァァァァァッ!』

 

その体が、光に包まれ始めた。

やがてその光は次第に小さくなり、

光は人型へと変化する。

 

そして、人型になった光。

静かに眠る『新生司』を、ルフェアは

優しくお姫様抱っこで抱えると、

ゆっくりと下降していき、フワリと

通路の上に降り立った。

 

そのまま、ルフェアは地に膝を突き、

司を解放する。

 

「う、うぅっ」

 

やがて、数秒もすれば、司が呻きながら

目を覚ました。

 

「ル、フェア」

「うん。私はここに居るよ。お兄ちゃん」

静かに、ルフェアの頬に手を伸ばす司。

そして、彼女は自分の手で司の手を掴み、

自分の頬まで運ぶ。

 

「あぁ、温かい。ルフェア」

「もう、大丈夫だよ。お兄ちゃん。

 私はずっと、お兄ちゃんの傍に居るから」

「えぇ、ありがとう。ルフェア。

 ……暗闇の中、荒れ狂う苦しみと

 憎しみで、おかしくなりそうだった

 時、貴方の、声が聞こえました。

 おかげで、こうして、無事に

 戻ってくる事が出来た。

 ……ありがとう、ルフェア」

 

「ううん。お礼なんて、大丈夫だよ。

 だって私達は、ずっとお兄ちゃんに

 助けられてきたんだから。

 ほら」

そう言って、視線を司から移すルフェア。

彼も視線を追って動かすと……。

 

「司~~~~!」

「司く~~~ん!!!」

向こうからハジメや香織、ユエや

シア、ティオたちが駆けてくる。

 

「お兄ちゃんには、私だけじゃない。

 皆もいる」

 

そう言って、ルフェアは司の頭を

撫でる。

 

「お兄ちゃんはもう、一人じゃないよ」

 

 

その言葉は、私の中に深く染みこんできた。

 

あぁ、そうだ。そうだな。

 

「私はもう、孤独などではなかったのだな」

 

 

司は彼女に抱かれながら、涙を、

嬉し涙を流した。

 

そして彼は、とても、とても柔らかい

笑みを浮かべるのだった。

 

     第74話 END

 




次回は、もしかしたらライダー編を投稿するかもしれません。
と言うか、交互に投稿しようかなって思ってますので、
ご了承下さい。

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