ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今回はオリジナルの話+めっちゃ長いです。いつもの1.5倍くらいあります。
あと、話の中でティオが色々キャラ崩壊しちゃってる、かもしれないです。
ご了承下さい。


第76話 神化

~~~前回のあらすじ~~~

無事、元に戻った司はハジメ達全員に謝罪

した後、彼等があまり暴走を気にして

いなかった事もあり、すぐに大迷宮を攻略。

そんな中で地球帰還への明確なビジョンを

描く事の出来る情報をゲットするのだった。

一方、絆を試す大迷宮の影響で、雫は

司と蒼司の事を知りながらも、2人への

想いの間で激しく揺れていたのだった。

 

 

あの後雫は、涙を拭うと、フラフラと自室

に戻り、ベッドに飛び込むとようやく眠り

についたのだった。

 

それから数時間後。起きてこない事を心配

した香織によって起されたのは、12時

を過ぎた後だった。

遅めの昼食を香織と共に取っていた雫。

しかし、ふと彼女はある事に気づいた。

「あれ?そういえば、司たちはどこ?

 南雲君や光輝達は見かけたけど……」

「あぁ、司くんならルフェアちゃんやティオ

さんと一緒にフェアベルゲンに行ったよ。

 蒼司くんは基地の人達と訓練中」

「へ~。でも、どうして司がフェア

 ベルゲンに?」

「雫ちゃん、覚えてるかな?帝都から

 帰ってきた後、司くんがフェアベルゲン

 で言ってたじゃない?新しい街を作る

んだって」

「あぁ、そう言えば。もしかしてそれ

 関係で?」

「うん。街を作るの、本格的に始動

 するんだ。って今朝言ってたの。

 今日はまずフェアベルゲンの

 アルフレリックさんとの話し合いと、

 午後は候補地の下見だって」

「……司って、結構忙しいのね」

「うん。……今にして思えば、司くんって

 結構仕事ばっかりしてるんだよね。

 ……でも、それは自分が強くなるため

 じゃない。私達のため」

そう言って、香織は自分の左手首にある

ジョーカーを右手で撫でた。

 

「私達の身の安全のために、今よりも

 強い武器を。今よりも硬い防具を。

 今にして思えば、司くんが休んでる

 時間って、そんなに無かったのかも

 しれない。夜中に起きたら、部屋の

 隅で結界張ってパソコンポチポチ

 してた事だってあるし」

「……仲間のために、か」

 

その話を聞いた時、雫はつい数時間前に

聞いた事を、思いだしていた。

 

共に生きる番いもなく、たった1人で

孤独に耐えながら生き続けていたゴジラ

が出会った、大切な仲間。

だからこそ、ゴジラたる司は彼等に

対して自分が出来る事を、惜しまなかった。

ジョーカーとそれに付随する数多の

強力な装備の開発。

それは全て、この弱肉強食の世界で

自分の大切な仲間が、生き残る為だった。

そして、雫自身も、その1人だ。

 

そう思うと、雫は静かに俯く。

「私って、もしかしたらずっと司に

 助けられてばかりだったのかな?」

「え?」

「……当たり前のように前の、AI

 だった頃の蒼司からアドバイス

 貰って、愚痴聞いて貰って、

 そもそもこんなに凄い物も

 プレゼントされて。……当たり前に

 使ってたけど、これは、司が

 いなかったら私達が手にできなかった

 力よね」

「……うん」

雫の言葉に静かに頷く香織。

 

「ある意味、ここにいる人達の殆どが

 司くんの、ゴジラの、その庇護の元に

 あるって言えるかも。そう言う意味で

 言えば、今の司くんは立派な

 守護神だね」

「……守護神ゴジラ、か。頼もしいわね」

そう言って、2人は笑みを漏らす。

 

「そして、今その力は広まってる」

「うん」

 

2人は、今ある世界のために動き出した

司の背中を思い出す。

「何だか、変わったわよね、司」

「うん。昔は、もっと無感情だった気がする。

 でも、最近は何て言うか、前より

 感情豊かに、人間らしくなったかなって

 思ってる。そんな司くんが、私はとっても

 頼もしいって思ってる。……そして、

 だからこそ私は司くんの友達でいよう

 って思ってる」

「え?香織?」

「私は南雲くんが好き、って言ったけど、

 でもだからって司くんを支えない理由

 にはならない。……かつて、人の

 エゴでゴジラになった司くんは、

 人間を心の底では憎んでいる。

 ……その憎しみを、私が拭う事は 

 出来ないかもしれない。でも、

 ここで私達が、司くんの友達で

 なくなったら、彼の気持ちを、

仲間を思いやる気持ちを、

踏みにじってしまったら。きっと

司くんは絶望する。絶望して、

ゴジラとして、きっと人を滅ぼす」

「ッ」

雫は香織の言葉に息を呑んだ。

 

「『ゴジラに苦痛を与えたのが

 人間なんだとしたら、それを癒やすの

 もまた、人間であるべき』」

そう、宣言するように香織は、真っ直ぐと

雫を見つめながら語った。

 

 

「って、私は勝手に思ってるんだけどね」

そう言って、最後の方で苦笑する香織。

しかし……。

「そっか。……やっぱり、香織は強いね」

「え?そ、そうかな?」

雫の突然の褒め言葉に、香織は頬を

僅かに赤くした。

 

と、その時。

「ただいま戻りました」

食堂に司と、彼に続いてルフェアとティオ、

シア、カムが現れた。

「お帰り司くん、ルフェアちゃん。

 カムさんとシアちゃんも」

「ただいまですぅ香織さん」

4人が席に着くと、奥からお茶の

入ったコップを持ってくる香織。

 

「ありがとうございます、香織」

「うん。あ、所で話し合いの方は

 どうなったの?順調?」

礼を言う司に、結果が気になっていた

香織が問いかけてみた。

 

「えぇ。そちらは問題ありませんでした。

 フェアベルゲン側との話し合いの結果、

 あちらとこのハルツィナ・ベースを

 繋ぐために、フェアベルゲンに出張所の

 ような物を建てる事になりました。

 出張所にはシフトで10人から20人

 のハウリア兵と配下のガーディアン

 部隊を配備。彼等は有事の際に

 フェアベルゲンを防衛するのが

 主任務となりますが、それとは別に

 フェアベルゲンとベースを繋ぐ

 ハブのような物でもあり、

 アルファシティへの移住を考える

 亜人達の受付窓口として機能する事に

 なりました」

と、そんな説明を聞きながら自分も椅子

に座り直す香織。

 

「午後は候補地の下見だっけ?どこに

 行くの?」

「この樹海からそう遠くはありません。

 候補地ですが、ちょうど樹海と

 ブルックの町の間の中間地点に

 しようと思って居ます」

「へぇ、そうなんだ」

と、会話をしている2人だが、雫は

ブルックの町、と言う単語が分からなかった。

 

「ねぇ2人とも。ブルックの町って何?」

「あぁ、えっとね。あそこは私達がシア

 ちゃんと出会った後に初めて立ち寄った

 町なの」

「規模は大きくありませんが、そこそこ

 治安の良い町です。加えて、そこで

 ギルドの受付をしている女性と

 面識がありまして」

「へ~。でも、それだけで?」

「いえ。本音を言えば、そこにいる

 女性、キャサリンさんを頼って、と

 言っても良いかもしれません。

 何せ、今各地にあるギルドのギルマス

 の、およそ半数が彼女の教え子だった

 そうです」

「え?それ、凄くない?」

「えぇ。加えて、彼女は以前中央のギルド

 で働いていた経験もあります。

 言わば、トップの人間だったのです。

 彼女の影響力はとてつもない物です。

 そして、彼女の影響かブルックの町

 のギルドもしっかりした物でした。

 加えて、あの町は他と比較しても亜人

 に寛容な町でした。だからこそ、

 真っ先にアルファシティと繋がる

 に相応しい町だと考えたのです」

 

「繋がる?ってどう言う意味?」

「まず、アルファシティ設立の目的ですが、

 ここで行うのは我々の、つまり現代

 社会の技術を学ぶ、言わば『学園都市』

 を作る事が一つ」

そう言って人差し指を立てる司。

 

「次に、人と亜人が暮す多種族共生

 都市としての目的。この二つが 

 主な目的です」

「うん。あの時長老さん達の前で

 そう言ってたよね?」

「えぇ。そして、学園都市のその先に

 ある目的は、『技術の波及』です」

「技術の、波及?」

「はい。……学園都市で学んだ事が

 世界に広まる事で、この世界の

 生活水準を引き上げるのです。

 例えば地方での上下水道の完備。

 物資の物流強化。各都市を繋ぐ 

 道路の完備。情報伝達速度の向上。

 即ち、技術や経済の発展です。

 特に、医療などの発展は急ぐべき

 でしょう。この世界における医療は

 基本魔法がベースとなっていますが、

 誰しもが使える訳ではない魔法が

 一手に医療を担うのは危険です。

 使える者がいなければ、助からない命

 もありますから」

「な、成程」

 

「アルファシティは、そう言った新しい

 技術を学び、世界中に広めていく

 職人を育成する場でもあります。

 そして技術が普遍的な物となって

 広まれば、世界規模での経済活動の

 活性化。技術革新などにも繋がります。

 そしてだからこそ、シティは閉鎖的な

 環境ではダメなのです。そこで、

 亜人にも比較的寛容で、かつ我々が

 信頼出来る人物がいる町とシティを

 繋ぐ必要があるのです。外とシティを

 繋ぐために」

「それが、ブルックの町?」

「はい。午後も昼食を取って少し休憩

 した後、すぐに予定地の下見と、ブルック

 の町へと行きキャサリンさんに色々

 話す予定です」

「司、結構忙しそうだけど、大丈夫

 なの?過労とかは……」

「ご心配には及びませんよ、雫。

 私なら、最低10分でも眠ればそれで

 疲労回復が出来ますし、それに、

 この程度で疲れたと音を上げる程の

 肉体は持ち合わせていませんから。

 それに……」

「そ、それに?」

 

「世界を変えると言うのなら、この程度

 で疲れたなどと言ってられませんよ。

 加えて、フェアベルゲンとハルツィナ・

 ベースの道路を通す作業に加え、更に

 ここから樹海の外に繋がる道路の

 建設作業も控えていますから。

 やる事は山積みですから」

そう言って小さく笑う司に、雫は

心をときめかせた。

 

やがて、軽い昼食を済ませると、司は、

今度はルフェアとティオだけを伴って

基地を出てブルックの町の方角へと

オスプレイMK2で飛び立った。

 

飛び立っていくオスプレイを、食堂の窓

から見上げる雫と香織。

 

「本当に、変わったわね。司」

「うん」

2人は食後のお茶を飲みながら今も

食堂でのんびりしていた。

 

そんな中で……。

「それにしても、皮肉ね」

「え?」

不意の雫の言葉に、香織は首をかしげた。

 

「人を心底憎んでいるはずのゴジラが、

 つまり司が、今はこの世界を、人型

 種族を、救うための街を作ろうと

 している。お互い憎悪してばかりの関係を

 変えようとしている。……それって、

 とっても皮肉な事じゃない?」

「それは……。うん。確かに、皮肉かも」

 

やつて、人を憎悪し、人と戦い、人を

殺し、人から憎まれた存在である

ゴジラが、今は人を救うために

動いている。もちろん、それは今の

仲間たちがより良い未来を勝ち取るためで

あり、全人類を救うなどと言う崇高な

目的がある訳ではない。

 

だが、それでも今の司は、結果的に人型

種族のより良い未来のために動いている。

かつて、人を憎悪したゴジラが、である。

彼女達には、それがとても皮肉な事に

思えてしまったのだった。

 

 

 

基地を出発した私達は、まず予定地となる

草原へと向かった。

たどり着いた目的地は、なだらかな丘陵地帯

で、草原が地平線の向こうまで続いていた。

遠くには森林も見える。

「うむ。……ここなら問題ないか」

 

予定地は、都市を建設するのには問題無い

広さだった。念のため地下の土壌汚染などを

調べてみたがこれも無し。

ここで問題無いだろう。

 

そう確認した私はすぐさま基地に通信を

繋ぎ、リリィ王女とカムに報告をした。

ここで、リリィ王女にも報告したのは、

土地を手に入れるに当って彼女の

協力があったからだ。

だだっ広いだけの草原とはいえ、ここは

王国の領土内だ。勝手に都市を建てる訳

にも行かないので、リリィ王女に頼んで

エリヒド王を説得して貰った。

 

と言っても、救国の英雄の頼みなら

お安いご用、と言ってかなりあっさり

土地の権利をいただけた。

これで、都市建設の土地の準備は

整った。

『それでは、陛下』

「あぁ、すぐに第1次作業部隊を派遣し、

 宅地造成を始めてくれ。計画書類は

 既に渡してあったな?」

『はい。既に計画書類はコピーを終えて

 関係各部署に配り終えています』

「よし。ならば出来るだけ早く始めて

 くれ。急かすようですまないが、

 頼むぞ」

『はっ!陛下の命のままに!』

 

そう言うと、カムは通信を切った。

そしてその後、私達はキャサリンさんに

このことを話すためにバジリスクで

ブルックの町へと向かった。

 

その道中。

「やはり、我が偉大なるマスターは、

 世界を治める器に相応しいお方でした」

急にティオがそんな事を言い出した。

「どうしたティオ?何故今、そんな

 事を?」

「大した意味はありません。しかし今、

 マスターは世界を変えようと動かれて

 おられます。その傍には、妾を始め、

 姫やハジメ殿が控え、支え。更に

 その下にはカム殿たち、即ち

 Gフォースが存在し、マスターの

 家臣として戦っております。

 その皆が精強なる力の持ち主であると

 同時に、太陽のように眩しい魂を

 持っておられます。

 そして、そのような精強な者達を

 束ねるマスターは、正しく世界を

 収めるにたる王の器」

と、ティオはうっとりとした表情で

私を褒め称えた。

 

「王、か。私が世界を統治する理由は無い。

 王などに興味は無い。私の願いは、

 ハジメやルフェア、香織やユエ、シア、

 ティオ。これまで出会った人々と共に、

 平和に暮すことが出来れば良いのだ」

そうだ。それが今の私の願いだ。

それ以上の事など望んでは居ない。

 

「そうですか。しかし、マスターは

 間違い無く王の器であると、妾は

 確信しております」

「そうか。まぁ、褒め言葉と受け取って

 おく。……それより、見えたぞ」

私の視線の先に見える町、ブルック。

……この町にやってくるのも、久しぶりだ。

 

そして、町の外でバジリスクを止め、私は

2人を伴ってあの日と変わらない門で、

あの日と同じ門番の青年にステータス

プレートを出して中へと入れて貰った。

 

とはいえ、変わった事もあるにはあった。

「ッ、おい、見ろよ」

「あぁ、あいつだろ?」

何やら私を見るなりヒソヒソと話す連中が

大勢居る。

何だ?と思って聴覚を強化して聞き耳を立てる。

 

「聞いたか?王都に攻め込んだ魔人族を

 撃退したっていうG・フリートの事。

 あのコートの男がその指揮官らしい」

「噂じゃ、人の姿をした神様だって

 聞いたぜ?何でも、死者を生き返らせた

 とか」

「それを言ったら、数万の魔物に襲われた

 ウルの町を、アイツとその仲間。更に

 部下を呼び寄せて撃退したって話もあるぜ」

 

どうやら私とG・フリート、Gフォースの

事を話しているらしい。……順調に私達の

力について話が広がっているようだ。

これは良い傾向だな。

更に道中……。

 

「「「「お久しぶりですっ!師範!」」」」

不意に私達の前に飛び出してきた人影たち。

それを見た瞬間、ティオはキョトンとし、

ルフェアは苦笑。私はため息をついた。

 

「マスター?この人達は?」

状況が理解出来ないティオが私に問いかけてくる。

「彼は、まぁその、なんだ。……実は

 私達がこの町に滞在していた時、

 ハジメを相手にスパーリングを

 していたのだが、そこを見られてな。

 私やハジメに弟子入りしてきた、

 と言う訳だ」

「弟子入り、ですか?」

「と言っても、教えた事などたかが

 しれている。相手に胸ぐらを掴まれた

 時、返す方法や、簡単に相手を倒す

 方法などをな。もっぱら護身術講座

 だったが……。それでもこれだ」

 

「師範!師範に教えて貰った技、

 酒場で絡まれた時に使ったら本当に

 出来ました!」

「私も、変な男に絡まれた時、師範の

 おかげで自分の身を守る事が

 出来ました!ありがとうございます!」

 

何とまぁ、師範として慕われている。

ここを出てから既に数ヶ月は経っている

はずだが……。

「まぁ、そうか。私の教えた技術が

 役に立っているのなら何よりだ。

 それより、私達は用があるので、

 失礼させて貰う」

 

「「「「「はいっ!また、ご指導ご鞭撻の程、

   よろしくお願いします!」」」」」

……おい待て。何故また教える事に

なっているのだ。

 

と、内心思いながらも口に出すと面倒

な事になりそうだったので、私は

ため息だけつくと歩き出した。

 

そして、私達はギルドにたどり着いた。

「ようこそギルドへ。って、あら?

 おやまぁ懐かしい顔だこと」

入り口から入ると、受付カウンター

には、キャサリンさんの姿があった。

相も変わらず壮健な様子で安心した。

「お久しぶりです、キャサリンさん」

「あぁ、久しぶりだねぇ。……にしても、

 もう1人の優男や、他の女の子達は

 どうしたい?姿が見えないけど」

「彼等は無事ですよ。今は別行動中です」

「へ~そうかい。……にしても」

そう言って、キャサリンさんはティオに

目を向けたい。

「なんだい、アンタも嫁さんの他に

 女手込めにしたのかい?こんな可愛い

嫁さんがいるのに、罪な男だね~全く」

 

彼女の言葉に、傍の食事処にいた男の

冒険者達の、私を見る目が嫉妬を

帯び始める。

ちなみにルフェアはキャサリンさんの

言葉で顔を真っ赤にしている。

 

「それを言うなら、3人も美女を

 侍らせていたその優男、ハジメは

 どうなるんです?」

「あはははっ!確かに、あの坊やの

 方がよっぽど大罪人だねぇ!

 人間、見た目じゃ分からないもん

 だねぇ!」

そう言って笑うキャサリンさん。

 

 

ちなみに、この時基地で射撃訓練を

していたハジメが、盛大なくしゃみを

したのを、後で香織達から聞いた。

 

 

「さて、では世間話はこれくらいにして」

私がそう言うと、キャサリンさんも私の

雰囲気が変わったのを理解したのだろう。

真剣な眼差しだ。

 

「キャサリンさんと、出来れば町長さんに

 重要なお話がありまして」

「へ~。……にしても、ただのギルドの

 受付嬢のアタシに?」

「……フューレンでギルド支部長を

 しているイルワ・チャング氏に

 聞きました。かつて、ギルド本部の

 ギルドマスターの、秘書長を

 していた事を」

「へ~。それで?」

キャサリンさんは試すように私を

見ている。その眼光の鋭さは、

ただ年を食っただけでは出せない。

それ相応の力や経験を持つ物の

鋭さだ。

 

「現状、私達はある事を進めています。

 そのある事に協力して欲しいのです。

 この、ブルックの町に」

「成程ねぇ。そのある事については

 後で詳しく聞くとして、何故この

 町なんだい?」

「理由は3つ。一つはこの町が他の

 町や都市と比べて亜人に寛容である事。

 二つ目は、このブルックの町は亜人の

 生存圏である樹海から他の都市と

 比べて近い事。そして、3つ目は、

 貴方です、キャサリンさん」

「おや?アタシかい?」

 

「えぇ。私が今、この場で最も信頼出来る

 ギルド職員は誰か、と聞かれれば、 

 恐らく真っ先にキャサリンさん。貴方の

 名前を挙げるでしょう」

「へ~。それは光栄だねぇ」

「だからこそ、私は貴方に協力を頼みに

 来た次第です」

 

そう言うと、私とキャサリンさんはしばし

無言で視線を交わす。

やがて……。

 

「それで、アンタ何がしたいんだい?」

静かに私に問いかけるキャサリンさん。

「そうですね。簡単に言うのであれば、

 今のこの、3種族が互いを憎み 

 殺し合い世界を破壊し、多種族が

 平等に、互いを尊重し合い生きている

 世界を作る。そのための下準備を

 始める所です」

「はい?」

 

私の言葉に、キャサリンさんはパチクリ

と目を瞬かせた。

やがて……。

「そいつは、本当なのかい?ここまで、

 長く争いが続いた。それを、アンタは

 本気で終わらせる、と?」

 

「……近く、私や私の仲間は、この

 世界で3種族の対立を煽る悪意の

 元凶と戦うでしょう」

「……」

キャサリンさんは、黙ったまま私の話

を聞いている。

 

「そしてそれに勝利したとしても、

 煽られ蓄積された憎しみは、そう

 簡単に消える物ではありません。

 仮に、その煽る元凶が無くなったと

 しても、彼等の対立は今後、数十、

 もしくは数百年続くでしょう。

 幸い、今の私には、繋がりがある」

「繋がり?」

 

「はい。今の私には、亜人族の国、

 フェアベルゲンに対する影響力と、

 人の国、ハイリヒ王国、アンカジ

 公国に対する影響力があります」

「……おやまぁ、いつの間にか、とんでも

 無い奴になっちまったねぇ、お前さん」

「えぇ。……そして、だからこそそれを

 生かして、今と言う世界を破壊し、

 新しい世界を作るのです」

 

「……。アンタ、下準備がどうとか

 言ってたねぇ。何をする気だい?」

「……今、この世界で必要なのは、

 互いの種族に対する理解です。

 身体的な特徴と能力を抜きに

 すれば、彼等は同じ言葉を話し、

 同じように生きている。自分達に

 そんなに変わらない存在だと、

 人々に教えるのです。

 ……そのために、ブルックの町と

 樹海の中間となる地点に、新しい

 都市を造ります」

「はぁ?都市だって?」

「えぇ。……多種多様な種族が、

 法律というルールの下、平等に

 暮す都市。そこでは貴族も奴隷も

 関係無く、皆が等しく1人の人と

 して様々な事を学び、生活する

 チャンスが与えられるのです。

 それが、私が目指すこの世界の

 平和への第一歩。始まりの都市、

 『アルファシティ』です」

 

「それが、アンタのやろうとしている

 事なのかい?」

「えぇ」

「本気で、戦いを終わらせる気かい?」

「……戦いが終わらなければ、私の

 仲間も、そして、この世界で暮す

 人々も、本当の平和には

 たどり着けない。……誰かが、

 終わらせるために尽力するしか

 無いのです」

「それが、アンタだと?」

「……これは私情ですが、私は、私の

 仲間や友人、大切な人が平和に

 暮らせればそれで良いのです。

 ですが、中途半端はしません。 

 未完成の平和では、いずれ崩れ去る。

 だからこそ、本当の平和を目指す

 のです」

「はは、仲間のために世界平和ねぇ。

 くくっ、何かやるとは思ってたけど、

 とんでもない事言い出したもん

 だねぇ、この坊やは」

 

そう言って、キャサリンさんは私の目を

真っ直ぐ見せる。私も、彼女と視線を

交差させ、外さない。

 

やがて……。

「良いだろう」

「ッ」

彼女は頷いた。

「賭けてやろうじゃないの。アンタの

 言う、本当の平和への計画って

 奴に」

「キャサリンさん。……ありがとう

 ございます」

 

俺が右手を差し出すと、キャサリンさん

も手を出し握手を交わした。

 

 

この時、ティオは後ろで司の背中を

見つめていた。

『多くの人を惹きつけ、世界のあり方を

 変えようとするマスターは、やはり

 妾がお仕えするにたる、立派なお人じゃ。

 ……じゃが』

彼女にとって、司は太陽だ。それほど

までに眩しい存在だったのだ。

しかし同時に、彼女は考えてしまう。

自らの心の奥底に眠る『復讐心』が、

平和へと歩んでいこうとする司の

やり方に、少なからず反発していた事に。

 

『妾は、妾は……』

 

そして、彼女は深く考え込んでしまうのだった。

 

 

その後、キャサリンさんの協力もあって

町長の説得は驚くべき程簡単に行った。

 

まぁ、実際には、こことアルファシティ

を繋ぐメリットとして、樹海と大峡谷の

魔物の素材が流れて来やすい事。

アルファシティの名前が広がれば、中継地

としてウルの町に人が集まる事。

アルファシティを中心にインフラ整備が

始まれば、真っ先にウルの町がその

恩恵を受けられる位置にある事。更に、

この話を受けてくれれば、Gフォースから

優先的に物資を融通する事や、非常時に

町へ優先的に人員を回す事などを

約束した。とまぁ、とにかく

色々なメリットを前面に押し出したおかげ

かもしれないが……。

あと、今回はティオも活躍した。

 

彼女は、私が王都やアンカジ公国で起した

奇跡を語り、魔人族との戦争が本格的に

なってきた今、世界最強の軍隊である

Gフォースと、その上に位置する

G・フリートとその庇護を受けられる事の

重要性などを話し、彼の説得に協力

して貰った。

 

ともかく、彼等のOKを取り付ける事が

出来たのは僥倖だった。

 

今後、ブルックの町は人族のアルファシティ

移住への窓口のような存在になる。

逆に、アルファシティからブルックの町を

経由して様々な物資を各地へと運搬する

ハブとしても使えるだろう。

 

アルファシティに関しては、今後シティが

出来る旨を伝えるポスターを町やギルド

の掲示板に貼って貰った。これに興味を

持った者達への説明は、キャサリンさんが

申し出てくれた。

本当に、彼女には頭が上がらない。

 

しかし、これでアルファシティが完成した

際の、移住への窓口が出来た。

亜人族はフェアベルゲンから。

人族はブルックの町から。

それぞれ流れてくるだろう。

 

次は、都市の建造だが、こちらは時間が

かかる。それにもう日暮れだ。

私達は、私の転移ゲートで一気に

ハルツィナ・ベースへと戻った。

 

「ただいま戻りました」

食堂へ行くと、多くのハウリア兵、

天之河たち、ハジメ達が集まっていた。

「あっ、お帰り司。どうだった?」

「無事、ブルックの町の町長と

 キャサリンさんの協力を取り付けて

 来ました。これで、アルファシティ

 が完成した時、ブルックの町から

 ある程度人族が流れてくるでしょう」

「そっか。じゃあ次は都市造りだね」

「えぇ。計画は、次の段階に移行です」

 

と、その時。

「やはり、マスターは王に相応しい器の

 持ち主じゃな」

「ごもっともですな、ティオ殿」

まだ先ほどのような事を言っている

ティオにカムやハウリア兵たちが

うんうんと頷いている。

 

彼等の反応に私は内心苦笑していたが、

ふと、以前ティオに何か褒美を、と考えて

そのままになっていた事を思いだした。

ティオには、これまで色々世話になって

いる。私と彼女の関係が、主と従者ならば、

何か褒美の一つでも取らせるべきであろう。

 

「ティオ」

「はい、何でしょうマスター」

「これまで、共に旅をし、よく戦って

 くれた。そこで、褒美を取らせようと思う」

そう言うと、周囲の者達がざわめく。

「褒美、ですか?」

 

「そうだ。ティオ、お前は、何を望む?

 以前から言っていた力か?」

「……」

私の問いかけに、ティオは無言で俯き、

しばし何かを考えていた様子だ。

 

「以前、大火山で話したと思うが、私の

 力、権能を他者に与える事は可能だ。

 私の血肉を喰らい、糧とする事で、

 お前は私の眷属となり、そして生命を

 超越した力を手にする事が出来る」

私の言葉に、それを知らなかった天之河や

カム達が驚愕の表情を浮かべている。

 

やがて……。

「……以前の妾ならば、恐らく二つ返事

 でマスターのお力を欲したでしょう」

ティオは、静かにその場で膝を突き、

俯いたまま語り始めた。

「ですが、今の妾は、悩んでおります」

「悩む、とは?」

 

「……マスター。妾は、大いなる不敬を、 

 マスターに働いていた事を、ここに

 告白し、同時に謝罪したくおもいます」

「えっ!?」

ティオの言葉に、近くにいたルフェアが

驚いたように声を上げる。

 

私はただ、黙ったまま彼女の告白を聞く

事にした。

「……我ら竜人族は、遙か昔、大勢の

 者達をその庇護下に置き、共に歩んで

 いました。正義と道徳を是とし、邪悪に

 立ち向かい、弱き者たちを守る。

 我らの収める国の民や、周囲の国々の

 者達からも、真の王族とまで言われた、

 我ら竜人族。……しかし、ある日を 

 境に広まった、竜人族は魔物という

 噂が元となり、我ら竜人族は、迫害を、

 受けたのです」

そう語るティオの体は震えていた。

 

「そして、妾たちは裏切られ、大勢の者が

 殺されたのです。妾の友も、両親も、

 全てっ!うっ、うぅっ」

やがて、彼女は堪えきれなくなった嗚咽を

漏らす。それを見て、ルフェアが涙を

流しながら彼女を優しく抱きしめた。

 

信じていた者たちからの裏切り。それは、

饒舌に尽くしがたい痛みであろう。

そんな裏切りの中で多くを失えば、

尚更だ。

 

もし、私が、仮にだが、ハジメ達からの

裏切りに合えば、絶望し、今度こそ

ゴジラの本能の赴くままに、全てを

破壊するだろう。

 

「ティオ」

やがて、彼女の嗚咽が小さくなる頃を

見計らって私が声を掛ける。

 

「お前が、私に近づいた理由は、やはり力か」

「はい。……マスターほどの力を見て、

 学び、会得出来れば、もう、誰にも

 負けぬと、二度と、あんな事には

 ならない。今度こそ、残された部族を

 守り、そして、裏切りの黒幕に勝てる

 と、思ったのが、はじまりです。

 加えて、マスター達ほどの力があれば、

 黒幕の注意も引ける。いずれ、奴とも

 相まみえるだろう、とも」

「そうか」

 

要は、黒幕であるエヒトと戦える程の

力を手に入れる事と、万が一奴と戦いに

なった時、私とエヒトが戦う事も、想定

していたのだ。

 

「妾は、愚かにも過去の報復のために、

 マスター達を、利用しようと、考えていた

 のです」

ティオは震える口で真実をつむいでいく。

そして……。

「本当に、申し訳ありませんでした」

 

彼女は、そのまま床に頭を擦りつけた。

土下座だ。

その姿に、皆が戸惑う。そんな中で、

私は……。

 

「頭を上げろティオ。謝罪もいらない」

そう言って、彼女の前で膝を突き、その

体を起す。

 

「私も、同じだティオ。人間のエゴによって

 ゴジラとなり、人を大勢殺してきた。

 私は復讐者だったのだ。……感情があるから、

 我々は誰かを愛し、そして感情があるから、

 我々は敵を憎む。そして、その憎しみが

 報復を呼び覚ます。誰にも、ティオの

 誰かを憎しみを否定する権利などない。

 ……それに、利用といっていたが、

 ティオのおかげで我々も助けられてきた

 身だ。Win-Winの関係だったと思えば、

 納得も出来よう」

そう言って私は微笑みを浮かべる。

「マスター」

 

「それに、ティオは始まりに、以前の、と

 言っていたな?それはつまり、今は

 違うと言う事であろう?」

と言うと、私の言葉に周囲の者達が

ハッとなった。

 

「どうなのだ?ティオ」

「……確かに、以前の妾ならば、我ら竜人族

 を裏切った人間や亜人達。そして黒幕への

 報復心から、力を求めたでしょう。

 でも、今は違います。マスターと出会い、

 ハジメ殿やシア殿たちに出会う事で、

 人や亜人のあり方を知る事が出来ました。

 そして、今は強く思うのです。 

 エヒトを倒し、今度こそ、種族など

 関係無く、誰しもが平等に生きられる

 世界を作りたい、と」

 

彼女には、その決意があった。彼女の

瞳の中で、決意の炎が揺れていた。

「そうか」

私は静かに頷くだけだ。

 

「ですが、これまでマスター達を

 利用してきた妾に、マスターから

 お力を賜る資格など」

「それは違うぞ、ティオ」

 

私は俯く彼女の言葉を否定した。

「ティオ。お前は今、私や皆の前で

 真実を語った。罰せられる事も、

 覚悟していたのであろう?」

「はい。その覚悟も、既に」

「それを承知の上で話をすると言う

 のは、相応の覚悟が必要であったと 

 私は思う。……そして、その覚悟で

 話した理由は、謝罪だけではなかろう?」

 

「はい。……出来る事なら、妾は、まだ、

 皆と、マスターと共に、歩んで

 行きたかったのです」

彼女は涙ながらに語った。

 

恐らく、私が平和路線を唱えた事で、

かつての多種多様な人々が共存していた

竜人族が収めていた国の事を思いだし、

それがきっかけとなって、心の中の

後ろ暗い復讐心などが、再び燃え上がった

のかもしれないな。先ほど彼女が口に

した、利用しようとした、と言う考えも

また、彼女の無意識の内だったのかも

しれぬ。だが彼女は、そんな想いを胸に

秘めたまま、私達と一緒に居る事が

耐えられなくなったのだろう。

正義と道徳を重んじる彼女だからこそ、

偽り続ける事は、出来なかったのかも

しれない。

 

それを今、ここで吐き出した、と言う訳だ。

 

全く。私は素晴らしい忠臣に恵まれたものだ。

黙っていれば別に良かった物を。

私自身、今更その程度でティオをどうこう

しようなどとは思って居ない。

 

だからこそ……。

 

「面を上げよ、ティオ」

「は、はい」

再び視線を上げたティオ。私はそんな

彼女の顔を、ハンカチで優しく拭う。

 

「ティオ、お前に聞きたい。お前は、

 今でも私の家臣か?」

「はい。マスターが、お許しになるので

 あれば」

「もう一つ。お前の今の夢はなんだ?

 ティオ」

 

「妾の、夢は。今の、夢は……。

 マスター達の傍で共に戦い、そして、

 今度こそ、皆が平和に暮らせる世界を、

 作りたい。最後まで、竜人族の矜持を

守り死んでいった、両親のためにも。

エヒトの策略で命を落とした、友や

仲間たちのためにも。

そう、願っております」

 

「そうか」

……これほど高潔なる魂の持ち主は、

そうは居ない。

 

なればこそ……。

 

「ならばティオ・クラルスよ。私は

 今一度貴様に問う。私達と共に生き、

 エヒトと戦う覚悟はあるのか?」

「はい」

ティオは、迷う事無く頷いた。

 

「そうか。……であれば、私はお前に

 力を授けよう。お前の同胞達を守り、

 神にも挑み、勝ち得る力を与えよう。

 ……これからも私達と共に

 戦ってくれ、ティオ」

 

その言葉に、ティオは瞳に涙を

浮かべる。

 

「御意。マイマスター」

そして彼女は、震える声で頷く。

 

「ティオ、能力の譲渡は、私の血肉を

 取り込む事で行われる。その過程で、

 激痛に襲われるであろう。

 それでも、構わないか?」

「はい。大いなるマスターのお力を

 分け与えて頂けるのなら」

彼女の頷きを合図に、私は自分の右手の

親指の、付け根辺りの肉を食いちぎった。

それに天之河たちが驚く。

 

「ティオ」

「はい。マイマスター」

私は、驚く彼等を無視して、静かに瞳を

閉じたティオに、口づけをした。

 

そして同時に、私の血肉を彼女の中へと

流し込んだ。ティオは、それをそのまま

飲み込んだ。

 

私は抱き寄せていたティオの体を離す。

すると……。

 

『ドグンッ!!!』

「あぐっ!?!?」

大きな鼓動が聞こえたかと思うと、ティオ

の表情が歪み、両手で胸の辺りを

抑えている。

「これ、がぁっ!」

『ドグンッ!!!』

「あっ!がぁっ!」

 

彼女は全身を走る激痛に耐えかね、その場

で四つん這いになった。

『ドグンッ!ドグンッ!!!』

彼女の中で、私の血肉を取り込んだ肉体が

急激な進化をしている。その結果、

激痛が彼女の体を蝕んでいるのだ。

 

「お、おい新生!何をしている!

 このままじゃクラルスさんがっ!」

「黙っていろっ!」

喚き出す天之河を私が一喝する。

「余計な真似はするな!今のティオは、

 神化している所だ!余計な干渉は

 神化を不完全な物にする!」

 

誰もが、苦しむティオを助ける事が

出来ない。彼女が進化するには、この

痛みに耐えるしかないのだ。

と、その時。

 

「耐えて、見せるのじゃ!」

ティオが、ふらふらの足で立ち上がった。

『ドグンッ!!』

「ぐぅっ!?妾は、妾は……!」

『ドグンッ!』

「っぐっ!?マスターの、傍にっ!

 居たいっ!!マスターと、一緒にっ!!!」

 

そう叫んだ次の瞬間。

『カァァァァァァァァァッ!!!!』

 

ティオの体が青白い光に包まれた。

「これって……!」

余りの光量にハジメ達が目を背ける。

と、その時、ティオの髪色に変化が

現れた。

 

艶やかだった黒髪の毛先の一部が紫色

に変色したのだ。

次第に青白い光が弱くなっていく。

恐らく進化が終了したのだろう。

 

やがて、静かに開かれたティオの瞳。

しかしそれはこれまでの金色のそれと

違い、紫色の瞳へと変化していた。

 

やがて、青白い光が完全に霧散し、

ティオは毛先と瞳の色が変化した事以外、

変わっていなかった。

だが……。

 

「こ、これが、進化されたティオ殿

 なのか」

どうやら、ティオは体内からオーラや

力が溢れ出している様子で、見えずとも

体で感じる程のエネルギーがオーラと

なって、彼女の中から溢れ出していた。

 

ティオは、目を丸くしながら自分を

見つめている。

 

「どうだティオ。『神化』した気分は」

「ま、マスター。……正直、驚いて

 います。驚きで、まだ力のコントロール

 が、上手く」

そう言って、ティオは体を光らせたり

している。どうやらこれまでとは比較に

ならないエネルギー量に、制御が

追いついて居ないようだ。

 

「落ち着け。深呼吸だ」

「は、はい」

私の指示に従って深呼吸を繰り返すティオ。

 

やがて、体から発せられていた光と

エネルギーの波が落ち着いた。

 

「気分はどうだ?ティオ」

「は、はい。何というか、体は自分

 なのに、自分じゃないと言うか。

 ……不思議な感覚です」

「そうか。ともあれ、ティオ。

 お前は今日、神化した。今の

 お前は、この世界で最も『私に

 近い存在』となった」

「ッ、妾が?」

 

「そうだ。……そして、ティオ。

 お前に改めて問いたい。私は

 先ほどのお前の謝罪など気にして

 いない。誰しも思惑の一つや二つ

 持っている物だ。故に、ティオの

 私を利用しようとした云々は、

 一切不問にするつもりだ。

 これについて、ハジメ達の意見も

 聞いておきたいのですが?」

そう言って、私は彼等の方に話題を

振った。

 

帰ってきた彼等の答えは……。

「そうだね。司の言うとおり、誰しも

 心がある。だから誰かを憎く思ったり

 もする。それに、別に利用されてた

 なんてこれっぽっちも思ってないし。

 僕も異議なし」

「うん。私も。これからも、一緒に

 旅をしよ。ティオさん」

「悪いのは、あのクソ神。ティオも

 被害者。それに、私も気にしてない」

「そうですぅ!それに、ティオさんだって

 土下座までして謝ってくれたんですから、

 もう気にしてないですよ!」

ハジメ、香織、ユエ、シアは皆、ティオ

を許すそうだ。

そして、最後は……。

 

「ティオお姉ちゃん」

「姫」

「私も、お姉ちゃんの事、気にしてないよ。 

 でももし、お姉ちゃんがその事を

 気にしてるのなら、今から私が言うことを

 ちゃんと実行する事」

「そ、それは一体?」

 

「私からの命令はただ一つだけ。

 今日からお姉ちゃんはお兄ちゃんの

 眷属になった。だからこそ、お兄ちゃん

 の眷属として、お兄ちゃんを、そして

 私達という仲間を、全力で支え、

 守り抜く事。これが私からの、

 たった一つの命令。どう、出来る?

 まぁ気にしてないなら別に良いん

 だけど」

と、呟くルフェアにティオは……。

 

彼女はその場に膝を突いた。

 

「不肖、ティオ・クラルス。本日を

 持って我が主の眷属として、改めて

 姫を、そしてハジメ殿達仲間を

 守り抜くために、全力で戦う所存で

 あります」

「うん。よろしくね、ティオお姉ちゃん」

 

こうして、ルフェアはティオに罰を与えた。

だがこれで良かったのかもしれない。

ただ許すだけが全てではない。時には

罰も必要なのだ。ティオが、折り合いを

付ける意味でも。

 

さて、と。

 

「ティオ」

「はい。マイロード」

ん?何やら、ティオの呼び方が変化しているが……。

 

「ロード、とは?」

「はっ。妾は今を持ってマイロードの眷属。

 即ち貴方の僕です。であればこそ、それは

 もはやマスターと仰ぐだけではいけないと

 思い、ロード、君主と呼ばせていただこうかと」

な、成程。まぁ良い。

「分かった。好きに呼べば良い。……では、

 改めて。お前は、既に竜人族という

 枠組みの外にいる。私の血肉を得て

 神化したお前は、既に神の一歩手前だ」

「はい」

 

「そこで、神化したお前に、私から一つの

 『二つ名』を送る」

「二つ名、ですか?」

 

「そうだ。……今のティオ、お前は、

 『神』の力を持った『黒』き『龍』

 だ。だからこそ、お前は、今日から

 こう名乗るが良い」

 

「『黒神龍』、と」

 

「黒神龍。黒き神の龍」

ティオは、驚いた様子で、目を見開き

私を見上げている。

しかし、付けておいてあれだが、些か

中二病の臭いがするな。

「……不服か?」

念のためティオに問いかけてみるが……。

 

「いえ」

彼女は笑顔でそう言った。

そして……。

 

「マイロード。改めて、この場で宣誓を

 行わせて下さい」

「うむ。許す」

 

「はっ。……では、我が名はティオ・

 クラルス。偉大なるロード、新生

 司様の眷属。我は主の剣となりて

 卑しき神とその僕を討ち払い、

 主の盾となりて皆を守る為に

 戦う事を、ここに誓います。

 ……そして」

 

ティオは、立ち上がり、私の前で

もう一度膝と手を床に付けた。

「我が生涯の全てを賭けて、貴方様の

 お側に仕え、支え、共に戦う事を、

 どうか改めて、お許し下さい」

その言葉に、私は……。

 

「許す」

そう言って彼女の肩に手を置いた。

「これまで、よく仕えてくれた。

 そしてこれからも、共に戦うぞ。

 『黒神龍ティオ・クラルス』」

「仰せのままに」

 

そう言って、ティオは私を見上げ……。

「マイロード」

 

目尻に涙を浮かべながらも、笑みを

浮かべ頷くのだった。

 

こうして、私は、始めて眷属を作った。

それは、私を主と仰いだ黒き竜だった。

そして彼女は今日から黒き神の龍。

『黒神龍』となったのだった。

 

 

こうして、世界は変わっていく。かつて

人に恐れられた破壊神は、その輪を

広げながら、今ある世界を『破壊』し、

新たな世界を『創造』するために、

動き出したのだった。

 

      第76話 END

 




え~って事で、ティオはこの作品内で、3番目か4番目くらいの強さを
身につけました。
う~ん、ちょっとやっちゃった感がありますが、何卒
ご了承下さい。

感想や評価、お待ちしています。
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