ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~ 作:ユウキ003
~~~前回のあらすじ~~~
大迷宮攻略を終えた司たち。そして司は
ハルツィナベースへ戻ると、多種族共生都市
であるアルファシティ建設に向けて
動き出した。候補地の下見やウルの町での
キャサリンとの再会と話し合いなどが
行われる中、ティオは司から褒美を与え
られる事になった。しかし彼女はそんな
司の前で、自分の中にあった、復讐の為に
司たちを利用しようとしていた、と言う
僅かな、しかし後ろ暗い思いを告白する。
しかし、それを受け入れた司たちの思い
もあって、彼女はゴジラたる司から
血肉を分け与えられ神化。
司の正式な眷属になったのだった。
ティオに私の血肉を与え、ティオが
黒神龍に神化してから約1時間後。
今、私やハジメ達。カム達。勇者達と
リリィ王女は基地の一角にある
滑走路の上に立っていた。そして私達の
見つめる先では、深呼吸をしているティオ
の姿があった。
「ロード、では……」
「あぁ。見せてくれティオ。神化した
お前の新しい、龍神としての姿を」
「マイロードの御心のままに」
彼女がそう言った直後。ティオの体が
黒い光に包まれ、やがてその光が膨張
するように巨大化していき、一つの形と
なった。そして……。
『ズズンッ』と音を立ててその巨体が
滑走路の上に立った。
「あ、あれが、ティオ、さん?」
その巨体を見上げて驚いているハジメ。
その隣で香織達も驚きから開いた口が
塞がらない様子だ。
誰もが、龍神となったティオを見上げて
いた。
背中で揺れる左右4対。合計8枚の漆黒の翼。
ゴジラ第4形態のそれと比べて、スラリと
しながらもその巨体を支える巨大な足。
光を受けて輝く、鋭い爪を持った巨大な腕。
頭頂部で後ろに向かって生える2本の角。
腰元から伸びる巨大な漆黒の尻尾。
そして背中に生えた1列の、白い背鰭。
もし今の彼女を、私達の世界の伝説の動物に
例えるのなら、龍としてのバハムートと
言った所だろう。
その巨体は優に30メートルを超える。
まだまだ第4形態の私には及ばないが、
この世界では巨大な部類だろう。
以前のティオの竜の姿と比べても、
見違える程神々しくなっている。
そして肝心のティオ(龍神フォーム)は
自分の手をマジマジと見つめている。
私は空中に巨大な鏡を創り出して
ティオの前に設置した。
「ティオ、それがお前の新しい姿だ」
『こ、これが、妾?』
改めて自分の変化に戸惑っているのか、
彼女は驚きながら体のあちこちを
見回し、巨大な手で触っている。
そして以前の竜の姿のように今は
テレパスのようなもので私達と会話
している。
「先ほども言ったように、今のティオは
私の血肉を取り込んだ事で神となった。
つまり神化したのだ。加えて私の因子
を取り込んだ事で、より私に近づいた
と言う事だろう。背中の背鰭がその
尤もたる所だ」
『妾が、マイロードに?』
「そうだ。私の因子を取り込み、融合を
果たしたティオは、言わば半分ゴジラ
と言っても差し支えない。
そして、今のティオの姿はティオ自身
が持つ龍の因子と私のゴジラとしての
因子が混じり合い生まれた。
と言う事だろう」
「じゃあ、もしかして新生君の事を
食べたら皆、神様みたいになれるの?」
その時、後ろに居た谷口から呟きが
漏れ、皆がそちらを向く。
「おい鈴。何だってそんな。と言うか
新生を食べるって」
勇者が谷口を注意している。
「ご、ごめん。言い方は悪いけど、
でも実際その通り、だよね?」
「確かに、表現としては間違っていない。
だが、単に私の血肉を摂取しただけ
では、逆に私に喰われる結果となる」
「司に、喰われる?どういうこと?」
「それだけ俺達の体が特別って事さ」
首をかしげる雫に答えたのは蒼司だ。
「正確には俺達の体を構成する細胞が、
って意味だが、知っての通り俺の体は
元々オリジナルの左腕ぶった切って、
それをベースに作られた。つまり、俺
やオリジナルの細胞は、細胞レベルで
驚異的な増殖スピードを持ち、更に
周囲のエネルギーや物質を取り込んで
成長する。俺達の細胞には、元素変換
を行う力があってな。例えば空気や水
があれば、自分に必要な栄養や
エネルギーを生成する事が出来る。
詰まるところ、俺達はそもそも食事
すら必要無い。更にその元素変換の際
に発生する崩壊熱すら自分の力に
変える」
と、説明する蒼司だが、脳筋の坂上や
あまり理系が得意ではない谷口などは
大量のハテナマークを浮かべていた。
それに苦笑する蒼司。
「まぁ、問題はその元素変換能力だ。
周囲の物質を取り込んで自分のエネルギーに
しちまう能力は、一歩間違えばありと
あらゆる物質を取り込む。例えば、
俺達の血肉を摂取した人間の栄養や、
臓器とかをな」
「ッ!?」
蒼司の言葉に、勇者の顔色が悪くなる。
「細胞は生きようとして周囲のエネルギーや
物質、まぁ臓器なんかを無闇やたらに食い
荒らす。結果、取り込んだ生物を内側から
壊すって訳さ」
「お、おい新生ッ!?お前そんな
危ないものをティオさんに食べさせた
のか!?」
「安心しろ。それは制御されていない細胞
を摂取した場合の結果だ。あの時
与えた細胞は融合に適した物になるよう
分け与える段階で調整している。
現にティオは無事神化し、こうなって
いるだろう」
そう言って私は神々しい姿のティオに
視線を向ける。
「詰まるところ、陛下の了承無しには、
神に至ることは出来ない。と言う訳
ですな」
龍神フォームのティオを見上げていたカム
が静かに語る。
「そうだ」
カムの言葉に頷いた私はそのままティオに
視線を向けた。
「どうだティオ。改めて、今の姿の感想は」
『はい。以前の時よりも、何倍にも力が
増しているのが分かります。今ならば、
何者にも負けない。そんな自信さえ
浮かんできます』
「そうか。とは言え、その力は強大だ。
これまでの感覚で力を使えば、この
世界を破壊してしまうかもしれない。
当面は力の感覚を掴むように訓練
だな」
『分かりました。マイロード』
そう言うと、龍神フォームのティオが
黒い光に包まれ、それが縮小して人の
サイズになると、いつも通りの人の姿
をしたティオが現れた。
しかし、髪の毛先の色の変化と瞳の虹彩
の色の変化は一時的なものではないらしい。
実際今もそうだ。
念のため先ほど、女性陣に協力して
貰ってティオの体にそれ以外の変化が無い
事は確認済みだ。まぁ、見たところ体に
問題は無いので大丈夫そうだろう。
しかし……。
「さて、Gフォースの諸君。聞いて欲しい」
私が振り返ってそう言うと、その場に居た
ハウリア兵たちがバッと音がしそうな
勢いで姿勢を正している。
「明日からアルファシティの宅地造成。
更にはその後もインフラ整備や
建物の建築作業が開始される。
しかし、だからといって樹海の防衛を
疎かには出来ない。帝国は条約で
不可侵を誓ったとは言え、それ以外
で亜人を奴隷にしようと狙って来る輩
が居ないとも限らない。また、
各地の大迷宮を狙う魔人族の動向も
警戒しなければならない。皆には
多忙を強いてしまうかもしれないが、
よろしく頼む」
「「「「「はっ!陛下の御心のままにっ!!」」」」」
敬礼をしながら叫ぶカム達に、私は
笑みを浮かべていた。
だが一方で、皆の後ろで天之河が歯を
食いしばるような表情をしている事に、
一抹の不安を覚えたのだった。
とは言え、奴に構っている暇は無いし、
奴も私なんかに構われては返って
嫌な気分になるだろうと思って特に
何かをする、と言う事はしなかった。
それ以上に、今はアルファシティ建設に
始まる『PW計画』が開始されたばかりだ。
ちなみに、PWとはピースウォーカーの
頭文字を取ったハジメが命名した、私達
による世界平和へ向けた行動の総称だ。
『平和への歩み計画』、何とも優しいハジメ
らしい名前であり、皆もそれを気に入った。
と言う訳で、今の我々はそのPW計画を
始めたばかりだ。なので忙しい。だから
天之河に構っている暇は無かったし、
その辺りは幼馴染みの雫や坂上、
谷口辺りがフォローするだろうと私は
思って居た。
そうして、ティオが神化した翌日から、
早速宅地造成が始まった。
私は現場に赴き、作業に支障が無いかを
確認する。
とは言え、宅地造成だけでも数日はかかる。
その間私はティオの訓練に付き合ったり
ハジメ達とアルファシティでの法律に
ついて話し合っていた。
更に造成作業をしていたのが、ジョーカーを
纏ったハウリア兵やガーディアンであった
為、魔物を使役している魔人族による攻撃
の前準備と勘違いした冒険者と一悶着
あったが、ハジメや香織が上手く宥めて
くれたおかげで問題にはならなかった。
他にはフェアベルゲンやウルの町へ行き、
人々に学びたい技術についての情報や
生活をするのなら絶対に欲しい物を
聞いて回った。
そうやってここ数日。私は働き続けた。
今は昼食を取りながらPCで法律の草案を
まとめている。
この世界の教育の現状からして、難しい
法律は理解出来ない可能性がある。
なので小難しい法律は無しにして、数も
少なめにする。
ハジメの提案で、シティで暮す際の
一番の法律を決めておいた。
それは、『ものが欲しければ働いて
稼いで買え。他人からの略奪は重罪に処す』。
と言う物だ。
ここに更に、『罰則は人種、亜人種、貴族、
平民、奴隷を問わずに処す物である。
いかなる例外も存在しない』とした。
とは言え、それで犯罪が起らないとは
限らない。なので出来るだけ簡単な
法を作る事になったのだが、そもそも
簡単な法など存在しないような物
なので、草案をまとめるのも一苦労だ。
加えてこちらの世界では私やハジメ達
の世界と文化や考え方に違いがあるので、
そこにも配慮しなければならない。
更に警備部隊であるガーディアンの編成。
あらゆる状況に対処するためガーディアン
の思考ルーチンの作成。犯人や市民との
会話のための対話機能の開発と実装。
非殺傷兵器、所謂テーザー兵器の開発。
街の設計図から監視カメラの設置位置の
逆算などなど。やる事は多い。
おかげで最近、ルフェアと愛し合う機会
がめっきり減ってしまった。彼女は
笑みを浮かべながら頑張って、と応援
してくれているが、内心申し訳無い
気持ちもあった。
体力や精神面では問題無いが、こうも
多忙を極めている状況だ。毎日が忙しい。
睡眠時間も1日1時間だ。
まぁ、私ならそれ以下でも問題無いの
だが。
と、そんな風に働いていた時だった。
「司。少し休んだら?」
「はい?」
朝の5時。PCに描いた設計図にある、
街の建物の配置を再検討していた所で
起きてきたハジメに声を掛けられた。
「いくら司の体が人間とは違うと言っても、
もう一週間丸々、働き詰めだよ司。
ブラック企業の社員じゃないんだから、
少しは休まないと」
「しかし、計画を遅らせるわけには……」
「いやいや、遅れる以前にスケジュール
結構前倒しになってるからね?
宅地造成だって2週間以上掛かる予定
だったのに、司が自分から作業しちゃって
もう殆ど終わっちゃってるじゃない。
だからちょっとは休まないと」
そう言って私の肩を叩くハジメ。
「それに、いざって時エヒトとの戦いに
なって司が不調、ってのは最悪だし」
「……確かに、その通りですね」
ハジメの言い分も分かる。と言う訳で
仕事はしばらく休みになった。
とはいえ……。
「暇だ。暇過ぎる」
基地の自室でお茶を飲みながら
休んでいたのだが、元より私には趣味
と呼べる物が殆ど無かった。
大体の空いた時間はルフェアとイチャつく
か、新兵器の開発だったり既存武装の
アップデートだったりをしていたのだが、
それもダメとなると一気に暇になったのだ。
「暇なのは良い事だよ。お兄ちゃん」
「ルフェア」
そこへ、キッチンへお茶のおかわりを
淹れに行っていたルフェアが戻ってきた。
かと思うと、お茶を注いだカップを
テーブルの上に置き、私の膝の上に
腰を下ろした。
「こうして一緒にいられるのも、何だか
久しぶりだし」
「えぇ、そうですね」
私は静かにルフェアを後ろから抱きしめる。
そのまま彼女の頭を優しく撫でながら、
彼女の匂いを嗅ぐ。
花のような甘い香りは、私の一番好きな
匂い。私の妻の匂いだ。
「やぁ、もうお兄ちゃん。私の匂い嗅ぐ
のはダメだってばぁ」
「すまないルフェア。とても良い香りが
しているので、つい」
頬を赤くするルフェア。その姿の全てが
愛らしい。
私は謝罪の印に、彼女の額にキスをする。
すると……。
「もう、お兄ちゃんのエッチ。
……したく、なっちゃったよ?私」
そう言って、顔を赤らめるルフェア。
そして、私の我慢は吹き飛んだ。
私はルフェアをお姫様抱っこで持ち上げる。
「きゃっ、お兄ちゃん?」
「ルフェア。私は今すぐあなたとしたい。
……嫌、ですか?」
流石に強引過ぎたか?と内心思ったが……。
「そんな事ないよ」
『チュッ』
ルフェアは笑みを浮かべながら私の頬に
キスをした。
「私も、お兄ちゃんとしたいなぁ」
と言う事で、私は部屋を薄暗くし、ルフェア
とベッドで愛し合った。
それから数時間後。
汗だくになったルフェアと私はシャワー
を一緒に浴びた後、今はお互いに裸の
ままベッドに並んで体を預けている。
そんな時だった。
「お兄ちゃん」
「ん?」
ルフェアが私に声を掛けた。
「無理だけはしないでね?お兄ちゃんが
無理して倒れたら、私すっごく
悲しくなっちゃうから」
「大丈夫ですよルフェア。今日
ルフェアと一緒に居られたから、
十分に英気を養うことが出来ました」
そう言って私はルフェアの額にキスをする。
「そっか。……でも、どうしてお兄ちゃんは
そこまでするの?街を作るのが簡単じゃ
ないのは分かるけど、何て言うか、
すっごい急いでるみたいだよ?お兄ちゃん」
「……」
急いでいる、か。……確かにルフェアの言う
事は正しいのかもしれない。
それは……。
「ルフェア。私がオリジナルであった頃の
話を、覚えて居ますか?」
「うん。ゴジラとして、ハジメお兄ちゃん達
の世界とは別の日本って国を襲ったん
だよね?」
「はい。……あの世界で、私が見聞きした
事、やった事と言えば、誰かを殺し、
傷付け、傷付けられ、恨まれ、恨み。
それくらいでした。人と交わす言葉を
持たなかった私にはそれしか出来なかった。
……それが、ハジメ達と出会い、そして
このトータスで皆と出会う事で変わった。
そして思うのです。争いは悲しみや
憎しみの涙しか生まない。
そして今、この世界では三種族が
互いを憎み合い、戦争で失った者達への
悲しみに包まれている。
……結局の所、かつての私と、今の
この世界の戦争は、=なのです」
「お兄ちゃんと、戦争がイコール、って?」
「あの日の私も、戦争も悲しみや憎しみしか
生まない。だから、今の私は止めたい、
いえ。私の大切な人達が、戦争の中で
悲しんだり、誰かを憎んだりするのを、
止めたいのです」
今なら分かる。かつてのオリジナルの私に、
大切な人達を奪われた者達の、怒りが、
憎しみが。今の私も、もしルフェアを
失ったなら、怒り狂うだろう。
考えただけでも恐ろしい。だが、それが
今の世界では当たり前になりつつある。
戦争という行為によって、誰しもが
大切な人を奪われる可能性がある。
その時ふと、私はオルクスで遭遇した
魔人族の女の最後の言葉、ミハエル
と言う名前を思いだした。
彼女にも、愛する者が居たのだろう。
その者にしてみれば、私は憎き敵だろう。
そうやって、戦争は悲しみと憎悪しか
生み出さない。何の生産性も無い
破壊行動。それが戦争だ。
だからこそ、そんな戦争とは無縁の平和
を、皆に与えてやりたい。皆が家族や
友人と平和に暮らせる街を作ってやりたい。
私の大切な人達の笑顔を、守りたい。
それが私の決意だ。
と、その時。
「出来るよ、お兄ちゃんなら」
隣にいたルフェアが、私に体を寄せた。
「だって、お兄ちゃんはゴジラ
なんだから。何だって出来るよ。
ゴジラは、お兄ちゃんは、『王様』
なんだから」
「ルフェア」
「そして、私は、私達はそんな王様を、
お兄ちゃんを助ける。私にはお兄ちゃん
みたいな力は無いけど。それでも、私は
ずっとお兄ちゃんの隣にいるから」
「ルフェア」
私は、優しく彼女を抱きしめる。
「お兄ちゃんなら、ゴジラなら出来るよ。
だって、ゴジラは世界だって壊せる力
があるんでしょ?だったら、世界を
平和にすることだって出来るよ!」
そう言って笑うルフェアの言葉に、
私は元気を貰った気がした。
「ありがとう、ルフェア」
私は彼女を抱きしめながら、静かに
感謝を述べた。
そして、改めて決心した。
私にとって大切な人々が、仲間が、
平和に暮らせる世界を、必ず創ると。
そのために、必ずエヒトを倒す、と。
その後、カム達からの提案で、しばらく
休めとまで言われた。
どうやら働き過ぎで周囲に、逆に心配を
かけてしまっていたようだ。
と言う事で、更に数日はのんびりしている
事になった。
そんなある日。
「どうぞ」
「ありがとうございます、司様」
今、基地の応接室にリリィ王女とアルテナが
居て、私が対応していた。
彼女達がここにいるのは、王国やフェア
ベルゲンからの移住希望者について話し合う
ためだ。
私達のPW計画の第一歩であるアルファ
シティ建設計画を知った2人は、私達
への協力を申し出てくれたのだ。
まぁ大きな計画なので、協力者は
多い方が良いだろうと考え私は受諾。
アルテナには、現時点でアルファシティへの
移住を希望している亜人達の名簿と、彼等の
学びたい技術についてアンケートを取って
貰った。リリィ王女にも、基地の通信機を
通じて王都のメルド団長や愛子先生たちと
連絡を取って貰い、私の方からアルファ
シティについて軽く説明をした後、移住者
を募る張り紙や、希望者への説明を
行った。
人数に関しては、かなり多いと言えた。
亜人族の中では帝都で奴隷にされていた
者達が多く移住を希望。王都の方では
私に助けられた者達やその紹介を受けて
希望した者も居るようだ。
一応説明の段階で、亜人と人の共生を
目指していると説明をしており、それを
拒絶する者達は移住を断ったと言うが、
その数は精々半分程度らしい。
それほどまでに学びたい事が残った彼等には
あると言う事なのかもしれないが。
ともあれ、これで移住者の方は問題無い。
街が出来上がっても住む者達がいなければ
意味が無い。
ともあれ、予定地の造成作業は粗方
終了。もうすぐ建設作業に移れる。
この建設作業については、カム達の
たっての希望で彼等と建設用の重機
やそれの操作用に専門技能をインストール
したガーディアンの混成工兵部隊が
担当することになった。おかげで私は
それ以外の事に集中出来る訳だが……。
「思って居た以上に希望者は多い
ですね」
私は2人と共に応接室で2人が
持ってきてくれたリストに目を通して
いた。
リストを見ると、第一次移住希望者は
現段階で約2400人。900が亜人。
1500が人族だ。正直、数は均等に
なるようにしたかったが、それは
贅沢な悩みという奴だろう。ただ、
数に差があると少数の方が迫害を
受ける可能性はある。
実際、同調圧力として数が少ない事や
マイナーな物は人であれ考えであれ、
排斥されやすいと言うのは私達の世界
でも同じだ。そうならないように
街の住人は皆平等の権利を持っている事
の周知を徹底させなければならないな。
「司様としては、これで多い方なの
ですか?」
「えぇ。正直、人と亜人の間の差別意識は
まだ根強いと思って居ましたから。
共生を詠ったとしたらそれに反発して
あまり人が集まらないと思っていました」
「そうですね。……ただ、ハイリヒ王国では
熱心な教会信者でも無い限り、あまり
亜人に差別的な物ではない人もいると
思いますよ?と言うか、王国では奴隷を
禁止しているので、滅多な事では
亜人と接する機会もありませんし」
首をかしげるリリィ王女に答えるが、
彼女から教えられた言葉は少し予想外
であった。
「ふむ。しかし、それを言うのなら亜人側
の希望者は帝都で奴隷として捕らえ
られていた者達も多いですね。彼等は
むしろシティへ来たがらないのでは?」
「それが、聞いたところによると彼等は
あまり人と共生するつもりは無いよう
です。どちらかと言うと、司様や
Gフォースの皆さんの庇護の元、
新しい技術を学びたい、と言うのが
本音のようです。彼等は人というより、
救世主のような司様やGフォースの
兵士達を信頼している、と言う所
でしょうか」
「そうですか」
まぁ、それは仕方無いだろう。実際、人に
虐げられてきた彼等が、人と平等に、など
と言われて早々納得出来る者は少ないだろう。
と、私は心の中でアルテナの言葉に頷いた。
その後、ある程度リストに目を通し終えたので
2人に新しいお茶を出している。
「それにしても、驚きました」
「ん?」
「まさか司様が街を作るなんて。初めて
お会いした時は、どこか寡黙な方だと
思って居ただけでしたが」
「そうですね。と言うか、私自身こう
なるとは思っても居ませんでした。
最初は元の世界に戻るために戦う、
と言い出して旅に出て、今では
街を作ろうとしている。あの頃の
私では考えられない事です」
リリィ王女の言葉に苦笑しながらも
頷く。
すると、何やらリリィ王女の傍で彼女
を横目で睨んでいたアルテナが私の方に
視線を移した。
「あ、あのっ!司様が街を作るとの事
でしたが、将来的には国を創られる、
と言う事ですか!?」
「え?」
アルテナの言葉に戸惑っていると、
何やらリリィ王女がハッとなった。
「国造り、ですか?」
「はいっ!司様のG・フリート。更に
その下にGフォースがある事からも
司様のお力は計り知れず、そして
そんな司様の収める街があると
すれば、そこはもはや司様の国
ではありませんか!?」
「いや、それは、どうなのでしょう?
私の世界では、国と定義する場合、
領土、国民、主権の3つが揃って
いる事が前提条件ですが、まぁ
実際問題、領土もありますし国民と
呼べる市民も居ます。主権とは
物理的な実力の事を指すので
軍事力がある以上、あるとは言えますが……」
「では、つまり司様には国を作り
その王族になることも出来ると言う
訳ですね」
「いや、そこでなぜ笑みを?」
何やら恍惚とした表情で語るアルテナに私は
分からず首をかしげるばかりだ。
すると……。
「あ、あの、司様?」
「えぇ、はい?」
何やらリリィ王女から声が掛かった。
「も、もしもの話ですが、もし司様が
建国なさったとしたら、その時は
王国との友好の証として、私との
結婚も、なんて」
「えぇ?」
いや、確かに以前帝都のパーティーの時
そんな事を言っていたが、ここでそれを
出しますかリリィ王女。
顔を赤くしながらの王女の言葉に私は
戸惑う。
更に……。
「そ、それであれば、フェアベルゲンとも
友好の証として結婚など如何でしょうか!
私も既に結婚に適した年齢ですし!」
何やらアルテナまで自分を推してきた。
「えぇ?」
これには戸惑う。まさか彼女もそこまで
私に気があったとは。正直、そこまで
の事をした認識など無いのだが……。
すると……。
「ちょ~~っと待った~~~!」
バンッと音を立てて部屋のドアが開き、
そこからティオを連れたルフェアが
入ってきた。
「ルフェア」
「お兄ちゃんのお嫁さんはこの私なん
だからねっ!王様になったら、妃は
当然私なんだからっ!」
私の声も無視して全力で自分がお嫁さん
宣言をしているルフェア。
しかし2人は……。
「それはどうでしょう!司様が王と
なれば、当然国家間の付き合いも必要
になります!であれば、当然政略
結婚なども起こりえる事です!」
「そ、それを言ったらフェアベルゲン
長老の孫娘である私もその立場に
ある事は間違いありませんっ!」
「その政略結婚が嫌でお兄ちゃんに
助けられたお姫様が何言ってるの!
あとアルテナも!もうお兄ちゃんの
嫁に森人族の私が居るんだから
諦めてよ!色々被ってるんだし!
種族とか金髪とか!」
何かいろいろな理由付けをしている。
そしてそれに反論するルフェア。
3人は三つ巴の態勢でお互いに火花を
散らしていた。
「モテモテですね、ロードは」
すると笑みを浮かべながら私の傍による
ティオ。
「これがモテ期という奴なのか?
とはいえ、なりたくてなった訳
ではないのだが」
「例えその歩む道が覇道であったとしても、
ロードは間違い無く王の1人。
であれば、誰もがその力に惹かれましょう。
特に、今の王は世界の平和のために
動かれている。そんな王を好きにならない
女などいますまい。知性も武力もカリスマも。
この世界でロードを越える者など、もはや
居ないのではありませんか?」
「そうだろうか?」
「えぇ。貴方様の僕として、共に長く
旅をしてきたからこそ、妾はそう
思います」
「そうか。……所で、ティオは
ルフェアを姫と呼んでいたのだから、
彼女に加勢するかと思ったのだが?」
「それは確かにそうですが、ここからは
彼女達自身の戦いです。姫がロード
の心を射止められ続けるか。或いは、
2人のどちらかがロードの心を
射止めるか。……恋の戦争はいつでも
ガチンコ勝負。それを外野の妾が
言うのはどうかと。それに、僕
たる妾は愛人でも構いませぬぞ?」
そう言って笑うティオに私も苦笑する。
で、結局3人はお互いをライバルとして
恋の争奪戦条約(?)を締結し、直接間接の
妨害無しの恋愛争奪戦をする事になった
らしい。
……何気にそれを許しているルフェアは
結構寛容なのだな、と、私はその時暢気に
思って居たのだった。
ちなみに翌日からお昼時になるとリリィ
王女やアルテナがお弁当を持ってきたり
作業中にお茶を淹れたりしてくれる
ようになった。
そして案の定ルフェアも同じような事を
するようになった。
ちなみにこれに影響されてかハジメ達の
正妻の立場をかけた抗争も激化して
いたりいなかったり。
そんなこんなで忙しいながらも平和な
日常が続いていたある日。
「王都に戻りたい?」
昼食を食堂で、皆で共にしていた時に雫が
その話題を切り出した。
「うん。元々ハルツィナ樹海の大迷宮を
攻略したら一度戻るつもりだったん
でしょ?司は」
「えぇ。一応愛子先生達に攻略完了の
報告などをしてから次のシュネー
雪原に向かうつもりでした」
「ならお願い出来ないかな?それに
あの映像の人の言葉や貰った
アーティファクトの力で地球に
帰られる算段も出来た訳だし、
それを話して皆を安心させて
上げたいの」
「成程」
何とも優しい雫らしい提案だ。
私はチラリとカムの方を向くが……。
「ここは八重樫さんの言うとおり、王都の
ご友人たちを安心させては如何ですか、
陛下。幸い建設作業でこれと言った
問題もありませんし、仮に起ったと
しても陛下のお力ならばすぐに
駆けつける事も可能のはずですし」
ふむ。確かにカムの言うとおりだ。
それに、今はオルクスの大迷宮に潜って
いるはずの清水の事も気になる。
王都に戻って色々先生達への報告やら
何やらをしなければな。以前通信で
先生やメルド団長にPW計画の事も
話すと言ってあった事だし。
「分かりました。では明日の午前10時。
アルゴで基地を出発し一旦王都へ
戻ります」
と言う事だが、全員OKを貰った。
これで明日には私達、勇者達、リリィ王女
たちは一旦基地を離れて王都に戻る。
しかし、その夜。
「クソッ!クソッ!クソクソッ!」
誰もが寝静まった時間帯、光輝は1人
あてがわれた自室で壁を殴りながら
悪態を付いていた。
「何で、何であいつがっ!何で新生がっ!
あいつばっかりっ!」
光輝には理解出来なかった。勇者でも無く、
かつては協調性も無かった司が、国や
仲間を救い、大勢の者達に慕われ、
剰え世界を平和にするために動いている
現実を、彼は理解出来なかった。
いや、正確に言えば……。
「世界を平和にするのは、勇者の俺の
はずなのにっ!」
なぜその役目が自分ではないのか、と
憤っていたのだ。
だが彼は気づかない。自分が『歪な正義』
を持っている事。もっと言えば、
『自分の信じている正義』こそが、『絶対』
であると信じ切っている事の『愚かさ』を。
勇者の根底にある、自分の正義を絶対と
信じる所以は、彼の祖父の影響だ。弁護士
であった祖父が聞かせた、理想的なまでの
正義の話を聞き育った彼は、その
理想的なまでの正義を信じるようになった。
だが現実はそう上手くいかない。人は
誰しも挫折や失敗を経験する事で学習
する。例えば理想は所詮、実現しがたい
事だからこそ理想なのだという現実。
だが、光輝の高いスペックは結果的に
彼の人生から挫折や失敗というものを排除
してしまった。
ゆえに彼は自分の考える正義こそが正しい
のだと、そう思い込むようになった。
その結果が、自らの正義を疑わない、と言う
歪んだ正義を生み出した。
対して司は、ある意味リアリストであった。
理想は所詮理想である事を理解している。
それを実現するのは並大抵ではない事も
理解している。
そして人間の薄汚い部分も、良く分かっていた。
だからこそ、正義なんて物は掲げない。
なぜなら、世の中には正義の名を借りた悪意
があるのだから。
犯罪者の名を晒し、犯罪者の家族さえも攻撃
する。そして自分こそが正義なのだと悦に浸る。
だが、それは所詮、安っぽい正義感を満たす
ためだけの、悪意ある行動に過ぎない。
光輝が、理想的な正義、性善説を信じるような
人間であるとするならば。
対して司は現実を知り、性悪説を理解している
存在である。
司がかつて、愛子に、『誰も殺さず、自分の
手も汚さない生き方を、優しいが役に
立たない』、という旨の事を言ったように、
彼は理想が綺麗である事は理解している。
だが、それゆえに綺麗すぎる理想は、
夢物語に等しい。
だからこそ司は理想ではなく現実を見る。
現実を見た上で策を考える。
自分達は戦争をする。その戦争の中で
生き延びるために、出来る事は何かと
思考を巡らせた。
チートスペックだから等と驕らずに
仲間の安全を考え武器や防具を与える。
こちらが優勢だからと油断せずに
倒すべき敵は倒す。
仲間を守る為ならば血に汚れる事も
構わない。
殺して良いのは殺される覚悟がある
者だけ、と言う意思を忘れずに、
戦場で戦う。
現実主義の司と。
理想主義の光輝。
だが、理想は理想であるが故に、この
地球よりも非情なこの世界では簡単に
実現することも出来ず。
逆に現実を理解した上で動く司は、
どこまでも相手や自分の利益を読み、
策を実行する。
誰も正義や道徳で動く者ではないと
知っているから、利益を考える。
だからこそ人を動かせる。
そして、仲間のために血に汚れる覚悟
があるからこそ、仲間のために戦い、
悪魔と罵られる事も恐れないからこそ、
司は慕われるのだ。
だが、光輝にはそれが理解出来ない。
いや、理解しようとしない。
なぜなら自分の正義こそが正しいと、
自分の考えこそが正しいと、疑う事を
知らないのだから。
だから……。
「こんなの、何かの間違いだっ……!
いつか力をつけて、俺がっ!」
勇者の瞳は、勇者と呼ばれるにはとても
思えないほど、酷く濁り始めていた。
病的なまでに理想の正義を信じた『つけ』
を払わされるのは、そう遠くない未来
であるが、勇者にその未来を知る由は
無かったのだった。
第77話 END
次回はライダー編を投稿するかもしれません。
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