ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~ 作:ユウキ003
作中のPW計画関連で色々動くためです。
80話辺りからシュネー雪原に向かう(かもしれない)予定です。
~~~前回のあらすじ~~~
改めて神化したティオの龍神としての姿を
確認した司たち。その後、改めて計画を
進めていた司だが、余りにも作業に集中
していた事から、ハジメからの提案で
少し休む事になりルフェアと愛し合う
中で、自らの計画に対する思いを
再認識していた。一方で着々と
進む計画。そんな中、雫の提案で
彼等は一度ハイリヒ王国の王都に戻る
事になった。
だが、司たちやハジメ達の与り知らぬ所
で光輝は司に対する憎悪を深めていた。
高高度を飛行する1番艦アルゴ。
今艦橋にいるのは私達G・フリートの
メンバーと勇者一行。リリィ王女とその
護衛の女性騎士数人。私は操縦席に
座ってアルゴをコントロールしていた。
また周囲のオペレーター席にはハウリア兵
が数人待機している。
私達が王都に到着後は、同乗している
ハウリア兵によってアルファシティへ
資材を運搬する予定だ。そのために
何人かのハウリア兵を乗せ、カーゴには
物資も積んでいる。
王国側には、メルド団長や愛子先生たちの
ジョーカー経由で王都郊外の草原付近まで
行き、そこからオスプレイMKⅡで
降りる事になっている。
そしてその草原付近までやってきた。
「ふぅ。ここまで来れば大丈夫でしょう。
後はオスプレイに搭乗して降下します。
操縦を変わってくれ」
「お任せを陛下」
手近なハウリア兵に操縦を変わってもらい、
私達は格納庫のオスプレイに乗って
アルゴを発艦。予定の地点に降下して
いった。
「ん?あっ」
その時、窓の外を見ていたハジメが何かに気づいた。
「どうしたのハジメ君?」
「ほらあそこ見て!」
「あそこ?」
窓越しに眼下を指さすハジメ。それに気づいて
香織、更に雫達まで傍の窓から眼下の
様子を見ていた。
彼等の視線の先、草原の上では……。
「みなさ~~~ん!お帰りなさ~~い!」
愛子が両手を大きく振って叫んでいた。
その傍にはメルド以下数十の騎士と兵士。
更に愛子の護衛として愛ちゃん護衛隊の
6人が待っていた。
やがて音を立てながら着陸するオスプレイ。
プロペラの回転数が小さくなり、風が
少し収まると後部のランプが開いてそこ
から私達が降りる。
「みんな~~~!」
「あっ!愛子先生っ!」
すると先生が駆け寄ってきて雫が反応する。
「みんなお帰りなさい。道中は大丈夫
でしたか?」
「はい。この通り皆元気ですよ。
先生こそ大丈夫ですか?」
「心配してくれてありがとうございます
南雲君。でもこちらはこれと言って
問題もありません」
「そうでしたか」
問題無い、と言う事で彼女の生徒達
であるハジメや雫達は安堵した様子だ。
と、そこへメルド団長達が歩み寄って来た。
「お帰りなさいませ姫様。帝国での
話しは我々も存じております。大変
でしたな」
「メルド団長。出迎えご苦労様です。
ですが司様もご一緒でしたし、これ
と言って問題はありませんでしたよ」
そう言って笑みを浮かべるリリィ王女。
すると、メルド団長は何かを察したのか
私の方を一瞥してきた。
「それは何よりです。それでは馬車を
用意していますので、こちらへ」
「はい。分かりました」
そう言って馬車の方へ歩いて行くリリィ
と護衛の騎士達。
「おぉい!ハジメ達も来い!王都に
戻るぞぉ!」
「あっ!はぁい!」
積もる話もあるハジメ達だったが、
メルドに呼ばれたので、一旦中断して
馬車へと向かった。
そして、王都へと戻り、更にそのまま
王城へと向かう馬車。
そんな馬車の中では……。
「「…………」」
『バチバチッ!!!』
ルフェアとリリィ王女が無言で火花を
散らしながら私の両隣に座っていた。
向かい側に座るメルド団長とティオ。
彼等は何やら微笑ましそうに笑みを
浮かべていた。
……この状況のどこが微笑ましいのか
是非私は教えて欲しかった。
「リリアーナ王女様~。ちょ~~っと
お兄ちゃんとの距離近くありませんか~?」
若干苛立ち交じりの言葉で話しながら
ルフェアは私の右手を取り抱きしめた。
「あら?そうでしょうか?救国の英雄
にして私の大恩人。ましてや私の、
将来夫になるかもしれない男性ですし、
遠慮する事がありますか~?」
そう言ってリリィも受けて立つ、と
言わんばかりの表情だ。
2人は再び無言で火花を散らしていた。
正直、いたたまれない。
「あ~。メルド団長。あとティオ。
笑ってないで何とかしてください」
なので2人に助けを求めた。
のだが……。
「いやいや。俺達は気にしないからどうぞ
続けてくれ」
「この状況を続けろと?正直いたたまれない
のですが?……と言うか、仕える王族
がどこぞの馬の骨とも知れぬ男に
言い寄っているのにそれで良いん
ですか?」
「おいおい。司のどこが、どこぞの
馬の骨、なんだ?むしろ世界最強の
男だろ?」
そう言って笑みを浮かべるメルド団長に
ティオがうんうんと頷いている。
「それに、リリアーナ王女がお前と
結婚すれば俺の祖国はお前の加護を
受けて安泰間違い無し、だからな。
個人的にはリリアーナ王女を応援
したくもなる」
「はぁ、仮に結婚したから、としても
私が王国を守るかどうかは分かりません
よ?」
「くくっ、そうか?だが、蒼司やお前と
接してみて分かったが、お前達は
義理堅い性格だ。約束を守る性格と
言っても良い。……確かに、前の司
ならそうはしなかったかもしれない」
どこか懐かしむような表情で語るメルド団長。
「初めて会った時の頃は、どこか人形の
ようで不気味に思った物だった。実際、
問答無用で檜山を殺したりしそう
だったからな。情け容赦が無い、冷徹。
それを絵に描いたような人間だと思った。
だが今では何かに理由を付けて俺達の事を
助けてくる仲だ。……正直、俺自身
驚いてるんだ。司、お前は変わったな」
その言葉に、私はどこか『嬉しい』という
感情を抱いた。
……あぁ、そうか。この人は、メルド団長は
私をよく見ていてくれた人なのだな。
ハジメたちのように。だからこそ、私が
変わったと分かるのだろう。
「……そうですね。実際、今の私は、
亜人と人族の対立を終わらせるために、
PW計画なんて物を主導する立場にある。
過去の私からしたら、考えられない事です」
「俺は、お前なら出来ると思うぞ?
平和な世界を作ると言う計画を、
成し遂げる事が」
「ふふっ。まだまだ計画は始まったばかり
ですよ?その言葉は、些か買いかぶりなの
ではないですか?」
「買いかぶりか?死者すら蘇らせたお前に
出来ない事なんてあるか?それに、
お前の周りにはこの世界で5本の指に
入る猛者だっている。優しさの塊みたいな
ハジメや香織もいる。強力な仲間もいる。
そんな『お前達に』、出来ない事なんて
無い。俺はそう思ってるし、それに、
誰しもが平和を望んでいる。俺や、
兵士達も」
そう言うと、メルド団長は表情を引き締めた。
空気が代わり、ティオとルフェア、リリィ
も表情を引き締めた。
「国王陛下に直談判したのだが、もし、
力が必要なら俺達を頼って欲しい。いざと
言うとき、お前達に頼る許可を陛下
からも頂いている。
俺やホセ、アランたち。そしてあの日、
お前に助けられ生還した騎士と兵士
合わせ500人。……いざと言う時は、
お前の力になることを、ここに約束する」
そう言って、メルド団長は頭を下げ、
周りのルフェアたちは驚いている。
「その話し。兵士達は?」
「……皆同意している。騎士、兵士、
俺達6人合わせ合計506名。皆、『恩人
のため、世界平和のために戦えるのなら
本望』と言っていた」
そうか。……ならば。
「理想は、争いの無い世界で、皆が笑い合う
事。だがまず、そのためには今の戦争を
終結させ、貧富の格差を是正し、互いに
根付く差別感情を壊し、そして何よりも、
この世界を盤上と、人々を駒と嘲笑う
エヒトを倒さなければならない」
理想は、理想ゆえに、追い求める事は困難。
だが、それでも……。
「理想は理想ゆえに、追い求める価値が
あると、私は考えています。
過去の私ならば、理想など妄言だと
一蹴していたかもしれません。ですが、
今は違う。理想を実現する事が
出来れば、この世界は変わる。変える
事が出来る。……だが、私達の進む
道は、険しく、危険で、苦しい物に
なるでしょう」
理想を追い求める道は、困難の連続で、
時に人はその困難に直面して挫折する。
その困難の連続と挫折があるからこそ、
理想を実現するのは困難なのだ。
「……それでも、構いませんか?
世界を平和にすると言う、理想を
追い求める覚悟がありますか?」
自分でも、この質問は愚問だと思っていた。
そして案の定。
「ふっ。愚問だな司。私は騎士だ。祖国
を守る剣だ。……祖国に生きる者達。
そして、いつか生まれてくる子供達が
平和に暮らせる世界を創るために
戦えるのであれば、それは騎士として
最高の誉れじゃないか?」
メルド団長の答えは、半ば私が予想して
いたものだった。
……次の時代のために、新たな世代で
ある子供達のために戦う、か。
それはある意味、立派な大人の生き方
なのかもしれない。だからこそ、メルド
団長は信頼に値する。
「……ならば共に。この世界の、平和のため
に戦いましょう」
「あぁ、もちろんだ」
私が手を差し出し、メルド団長も同じように
手を差し出した。
そして私達は固い握手を交わすのだった。
その後、王城に到着した私達はまず、リリィ
王女と共にエリヒド王に謁見。帝国との
婚約破棄について、エリヒド王はため息こそ
付いていたが、別段何かを言われる事は
無かった。後々、別室で私と二人きりに
なった時に、バイアスがリリィ王女を
レイプしようとした、と教えた時には顔を
青くしながらも、『やはり皇帝の息子か』
と言ってため息をつき、そのレイプを
未然に防ぎ、尚且つリリィに望まぬ婚姻を
させずに済んでよかった、と私を
労った。
やはりエリヒド王も国王である前に父親
だったのだろう。国王としては関係強化
から結婚を言い出したが、父親としては
望まぬ婚姻を強いる事に心を痛めていた
のかもしれない。
「改めて、貴殿には娘を救って頂いた
礼をしなければな。ありがとう、司殿」
「いえ。どうかお気になさらず。それでは
のちほど、私達が留守にしていた間の
ジョーカー部隊の士気、練度の確認と、
ガーディアンの警邏隊などの確認を
したいのですが、何か大きな問題などは
ありませんでしたか?」
「うむ。これと言って問題は起っていない。
むしろ、貴殿から与えられたガーディアン
たちのおかげで犯罪発生率の低下と、
農業などの方面で生産率の向上が
認められている」
「そうですか」
エリヒド王の話によると、休憩を必要としない
ガーディアン警邏隊は、犯罪が発生すると
常人離れした速さで駆けつけ、犯人逮捕も
確実。さらにそれ以外でも高齢者の補助や
農業などのサポートも、愛子先生主導で
行っていたらしい。
愛子先生やその護衛である愛ちゃん護衛隊の
ジョーカーには、ガーディアンへの指示機能
があるからだろう。
また、救国の英雄であり、民衆からシン様
と呼ばれる私の部下という事と、その働き
ぶりから、すっかりガーディアンは王都の
治安維持には欠かせない存在となっている
らしい。正直、ガーディアンが民衆に
受け入れられるか微妙だったが、大丈夫な
ようだ。それはそれでありがたい。
その後、本来ならPW計画について
エリヒド王とも話したかったのだが、
王のご好意でしばらくゆっくりされよ、
と言われてしまった。なので詳しい話しは
また明日、となった。
なので、私は王国騎士団、ジョーカー
部隊の練度の確認を行った後、愛子先生の
部屋を訪ねた。
理由は清水の進捗具合を聞くためだ。
清水は今、単独でオルクス大迷宮に潜って
いる。少し前、愛子先生とのやり取りで、
先生のところに清水から不定期で連絡が
来ているのを聞いていたので、その確認だ。
「一番新しいメールは、これですね」
先生は左手首の、待機状態のジョーカー・
フェアから投影式ディスプレイを展開し、
そこに届いていたメールを見せてくれた。
内容は、心配しないで欲しいと言う言葉と、
現在どこにいるか、と言う簡潔な物だった。
ちなみに、清水は今第120層にいるらしい。
日付は一昨日であった。
「早いですね。私達のマッピングデータが
あるとは言え、この速度は正直予想外
でした」
清水のジョーカー、タイプコマンドには
オルクス大迷宮のマッピングデータが
内蔵されている。しかしだからといって、
彼が潜ってからまだ1ヶ月程度。この速度
はかなりの物だ。
この分であれば、あと1ヶ月もあれば
清水も戻ってくるかもしれない。
……彼も力を付けていると言う事か。
そう思いながら、出されていたお茶に口
をつけていると……。
「変わりましたね」
不意に愛子先生が呟いた。恐らく、清水の
事だろう。
「えぇ。清水も、随分頼もしくなりました」
と、頷いたつもりなのだが、何やら先生は
少しキョトンとした表情だ。何故?と
思って居ると……。
「ふふっ、確かに清水君もそうですけど、
新生君もですよ?」
「え?私もですか?」
「はい。……正直、前の新生君を見ていた
事もあって、新生君が世界を平和にする
って言い出した時は、ちょっと驚いて
しまいました」
「まぁ、そうですね。少し前の私でしたら、
そんな事は言わなかったでしょう」
そう言うと、私はお茶に口を付けた。
「変わってしまったと言うべきか。
変わる事が出来たと言うべきか」
前者ならば悪い意味で。
後者ならば良い意味で、だ。
「ふふっ、それはもちろん。良い意味で、
だと私は思います」
そう言って笑みを浮かべる先生。
「だからきっと、今の新生君が、最高に良い
新生君だと思います」
「私が、ですか?」
「はい。『世の中で最も良い組み合わせは
力と慈悲』。でしたよね?そして今、
新生はその二つを持っている」
「……私に慈悲はありませんよ。敵として
立ち塞がるのなら殺します。まぁ
降伏するのであれば、捕虜として最低限
以上の生活を与えるだけです」
そうだ。戦場で戦うのであれば、当然
お互い死ぬ覚悟が出来ているとする。
それは譲れないし、変わらない。
「そうですね。……でも、最近新生君が
非致死性兵器の開発をしてるって、
南雲君から聞きましたよ?」
そう言って笑みを浮かべる先生に、私は
返す言葉が見つからず、お茶を口にした。
現在、私は非致死性兵器の開発をしていた。
正直、自分でも何故それを作ろうと思った
のか良く分からない。ただ、作っておけば
役に立つだろう、と思い作り始めたのだ。
例えば、特殊なムースを内包した銃弾。
これは目標に当ると瞬時にムースのような
物が広がり、更に一瞬で硬化。つまり
目標を固めてしまうのだ。加えてこの
ムースにはナノマシンが組み込まれている
ので、万が一ムース弾が頭部などに当って
窒息しそうになった場合は、周囲のジョーカー
からの指示で即座にナノマシンを使って
ムースを分解出来る。
また、ボーラと呼ばれる二つの球体を紐
などで繋ぎ、回転して投げる昔の狩猟
アイテムを、銃から発射し相手を縛り上げる
『ボーラガン』も開発済み。ハジメのアイデア
で、更に電撃ショック機能をボーラ弾に
搭載することも検討中だ。
それと催眠ガスグレネードやトリモチを
発射するランチャー。
催眠ガスを散布する小型ドローンも開発中だ。
更に電撃を放つスタンスティックも既に
生産済み。前からあったノルンの
テーザー弾に加え、次々と非致死性兵器の
レパートリーが増えているのが現状だ。
「……正直、自分でもなぜそんな物を、
非致死性兵器を作ろうと思ったのか
謎なのです。以前の私なら、兵器は
殺す為だけの存在だと考えていたのに」
「それだけ、新生君が優しくなれたって
事だと思います。誰かの命を奪うのは、
たくさんの悲しみや怒り、憎しみを生む。
……今の新生君も、それを止めたいんじゃ
ないですか?」
「……その通り、かもしれません。悲しみ
や怒り、憎しみは次の争いを生む。
だからこそそれを止めなければならない。
そのために私は……」
そう言って、私はテーブルの下でギュッと
拳を握りしめていた。
世界の平和、か。私には一番似つかわしくない
言葉と夢だろう。だがそれでも、そんな私なら
出来ると言ってくれる人がいる。
そんな私に協力してくれる友人や仲間がいる。
ならば、彼等の思いに答えよう。彼等と
共に、世界の平和への道、その険しい道を
突き進んでいこう。
そう、私は改めて決心していた。
その後、私達はクラスメイト達を集め、
樹海の大迷宮で手にしたアイテム、
導越の羅針盤によって、正確な地球の
座標を知る事が出来た事。更にあと
一つの神代魔法を習得すれば、概念魔法
が手に入り、それを使って元の世界へ
繋がるゲートのような物を作ればよい
事などを説明した。皆、揃って帰還
への明確なビジョンが見えてきた事から、
とても安堵した様子だった。
その後、更にエリヒド王やメルド団長、
愛子先生などに、PW計画の第一歩
であるアルファシティの事や、そこから
始まる多民族共生都市の誕生。更には
差別思想や制度の撤廃などの話をした。
そして更に、エヒトの本性を、私達が
大迷宮やノイントとの戦いで見て録画
した映像を見せ、兵士達や王子にも、
その本性を知らせた。無論皆戸惑っていた。
だが、ノイントをナノメタルで取り込んだ
事で見えてきた、かつて暗躍していた
ノイントの記憶は、彼等のエヒトとの
決別には、十分過ぎるものであった。
加えて、ハジメの説得も功を奏した。
「皆さんが、今ここで生きている理由は
何ですか?家族が居るからですよね?
お父さんとお母さんから生まれて、
育って、そして今、ここにいる。
……兵士皆さんの歳なら、当然
家族がいるかもしれない。妻が居て、
息子や娘がいるかもしれない。
そして、今日ここまで来たのは、
紛れもない皆さん達の人生です。
神様が皆さんに道を示した訳でも無い。
エヒトから天啓を受けて、それに
従ったことのある人は、この中に
いますか?」
彼の問いかけに、誰も頷く者は居なかった。
「この国も、町も、村も、家族も。そして
大切な人を過ごす時間も。その全ては、
皆さんが自分達で作り上げたものだっ!
それを、他人が奪って良い理由なんてどこ
にもないっ!何よりも、人々の幸せを、
踏みにじる権利なんて誰にも無い!」
誰もが、彼の言葉に、真摯に耳を傾けていた。
「でも、争いが続く限り、人は、人族
だろうが亜人族だろうが魔人族だろうが、
大切な人や場所を、失い続ける事になる。
そして失った悲しみが、怒りや憎悪と
なって、また新しい争いを生む。そして
エヒトはそれを増長し、皆さんの苦しみを
見て、嘲笑っている」
ハジメは、ギュッと拳を握りしめる。
「それが僕には許せない。……僕には、
大切な人達がいる。愛する人。大切な
親友。かけがえのない仲間。この世界
で出会った友人。……もし、そんな
僕の大切な人を、神が弄び、絶望
した姿を見て笑っているなんて、絶対に
許せないっ!……そして、この怒りは、
皆さんも同じはずだ」
ハジメの言葉に、兵士達の表情が、決意を
固めたそれに変わっていく。
大切な人の絶望した表情を見て、嘲笑う
悪辣な神がいる。
そんな物、誰も許せはしない。
「だからこそ、僕達はエヒトと戦う。
奴の生み出したこの世界のあり方と
戦う。そして……。次の世代に生きる
子供達が、笑って暮らせる世界を
作る。それが、ピースウォーカー
計画です」
静かに、しかし確固たる信念を持って
語るハジメ。その言葉に胸を打たれたのか、
或いは、彼と同じように護りたい者のために
戦う覚悟を決めたのか、兵士達は皆、
確固たる信念の表情で、静かに頷いた。
彼等もまた、真実を受け止めた強き人で
あった事に内心感謝しつつ、私達は
本題に戻った。
多種族共存という理想に向かうにあたって、
まぁそれに反発する民衆もいるだろう。
そんな民衆には『平和で争いの無い生活』、
と言う物を全面に押し出した説得などを
する事になった。
しかし三種族による争いの根は深い。
誰だって、自分の家族や友人、恋人を
傷付ける奴が憎いだろう。
だが、そこで彼等の家族や子孫が、
死ぬかも知れない戦争を続けるよりは
良いはずだ、として説得をする。
そして更に、愛子先生の提案があった。
『かつての三種族がそうしたように、
人族、亜人族、魔人族が平和に暮らせる
場所を作れないか』、と言う物だった。
無論、これには同席していた兵士達や
国王陛下は難色を示した。相手は魔人族。
つい先日王都を襲った連中だ。そんなの
と手を取り合おう、と言う気には
なれなかったのも分かる。
しかし……。
「……現状、魔人族との争いを、今後一切
起こさないために我々が出来る方法は
二つだけです。一つは魔人族との和解
と、その先にある三種族共生社会の
実現。もう一つは、二度と争いが
起らないように、魔人族という種族を
根絶やしにするか、です」
私の言葉に、皆驚いた後に俯いた。
「完全に争いの元を絶つには、その二つ
しかありません。中途半端な戦争で
魔人族側を降伏させたとしても、彼等は
反攻の時を待つだけ。二者択一。
滅ぼすか、和解するか。それ以外に、
戦争の火種を完全に消し去る方法は無い」
「しかし」
その時、メルド団長が声を上げた。
「和解するにしてもどうするんだ?
あっちは俺達を完全に、下に見ている。
加えて、人族と亜人族には司たちと言う
仲介役とも言える存在がいるが、
魔人族側との接点は殆ど無いんだぞ?」
「それに、こういっちゃ何だが、司って
あのフリードとか言う魔人族の将軍の
相棒の竜、殺してたよな?」
「あっ」
団長の言葉に続く蒼司の言葉に、ハジメが
ポツリと呟いた。
「お前、相当恨まれてるんじゃね?」
「……でしょうね」
そんなレベルで和解しようなどと、荒唐無稽
に思われる。
せめて誰か、魔人族の知人でもいれば……。
と考えていた時。私は頭の中で戦った
魔人族の顔をリストアップしていた。
しかし少ない。私が戦ったのは、
オルクスでの魔人族の女、とフリード、後は
清水を洗脳した魔人族の男。しかし顔を
知ってるのはあの女魔人族とフリードだけ。
う~む。
「……生き返らせてみるか」
と、ぽつりと私が呟く。そして周囲を見回す
が皆驚愕したような表情で私を見ている。
「どうしました?」
「いや。司ってもう常識をぶん投げた
存在だなぁってみんな驚いてるだけ」
「「「「「うんうん」」」」」
私が首をかしげていると、ハジメの言葉に
香織やルフェアたち。更に雫たちや
愛ちゃん護衛隊の優花たちまでもが彼の
言葉に頷いていた。
「まぁ、と言う訳ですが、しかし当面の
問題として、魔人族用の土地の確保と
住宅地の建設。……また1から図面を
弾き直して、ライフライン敷設に
住宅の設計。……生活や文化の違いに
も配慮するべきか。あとは食料生産
のための農地開拓に……」
私は周囲の事も忘れ、頭の中で設計図を
1から組み上げていたが……。
「はいストップ」
そこをハジメに止められた。
「PW計画に参加してるのは司だけ
じゃないんだから。そう言うのは、
皆で考えないとね」
彼はそう言うと、周囲を見回す。
周囲にいるのは、ルフェアや香織達。
更に雫達や優花たち、愛子先生。
メルド団長たち。
「農地開拓だったら先生の出番ですね」
そう言って席を立つ愛子先生。
「じゃあ力仕事ならジョーカーを使える
私達の出番かな?」
「いっちょ働きますかぁ!」
更に優花や明人と言った護衛隊の面々も
立ち上がる。
「やれやれ。土地でしたら、私達の方
から追加で提供します。良いですよね?
お父様」
「うむ。平和のため、恩人の役に立てるの
ならばよかろう」
更にリリィ王女も立ち上がり、上座にいた
エリヒド王も笑みを浮かべながら頷く。
「では、人を集めるのは余の仕事だな。
街を作るとなれば人手も必要。
そして人を集めるのであれば王族と
シン殿の名前を使えば問題ないはず」
更にランデル王子も立ち上がった。
「王子や王女、陛下も動かれるのであれば、
騎士団である我々が動かない訳には
行きませんな」
そう言ってメルド団長。更には騎士アラン
たちも立ち上がる。
そして、誰もが私を見つめている。
「……簡単な道ではないでしょう。
これまで、戦争をしてきた者達が
手を取り合う。端から見れば、
荒唐無稽の極です」
「でも、そうしなければ、この世界の
戦争は終わらない。例え、僕達が
争いを助長しているエヒトを倒した
所で、憎悪が残ったままでは、意味が
ない。その憎悪を糧に、また争いが
起ってしまう」
私の言葉の後を継ぐハジメ。
「そんな繰り返しを止めるために、皆の
力が必要なんです」
彼は、1人1人の顔をちゃんと見ていく。
そんな中にあって、メルド団長達や、
陛下たち。兵士達。愛子先生と護衛隊
のメンバー達はみな、一様にやる気
と決心に満ちた表情を浮かべていた。
もちろん、雫や香織、ルフェア達もだ。
「終わらせよう。僕達で。この世界の
戦争を」
誰もが、ハジメの言葉に頷いた。
ここにあって、決意の表情を浮かべる
者達の願いは一つだ。
『平和な世界へ向かって歩みを進める』。
そんな中で私は、魔人族へのアプローチの
糸口となるかもしれない女。
大迷宮の中で出会ったあのライダースーツ
姿の女の事を思い浮かべていたのだった。
第78話 END
って事でカトレア復活フラグです。
昇華魔法を得て更に強くなった司に不可能は無いのです。
感想や評価、お待ちしてます。