ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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大変遅くなりました。これはとりあえず、オリジナル回ですね。


第79話 復活者

~~~前回のあらすじ~~~

無事、王都に帰還した司たちは愛子やメルド

達に出迎えられ、馬車で王城へと戻った。

そんな中で、司たちは、PW計画のために

彼等の協力を取り付ける事に成功。

そして、司は魔人族との接触を図るために、

かつて戦った敵の女魔人族を蘇生することを

決めるのだった。

 

 

話し合いの結果、私達はそれぞれで動く事に

なった。メルド団長やリリィ王女、愛子

先生達は魔人族用の土地の開拓などを

任せた。また、民間から徴用される人々には

『新しい町造りの為に人手がいる』とだけ

説明する事にした。まだ、魔人族のための

土地と言うのは危険だと判断したからだ。

 

ハジメや香織たちには王都でジョーカー装備

の兵士達の教練をお願いしている。

そして私は、あの女魔族を殺したオルクスに……。

 

行く前に、天之河たちの元を訪れていた。

「早速ですまないが、天之河、坂上、谷口の

 3人にこれを渡しておく」

「えぇっ!?こ、これって!」

谷口が驚いているのも無理はない。

 

それは、『ジョーカーの腕輪』だ。つまり

待機状態のジョーカーに他ならない。

「……どうして、これを俺達に?」

天之河が睨むような視線で私を見つめている。

 

まぁ、今までの私の、彼等に対する態度を

鑑みれば怪しまれて当然だろう。だが、

これからはそうも言ってられない。

「単刀直入に言えば、戦える存在は1人

 でも多い方が良い。それがこれまで

 以上に強ければ尚更です。今後、我々は

 魔人族との戦争、そしていずれは

 エヒトとの決戦に備えなければならない。

 そのためにも、戦える人材は1人でも

 多い方が良い」

「だから、俺達にこれを渡す、と?」

私は無言で頷いた。

 

「正直に言えば、私と貴方達の関係は良好

 とは言えない。それは重々承知

 しています。………ですが、全面戦争が

 始まり、苛烈な戦いが展開されようと 

 している今。後顧の憂いを断っておきたい

 のです」

「って、どう言う意味?」

「……もし万が一、貴方達が死ぬような事が

 あれば、香織や愛子先生、雫達が

 悲しみます。私は、彼女達が悲しむ顔を

 見たくは無い。だからこそ、現状考えられる

 最高峰の鎧として、これを、ジョーカーを

 3人に渡すのです」

今の私の言葉に嘘はない。

 

私自身は、彼等を認めては居ない。だが、

彼等の死が私の仲間への悲しみとなるのなら、

私が手を打つ理由になる。

 

まず、谷口がおずおずとした様子で腕輪を

受け取った。

彼女にはユエと同じタイプウィザード、

魔術師が使うことを前提とした物を与えた。

加えて、機動性の低下と引き換えに装甲も

従来モデルより強化して防御力を向上させて

いる。

 

そして、私が次に坂上に待機状態の腕輪を

差し出したとき。

 

「新生。……すまなかったっ!」

「……はい?」

突然頭を下げてきた坂上に私は戸惑い、首

をかしげてしまった。

「なぜ、いきなり謝るのですか?私は、

 あなたに何かをされた覚えはないの

 ですが?」

謝られても、私には見当が付かなかった。

 

「……俺、ずっと前から、地球に居た時から、

 お前の事、気味悪いって思ってたんだ」

「……と言うと?」

「何て言うか、感情らしいの全然見せないし、

 無感情で、まるで人形みたいで、でも

 頭が良くて。何て言うか、映画のロボット

 みたいで。……正直、お前がどう言う奴

 なのか、全然分からなくて、怖かった

 んだ」

「そうですか」

 

成程。いや、しかし彼の言い分も分かる。

当時の私は今以上に感情に乏しく、また周囲

への関心も皆無に近かった。それを思えば、

私を気味悪がっていたと言うのもうなずける。

「それに、こっちの世界に来てからも、

 明らかに普通じゃない力を使ってるし、

 何て言うか殺人にも躊躇いがなさ過ぎて、

 お前って言う存在が良く分からなくて、

 怖かったんだ。だから、これまで俺、お前

 に、その……」

口ごもる坂上。

 

「あ、あの樹海での大迷宮の時も、南雲達

 がお前を助けるって言ってたのに、怪物に

 なったお前が怖いばっかりに、俺は……」

 

「気にしないで下さい」

このままでは、ずっと謝り続けそうだった

坂上を私が止めた。

「知らない、分からないと言う感情から

 来る恐怖は、誰にでもあるものです。

 特に地球に居た頃の私は、周囲への

 無感情もありました。無関心だったと

 言っても良い。そして、それ故に

 周りに怯えられたりしていたのだと 

 したら、それはコミュニケーションを

 怠っていた私にも原因があります」

「新生」

 

「だからこそ、これはお相子という奴です。

 そして、お互いを知ると言う事に遅い

 と言うのはないと、私は考えます」

そう言って、私はブレスレットを、

待機状態のジョーカーを彼に差し出した。

 

「元の世界に戻るため。エヒトを倒す為。

 この世界で生きる人々の未来を勝ち取る

 ために。今は1人でも仲間が必要

 なのです。あなたの力を貸して欲しい。

 龍太郎」

「ッ!」

私が下の名前で呼ぶ事が、どう言う意味

なのかは彼も分かっていたようで、少し

驚いた様子だ。やがて……。

 

「分かった新生。……俺の力で何が出来る

 か分かんねぇけど、俺も協力するぜ!」

そう言って彼はブレスレットを受け取った。

 

「ありがとう、龍太郎」

「良いんだって。これまで俺、お前に色々

 酷い事考えた訳だし、償いって訳じゃ

 ねぇけど、力になるぜ!」

「ありがとう、心強いよ」

 

 

どうやら、龍太郎とのわだかまりは何とか

出来たようだ。さて、最後は……。

「天之河。これを、あなたに」

そう言って私はジョーカーを彼に差し出した。

 

天之河は、しばし私とジョーカーを交互に

見つめていた。

後ろで見守る龍太郎と谷口は、不安そうに

見守っている。

 

やがて……。

「新生。……すまなかった」

「え?」

彼は突然、そう言って頭を下げた。私も訳が

分からず首をかしげた。

 

「俺は、今まで新生に、何度も酷い事を……」

「光輝、お前……」

後ろにいた龍太郎が戸惑った様子で声を掛ける。

 

「分かってる。今更謝った所で許して貰える

 なんて思ってない。……でも、これから、

 この世界は決戦に向かうんだろ?」

「えぇ。エヒトとの決戦の時は、恐らくそう

 遠くはないでしょう。遅くとも、数ヶ月後

 には始まるだろうというのが、私の予想です」

「その時、これがあれば、俺は皆を守れる

 のか?」

「……このジョーカーには、装備として

 殺傷兵器と非殺傷兵器の両方を搭載して

 います。そして、更に防御用の装備など

 も充実しています。なので、その問いかけ

 には、YES、と答えておきましょう」

「……分かった。なら、俺はこれで、

 みんなを」

天之河は、そう言ってブレスレットを

受け取った。

 

その後、私は彼等に各々のジョーカーの

説明をしてから部屋を後にした。

 

3人に渡したのは、優花たち、つまり

愛ちゃん護衛隊の面々に渡したのと同じ

ように防御力を重点的に強化しつつ、

それぞれの特性に合わせてある。

 

谷口には、ユエと同じウィザードモデルの

『タイプTS』。

これは防御力向上、と言う以外はユエの

ウィザードモデルと大差は無い。

 

次に龍太郎の物は、彼用に設計を見直した

最新型だ。

Eジョーカーやミュウのセラフィムのデータ

をベースに、通常のジョーカーよりも

マッシブに仕上げた『ジョーカー・

ケンプファー』。

このケンプファーモデルは、空手を基本

とする彼に合わせて近接戦闘特化型だ。

 

『肉を切らせて骨を断つ』、を体現出来る

ように機動性と防御力の両立には苦労したが、

おかげで抜群の格闘能力と機動性、生存性を

確立させる事が出来た。

武装も、打撃を強化する物や近接戦で

使える物を揃えてある。

 

そして天之河に渡したのは、メルド団長達

に渡したタイプKの発展改良型で、タイプKC

とは別に、天之河用のチューンと防御力

向上。近接戦闘用に機動性を高めた機体と

なっている。

 

 

これで、彼等もジョーカーを持った訳だが……。

 

私が部屋を出て廊下を歩いていると、前方の

壁に蒼司が背中を預けた状態で立っていた。

そして、私は彼の前で、彼の方を向くことなく

立ち止まった。

 

「何だ?」

「……良いのかよ。坂上や谷口はともかく、

 あの勇者君にまでジョーカーを渡しち

 まって?」

「……気づいていたのか?」

「そりゃもちろん。俺はお前で。お前は俺だ。

 そしてお互い見えずとも繋がってるからな。

 ……で?理由はあるのか?」

「龍太郎達だけで渡してしまえば贔屓と

 言われる可能性もある。それに、奴が

 死んでしまっては香織や雫が悲しみます

 からね」

「……にしたってどうなんだ?オリジナル

 だって感じてただろ?奴の言葉の嘘と、

 瞳の奥に映る、お前への憎しみを」

「……」

 

私は蒼司の言葉に黙り込んだ。

 

彼の言うとおり、私はあの時の謝罪が、

嘘である事を見抜いていた。なぜなら

あの時、天之河の視線が周囲に僅かでも

泳いでいたからだ。後ろで見ていた龍太郎

たちは気づかなかっただろうが、私に

掛かれば嘘を言っている事など丸わかり

である。

 

そして、その瞳の奥にある私に対する

憎しみもまた、隠し切れてはいなかった。

だが……。

 

「例えそうであろうと、奴がジョーカーを

 持った程度で私やハジメに勝つ事など

 出来はしないだろう。練度の差は、

 もはや数ヶ月で埋まる物ではない。

 まして、奴の覚悟の脆弱性は、お前も

 知っているだろう?」

 

戦争をする、などと言っておきながら、

相手を殺せないなど、奴の覚悟の脆弱性は

私も蒼司もよく理解している。

 

ハジメも、未だに人を撃つ事に躊躇いが

無い訳ではない。彼の優しい心が、その

足かせとなって、同時にハジメを苦しめている。

だがそれでも、藻掻きながらも戦うハジメに

比べて、その時々で自分に都合の良い事しか

理解しようとしない、やろうとしない奴

では、覚悟の差もまた然り。

 

「ジョーカーを与えたのは奴が生き残る

 ためだ。端から戦力としては、龍太郎達

 以上に、期待していない」

「成程。鎧は誂えてやるから、自分の身は

 自分で守れ、ってか?」

「決戦がどうなるかも分からないからな。

 我々があいつの子守をしている余裕が

 あるとも思えん。……正直な所、エヒト

 の反応も気になる」

「あん?そりゃまた、なんで?」

 

「奴はこれまで、この世界を盤上として、

 戦争をゲームとして楽しんできた。

 奴が大迷宮をそのままにしてある以上、

 恐らく全てを知る『全知』ではないの

 であろうが、神と呼ばれる力を持つの

 だから、『全能』とは言えるだろう。

 ならば奴はなぜ、愛子先生の偽物に

 引っかかった?」

「そりゃ、アイツが俺の作ったロボットを

 偽物と疑わなかったんだろ?」

「その可能性も、無い訳では無いが、

 逆に、こちらが有利と思わせておいて、

 最後の最後で逆転、と言うのも

 想定しておくべきだろう。そのために

 敢えて愛子先生の偽物をそのままにし、

 ノイントを私に『倒させた』とも考えられる」

「つまり何か?エヒトが俺等の予想以上に

 強敵かもしれないってか?」

「分からない、と言うのが本音だな。

 まぁ警戒こそすれ、油断だけはしないのが

 賢明だろう」

 

「そうだな」

私の言葉に頷く蒼司。

「ところで、オリジナルはまだオルクスに

 行かないのかい?あの魔人族の女、

 蘇生するんだろ?」

「あぁ。これからハジメ達に一言言って

 から行く。それと蒼司、留守の間は

 お前が私の代理としてハジメ達の事を

 頼む。彼等にも、お前を頼るように

 言っておく」

「オーライ。任されたぜオリジナル」

そう言うと、壁を離れて歩き出す蒼司。

 

だが……。

「そうだオリジナル。最後に1つ聞いて良いか?」

「何だ?」

私と彼はお互いに背中を向け合ったまま

静かに話す。

 

「もし仮に、天之河がお前に刃向かってきたら、

 どうする?」

「……倒すまでです。ただし、殺さずに」

「あいつがどんな事をしてきてもか?」

「……と言うと?」

蒼司の言う、どんな事の意味が分からず

聞き返した。

 

「アイツは、正に導火線に火の付いた

 爆弾だ。何時爆発して、アイツ自身の

 理性が吹っ飛ぶか分かったもんじゃない。

 そして、執念や怨念に捕らわれたのなら、

 どんな事をしでかすか分からないって

 事だよ。……例えば、雫達に手を出す

 とかさ」

「……正直、あの男も曲がりなりに勇者に

 選ばれたのです。仮にも自分自身で

 大切にしたいと考える彼女たちに、

 手を出しますか?」

「可能性としては、考えておいた方が

 良いと思うぜ?」

 

そんな蒼司の言葉に、私はしばし黙った後。

 

「……ならば、そのもしもが発生した時は、

 完膚なきまでに叩き潰します。

 完全に殺しはしませんが、四肢を砕き、

 何回か殺して生き返らせてを

 繰り返し、奴の心を粉々にして、

 現実をたたき込むだけです」

 

その言葉を最後に私は蒼司と別れた。

 

 

その後、ハジメ達へ、オルクスへ行く事を

伝えた後、私は真っ直ぐオルクス大迷宮で

あの女魔人族と戦った場所へと向かった。

 

空間跳躍で向かった場所に、あの女の遺体は

無かった。あったのは床をべったりと汚して

いる固まった血液。しかし服や骨の欠片など

は散乱していない。もしかすると、魔人族側

によって回収された可能性があるな。

 

だが、媒介となる血があれば十分だ。

 

その乾いた血に指先を接触させ、そこから

いつも通り、蘇生させる女のデータを

読み取りつつ、過去を観測していく。

 

すると、その過程で中村が魔人族と接触した

方法を知った。

 

どうやら魔人族があの女の遺体を回収に来ると

踏んでいたのか、遺体にメモを忍ばせていた。

そして回収に来た魔人族がメモに気づいて

中村と接触した、と言う訳か。

 

だが、今となってはどうでも良い事だ。

 

魂は、私に頭を吹き飛ばされる直前から

ダウンロード。同時に、観測して入手した

DNAデータを元に肉体を生成。

 

私が右手を前に翳すと、あの女の体が

再生され、同時にあの時と同じ服も

着せておく。

 

そして、最後に一旦私の中に保存した魂を

インストール。

 

これでいつも通り蘇生は完了だ。

 

そして、魔人族の女、カトレアが復活し

静かにその目を開いた。

 

「あ、れ?」

目を開いた彼女は、ふと周囲を見回し

次いで自分の体を見つめている。

 

彼女にしてみれば、大勢の敵に囲まれ

射殺寸前だったのに、気づけば自分は

生きていて、しかも周りに居たハジメ達が

居らず私1人だけが居る、と言う状況だ。

 

混乱するのも無理はないだろう。

「まずは、久しぶりだと言っておこう」

「は?久しぶりだって?」

目の前のカトレアは、相変わらず混乱した

様子だ。

 

「あぁ。お前の足下の血痕を見てみろ」

私の言葉に、カトレアは足下の血痕を

見つめながら、ジャリッと足を動かして

血痕が乾いている事を確かめている。

 

やがて……。

「あたしの血、かい?」

「あぁ」

どうやら彼女も理解したようだ。

 

「お前はあの時、確かに私が頭を吹き飛ばして

 殺した。だが、こちらも用があってな。

 この場に残っていた血痕を媒介として

 お前の体を再生し、同時に射殺直前の

 お前の魂を完全にコピーして、再生した

 体に入れ直した、と言う訳だ。そして、

 その再生した存在が、今のお前という訳だ」

「成程。ヤバい存在だとは思って居たが、

 まさか死人を生き返らせるとはね。

 だが何の目的があってそんな事を?

 あたしから同胞の情報でも抜き出そう

 って言うのかい?だったら無駄な事

 だね。そうなる前にもう一度、今度は 

 自分で舌をかみ切って死んでやるだけ

 の事さ」

 

その言葉に私は……。

「別に魔人族の情報を聞き出す為ではない。

 ただ、そうだな。ならば、これから

 お前に世界の真実を教えよう」

「は?真実、だって?」

「そうだ。お前達の今後に関わる真実だ。

 死にたい、と言うのなら、せめてその

 真実を聞いてからにしろ」

「ちょっと待て。私達の今後だと?

 一体どういうことだっ!?」

そう言って声を荒らげるカトレア。

 

「では先にこれだけ言っておこう。

 太古の昔から続く、人族、亜人族、

 魔人族の対立はある存在によって

 仕向けられてきた」

「何?なら私達の戦争は……!?」

「あぁ。お前達がやっている戦争を、

 影で操っている奴がいる。全ては、

 そいつが仕向けた事だ。多くの戦死者も、

 そいつが望んだ事だ」

「ッ!う、嘘だ。なら、あたしの戦友達は

 どうなるっ!?彼等は祖国を守るために

 死んでいったんだぞっ!」

そう言って私の襟を掴むカトレア。

 

「そうだ。大勢の者達が戦争で命を

 落とした。そして、それが全て

 黒幕の仕業だと言う証拠を、お前に

 見せてやると言うのだ」

そう言うと、私は彼女の手を払って、

空間跳躍のゲートを開いた。

 

「こっちだ。付いてこい」

そう言って私が促すと、彼女はしばし

悩んだあと、付いて来た。

 

私達が向かったのは、このオルクス大迷宮の

最下層にある、オスカー・オルクスの住処だ。

 

「ここ、は」

カトレアは、ゲートを超えた先の風景に驚いて

周囲を見回している。

「ここはお前が目指していた場所だ。

 オルクス大迷宮の最深部にして、

 解放者の1人、オスカー・オルクスの

 住処だった場所。そして、神代魔法を

 授かる場所だ」

「解放者、だと?反逆者の間違いじゃないのか?」

ほぅ、どうやら彼女は少なくとも反逆者の

話を知っているのか。

 

「残念ながら違う。まぁ、百聞は一見に

 しかず、と言う事だ。その目と耳で、

 直接確かめるが良い」

 

そう言うと、私はあの部屋にカトレアを案内

した。するとオスカーの指輪を私が持って

いたからか、脳内を覗かれる事なく、

オスカーの映像が投影され、あの日と

同じように世界の真実を告げた。

 

この世界の神々にとって、人族は皆等しく、

奴らを楽しませるための駒に過ぎない事を。

 

そして、オスカーの話が終わって映像が消える

のと同時に、カトレアはその場に崩れるように

膝を突いた。

 

「そん、な。なら、あたし達の戦いは、何だって

 言うんだ。大勢、戦争で、死んだんだぞ。

 残された者たちの悲しみは、どうなるんだっ!

 ふざけるなぁっ!!!」

 

悲しみの慟哭とも、怒りの咆哮とも取れる叫びを

上げるカトレア。

 

「私達は駒なんかじゃないっ!今を生きてる 

 命だっ!それを、それぉっ!」

歯を食いしばり、涙を流すカトレア。

私はそんな彼女の隣に立ち、懐からオスカーの

書記を取り出し、彼女へと差し出した。

 

「解放者には、人族、亜人族、魔人族と言った

 3種族の垣根を越えて多くの者達が集まった。

 リーダー格の7人も同じ。……皮肉な物だな。

 今では殺し合っている3種族が、当時は

 手を取り合い、神に挑んだ。

 そしてまた、神の敵として反逆者の

 レッテルを貼られた解放者達を倒したのも、

 3種族の人々だった。……本当に、

 皮肉な物だ」

すると……。

 

『ガッ!』

 

突如立ち上がったカトレアが私の襟首を

掴んだ。

「なぜ、なぜこんな物をあたしに見せたっ!?

 何の為にっ!!答えろっ!!」

 

「……今見て貰った通りだ。この世界に

 生きる命は、人族、亜人族、魔人族を

 問わず全て邪神、エヒトの手の内、

 と言う訳だ。そして恐らく、お前達

 魔人族が信奉する神、『アルヴ』も

 エヒトによって作られた眷属か

 何かの可能性が高い」

 

そう言うと、私は彼女の手を静かに払った。

 

「そして、この世界の現実を知ってもらった

所で、ここからが本題だ。今現在私

 には魔人族に対するツテがない。敵視

 されているのだから当然と言えば当然

 だろう。そこで、数少ない私が

 出会った魔人族を頼る事にした」

「それが、あたしかい。けど、さっきも

 言った通り同胞を売る気なんて無い

 からね」

「十分理解している。そして、そう言った

 類いの情報を求めている訳ではない。

 ……エヒトの根本的な目的は、戦争の継続。

 そのために奴は何でもやる。例えば

 私達を異世界から召喚したのも、

 恐らくお前達の上官、フリードが

 魔物を強化する術を手に入れ、魔人族

 の力が増したことに対する、対抗策

 として呼び寄せたのだろう。

 奴にしてみれば、片方が強くなって

 戦争が終わってしまう事は、避ける 

 べき自体のはずだ」

 

「まどろっこしいねっ!本題をいいなっ!」

「分かった。ならば言おう。エヒトに

 とって、この世界の平和、可能であれば

 3種族全ての恒久的な平和は、何よりも

 許しがたい行為だ。だからこそ、完全

 なる平和を目指す」

「はぁ?平和だって?」

どうやら私の言葉が予想外だったのか、

彼女は素っ頓狂な声を上げる。

 

「そうだ。例えエヒトの支配が終わっても、

 そのままでは戦争の火種は残ったままだ。

 だからこそ、エヒトの支配が終わった後、

 平和な世界を創るために、私と仲間たちは

 動き出した」

 

「……何をしようって言うんだい?」

 

「町を作る。そこは人族や亜人族と言った

 種族の違いによる差別を法によって規制し、

 誰もが等しく学び、生きるチャンスを

 与えられる町だ。当初は人族と亜人族のみ

 だったが、世界平和に向けて、3種族が

 共に生きる街を作り、平和への第一歩と

 する。それが、我々が始めた計画だ」

「平和、だって?本気で言ってるのかい?

 散々殺し合いをしてきたあたし達が、

 お互い手を取り合うだなんて。

 ははっ、アンタもあの勇者君みたいな

 事言い出すとはね」

嘲笑とも、苦笑とも取れる笑みを浮かべる

カトレア。

 

「あぁ、理想のような事を言っているのは

 理解している。だが、中途半端な

 終わりでは、いずれまた戦争が勃発する

 だけだろう。それでは永遠に、この世界

 における戦争の悲しみは、消える事は無い。

 ……お前の次の世代も、殺し殺され、 

 恨み恨まれを繰り返すだけになる。

 そして、それこそエヒトの思惑通り。

 例え奴が死んでも、奴の残した負の遺産

 に振り回されるだけだ」

「ッ!」

 

私の言葉に、彼女はギュッと唇をかみしめる。

 

「奴の支配を終わらせる上でも、奴の

 クソッタレな享楽をひっくり返す意味でも、

 そして何より、戦争で家族を失う悲しみを

 これ以上増やさない意味でも、平和への

 試みは、十分有意義ではないのか?」

「……それは……」

 

カトレアはしばし悩んだ様子だった。

やがて……。

 

「それで、あたしは、具体的に何を

 やらされるんだよ?」

静かに口を開いた。

 

「先ほども言ったように、平和へ向けての

 第一歩として、三種族が共存する、

 『多種族共存都市』の建設。しかし

 これに先だって、魔人族の町を作るにして

 も私は魔人族の文化的な風習などを一切

 知らない。そして知らずに建設し、

 魔人族を怒らせるような街を作ってしまって

 は本末転倒だ。だからこそ……」

「魔人族であるあたしにアドバイスを貰いたい、

 って訳か」

 

「そうだ。それに合わせて、臨時ではあるが

 魔人族の町の、魔人族代表としても仕事を

 して貰う予定だ」

「成程ね。しかし、魔人族はどうやって

 招くつもりだい?まさか、攫ってくるのか?」

 

「いや。……正直に言うと、我々は今相手を

 殺さずに捕える兵器を開発している。

 これにより兵士は生け捕り、民間人には

 投降を呼びかける。無論反発した者は

 捕えるか別の魔人族の町や村などに 

 送る」

 

「なっ!?それじゃあ攫ってくるよりも

 質が悪いんじゃないのかいっ!?」

「理解している。故郷を強引に捨てさせる事

 で、少なくない反発を招くだろう。

 だが現在のままでは、3種族が交流する

 機会すらない。多少強引ではあるが、

 その分、彼等には何不自由のない住居や

 生活を我々が提供する予定だ。

 寒さや飢えなどに困ることがないよう、

 全力で街を作る。それが我々のやるべき

 事だ」

 

「……」

 

私の言葉に、彼女はしばし黙っていた。

 

やがて……。

 

「教えてくれないか?平和って、何なんだ」

絞り出すような声で問いかけられた質問に、

私はしばし悩んだ後。

 

「あくまでも、私個人の意見だが……。

 平和である、と言うのなら、そうだな。

 自分の大切な人と、決して豪華な暮らしは

 出来ずとも、幸せに笑い、時に喧嘩し

 ながらも、他愛もない事で談笑したり

 出来る日々を、平和な日々と呼べるのでは

 無いだろうか。……戦争で誰彼が死ぬ、

 等という不安のない日々。子供達の、

 その成長を見守りながら、愛する人と

 共に歳を取っていける日々。

 他愛もない事で一喜一憂できる日々。

 ……毎日のように、誰かが死んで

 大勢の人が涙を流す事が無い日々。

 ……そう言う日々の事を、私は

 平和な日々だと思う」

 

「……お前なら、そんな日々を、あたし

 たち魔人族に用意出来るのか?」

 

「あぁ」

 

私は頷きながら、改めて彼女と向き合う。

 

「寒さに震える事も、飢えに苦しむ事も、

 病で命を落とす事も無い。平和で、

 安全に暮らせる町を作ると約束しよう。

 彼等自身の安全のために、町から外に

 出るな、等と言った命令はするだろう。

 だがそれ以外において、暮らしにおいて

 は何不自由無い生活をさせる事を

 誓おう」

 

私の言葉に、彼女はしばし迷った挙げ句。

 

「分かった。ならあたしは同胞のために

アンタに協力する。けど、勘違い

するんじゃないよ?あたしはアンタの

部下になった訳じゃないからね?」

「十分承知している。我々はお互い、

 対等な立場だ。だからこそ、これから

 よろしく頼む」

 

そう言って、私は右手を差し出すと、彼女は

しばし戸惑った様子だ。

 

「……どうした?」

「いや、何。あたしを殺そうとしていた

 アンタの記憶がまだ残ってるせいか、

 突然人が変わったみたいで、まだ

 驚いてるのさ。……けど、悪くは無い」

 

そう言って、彼女は私の手を取り、私達は

握手を交わした。

 

「改めて、あたしはカトレアだ。今だけは、

 アンタに協力するよ。あたし等の命を

 駒扱いした、クソ野郎に一泡吹かせる

 ためにね」

「あぁ。改めてよろしくたのむ。私は、

 新生司だ。好きなように呼んでくれ」

「OK、司」

 

こうして、私は魔人族の協力者を得る事に

成功するのだった。

 

 

その後、私は彼女に、人間になりすます事の

出来るカモフラージュを発生させるネックレス

を与えた。これを身につけると、周りには

彼女が人間に見えるようになる。

 

そしてカトレアを伴って王都に戻った私は、

とりあえずハジメ達とメルド団長達にだけ彼女

を軽く会わせた。

 

正直、天之河たちやこの国の兵士達ではまだ

反発される恐れがあるので、今は伏せておく。

 

カトレアには、魔人族用の町の建設に当って

色々とアドバイスを貰った。

 

下見への同行や、設計段階でのアドバイス。

注意すべき点や、一般人の最低限の生活の

様子などを聞き、町の設計を考えるのに大いに

役だった。

 

 

そして、そんな数日が過ぎたある日。

 

オルクスに潜っていた幸利が、王都へと

戻ってきた。

 

オルクスより帰還した幸利は、何というか、

逞しくなっていた。

 

以前は、どこか不健康そうな顔色をしていたが、

心なしか今では肌つやも良くなり、体も

以前より、ヒョロガリ、と言うイメージから

細マッチョに進化していた。

 

そして特筆して目立つのが、左頬に走る

一筋の傷だった。

 

「し、清水君っ!?そのほっぺ、どうした

 んですかっ!?」

その傷に気づいて愛子先生が心配して駆け寄る。

「だ、大丈夫だって先生。ただの切り傷だよ。

 傷跡は残っちゃったけど、ほら、何の

 問題も無いからさ」

駆け寄ってきた先生に対して、顔が近いせいか

その頬を赤くしながらワタワタしている幸利。

 

「幸利」

その時、私が声を掛けると彼は静かに笑みを浮かべた。

それに吊られて私も笑みを浮かべる。

 

「たくましくなったな、幸利」

「あぁ、おかげさまでな」

 

そう言って、彼は右手拳を掲げる。

それに気づいて私も……。

 

『ガッ』

軽く拳をぶつけ合うように私の右手拳を

彼の右手拳と交差させた。

 

「ただいま」

「あぁ、おかえり」

 

そうやって、友人、親友のようなやり取りを

した私達だった。

 

 

その後、清水を休ませた後、彼にアルファ

シティの事を話した。

 

共に旅をした事は無いが、私に言わせれば

彼もまた、立派なG・フリートのメンバー

だと思って居る。だからこそ信頼して、

カトレアの事も含めて全てを話した。

 

今は、私の部屋に幸利と、ハジメ達が

集まっている。

「成程ね。で、司たちはこれからどうする

 んだ?町の建設に力を入れるのか?」

 

「いえ。そちらはしばらく、カム達や

 メルド団長達に任せるつもりです。

 私達はその間、シュネー雪原の

 大迷宮に向かう予定です」

 

「っ、そうか。最後の大迷宮だな」

 

「えぇ。ここを攻略すれば、先ほど説明した

 概念魔法が手に入り、地球帰還と言う

 目的にもゴールが見えてきます。

 それに、エヒトとの戦いが迫っている

 以上、早めにこれを入手しておきたい

 のです」

 

「分かった。なら、司たちが留守の間、

 王都や愛子先生達は任せてくれ」

 

「お願い、出来ますか?」

 

「あぁ。伊達に単独でオルクスを踏破

 した訳じゃないからな。ジョーカーの

 性能だって十分引き出せてる自信が

 あるし、俺のタイプコマンドは

 ガーディアンやハードガーディアンへの

 指揮機能もある。大軍相手だろうが、

 そうそう負ける気はねぇって」

 

そう自信たっぷりに語る幸利。

 

本当に、彼も変わったものだ。と私は

内心関心していた。

 

さて、ではこれで後顧の憂いはなくなった。

 

ならば……。

 

「ハジメ、それに香織達も。私達は近日中に、

 シュネー雪原の大迷宮へと立ちます。

 いよいよ、最後の大迷宮です」

 

私の言葉に、皆がやる気に満ちた表情を

浮かべる。

 

「いよいよだね、司」

「えぇ」

 

ハジメの言葉に頷きながら、私は窓の外、

南の空へと視線を向けるのだった。

 

     第79話 END

 




って事で、次回からシュネー雪原に入ります。

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