ありふれた職業で世界最強~シンゴジ第9形態とか無理ゲー~   作:ユウキ003

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今回から、ハジメ達のオリジナル装備が出てきます。


第3話 切札

~~前回のあらすじ~~

人間として生活していたシンゴジ第9形態の

新生司は、ある日クラスメイトたちと共に

異世界へと転移してしまう。勇者として

呼び出される彼らだったが、司はクラスメイト

達に戦争についてを解く。2日目。彼らは

自らの力を数値化するステータスプレートを

貰う。司は、友人であるハジメを笑われた事

をきっかけに、その力の片鱗を彼らや

教官役のメルドに見せつけるのだった。

 

そして、転移2日目、初日の訓練が終了した。

 

しかし……。

周囲の私を見る目が、まるで危険物を見るような

目をしている。

が、当然と言えば当然の反応だ。

私の次に強いステータスの天之河光輝でさえ、

私の足下には及ばない。

雲泥の差と言っても良いだろう。

 

が、今の私はそんな事どうでも良い。

目下の問題は……。

「ハジメ」

皆がそれぞれの割り当てられた部屋に

戻ろうとしていたとき、私はハジメに

声を掛けた。

「ちょっと話があるのですが、

 良いですか?」

「えっ!?ま、まぁ、良い、けど……」

戸惑いながらも頷くハジメ。

 

やはり、彼も私の力に怯えているの

だろう。……不思議な物だ。

かつては全人類から敵意を向けられていた私が、

第9形態となってなお、ハジメからの怯えの

感情に、後悔のような感情を覚えるなど。

……しかし、今はそんなこと、どうでも良い。

 

その後、私はハジメの割り当てられている部屋に

お邪魔した。

 

「それで、話しって?」

「はい。単刀直入に言います。ハジメは

 我々の中で最弱です」

「……。うん、泣いて良い?ねぇ、僕

 泣いて良い?」

何やら泣き出しそうなハジメ。

しかし私はそれを無視して言葉を

続けた。

 

「なので、私がハジメを強くします」

「うん僕泣くよ、って、え?」

「ハジメはステータス的には最弱ですが、

 ならば、外的要因を極めれば良い

 のです。なので、私が世界最強の

 武器と防具を作ります」

「……。良いよ。そんなの。僕は

 錬成師として、頑張るから」

私の提案を拒むハジメ。

「何故ですか?」

「僕は、戦うのそこまで得意じゃ

 無いし。錬成師として、出来る事で

 皆をサポートしたいから。

 だから……」

「悔しくはないのですか、ハジメ」

 

私は、彼の言葉を遮った。ハジメは、

どこか悔しそうに唇をかみしめる。

「先ほど、檜山や他の男子生徒達に

 笑われて、悔しくはないのですか?」

「……。あぁ、あぁ悔しいよ!

 僕も、もしかしたらって天之河君

 みたいな強い戦闘職になりたかった!

 けど、けど……」

 

やはり、彼なりにそうありたいと願っていた

ようだった。

「……ハジメ、ならば私を利用すれば良いの

 です」

「え?」

今にも泣き出しそうなハジメは、疑問符を

浮かべながら私の顔を見つめる。

 

「ハジメ、私が高校で出来た友人は、あなたと

 香織だけです。……中学の頃から、神に

 愛されている男などと呼ばれ、高校に

 入れば、皆私と距離を取る。そんな中でも、

 ハジメだけは私を一人の人間として

 接してくれました。あなたには感謝

 しています、ハジメ」

と、私がそう言うと、ハジメは困ったような

表情で顔を赤くしていた。

 

「そ、そう。それで、その。どうして

 僕が司を利用するのかな?」

「先ほど言ったように、ハジメは私に

 とっての友人。それを笑われるのは、

 我慢なりません。だからハジメには

 強くなって欲しい。これは私の

 我が儘です。あなたは、その我が儘を

 利用すれば良いのです」

 

私がそう言うと、ハジメはしばし

黙り込んでしまった。

やがて……。

 

「……僕、強くなれるかな?」

「はい。間違い無く最強候補の一角に

 私がします」

「痛いの嫌いだし、力あんまり

 強くないけど……」

「鉄壁の鎧と一撃必殺の武器を

 作ります」

「戦う技術なんて無いけど……」

「私が教えます」

「覚悟とか、まだよく分かんないんだけど……」

「そこばっかりは自分で見つけて下さい」

 

「「………」」

何故か、ハジメが黙ったので私も

黙ってしまう。

すると……。

 

「ぷっ、アハハッ。やっぱり司だな~」

彼は笑った。

「?私、何か変な事を言いましたか?」

「ううん。違う違う。司ってやっぱり

 変な所で変わってるな~って思って。

 でも、ありがとう、司」

「いえ。お気になさらずに。これは

 私の私情による行動ですから。

 では、早速いくつか質問させて

 貰います」

「うん。分かった、強いのをお願いね」

 

そして、私はハジメの為に最強の鎧と

武器を作るための話し合いをするのだった。

 

 

~~~

そして、翌朝。朝食を終えた天之河光輝や

香織たち4人。更にクラスメイト達が

訓練場に向かっていた。そんなとき。

「なぁ大介、あの無能来るかなぁ?」

「あ~?来ねぇだろ。つか来ても何

 出来るんだっつ~の!」

「確かになぁ!」

檜山たちが、ここに居ないハジメの事を

嗤っていた。

その言葉を聞いていた香織はギュッと

拳を握りしめていた。

 

そして、訓練施設にたどり着いたのだが……。

「ん?あれはメルドさん?」

先頭を歩いていた光輝がメルドに気づいた。

しかし、肝心のメルドは中の方を呆然と

見つめていた。

 

「メルドさん?おはようございます」

「んっ?お、おぉ。お前等か」

「どうかしたんですか?何かに

 驚いていた様子ですが?」

「……あれだよ、あれ」

「あれ?」

メルドが何かを指さした。彼らもそちらに

視線を向けると……。

 

「なっ!?何だあれは!?」

 

見ると、訓練施設の中に紫色のエネルギーの

ドームが形作られていた。ドームの外から

中を見ることは出来ない。

驚きながらもドームに近づく光輝やメルド達。

すると……。

 

『ピシピシッ、パリーン』

まるで鏡が割れるような音と共に、結界が

砕け散った。

驚く光輝たち。そこへ。

 

「皆さん、おはようございます」

崩れ去ったドームの中から司が現れた。

「し、新生くん!?って、それに……」

 

しかし、現れたのは彼だけでは無かった。

彼の隣に立つ、白と赤の『パワードスーツ』。

それが全員の視線を集めた。

 

「え?え?し、新生くん?それ、何?」

恐る恐る、といった感じで彼に問う香織。

「これは、私が開発した強化外骨格の

 試作品です」

「きょ、強化、何?」

「強化外骨格。まぁ、SF映画で出てくる

 パワードスーツのような物です」

「そ、そんな物作ったの!?それも一晩で!?」

「はい。元々、地球にいたときから似たような

 物を設計していたので、それのデータを

 応用し、技能の一つ、創造の力で作り出しました」

驚く雫に淡々と答える司。

 

その時。

「ち、ちょっと待ってくれ。パワードスーツ、

 と言う事ならそれを着ているんだろう?

 誰が着てるんだ?」

と、問いかける光輝。

「それについては……。ハジメ、ヘルメットを

 取って下さい」

司がパワードスーツに向かってそう言うと、

男子生徒達がざわめく。

 

そして、白と赤の強化外骨格を纏ったハジメは、

後頭部に両手を当てた。

すると、プシュッと言う音がしてヘルメットと

首元の接続が解除され、ハジメが

ヘルメットを脱いで脇に抱えた。

そして彼は、恥ずかしそうに頬を指で

掻く。

 

「な、南雲くん?その姿って……」

「あ~、え~っと、これは……」

香織の言葉に、どう答えて良いか分からず

戸惑うハジメ。そこに司が

フォローに入った。

 

「生憎、私の親しい人物で男性と言えば、

 ハジメしか居ませんでした。なので、

 彼に開発に協力頂いたのです」

「協力?」

と、首をかしげる香織。

「はい。……我々は戦争をするのです。

 であれば、可能な限りの防御力と攻撃力を

 持った兵器が必要です。そこで、この

 パワードスーツの開発を始めました。

 そして、その試作1号機が今ハジメの

 纏っている物です」

 

彼らが見つめるパワードスーツは、

人型に限りなく近かった。流線型のフォルムに

白いボディとそこに走る赤いライン。

まるで、SFアニメのヒーローのような

出で立ちである。

 

「あ、あの~。すまんがその

 パワードスーツって何だ?」

と、その時、そもそもパワードスーツという

言葉の意味を分かっていなかったメルドが

司に問いかけた。

 

「そうですね。メルド団長にはそこから

 説明した方が良いですね。

 パワードスーツというのは、装着者。

 つまり纏っている者の力を引き上げる

 鎧です」

「力を引き上げる?どんな風に?」

「それについては、見て貰った方が

 早いでしょう。ハジメ、用意を」

「うん」

そう言うと、ハジメは脇に抱えていた

ヘルメットを被る。

すると、パワードスーツのツインアイが

青く光を放つ。

 

それを見た司は、パチンと指を鳴らした。

するとハジメの前に分厚い鋼鉄の板が

現れた。

「ハジメ、やって下さい」

「うん!」

司の声に頷くハジメの声は、どこか生き生きと

していた。

そして……。

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

構え、右拳を突き出すハジメ。そして……。

『ドゴォォォォンッ!』

爆音と共に、その右腕が鉄板を貫いた。

「なっ!?」

これには、昨日のハジメのステータスを

思い出しながら驚くメルド。光輝や他の

生徒達も、驚きザワザワとざわめく。

「このように、拳一つでもあの程度の

 物なら貫けます。ハジメ、次はキックで。

 鉄板を横に切断して下さい」

 

「はいっ!ふぬぬっ!」

ハジメは腕を引き抜くと、再び構えて

回し蹴りを放った。すると……。

『ズルっ!バァァァンッ』

鉄板が横一文字、真っ二つに切れて

上部分が後ろに倒れた。

 

これには、あんぐりと空いた口が

塞がらないメルド。

 

「このように、装着するだけでも相応の

 攻撃力を持ちます。また、装甲には我々の

 世界の特殊な鉄を使って居ます。

 普通の矢、剣などの攻撃なら問題無く

 弾く強度を確保しました。武装はまだ

 開発前の試作機ですが、今後とも

 開発を続けていけば今以上の性能を

 獲得出来るでしょう」

「ち、ちょっと待て!?この上が

 あるのか!?」

「はい。これはあくまでも試作品。

 武装もまだ開発出来ていませんし。

 今後私はハジメと協力して、

 このパワードスーツ、

 『ジョーカーシリーズ』の開発を

 進めていきます」

「その、ジョーカーシリーズというのは?」

「これから開発するパワードスーツの

 事です。今ハジメが纏っているのは、

 試作品ですから、『ジョーカー0』、

 『プロトタイプ・ジョーカー』、

 と言った所でしょうか」

「そ、そうか。……それで、お前達は、

 その、どうするんだ?これから」

 

「そうですね。はっきり言って、私は

 既に覚悟やスキルを身につけている

 つもりです。なのでフィジカル的な訓練に

参加する必要性を感じません。また、

ハジメもジョーカーシリーズの開発に

協力してもらうつもりです。これの 

性能は、今お見せしたとおり。

ハジメを錬成師として鍛えるのは

諦め、ジョーカーシリーズの装着者、

 パイロットとして技能を積んで貰うべき

 だと私は考えます。ハジメもそれで構いませんか?」

「あ、あぁ。うん。僕は司を手伝うよ」

と、彼が頷く側に腕を組んで悩んでいるメルド。

「む、むぅ。確かに、あの力を使いこなせる

 奴がいるのなら大いに助かるが……。

 よし、分かった!じゃあ坊主!お前は

 司と一緒にその何とかシリーズを

 作れ!上には俺から言っとく!」

と、ハジメは司と協力してジョーカー

シリーズの開発をすることになった。

 

そして、それを男子達が嫉妬にも似た

視線を向けているが、ハジメと司は

それを無視するのだった。

 

 

~~~

私はそれから、ハジメと司はジョーカーシリーズ

の改良と生産に乗り出した。

私達は、座学以外はこの世界の知識の

収集とジョーカーシリーズの改良、

武器の開発などを行っていた。

ハジメは、自他共に認めるオタクであった。

しかし故に、こう言った武装への知識は

広く、更に漫画家をしているご家族の仕事を

手伝っていると言うだけあって、スケッチの

絵も確かな物だった。

なので、ハジメからアイデアや武装のラフスケッチ

を受け取り、私が創造。更にダメだしを

行いながら、次々とジョーカー用の武装を

作り上げていった。

 

そして、異世界召喚から1週間ほど過ぎた

ある日。

「二人とも、ちょっと良いか?」

訓練施設の隅で新兵器の開発をしていた

私達の元に香織や雫、坂上龍太郎を連れた

天之河光輝がやってきた。

「何でしょう?」

「……単刀直入に言う。南雲。今すぐ君は

 それを脱ぐべきだ」

「……はい?」

突然の言葉に、ハジメは疑問符を浮かべる。

 

「えっと、それってどう言う意味?」

「どうもこうもない!皆が自分の力を

 伸ばそうと努力しているのに、自分だけ

 新生から与えられた力を使って!

 恥ずかしくないのか!自分だけ!」

 

……やはりこいつはバカだ。

確かに、傍目に見ればハジメは楽して

力を手に入れているように見えるだろう。

しかし、戦争ではそんな甘い考えは

通じない。生き残る為には、どんな形であれ

強くならなければならない。

 

「ハジメ、彼の言葉を聞く必要は

 ありませんよ」

「……どう言う意味だい?それは?」

「お忘れですか?ハジメは錬成師、

 非戦闘職ですよ?それで鍛錬して、

 戦闘に行けと?それは、彼に

 死にに行け、と言って居るのと

 同義ではありませんか?」

「そ、そんな事は無い!努力によって

 手に入れた力なら、きっと!」

「きっと?何です?役に立つとでも?

 敢えて言わせて貰いますが、現状、

 ハジメは錬成師よりジョーカーパイロット

 としての方が戦闘力は高いのです。戦闘効率を

 考えれば、このままパイロットとしての

 腕を磨いた方が最善でしょう」

「だからといって、一人だけ借り物の

 力を使って!それは卑怯だ!」

 

卑怯、か。

「一つ、あなたに言っておきます。

 戦争はそもそも厳格なルールが

 ある訳でもない。どんな形であれ、

 敵を倒し生き残った方が勝者。その

 事を考えれば、生き残る為にどんな形で

 あれ強くなる事が必要です。

 しかし、ハジメの場合は非戦闘職。

 そんな彼が生き残る為には、それ

 以外の外的作用によって力を増す

 しか無い。……ジョーカーシリーズは、

 そういった戦闘力が低い者達を

 守る盾となり剣となるために開発

 しました。その理由に何か不服でも?」

「じ、じゃあ、そのジョーカーシリーズを

 量産して、みんなに配るべきじゃないのか!

 そうすれば、皆同じくらいに強くなれる!」

「その意見はごもっとも。しかしお断りします」

「な、なぜっ!?」

チラッと周囲を見回せば、メルドや他の生徒達が

彼らのやり取りに耳を傾けていた。

 

「一言で言えば、私はハジメ、香織。後は……。

 雫くらいですね。信頼出来る相手というのは。

 言わば、それ以外が信用出来ないのですよ」

「ッ!?それがクラスメイトへの言葉かっ!?」

 

「クラスメイトになったから信用しているとでも?

特に男子。彼らは香織とハジメのやり取り

 の際に、ハジメに嫉妬の様な視線をいつもの

 ように向けていました。ハジメが錬成師と

 分かった際にも、彼を嗤った。……そんな

 奴らを信用しろ。信用してジョーカーシリーズ

 を託すなど、願い下げです。下らない嫉妬心

 から他人を嗤う輩など、誰が信用しろと?」

「そ、それは!香織が何度も世話をしている

 のに態度を改めない南雲が悪い!」

「だったらハジメを無能と罵って良いとでも?

 それと、私はあなたが信頼出来ない」

「な、何!?」

 

「例えば、あなたは戦争をよく知りもせず

 にイシュタルの言葉に従って戦うなどと

 言い出した。覚悟もない者達を先導し、

 戦わせようとした。はっきり言って、

 あなたは思慮に欠ける事がある。

 坂上龍太郎も、何の覚悟もなく戦争を

 手伝うと言い出した事で同じ」

「お、俺もかよ!?」

咄嗟に反論する坂上。

「えぇ。……何の覚悟も無く、心配だから

 天之河光輝を手伝う?他人を手伝う、などの 

 理由で戦争が、人殺しが出来るとでも?

 はっきり言いましょう。

 戦争を甘く見すぎだ、バカ共」

 

「「……」」

ギンッと、絶望の王のオーラの片鱗を

見せながら威圧すれば、二人は口をつぐむ。

 

「貴様等は、もう少し戦争というものを 

 理解するべきだ。……戦争は、ゲーム

 でも遊戯でもない。殺し合いだ。

 それも理解出来ないバカ共に、ジョーカー

 シリーズなど託せる物か」

 

私がそう言うと、天之河光輝はハジメの

方に視線は向けた。

「な、南雲はどうなんだ!」

「……。僕には、まだ覚悟とか良く 

 分からない。それでも、僕は元の世界に

 帰りたい。だから今は、とりあえず自分の

 身を守れる位には、死なない位には

 強くなりたい。そして、司がそのために

 協力してくれるって言ってくれた。

 だから僕は、ジョーカーシリーズの

 パイロットを続ける。そしてもし、帰るために

 魔人族を倒さなくちゃ行けないのなら、

 その怨嗟の声を背負うしかないって

 思ってる。たくさんの人から恨まれても、

 戦うしか、帰る方法がないのなら、僕は

 戦う。司と一緒に」

 

戸惑いながらも、ハジメは現実を見ている。

故に、信頼出来る。

だからこそ……。

 

「ジョーカーシリーズが欲しいと言うのなら、

 貴様等一人一人、覚悟を見せてみろ。

 理由などは一切問わん。覚悟で私を

 納得させてみろ。合格すれば、専用に

 チューンを施したジョーカーシリーズを

 用意しよう」

 

私がそう言うと……。

 

「ねぇ新生くん」

雫が一歩前に出た。

「何でしょう?」

「あなたがどうして私を信頼しているかは

 分からないけど……。それを着れば、

 生き残る確率は上がるのよね?」

「雫!?」

彼女の言葉に、隣にいた天之河が

驚く。

 

「少なくとも、一般的な防具よりは強固

 です。実戦データを得て居ない以上、

 何とも言えませんが、理論上はある程度の

 攻撃を弾き無効化出来ます」

「じゃあ、それがあればやっぱり

 生き残る確率は上がる?」

「はい。それは開発者として、断言します。

 ……切り札(ジョーカー)を、求めますか?」

「うん」

「な、何を言ってるんだ雫!?」

彼女が頷くと、天之河が雫の肩に手を置いた。

 

「君までこのスーツを着る気か!?」

「そうよ。……私はまだ、死にたくない。

 理由としては、それだけよ。

 戦争で死ぬなんてごめん。私は帰りたい」

「ま、待て雫!君がこれを使う必要なんて無い!

 皆で力を合わせれば、きっと帰れる!魔族に

 勝てる!だから!」

「だから、何?さっき新生くんも言ってたじゃない!

 戦争を甘く見すぎだって!私達はまだ

 訓練しかしてないのよ!?力があるから

 死なない訳じゃないって、新生くんも言っていたじゃない!

 私は死にたくない!そのために新生くんが

 力を貸してくれるのよ!?どうして拒む

 必要があるの!?」

「そ、それは……」

言葉を詰まらせる天之河光輝。

私は静かに、雫の前に立った。

「生きて帰る為。そのために、人殺しになる覚悟は

 あるのですか?戦争に参加すると言うのなら、

 その身に纏ったジョーカーを敵の血と臓器で

 濡らす事になりますよ?」

 

問いかけるように、私は聞く。

「……。明確な覚悟があるわけじゃない。

 それでも、私は生きて元の世界に戻りたい。

 後悔も、するかもしれない。それでも私は

 戦う。そして、生き残る為の力が欲しいの」

 

その目には、まだ迷いがある。しかし、

戦争行為への忌諱感がある以上、逆に

間違った使い方はしないでしょう。

 

「……。簡単に戦争をする、などと言う輩より、

 迷いながらも帰る為に戦う意思を示す

 あなたの方が、よっぽど良い。

 ……合格です。では、これを」

 

そう言って、私は指を鳴らした。

すると空中にメカニカルな刀が現れた。

それがゆっくりと雫の元へと降りる。

刀を両手で持つ雫。

「え?新生くん、これは?」

「ヴィヴロブレード、振動剣、

 高周波ブレードと呼ばれる剣です。

 刃から放たれた高速振動によって通常の

 刀以上の切断能力を増加させています。

 元々ジョーカー用に開発していた

 物ですが、重さは一般的な刀とそう

 変わりません。剣士の戦闘職を持つ

 あなたなら、十分に使いこなせるでしょう。

 専用のジョーカーは、後日になるでしょうが、

 今はそれだけでも送っておきます」

 

私の言葉を聞くと、雫は鞘を持ち、刀を

引き抜いた。

 

そして……。

「す、すごい」

刀身を天に向かって掲げる雫。

私の作ったブレードの刀身は、湖に映り込んだ空の

色のように、美しい青色に輝いていた。

それが、太陽の光を受けてキラキラと

輝いている。

「綺麗……」

女子の誰かが呟いた。

 

綺麗、か。嬉しいような、しかしそれは

皮肉なような、微妙な心境だ。

しかし、だからこそ伝えなければ……。

 

「諸君等に告げる」

私が言うと、皆の視線が集まった。

「我々は戦争をしようとしている。

 だからこそ、覚悟を持て。

 戦う覚悟をだ。簡単ではないだろう。

人殺しを決意するのだから。だが、

決意と共に戦う意思があるのなら、

今し方彼女に送ったように、諸君等に

私が用意出来る最強の武器と防具を

与えよう。力を行使し、人を殺してでも 

元の世界へ帰る決意。そして、その手を

血で真っ赤に染める事への覚悟。

今の諸君に、殺される覚悟まで持てとは

言わない。しかし、殺すと言う事は、 

殺した相手の家族や友人から恨まれ、

命を狙われる可能性さえある。ましてや

我々はエヒトによって召喚された身。

恐らくは、戦争の矢面に立たされ、人類側を

鼓舞するプロパガンダに利用され、且つ、魔族に

その命を狙われる可能性もある。当然、

戦いに参加するとなれば、どのような戦場へ

送られるか、見当も付かない。

だからこそ、せめて人を殺してでも元の

世界へと戻りたい。そう、確かな決意と

覚悟を持て。そうすれば、私は諸君等に

できうる限り最高の鎧と武器を用意しよう」

 

私がそう言うと、皆がシンと静まりかえる。

それを見回してから、私はハジメの方に

振り返る。

 

「ハジメ、開発を続けましょう。武器は

 多いに越したことはありません」

「あ、あぁ」

その後、私達は武器の開発を続けていた。

その後ろ姿を、檜山たちが恨めしそうに

睨んでいるのに、私は気づいていたが。

 

それから数日後。

 

ある日、私はいつも通りハジメとジョーカー

シリーズの改良。新型武装の開発を行っていた。

今、ハジメはトイレに行くと言って施設には

居ない。

しかし、それより少し遅れて、檜山たち4人が

訓練施設を出て行くのを、気配で感知していた。

……奴らの性格を考えれば、やることは一つ。

 

しょうが無い。ぶちのめしに行くか。

 

そう考え、私は手近な所にあった

高周波ブレードを手に気配関知の領域を

拡大させた。

 

~~~

その頃、訓練施設の死角では、司の

予想通りになっていた。

「ぐっ!?」

蹴飛ばされ、倒されるハジメ。

「おい無能、テメェ、調子に乗ってんじゃ

 ねぇぞ。あぁ!」

そう言って、ハジメに腹を蹴る檜山。

 

ハジメは、トイレからの戻り際。

待ち伏せしていた檜山たちに有無を言わさず

ここに連れ込まれたのだ。

「一人だけ強そうなモン使って、良いかっこ

 しようなんざ、無能が粋がってんじゃ

 ねぇ、よっ!」

もう一発、ハジメの腹部を蹴る檜山。

 

「テメェなんかが、あんなモン使える

 訳ねぇんだよ!……だからよぉ、

 俺に寄越せ。テメェみてぇな無能

 なんかより、俺の方がきっと似合う

 っつ~の」

横たわるハジメを見下ろしながら呟く檜山。

 

今のこいつの頭の中では、自分が

ジョーカーを纏い活躍する姿を思い

描いていた。

『そうすればきっと香織も……』

それが檜山の狙いだった。

 

一方で、ハジメは、数日前の夜の事を

思い出していた。

 

 

~~~~

「なぁ、司」

「はい?何ですか?」

夜、二人は就寝前に司の部屋で新型武器の

アイデアを出し合っていたのだ。

「……僕って、本当にジョーカーの

 パイロットで良いのかな?」

「……。なぜ、今になってそんな話しを?」

「あぁ、いや、その。天之河くんは

 僕なんかよりもステータス的に強いし、

 彼がジョーカーを纏ったら僕よりも

 強いんじゃないかな~って思って」

「……確かに、ステータス的に言えば

 そうでしょう。しかし、彼はダメだ」

「え?何で?」

 

「彼は、まるでゲームの主人公のようだ。

 正義感が強い。しかし一方で、現実から

 外れた夢想家です。あれでは、

 いざ戦いになったとしてもどうなる

 事やら。……イシュタルの話を鵜呑みに

 して、簡単に戦争をするなんて言い出す

 ような輩は、覚悟も、決意もない。

 例え強くとも、あんな男は信用出来ません。

 現実を知らないが故に、それを突き付けられ、

 何時か壊れる。そう言う男ですよ。

 彼は。あと、同じ理由で坂上も今はダメです。

 あの男も、天之河を心配すると言って

 戦争に参加すると言っていましたが、

 それが逆にあの男の思慮の浅さを物語って

 いると言う物。その程度の覚悟で戦いなど、

 死なせに行くような物」

「そ、そっか」

戸惑いながらも、ハジメは頷く。

 

やがて……。

「ハジメ。……これだけは、私の口から

 言っておきます。あなたは、イシュタルの

 話を聞いていたとき、どこか怪訝そうな

 表情を浮かべていた」

「え?見えてたの?前の方に居たのに」

「はい。視力は良い方ですから。

 ……あなたは、あの男の話に流される

 事は無かった。その点は、天之河よりも

 冷静な判断が出来ている証。それに、

 何よりあなたは優しい。きっと、あなたなら

 ジョーカーの力を間違った事には

 使わないでしょう」

そう言うと、司は立ち上がりハジメの肩に

手を置いた。

「今、あなたの持つジョーカー0は、ハジメ

 の力です。他の誰でもない。あなただけの

 力です。恐らく、今後の戦いで、その力が

 誰かを守る為に使われるでしょう。それでも、

 ジョーカー0はいらないと言いますか?」

彼の問いに、ハジメは……。

 

「ううん。言わないよ。司の言うとおり

 かもしれない。あの力があるのなら、

 きっと僕は、誰かを守れる気がするから」

そう言って、ハジメは笑みを浮かべた。

「そうですか。……それで良いのです。

 ハジメ。ジョーカーはあくまでも力。

 その使い方は持ち主が決める物。

 ジョーカー0は、間違い無く、あなたの

 力だ。守りたい物が、人があるのなら、

 戦う理由と決意があるのなら、

 きっとあなたの力になってくれるはずです」

 

「うん。……その、改めて、ありがとう、司」

「ふふふ、何の何の。友人を守り、更にその

 友人を守る為。何を躊躇う必要がありますか」

ハジメの感謝の言葉に、司は珍しく、

小さくも、確かに笑みを浮かべるのだった。

 

そして……。

 

「違、う」

「あぁ?」

ハジメは、打ちのめされながらも檜山の

言葉を否定する。

 

「あれは、ジョーカー、0は。司が

 僕の為に作って、くれたんだ!

 誰が、誰がお前達みたいな、小悪党に、

 渡すもんか!!!」

 

その時、ハジメは、殆ど初めて檜山たちに

反抗した。

すると……。

「テメェ!調子に乗りやがって!!」

次の瞬間、檜山は持っていた剣を抜いた。

「お、おいっ!?檜山何してる!?」

「決まってんだろっ!ぶっ殺すんだよ!

 無能の分際で、調子に乗りやがって!」

「さ、流石にそれは不味いだろ!?

 他の奴らにバレたらどうするんだよ!?」

取り巻きの一人が流石に、と言わんばかりに

止めに入る。

 

「知ったことか!適当に言い訳でも

 しときゃ、良いんだよぉっ!」

剣を振り上げる檜山。それを睨み付けるハジメ。

と、その時。

 

「ほぉ?剣を抜いたのなら、殺される覚悟

 は出来ているのだろうな?」

 

不意に、司の声が聞こえた。

 

と、次の瞬間。

 

『ズバッ!!』

何かが煌めき、檜山の剣を根元からぶった切った。

 

そして、次の瞬間。檜山とハジメの間に

真っ赤な刀身のヴィヴロブレード、『アレース』

を抜いている司が現れた。

「つ、司」

彼に声を掛けるハジメ。すると司は

振り返った。

「ハジメ、大丈夫ですか?」

そして、彼はハジメに手を差し出し、ハジメは

それを取って立ち上がった。

 

その時。

「テメェ、調子のってんじゃねぇぞぉ!」

剣を捨て、背を向けている司に殴りかかる

檜山。だが……。

『ビュッ!』

「うっ!?」

その檜山の喉元に、アレースの真っ赤な

切っ先が突き付けられた。

 

それによって、動きを止め冷や汗を流す檜山。

「貴様、先ほど剣を抜いたな?それはつまり、

 殺そうとしたと言う事。であれば、

 殺される覚悟は、出来ていような?」

「て、テメェ!殺すのか!俺を!

 そうなりゃ、天之河たちが黙ってねぇぞ!」

それは、檜山なりの精一杯の脅しだ。

だが……。

「……ふん、笑わせるな三下が。彼奴らの

 言葉など、罵詈雑言を言われた所で

 痛くもかゆくもない。ハジメが無事なら、

 貴様と、貴様の取り巻きの命など、

 殺したところでおつりが来るわ」

その言葉に、最悪自分達も殺されるのでは、

と思い取り巻き3人が後退る。

 

「力を得て、強者になったと勘違いした

 バカは、いずれ他の者の足を引っ張りそうだ。

 ここで不安要素を排除するのも、一つの

 手であろう」

そう言うと、司は右手だけだったアレースの

グリップを両手で握りしめる。

 

と、その時。

「何やってるの!!」

突如として、香織の声が聞こえた。驚き

振り返る檜山たち。それを確認した

司は、アレースを鞘に収めた。

 

「し、白崎。あ、えっと、その……」

何かを言おうとした檜山だが、すぐには

思いつかなかった。

その時。

「ッ!?ハジメ君!」

香織は、ハジメが汚れている事に気づいて

檜山たちの横を通り過ぎ彼に駆け寄った。

「大丈夫ハジメ君!?どうしたの、これ」

「……ジョーカー0欲しさに、この4人が

 ハジメを襲っていたので、丁度私が

 助けに来た所です」

「ち、違っ!?嘘言うんじゃねよ!?」

「嘘?普段からハジメを侮辱していた

 貴様等の事だ。自分より強い力、

 ジョーカーの力を持つハジメに

 嫉妬し、それを奪おうと襲ったのだろう。

 しかし安心しろ。ジョーカーシリーズは

 パイロットのDNA情報を登録すると、

 登録者以外起動する事は出来ない。

 良かったであろう?奪って使えませんでは、

 洒落にならんのだしな。

 そして、今回の一件でますます、貴様等は

 私の怒りを買った。喜べ、ジョーカー

 シリーズなど、二度と手に入れる機会を

 失ったのだ。……戦争で死なないよう、

 精々自分を鍛えるのだな」

「ッ!?テメェ!」

取り巻きの一人が殴りかかろうとするが……。

 

「『失せろ。雑魚共が』」

司の、絶望の王の覇気に気圧され、檜山

達は逃げるように走り去った。

 

そして、それを見送った司はハジメと

香織の方に振り返った。

 

「大丈夫?南雲くん」

「う、うん。ありがとう白崎さん。あと司も。

 ……ごめん、僕が弱いばっかりに」

「いいえ。大丈夫ですよハジメ。それに、

 あなたは弱くはない。あなたは檜山に

 脅されたとき、渡さないとはっきり

 明言していたではありませんか」

「え?ま、まさか聞こえてた?」

「はい。私は耳も良いので」

と言うと、ハジメは顔を赤くした。

 

「は、恥ずい!僕あの時、司が

 僕の為にとか言っちゃったし!」

「?何を恥ずかしがる事があるのですか?

 ハジメは痛みに負け、渡すと

 言わなかったのです。それもハジメの

 強さですよ。ただ単純に力がある事が

 強いと言うのなら、乱暴者でも強者に

 なってしまう。しかし、強いのは力

 だけに言える事ではありません。

 他者を想い、寄り添える優しさ。

 何か、或いは誰かのために戦う決意。それらもまた

 力、強さです。……ハジメ、あなたは

 あの時言ったではありませんか。

 ジョーカー0の力で誰かを守れる気がする、と。

 それもまた、あなたの心の強さです。

 皆が一様に避けていた私に、普通に接して

 くれたのも貴方です。私も、時には嫉妬の

 視線で見られる事があった。ですがハジメは

 違った。……私はあなたの優しさを力だと

 思って居ます」

と、彼が言うとハジメは更に顔を赤くした。

 

「?なぜハジメは顔が真っ赤なのですか?

 風邪ですか?」

「違うって!司のせいだよ!」

「???」

ハジメの言い分に、首をかしげ大量の

疑問符を浮かべる司。そんな二人を見て、

香織はクスリと笑みを浮かべるのだった。

 

 

そして、更に数日後。

メルドがハジメや光輝たちを呼び止めた。

「明日から、実戦訓練の一環として『オルクス大迷宮』

 へ遠征に行く。必要な物はこちらで用意してるが、

 今までの王都外での魔物との実戦訓練とは

 一線を画すと想ってくれ!まぁ、気合いを入れろ

 って事だ!今日はゆっくり休め!では、解散!」

 

その言葉を聞いたとき、司とハジメは互いの

顔を見てうなずき合い、メルドへと歩み寄った。

「メルド団長。少し良いですか?」

「ん?何だ新生」

「明日からの遠征、ハジメと私はジョーカー

 シリーズを使って参加したいと思うの

 ですが、構いませんか?」

「ん?まぁ別に良いぞ」

と、確認とお墨付きを貰った二人。

 

ジョーカーシリーズが実戦に参加するときが

刻一刻と迫っていた。

 

     第3話 END

 




ジョーカーシリーズのイメージモデルは、ゲームHALOシリーズの
ミョルニルアーマーやヴァンキッシュと言う作品のARSなどを
イメージして頂ければOKです。

何というか、大好きなんですよパワードスーツ。

感想や評価、お待ちしています。
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