今回は仕官編ということになるのでしょうか。
推敲もほとんどしてないので、ますます拙文になっていると思いますが……
宜しければ読んで下さいませ。
―――
1/20 手直ししました。月歩様多謝。
俺は感じていた。おかしいと。
一晩たち冷静になってみれば、歴史好きが集まって……なんて域を超えている。かといって団体がやっていたりするのであれば、事前に知っているはずである。事実行く城についてはよく調べてから行くのだ。
昨日は気づかなかったが、明らかに年季の入ったその廊下、障子。
そこを歩き奥の広間へ案内される。
そこには鹿之助の重臣たちと思われる面々。
そして、これがまた、俺を困惑させる。
鹿之助も女であったが、家臣の中にも女がいるのである。
ありえないとは思うがタイムスリップして過去に行った、とかなら鹿之助は勿論のこと、女がいるのはおかしいのである。
ここは、夢の世界のようだ、と。
――もしそうなら、いっそ……
「して、幸紀殿、話を聞かせてもらえませんか。」
「その前に、一つお願いがあるのですが。」
「なんです?」
「城下を、見せていただけませんか。」
空気が、変わった。
目をそらす者、にらみつける者。
鹿之助もうつむき、目をそらす。
――あれ、なんか、まずったか……
緊張した空気の中、口を開いたのは鹿之助ではなく、左列(鹿之助からは右列)の一番前に座る、優しそうな、それでいて威厳のある白髪交じりの男だった。
「おぬしは、どのような心算でそんなことを言ったのじゃ。」
「あ、あの……」
俺の目線から察したのか、その人は名乗った。
「儂は、立原久綱。鹿之助の叔父になる者じゃ。して?」
流石に「城下を見て現実か、仮想世界なのかを見極めるためです。」とは言えない。うまく口実を作りたいのだが、妙に渋っているようにも見える。下手な理由ではここで切られるやもしれない……。懐柔しやすそうな鹿之助一人ならともかく、ここには家臣もいるのだ。
「え、えっと……」
言葉に詰まる。とっさにアイデアや機転を出すのは苦手ではないのだが、緊張状態には弱いのだ。
しょうがない。結局はこれしかないのだ。
「……とりあえず、今からいう話を聞いてください。」
――正直に言う。これしかないのだ。
「俺は未来から来ました。」
周りの物は皆、驚きと呆れそれぞれが混じったような何とも奇妙な面持ちで見ている。
それは、久綱も例外ではなかった。
「なっ……。ふむ、それで?」
それでも、一瞬驚いたものの冷静に話を戻す。年の功とはすごいものだ。
「とりあえず証明しようと思います。この入れ物、リュックと言いますが、これの中身はたいていこの時代では見れないもののはずです。」
俺はリュックを開ける。まずは本からだ。
「これは未来の書物です。これは全国の有名な城の縄張り図が書いてある『城攻め読本』というものです。ここを見てください。」
そう言って、『城攻め読本』の出雲国の城が書かれたページを見せる。
そこには出雲国の城一覧、出雲の歴史、そして主要な城の詳しい縄張り図とページが進んでいく。
しかし、これには一つ懸念材料があった。
――尼子再興が成らないことを、どう受け止めるか……
それを久綱はじっと見てから、口を開く。
「ふむ。所々読めないものがあるが、確かにこの時代のものとは思えぬものじゃ。だが、ここに書いてあることが本当ならば、我々のやっていることは徒労になりそうじゃな。」
「はぁ、どういうことですか、久綱様」
鹿之助には伝わっていなかったが『徒労』の言葉で、俺は勿論、他の家臣には伝わった。
敵意をにじませるような目線が俺を刺す。
――ここを、間違えてはいけない……
「だから、俺は……家臣にしてもらおうと思っています。未来がわかるなら尼子の再興を成してみせます。」
「本当ですか!しかしこんな簡単に…はぁ、はぁ、それはそれで七難八苦です。」
鹿之助には俺の誠意が届いたのだろう。もっとも単純なだけかもしれないが。
「鹿之助、待つのじゃ。」
鹿之助は懐柔しつつあるが、やはりこの人は違う。そう簡単にはいかない。
立原久綱。
尼子再興軍の生き字引ともいえる存在。最後の当主、義久の参謀的な存在であった人で、後に織田家との交渉をしたりする知将だ。それでいて毛利家に破格の俸禄での仕官を誘われるも拒否し、京に隠棲。そして再興軍に参加したほどの忠義者だ。
――だが、この人さえ味方にすれば……
「さて、話を戻すが、城下をみるのも未来から来たことに何か関係があるのじゃな?」
「はい、城などの建物の多くは未来には残っていません。先ほどの書にも『遺構』として石垣や土塁はありますが館などはほんの一部しか残っていません。そこで城下の家を見ることで自分が過去に来たのかを確かめようと思った次第です。」
「成程。お主の言い分はわかった。未来のとここでの家屋では造りが違うのであろうからな。だが、儂はまだお主が信用に足る者であるかどうかまだ疑っておる。城下に行った際にそのまま逃げて、もし毛利にでも行かれてしまえば……」
――この人、本当に用心深い。本以外のもので何とかしなくては……
その後もペットボトルやノート、消えるボールペンなど手持ちの未来のものを見せる。他の家臣の中には興味を示す者はいたが、久綱は首をふるにすぎず時間が経っていった。
――スマホを出すしかない、か。
後々のために温存しておきたかったのだが、やむなし。
――これでだめならもうしょうがない。
そして、ポッケからおもむろにそれを出す。
「これは未来の……そうですね狼煙のようなものでしょうかあるいは手紙とでもいえばよいのでしょうか。」
「ふむ……」
「遠くの、それこそ尾張の国の者とでも会話をすることができるのです。」
これには家臣団がざわめく。そりゃあ他の物とは桁違いの物であるのだから。
「とはいえ、相手もこれを持っていないと使用できないので証明はできませんが……」
「それでは、証明にならんな。」
「ごもっとも。ですのでこれ単体でできる証明をいたしましょう。久綱様、しばしじっとしてください。」
そうしてカメラモードにし、久綱に向ける。
――パシャ
そうして、画面を見せる。
――そこに映る自分の顔を見て、驚きさえすれば……
まじまじと見つめ、髭を触り、そして、
「これは、鏡か?」
真顔で、こうのたまった。
――うん。知らないのだからしょうがない。確かに自分の顔が見えれば鏡と思っても仕方がない。
――なわけあるかっ!
改めて久綱を見ると、まさに苦笑いという言葉がぴったりの苦笑いをしていた。
「ふっ、儂の負けじゃ。鏡かと思ったが髭を触っても中の絵は動かない。まことに不思議な物じゃ。他の物はどうにかしてこじつけたりできたがこれはもうどうしようもない。」
――こじつけてたって……まあ、南蛮品とでも言って片付けられてしまえるのだろうか。恐ろしき年の功。
「で、では……」
「ふむ。鹿之助。こやつわが軍に入れてやろうではないか。」
「久綱様がおっしゃるのなら。これからはお願いしますね、幸紀殿。」
こうして、やっとのことで山中家に仕官できたのである。
尼子再興軍に、そして何よりも幸紀自身に一筋の光が見えた瞬間であった。
何とか仕官まで漕ぎつけました。
立原久綱を出せました。ほんとはほかにも出したかったんですが家臣紹介は次話にしようと思います。
次は、いつ更新できるのやら…
家臣らのオリキャラ設定も決めないといけませんね…
また、『城攻め読本』はメディアファクトリー発行、風来堂編の『全国城攻め手帖』をモデルにしています。
実際に自分が城巡りをする時の相棒です。