鴻池幸紀の野望   作:きよ@Kiyo_LB

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なんとか、書きました。

仲間紹介編のはずでしたが……
キャラ立てが難しくまさに七難八苦です。

例のごとくご感想ご指導ご鞭撻お願いいたします。

月歩様感謝。

---
1/20 修正しました。


4,親友(とも)との出逢い

「ところで、幸紀殿。」

 

鹿之助が口を開く。

 

「家中に迎えるには役職がいると思うのですが……」

 

――確かに。とは言え現代人の俺が槍働きで活躍できるわけもないし……

 

現代での俺は剣道を嗜んではいるけど決して強くはないし、そもそも剣道ごときじゃここでは何の意味もないだろう。

それは周りの家臣たちも思ったようで皆黙ってしまう。

そんな中、気まずい沈黙にしびれを切らした者がいた。

 

「ああ、もう。なら僕の小姓でいい。いいね鹿之助!幸紀!」

 

声を上げたのは右列(鹿之助からは左列)の一番前に座る俺と同じくらいの年であろう青年だ。

 

「えっと、あなたは……」

「そ、そんなことをお頼みするだなんて……勝久様に合わせる顔が……はぁ、はぁ七難八苦です。」

 

目が点になっている俺や息を乱している鹿之助を見て、あきれ顔の久綱さんが説明する。

 

「その方は、尼子氏久殿。主君勝久様の兄上様じゃ。」

 

尼子氏久。

 

確か尼子勝久の兄で鹿之助らが再興軍を起こした時呼応した一門武将だ。もっともあまり詳しくは知らないが……

 

見たところ年は俺と同じか多くても一つ二つ多いくらいであろう。おそらく二十歳前の青年だ。それでいて細身でありながらその体は幾度もの戦いに身を投じてきたのであろうことを伝える。その筋肉が、その傷が……

 

「ま、まあね……、とはいえ僕は家臣の身。堅苦しくせず仲良くやろう。気軽に氏久と呼ぶといい。なんなら助四郎のほうでもいい。」

 

氏久は一瞬苦笑いをしたがすぐ顔を明るくし俺の前まで来て握手を求めた。

 

「う、氏久……様――」

「様はつけんな。あんまり、そういうのは好かん。」

 

――慣れない……いや、もとの時代なら普通なんだ……ここは氏久さんの機嫌を損なわないようにしないとな……

 

「で、では、氏久。宜しく。」

「うん、勝久のこと、尼子再興のことよろしく頼むね。」

 

目と目が交差し、俺は頷いた。

 

こうして、氏久と幸紀の間には深い友情が生まれ――

 

「こらぁー!き、貴様……どこの馬の骨とも知れぬ者が、その言葉遣いもさることながら、あろうことか氏久様の御手を触るなんて……」

「え……」

「成敗する!!」

 

そういうや否や氏久の隣(下座)に座っていた少女が弓を引いて……

 

「ちょ、ちょいま――」

「問答無用!!」

 

――ピュン

 

放った。

 

――あ、やば……この距離だとよけられない。仕官早々討死ですかー!

 

岩階段から落ち、そこで可憐な美少女に化した鹿之助に出逢い、苦労して尼子再興軍に入り、尼子の再興を成してやろうと息巻いていた俺の戦国人生は一度の合戦も経験することもなく終わりを告げ――

 

――キィン

 

「まったく。庵介。すぐに弓を引くのはやめろといつも……。おい、幸紀大丈夫か?おい、幸紀!」

 

氏久が呼ぶ声を聴きながら俺はこの世界との接点を絶った。

 

 

 

 

目を開ける。どうやら布団の上で寝かされているようだ。とするとどうやら弓の餌食にはならなかったようだ。

 

――氏久がどうにかしてくれたのかな……助かったぜ。

 

あたりを見渡してみる。昨日居た部屋では……なさそうだ。

よいしょ、と起き上がると声がかかる。

 

「目が覚めたか。」

 

凛とした少女の声がかかる。声の主を探す。

 

縁側に腰掛ける彼女は、夕日の光を受け赤く染まり、そしてとても麗しい顔でこちらを見る。

 

「あ、あなたは……」

「あたしは秋上庵介。その……さっきは悪かったわね。」

 

そう言って顔をそらし外を見つめる。

頭を振ると長いポニーテールがなびく。

 

「い、いや。まぁ、生きてるから取り敢えずいいです。」

「敬語じゃなくていいわ。氏久様に使わないものをあたしに使われても……困る。」

「う、うん。」

 

お互いにぎこちない会話。慣れていない若者同士の甘酸っぱい青春の――

 

「で、でも貴様。弓も当ってないのにぶっ倒れるなんて情けないんじゃないの?」

「え……」

「未来の殿方はそんなにも情けないのかしら。まったくどんな世なのよ……」

「あ、いや……」

「まったく。氏久様を見習ってほしいものだわ。あの距離から短刀で弓の方向を変えるだなんて……ああ、素敵。」

 

いきなり罵倒されました。そして氏久をたたえております庵介さん。

 

――あーこの人、氏久にぞっこんなんですね……

 

そんなことを考えながら生暖かい視線を送っていると、我に返った庵介さん。

おいてあった弓を取り、

 

「……忘れなさい。」

「は、はい。」

 

何もなかった。そう、何もなかった。

 

――しかし、この人があの庵介か。

 

秋上庵介。

 

秋上宗信、または久家とも。尼子十勇士の一人。秋宅庵介の名で知られる。弓の名人で鹿之助の一騎打ちの際、敵の不正をその弓で防いだとか……

 

なるほど改めて見ると確かに和装に綺麗な黒の長髪を頭の高いところで結んだポニーテール、そして胸当てをしたその姿は、さながら弓道部の部長のようだ。

 

――俺、和装フェチなのかな……確かに道着とか着物とか来てると女の子って可愛くなるし、でもこの人は氏久のことが好きみたいだし……って何考えてんだ俺は!

 

「おい、なんだ。人の顔をじろじろと。また的になりたいのか?」

 

ぼーと、眺めてしまっていたのであろう。怪訝そうな顔でこちらを見つめる。

 

「ああ。すまないデリカシーにかけたね。申し訳ない。」

「出梨花椎?なんだそれは、植物か何かか?」

「未来の言葉で『心配り』という意味さ、南蛮語みたいなものだ。」

「なんだ、貴様南蛮語が喋れるのか。凄いな。……ちょっとだけ見直した。」

「まあ、ちょっとだけな。」

 

英語だから南蛮語ではないのだが、まあ、いいか。実は英語は大の苦手で学校では英語はいつも底辺レベルだがここではエリートだ。なんか誇らしい。

 

「おい、にやにやと気味の悪い笑い方をするな。」

「ごめんごめん。それで、今さらだけどここはどこ?」

「ここは貴様の住処だ。家臣たちの長屋だ。」

 

少々埃っぽいが、寝床を与えられるだけでも十二分にありがたい。

 

「あたしは貴様などそこらで野宿でいいといったのだが、心優しい氏久様がここに住まわせてやれと仰ったからここに住めているということを忘れぬように。」

「ああ、あとで氏久にもお礼言わなきゃな。」

 

またそのような言葉遣いで……とぶつぶつ言っていたが、何かを思い出したのかこちらを向き、

 

「体調が戻ったのならば、あたしは自分の家に戻るぞ。」

「お前もこの長屋に住んでいるのか?」

「ああ、隣だ。……とはいえ、もうこんな時間か。」

 

朝飯を食ってすぐに広間に行ったのだから昼前から夕方までぶっ倒れてたことになる。時間の経過を主張するかのごとくに腹の虫が鳴る。

 

庵介は何かを考えているのか顎に手を当て首をかしげる。

 

「……一緒に食事にしようか。……ゆ、幸紀。」

「え?今、幸の――」

「う、うるさい!貴様はどうせその体たらくだ。食事など作れまい。あたしの家に来い。」

 

立ち上がろうとする俺に手を差し伸べる。俺はその手を掴む。

女の子らしい柔らかさと共に、戦乱の世を勝ち抜いてきたのであろう力強さを感じさせる。

 

「これで、和解な。幸紀!」

「ああ。」

 

こうして幸紀と庵介と仲直りをし、仲良く食事を囲む。

 

「幸紀。飯はこのくらいでいいか?」

「ああ、ありがとう。」

 

――なんか、新婚夫婦みたいだなぁ……なんて。

 

「おい、幸紀!今なんか不埒なことを考えていた気がするのだが……また的になりたいのか?」

「滅相もございません。」

 

……ともあれ、共に食事をとった二人もまた、絆が芽生え始めたのであった。

 




なんとか、なんとか書きました。

尼子氏久と秋上庵介を出せました。
本当はある程度家臣たちを紹介するつもりでしたが、思わぬフラグが立った気がいたします。

氏久は(今のところ)超いい奴にしようと思ってます。
イオリンは気が強く真面目それでいて乙女な感じ。

まぁ、イメージですけど。
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