「…ゴホ」
「三笠…血が…」
「大したことはありません…それより」
「Hiya!mybestfriend三笠!久しぶりね会いたかったわ!」
「遠いところようこそミスロイヤル。予定より大分遅い到着歓迎します」
「もう!相変わらず時間に厳しいわね!この娘がスエズを通れなかったからケープタウン周りをしたのよ?」
「こ…コンニチハ…」
「待っていたわこれから貴女の上官になる三笠よ」
「ヨロシク…オネガイシマス…」
「ふふ、日本語。勉強してきたのね」
「ハイ…少しですガ」
「とても上手よ。私たちなんて自然に話せるまで2年かかったわ」
「三笠も外国から来たのデスか?」
「ええ、日本語はとても奥深い言語よ。大事になさい」
「そうシマス!」
「どう?新造艦の出来栄えは!ああそうだ。三笠、そちらの方は?」
「紹介するわね、大日本帝国海軍大臣の戦艦朝日よ」
「初めまして、貴女の名前は決まっているのよまたあとで話しましょうね。ようこそプリンセスロイヤル、うちの三笠が貴国でお世話になったわね」
「とんでもないですわ!朝日海軍卿。こうして日本とよい関係になれたのも全部三笠のおかげよね?三笠」
「では車を手配しているので三井までお送りします」
「Thankyou!よろしくお願いするわ。あ、三井での会談が終わった後楽しみにしているわね!この娘の妹の件もあるし!」
「それはよい報告を期待しています。」
「ええ!期待してて!」
「鹿島、香取」
「はい」
「この娘を横須賀まで連れて行ってあげて。私は姉さんと鹿鳴館に行くわ」
「かしこまりました」
「三笠はどこか行っちゃうデスか?」
「心配しなくていいわ、私はすぐに戻るからそれまではこの鹿島、香取について回りなさい。これからあなたが暮らす鎮守府を案内してもらえるから」
「ワカリマシタ…」
「朝日大臣」
「どうしたの?鹿島」
「彼女の名前は…」
「ああ、そうね彼女の名前は金剛。金剛型巡洋戦艦一番艦金剛よ」
「…コンゴウ?」
「そうね…英語ではDiamondそして由来は金剛山。金剛は判官贔屓という言葉を勉強したかしら?」
「何デスか?それは」
「日本人は強きに刃向かう弱きを応援したがる民族なのよ」
「はぁ…」
「かつて日本を統治していた鎌倉幕府から政を取り戻そうと後醍醐天皇が兵を起こしたのだけれどその戦力は20対1勝ち目のない戦いだったそうよ。それでも帝に忠義を尽くし悪党と罵られてもただ一人戦った楠木正成…金剛山はその楠木正成の居城があった山よ。あなたにはそんな願いが込められているのかもしれないわね」
「なんだかよくわからないデース」
「ふふ…いいのよ」
「ご来賓の皆様。お忙しい中、海軍主宰の迎賓会鹿鳴館にお越しいただきありがとうごさいます。ご紹介しますイギリスよりお越しいただいたヴィッカース社CEOプリンセスロイヤルです」
「ありがとう、三笠!初めまして日本の皆さん今日は歓待ありがとうございます。今後の日英両国の発展を…」
「三笠、今日の会合で話合われた取り決め。理解しているわね」
「朝日姉さん。ええ、事実上の建艦管理です」
「アームストロングを巻き込んだ3社連合よ出資も綺麗に3分割それも事実上子会社の資本を使って。これじゃあイギリスから買うのと同義だわ」
「それが狙いでしょう。政府は警戒して予算を削る…そして海軍を弱体化させる」
「私も覚悟が決まったわ」
「遅いですよ…あ、見て姉さん。伊藤公よ」
「ああ、近々朝鮮総督として日本を離れるらしいわ。その前にイギリスとパイプを持ちたいってところじゃない」
「ロシアとの外交に失敗した方が良く来れたものね」
「三笠」
「あれ…姉さん、西園寺公も招待したの?」
「するわけ無いでしょ。どこから聞き付けたのか開場30分前には来てたわよ」
「山縣さんも…」
「まったく…陸軍はどれだけ面の皮が厚いのかしらね。ジーメンスと癒着していてこの上、ヴィッカースとも繋がる気かしら」
「それより姉さん今日の装い。素敵ですよ」
「三笠こそ、今日くらいドレスで来ても良かったのよ?」
「いえ!私には姉さんみたいに着こなせませんから」
「あ、私ちょっと挨拶してくるから…もう仕上がってるのよね?」
「はい」
「…みーかーさ!」
「あ…ロイヤル。いかがですか来日されたご感想は」
「ふふ、ええ!とってもたのしいわ!次のビジネスに繋がるお話もいっぱいいただけて」
「…そうですか。金剛型の2番艦ですが」
「うん!どうする?うちのドックで建造する?」
「いえ、国内の建艦技術向上のためにも私の横須賀で着手いたします」
「わかったわ!設計図は渡してあるけど技術者の派遣はどうする?」
「それもお気持ちだけいただくわ。自分たちでやらないと意味がないでしょ?」
「わかったわ。その話は置いといて…楽しみましょ!」
「私、こういったところが苦手なのよ」
「何よー!主宰してくれた海軍の三笠がそんなんじゃダメじゃない!ホストはゲストを楽しませてくれなきゃ。その前に主宰自身楽しまなきゃ!お酒が足りないなら私とって来るよ!何がいい?」
「お気遣いありがとうロイヤル」
「うふふ!そう!三笠には笑顔が似合ってるよ!」
「ありがとう。ゲストに気を遣わせてしまったわね、反省しなきゃ。でもお酒は遠慮するわ」
「え、どうして?」
「うふふ…酔っていられない状況に日本があるからよ」
「…ふふ、どういうことかしら?」
「政友会に痛く気に入られたみたいね?」
「ええ!西園寺公には鉄道に使う製鉄も依頼いただいたわ!」
「陸軍ともパイプを持って何をするつもりかしら」
「大砲が欲しいって言うのよー!だから吸収したアームストロングを紹介しようと思ってるの!ふふ」
「それは良かったわね?これでジーメンスを出し抜くことがてきたってわけ」
「ええ!本当に日本は楽しい国だわ~!」
「もう少し頭の回転が早い小娘だと思っていたのだけれど…買いかぶりだったようね」
「何?挑発してるつもり?もうこの国はイギリスの鉄に頼らないと生きて行けない国になったの。もう何をしても遅いのよ?お.ば.さ.ん!」
「それはどうかしら?」
「はぁ?何?負け犬の戯れ言なんて聞きたくないんだけど?」
「三笠司令!」
「あら、鹿島どうしてここに?」
「すみません!ですがこの新聞記事を見てどうしたらいいか!」
「…そう」
「…新聞…見せなさい!!」
「ちょ!プリンセス!」
「いいのよ鹿島」
「はぁ…三笠司令!我々海軍は!」
「…あ、あなた…み、三笠。こ、これどういうことよ!!」
「さあ?私には検討も」
「しらばっくれるんじゃないわよ!!」
「司令…嘘ですよね…こんな…でたらめ。ですよ…ね」
「鹿島。それを判断するのは国民よ」
「…はい」
「こ…こんな…ふざけるんじゃないわよ!!あんたでしょ!!こんな記事書かせたのは」
「うふふ…どこに証拠があるのかしら」
「こんなこと内部のトップしか知り得ない情報でしょ!!」
「うるさい小娘ね…周りをみなさい。あなたの迎賓会をあなた自身が壊してどうするの?」
「…こんなことしたらあんただってただじゃすまないのよ!!」
「私は軍人よ。いつでも腹を斬る覚悟くらい持ち合わせているわ」
「この…」
「いいのかしら?こんなところでお酒なんか飲んでて」
「帰るわ!」
「ふふ、道中お気をつけて」
「はぁ…海軍に贈収賄容疑 横須賀鎮守府司令長官イギリスへ視察の際造船会社ヴィッカースに便宜を図り選定に意図を加えたことの対価として金36万円を受け取りさらに軍務局担当、兵器科担当に戦艦金剛を発注した際の代金から賄賂を横流し。同様に陸軍もジーメンスとの癒着で…もはや一大スキャンダルね?怖くて外も歩けないわよ」
「慣例となっていた軍の癒着は奇麗にはがされるでしょう。今まで賄賂を受け取っていた軍人の名前もリークしましたから…あとは国内の製鉄をどう運営するか。ですね」
「それなら心配ないわ三笠。昨日の閣議で国有化が決定したから」
「イギリスも民意によって弾劾された会社に利益は求めないでしょう。適正価格で売り渡すはずです」
「三笠。あなたは横須賀にとどまりなさい」
「姉さん…金銭を受け取った名簿に私の名前も載せました。責任は追及されるはずです」
「三笠は受け取っていないじゃない…なんで自分まで弾劾するのよ…」
「国民に海軍という組織その在り方、実情に疑問を持ってもらわないと。今回のように製鉄所を廃業に追いやるだけの民意は育ちません。そのために」
「そう…それでもよ。この事件は私のところで抑えるわ。あなたがいなかったら金剛や比叡、鹿島に香取、これから生まれる扶桑や山城はどうしたらいいの?」」
「鹿島と香取は立派な艦娘になりました。私はもう」
「欧州のバルカン半島。ロシアが再び黒海を狙っているとの情報があったわ」
「であれば私よりも姉さんが」
「私は2.3年海に出てから戻ってくるわ。だから三笠」
「わかりました…」
「何かあったら敷島に相談しなさい今は連合艦隊の旗艦だから」
「はい…」
「あ、電話…大臣室…ええ繋いで…はい…そう…わかったわ今から向かうわ」
「どちら様からです」
「内閣書記官長。権兵衛さん首相を辞任したわ」
「では総辞職ですね」
「ええ、私も辞表を提出に行ってくるわ」
「長い間、ご苦労様でした」
「海に出た時は連絡ちょうだい」