戦艦三笠の苦悩   作:樋口晶子

8 / 10
第8話

「とても美味しいです!三笠」

 

「ありがとうございますエリザベート皇后」

 

「これはなんという飲み物なのですか?」

 

「抹茶という飲み物でございます。日本ではこうして客人を茶室にお招きして茶を仕立て寛いで頂く。こうした習慣をおもてなしと申します」

 

「おもてなし…日本は情緒的で色鮮やかね!」

 

「皇后…昨夜は金剛達が失礼いたしました。私の責任でございます」

 

「いえ!私が金剛達を連れ出しました!あのような時間まで…榛名ちゃんや霧島ちゃんはまだ幼いのに心配して当然よね」

 

「皇后の御身に何かあったらと心配しておりました」

 

「三笠、金剛達は今日どうしてるの」

 

「自室謹慎中で処分は追って通告致します」

 

「そんな!ではもう会えないの!」

 

「これ以上皇后の身に危険が及ぶような行動をさせるわけには参りません、どうかご理解を」

 

「そんなの嫌です!日本にいる間は金剛達が護衛なのでしょ?直ぐに謹慎を解いてください!」

 

「皇后…ご無理を仰らないでください」

 

「一緒にいて凄く楽しかった…彼女達だけです。訪問先で私を客人としてではなくエリザベートとして友達として一緒にいてくれたのは!私なんです、夜遅くまで彼女達をつれ回したのは…だから」

 

「皇后は国賓で各国を巡りその目的は親善であるということをご理解されていますか」

 

「もちろんです!」

 

「であれば遠い異国でお友達をお作りになる以前にオーストリアハンガリー帝国の国益になる工作を日本にいる間されるべきだと僭越ながら思います」

 

「三笠の言う通りです…でも!友達がいない国と親善なんて…友好な関係なんて結べるのでしょうか?私…夫のヨーゼフと世界中を巡って思いました。親善と言いながらヨーロッパでは大国同士で利権を巡り争っていますそういう人達に限って必ず笑顔で豪華なパーティーを開いて上部だけの関係を築こうとします…でも金剛達はそうじゃなかった!私を一人の友達として一緒にいてくれる…私そんな国はじめてなんです」

 

「…皇后のおっしゃる通りかもしれませんね」

 

「では!」

 

「それは話が別です金剛以下4艦は帝国海軍揮下の艦艇。命令違反には処罰がございます」

 

「ですからそれは!私が無理を言って!」

 

「ですが、皇后が訪問中の日本で公務以外のお時間何をされましても私の看過する事ではありません」

 

「え…」

 

「あの娘達もそろそろ退屈している頃でしょうからよろしければ行かれてみてはいかがでしょうか」

 

「ありがとう!三笠!」

 

「…ふぅ」

 

 

 

「三笠提督」

 

「あら香取いらっしゃい」

 

「イギリス政府から日本海軍に要求があったという情報が入りました」

 

「…どうかしら」

 

「はぁ…」

 

「いえね、花を活けていたのよ香取はこれどう思う?」

 

「私は花のことは解りませんがとてもきれいだと思います」

 

「ふふ、ありがとう。香取お茶はいかが?」

 

「いただきます」

 

「お菓子をどうぞ」

 

「…いただきます」

 

「お一方様ですのでお一人でどうぞ」

 

「お点前頂戴いたします」

 

「…」

 

「お粗末様でございました」

 

「提督、ロイヤルネイビーは金剛、比叡の貸与を目的とした交渉を政府としています」

 

「そう」

 

「海軍としてはどのような対応を」

 

「黙殺よ」

 

「わかりましたでは私と鹿島は引き続き海防の任にもどります」

 

「お願いね」

 

 

 

 

 

 

「…エリーさん…オーストリアに帰っても榛名のこと忘れないでください!」

 

「忘れないよ!榛名ちゃん…お見送りありがとう…もう泣かないで?」

 

「…でも…でも…」

 

「エリー!」

 

「っん…比叡ちゃん…」

 

「比叡…頑張ります!海軍で頑張ってエリーのいるオーストリアに旅行できるくらい頑張って…絶対にエリーに会いに行きますから!」

 

「うん!待ってるから!」

 

「榛名も比叡お姉様も大げさですね日本からオーストリアまでたった9000kmです。今生の別れでもないのに」

 

「ふふ…じゃあ霧島ちゃんも会いに来てくれるのね」

 

「当然です!絶対に!」

 

「…金剛」

 

「…もう行くデスか」

 

「…ありがとう金剛ちゃん」

 

「お礼言われるようなことなんてしてないデス」

 

「ねぇ?金剛ちゃん」

 

「…なん…デスか」

 

「私とずーっと友達でいてくれる?」

 

「…日本語って難しいデスよね、でもこうゆうときいてくれる?なんて遜った言い方したらダメだヨー!」

 

「…そうだね!」

 

「手紙、書きマス」

 

「私も」

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?あなた達にしては静かね。紅茶冷めてしまうわよ」

 

「なんだかネー…エリーがいないからさみしいデス」

 

「…はい…今頃どうしているのでしょう」

 

「今頃は青島ね…あなた達がマカロンを食べないなんてよほどなのね」

 

「三笠司令!榛名、エリーちゃんに会いにいきたいです」

 

「はい!どうしたらまたエリーにあえますか!」

 

「比叡…そうね、外交交渉を任されるようになるか…あるいは陛下を護衛する御召艦としてオーストリアまで行くことがあれば叶うのではないかしら」

 

「Mysister!お茶してる場合じゃありまセン!訓練頑張りマスよ!」

 

「はい!お姉様!」

 

「あらあら…うふふ」

 

 

「み!三笠司令!!」

 

「あら鹿島もお茶にする?」

 

「し、至急電です!」

 

「…確認…始まったわね」

 

「ご命令を!」

 

「非常警戒宣言、艦隊を第二戦闘配備で待機させなさい。敷島に事態を報告。私は海軍省に向かうわ…あと余計なことは言わなくていいから」

 

「はい!」

 

「…サラエボでフェルディナント皇太子暗殺、セルビアに対しオーストリアが宣戦を布告…か」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。