今回は毛利編です!隆元が死んだ後、毛利家に実際何が起こったのか…
気合い入れて書いたので是非、読んで見てください!
突如として毛利家に起こった悲劇…
元就の嫡男、隆元の死は家中に衝撃を与えていた。この悲報に尼子家征伐のために出雲の国境に布陣していた毛利軍は直ちに陣をたたみ本拠地である吉田郡山城に撤退することになった。
元就を初めとした臣下たちも動揺し、こうなってしまっては戦どころではなく元就は家中の混乱を収集しようと必死だった。
特に重体だったのは三女の隆景であり、兄の死を聞いた彼女の精神的衝撃は大きくその日を境に起き上がることも出来なくなり自身の城である三原城の寝室で寝たきりの状態が続いていた。
しかし毛利家の悲劇はこれだけでは終わらなかった。毛利隆元という男が毛利家にとってどれほど大切な存在だったのか…彼の死がどれほど大きなものだったのかを彼らは思い知ることになる。
・安芸 吉田郡山城内
「…皆、集まったな」
数日後、元就によって重臣たちが吉田郡山城に召集され評定が開かれていた。その中には吉川元春や穂井田元清、そして元就の娘婿である宍戸隆家と言った毛利家の将たちの姿があった。だが評定の席には空席が二つあり一つは毛利隆元の席、もう一つは小早川隆景の席だった。
「元春どの…隆景どのの具合はどうなっておる?」
「…あれから寝たきりじゃ、何も話さんし飯も食わん」
「あれほど取り乱された景さまを見たのは初めてです…無理もありませんね、だって兄上さまが亡くなられたのですから…」
「……そうか」
評定の場が沈黙の空気で満たされる。元春や元清だけでなく家臣たちも浮かない表情で黙り込んでいた。なんとか家中の混乱は治めることができたが未だに動揺が続いていており、それほどまでに隆元の死は毛利家に衝撃を与えたのだ。
「…おやっさん!仇討ちじゃあ!兄者を殺した和智誠春は断じて許さん!必ず自分が叩き斬る!」
「大殿、先陣はこの隆家にお任せを!必ずや義兄上の無念を晴らし、尼子家を討ち滅ぼすのです」
「…いえ父上さま!僕に先陣をお命じください!!卑劣な手段で兄上さまを殺した和智を許せません!」
「……」
彼らの言葉をきっかけに重臣たちも負けじと声をあげる。大切な存在である二代目当主を殺されて黙っている訳にはいかない。必ず隆元の無念を晴らさんと復讐に燃える毛利家だったが当の元就はじっと黙り込んだままだった。
「おやっさん!!どうして黙ったままなんじゃ!おやっさんは兄者を殺されて悔しくないんか!」
「そうです!義父上!ご命令を」
「…皆の気持ちはよく分かる。わしとて同じ気持ちじゃ。しかし…今の毛利家は戦どころではないのじゃ」
「父上さま…?それはどういうことですか?」
後日、その言葉の理由を毛利家の全員が知ることになる。その後隆元の仇討ちの為に毛利家臣たちは再び尼子征伐に向けて軍備の増強と徴兵を行っていたのだが準備は遅々として進まなかった。
・数日後
「な、なんじゃと!?それはどういうことじゃ!」
思わず声をあげて驚愕していたのは元春だった。元清や隆家から聞かされた耳を疑う出来事に元春だけでなく元就や臣下たちも驚きを隠せなかった。尼子征伐の為に軍備を増強するべく行動していたのだが突如、これまで毛利家と交渉していた商人からの軍資金の投資が止まってしまったのだ。
軍資金がなければ軍備の調達はおろか元就の得意とする調略だけでなく徴兵もできない上に国内の内政にも多大な影響を及ぼすことになる一大事だ。
「元清!いったいどういうことじゃ!何故、急に商人からの投資が止まったんじゃ!」
「…申し訳ありません。じ、実は…」
「なんじゃ!はっきり言わんか!」
「その…父上さまには銭は貸せないと、きっぱり断わられて…」
「……」
元清のその一言に元就と元春は思わず口をつぐんだ。この時、二人はあることを思い出していた。それは数年前に起こった毛利家の命運をかけた一大決戦である"厳島の戦い"が起こる直前のことだ。
あの決戦に勝利するために毛利家は瀬戸内海の水軍、村上水軍を味方に引き入れる為に奔走していたのだが、利によって動く彼ら水軍を動かすためには多額の金銭が必要だったのだ。しかし元就の権謀術数の数々によって毛利家は周辺の国人衆や商人たちからの信用はほとんど無く、どれほど頭を下げて頼んでも一銭すら貸してもらえなかったのだ。そこでやむ無く隆景が村上水軍の説得に向かったのだが、銭が無い以上いくら弁舌と知謀に優れた隆景でも村上水軍を説得することはできず、そればかりか一歩間違えれば命を落としかねない危機に陥ってしまった。
そんな毛利家の危機を救ったのが当時は無能や穀潰しと批判されていた隆元だった。なんと隆元は父や他の者ですら借りられなかった金銭を借り受けただけでなく銭も使わずに村上水軍を説得し毛利家の勝利に大きく貢献したのだ。
それからは以後、毛利家が金銭で頭を悩ますことは無くなったが思えばそれは隆元が商人と交渉するようになってからのことだった。あの一件以来、商人との交渉はすべて隆元の名義で行っていたのだが彼が死んだ今、商人に信用してもらえるような人材が毛利家には存在しなかったのだ。
「じ、じゃが…!あの商家は少し前まで何も言わずに毛利家に投資してくれたじゃろう!」
「…それが、商人の皆さんが口を揃えて言うのです」
"隆元様がご存命なら何とかするのに…"と
「……」
「恐れながら、兵の募集も思うように進みません…これまで徴兵は義兄上が担当されていましたが、私が引き継いだ結果、この始末…申し訳ありませぬ」
「…兵だけではありません。援軍要請を依頼していた周辺の国人衆からも出兵の出し惜しみが発生しております。さらに各国の国人衆に不穏な動きが見られます」
口を出したのは毛利の宿老で古くから元就に仕える老臣の口羽道良だった。内政手腕に優れ、後年に"名家老"と謳われるほど人物だ。彼の口からさらに耳を疑う出来事が皆に伝えられた。聞けば隆元の治めていた領内である長門の国で小規模な暴動が起こっているそうで理由は言うまでもなく隆元が死んだことが原因だ。
「…特に金銭収入が著しく低下しております。このままでは備蓄している金銭を用いたとしても長く見積もっても半年ほど。大殿、ご決断を…」
「……」
「な、何故…兄上さまが亡くなられた途端にこんな…」
「兄者…」
その場にいた全員が言葉を失っていた。隆元が死んだ途端に毛利家に数々の異変が起こり始めていた。そして皆が思っていた…毛利隆元が見えない陰で父や妹たちそして毛利家をどれだけ支えていたのかを。
そう元就の言っていたのはこの事だったのだ。
この後、毛利家は減少した財政や各国内の治安維持の為に奔走することになり、とても尼子征伐を再開する余裕は無くなっていたのだ。毛利家の財政が回復するのは数ヶ月後に再び行われる尼子征伐によって出雲の"石見銀山"を手に入れるまで続くことになる。
・安芸 三原城内 寝室
三原城は小早川隆景によって築かれた城で瀬戸内の因島や大三島といった数々の島を治める村上水軍や小早川水軍を統括するために築かれたのがこの三原城だ。
十代で小早川氏を受け継いだ小早川隆景の見事な善政によって国が治められて平和が保たれていた。しかし、そんな彼女の心は絶望の底にあり、兄である隆元の死を聞いてから失神した後ずっと居城である三原城の寝室で寝たきりになっていた。
そんな隆景を心配して大急ぎで三原城にやって来たのが村上水軍頭領・村上武吉だった。かつてはお互いに対立していた間柄だが現在では隆景のことを"小早川のお嬢"と呼んで信頼しており、傘下の海賊たちも皆彼女に心服していのだ。さらに城下の民たちも隆景を心配して連日、城門に数多の民たちが押し寄せる事態になっていた。
「…お嬢。入るぜ」
「……」
音を立てないようにそっと襖を開け、武吉は寝間着で寝ている隆景の側に腰を下ろす。しかし、隆景は何も答えず横になったままだ。
「……」
「隆元のこと…聞いたぜ」
「……」
「…すまねぇ、お嬢。俺がいながら何もできなかった…!すまねぇ…!!」
武吉にとっても隆元の死は衝撃だった。今でも彼の脳裏には隆元のあの姿が焼き付いて離れなかった。自分の命を省みず、妹たちや毛利家を守るために見せた死を恐れぬ勇姿と強き魂を…
自身が"天下人の器"と認めた男の後ろ姿を…
「……」
一方、武吉の言葉に隆景は反応を示さず虚ろな瞳で今にも死んでしまいそうな表情でじっと動かない。今の彼女にはどんな言葉も届かない、その姿はまるで壊れてしまった人形そのものだ。
「…畜生ッ!隆元ッ!何故死んだ!早すぎるぞ!!お嬢を…妹を遺して死ぬなど許されると思うのか…!!」
武吉の悔しさと怒りを込めたその叫びが隆元に聞こえることは無かった。その後、武吉は毎日三原城に訪れ隆景を言葉をかけ、何とか立ち直らせようとした。
史実でも地味ですが、隆元は縁の下の力持ちとして毛利家を陰で大いに助けていたんです!
そんな隆元が格好よくて私の憧れです!
この後の物語は壊れてしまった隆景がどうやって立ち直ったのかを描いていこうと思っています!