七難八苦戦記   作:戦国のえいりあん

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久しぶりに織田信奈の野望を読み直してたら続きを書きたくなったので…
鬼滅×鬼武者の続きもあるのにどうすんだよ!私!

ちなみあれから数年経過してますケド…未だに両川姉妹大好きですよ!


第十二話 毛利軍の筑前侵攻

 

 時と場所は移り中国地方。出雲の尼子義久を降した毛利元就はついに中国十ヶ国を治める中国の覇者となり、その影響力は絶大なものになっていた。毛利家はその支配体制を磐石にするべく内政に力を注いでいたが長年による激戦と激務が祟ったのか嫡男を失って生きる気力を無くしたのか当主の毛利元就は体調を崩し始め徐々に衰弱していった。

 

 そんな中、毛利家にある重大な一報が届いていた。これを機に筑後の姫大名・大友宗麟との激しい戦いが起こることになる。吉田郡山城の評定の間に家臣を集めた元就は軍義を開いていた。

 

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・安芸  吉田郡山城 評定の間

 

 

「ゴホ!ゴホ!…皆、集まったようじゃな」

 

「お、おやっさん!大丈夫けぇ?」

 

「父上さま、やはり休まれたほうが…」

 

「ふふ…案ずるな、この元就まだ死ぬわけにはいかぬ」

 

 気丈に振る舞ってはいるがどう見ても気分が悪そうだった。元就の齢は既に七十四であり、頭髪はすっかり総白髪となり身体は弱り果て今にも倒れてしまいそうだ。謀神と恐れられた稀代の知将も寄る年波には敵わずかつての覇気を失っていた。

 

「父上、二人の言うとおりだ。やはり休まれたほうがよろしいかと…ここは私や姉者にお任せを」

 

 そんな元就を励ましたのは兄を失った失意からなんとか立ち直った小早川隆景だった。実は彼女が立ち直ったのはつい最近のことであり姉の元春や元就、そして多くの者たちの激励によって崩壊しかけていた彼女の精神は既の所で事なきを得たのだった。しかし、立ち直ったのは良いものの未だに兄である隆元の死を乗り越えられておらず元就と同様に彼女もまた本調子ではなかったのだ。

 

「隆景どの…すまぬな。じゃがお主も数日前にやっと立ち直ったばかり…無理はいかぬぞ?」

 

「…はい。父上や皆にも心配をかけた、私はもう大丈夫」

 

「隆景、心配はいらんけぇ!自分がおどれやおやっさんの分まで動く、安心して休んでおればええ」

 

「姉者…ありがとう。でも、姉者こそ無理をし過ぎた。今まで父上や姉者に無理をさせた分、私が行動しなければ…だから私に任せてほしい」

 

 そんな精神状態でもあっても隆景は引き下がろうとしない。もちろん本調子ではないが自分が動けないせいで毛利家が危機に陥るのはどうしても許せなかったのだ。何もせず嘆いているだけではきっと死んだ兄者に笑われてしまう…隆景は自分の心にそう言い聞かせて精神を保っていた。

 

「分かった。此度の戦は二人に任せよう」

 

「おう!戦じゃあ!大友宗麟をしごうしたるけぇ!」

 

「ああ、この期に筑前を手に入れ九州攻略の足がかりとしよう!」

 

「はい!姉上さま、景さま。僕もお供します!」

 

 毛利家に届いた一報、それは北九州の情勢を大きく動かす内容だった。筑前国内にある岩屋城、その城主である高橋鑑種が主君である大友宗麟に対して反旗を翻したのだ。鑑種はかねてより宗麟に不満を抱いており、幾度となく鑑種に謀反の企みありとの情報が宗麟の耳に入っていたのだが、宗麟は"鑑種は忠節無比の人物であるから謀反など企んでいるはずがない"と鑑種を疑わなかった。

 

 しかし鑑種の企みは本当だった。数年前からすでに毛利隆元を通じて毛利家に内通しており、毛利家が大友家から筑前を奪取した暁には筑前国の内、六郡の領地を与えるという条件で秘密裏に寝返っていたのだ。高橋鑑種は武勇に優れた将で、大友家が伊予の西園寺家を討伐する際の合戦では名将と言われた土居清宗を見事に討ち取っているのだ。

 

 そんな鑑種の謀反の理由は宗麟への不満と不信感によるものだった。かつて大内家の養子となって家督を継いだ宗麟の弟・大内義長が大内家の当主だった時、義長を助ける為に毛利方の諸勢力の調略を命じられていた鑑種はその準備に奔走していたのだが突如として両家が和睦してしまったことでそれまで苦労して進めていた調略が無駄になった上に面目も失ってしまったことを恨んでおり、さらに徐々に南蛮文化へと傾倒する宗麟の行いにも嫌気がさしていたからだった。

 

 鑑種の謀反の知らせを聞いた宗麟は直ちに猛将である戸次鑑連(後の立花道雪)を総大将に吉弘鎮理(後の高橋紹運)といった主力の武将たちを岩屋城に派遣し早期に謀反を鎮めようとしたが事態は宗麟の予想以上に深刻になっていた。鑑種は秘密裏に挙兵の助力を依頼していた肥後の龍造寺隆信と同じく豊前の古処山城主、秋月種実に連絡を取った結果、これら勢力が一斉に大友家に対して反旗を翻した。

 

 さらに元就の調略によってすでに毛利家に内通していた宗像氏、筑紫氏、原田氏などもこれらの動きに呼応して次々と大友家に対して挙兵したのだ。瞬く間に筑前は反大友勢力入り乱れる激戦地帯となったのだった。

 

 そんな中、かねてより毛利家に内通していた鑑種は元就に援軍を要請し筑前の奪取を確実なものにせんとしたのだ。その援軍要請に応じた元就は両川姉妹を中心とした遠征軍の派遣を決定し約三万の大軍を動員した。数日後、命を受けた両川姉妹は直ちに軍を編成し下関へと兵を進めると、九州へ進軍するべく村上水軍の協力の元に渡海の準備を進めていた。

 

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・数日後  長門 櫛崎城

 

 

 櫛崎城に到着した毛利軍は準備を整え、今まさに海を渡らんとしていた。具足を身に付けた元春と隆景は海の先に見える九州の地を眺めていた。

 

「…いよいよだな、姉者」

 

「おう!自分と隆景がおれば大友軍など恐る敵はおらんけぇ!」

 

「油断は禁物だぞ。大友軍は南蛮より仕入れた大量の鉄砲に加えて"大筒"と言う最新の兵器を手に入れたと聞く、それに大友宗麟は父上にも劣らぬ切れ者だ。激しい戦になるだろうな」

 

 大友家との戦は今回が初めてではなく、これまでに幾度か戦ったことがあった。特に大友家の猛将であり"雷神"の異名で恐れられている戸次鑑連には何度も手こずらされており、今回の戦では彼が大友軍の総大将だと言う情報も入っている。

 

「激しい戦になりそうじゃな、じゃが此度の戦に勝利すれば筑前と博多の支配を磐石な物にできるのう」

 

「……ああ、そうだな」

 

「ん?どうしたんじゃ、ぼーっとして。やっぱりまだ気分が優れんのか?」

 

「ああ…正直に言えば本調子ではないが、少し気がかりなことがあってな」

 

「ひょっとしておやっさんのことか?」

 

 もちろんそのことも気がかりだったがそれとは別に隆景はあることを案じていたのだ。

 

「此度の遠征軍は毛利家の全兵力の半分以上を動員している。総大将は私と姉者、それに毛利の主な主将もこの遠征軍に加わっているな」

 

「相手はあの雷神じゃ、こちらも相応の戦力で挑まねば苦戦は必至じゃけぇ」

 

「ああ、それは分かってる。大友軍の戦力は約三万八千だと情報が届いている。あの戸次鑑連率いる精鋭と戦うためにはこちらも精鋭が必要だ。しかし…」

 

「しかし?」

 

「我らが九州に出兵している間、本国はがら空きになってしまう。安芸には病床の父上と幼い姪の輝元に加え老臣たちのみ…背後から他の大名に襲われる恐れがあるのではと心配なのだ」

 

 そう隆景が案じていたのは自分たちが九州に渡海した後のことだ。もし大友軍と戦をしている最中にがら空きになっている背後を襲われでもしたら一大事だ。万が一本国に危険があっても九州からではすぐに本国に撤退することは難しい。

 

「因幡の山名豊国、備前の浦上宗景、備中の三村元親、土佐の長宗我部元親…我が毛利の領土を狙っている諸大名は未だに数多いぞ」

 

「大丈夫じゃ、背後のこともしっかりと考えとる。おやっさんが無策でこのような遠征をするはずがないけぇ」

 

 元春の話によれば因幡の山名豊国は優柔不断かつ臆病な男であり、保守的で野心もないため自分から攻めてくることは無いそうだ。備中の三村元親は現在、謀殺された父・家親の仇討ちに燃えており、現在、浦上宗景と戦の真っ只中だ。ちなみに元親の父である家親を暗殺したのは後に梟雄として下克上を成し遂げることになる悪名高い宇喜多直家だ。この時彼はまだ浦上家の家臣であり迎撃を命じられた直家は自慢の短筒で家親を秘密裏に撃ち殺し損害なく三村軍を退けたのだ。土佐の長宗我部元親は現在、四国の統一に躍起になっておりこちらの情勢には興味がなかった。

 

「…という事で、兵を出すなら今が絶好の機会という訳じゃ。本国にはまだ一万の兵が残っとる上におやっさんもおる、心配はいらんけぇ!」

 

「…だとよいのだが」

 

「それに筑前は反大友勢力で溢れかえっとる、我らが加勢すればすぐに決着が着くはずじゃ」

 

「…ああ、そうだな。我らは我らの任を全うするのみ。大友軍を打ち破り筑前を手中に治めるぞ」

 

「おう!」

 

 そんな中、大半の部隊が渡海を終えた頃にようやく元春と隆景の部隊を送る最後の輸送船が港へやって来た。迎えに来たのは村上水軍の頭領、村上武吉だった。

 

「お~い!!小早川のお嬢!吉川のお嬢!」

 

「武吉!よく来てくれた」

 

「何、お嬢たちのためならお安い御用だぜ。ところで気分はどうだ?」

 

「ああ、心配ない。武吉…お前には感謝している」

 

「気にするな、俺とお嬢の仲じゃねぇか。こんなことしかしてやれなくてすまねぇな…」

 

 隆景が立ち直れたのは毎日、隆景の元に通いつめ励まし続けた村上武吉の激励の効果もあったのだ。もちろんまだ彼女が完全に立ち直れていないのも武吉には分かっていた。

 

「お嬢…分かってるとは思うが、無茶はするなよ?」

 

「…私は大丈夫。毛利の皆のためにこんなところで立ち止まっているわけにはいかない」

 

「なら安心だ。さあ、乗りな!九州まで送ってやるよ!」

 

(見ていてくれ、兄者…毛利と家族を必ず守ってみせる!)

 

 様々な思いを胸に秘め、隆景と元春たちは九州へと船を進めた。目指すは筑前…相手は大友家随一の猛将・戸次鑑連率いる精鋭。九州にて激戦が始まろうとしていた。

 

 

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・堺  本阿弥光悦の屋敷

 

 毛利軍が九州へ出陣して一ヶ月後。宗秀の命で中国地方の情報収集をしていた蛍によってその情報は堺にいる宗秀の元に届いていた。堺の瓦版にも掲載されていない最新の情報であり、それを聞いた宗秀は直ちに勝久や鹿之助たちを一室に集めた。

 

「みんな集まったな」

 

「宗秀、急に皆を集めて何かあったのか?」

 

「ああ、吉報だ。蛍がとんでもない情報を持ち帰って来た」

 

「とんでもない情報…ですか?」

 

「…毛利家と大友家が戦を始めた」

 

 その一言にその場にいた全員が驚愕しており状況は再興軍が予想していた以上の事態になっていた。現在、毛利軍三万が九州に渡海し筑前で反大友勢力と連携して大友軍と交戦中であり、その影響で本国である安芸周辺諸国の城の守備は薄くなっているのだ。特に因幡の山名家は攻めてこないと確信していたのか出雲の守りは特に手薄になっているそうだ。

 

「これは天が我らに与えた好機です!姫様、叔父上、宗秀殿、この好機を逃す手はありません!」

 

「うむ、兵糧・武具もあと一月ほどで整う。挙兵する絶好の機会だ」

 

「「やりましたな!鹿之助様!尼子家ばんざーい!!」」

 

 特に尼子家の再興を心から願う久綱や鹿之助、十勇士たちはこの好機を大いに喜んでいた。もし上手くいけば尼子家再興はおろか出雲を奪い返すことも夢ではない。しかし、話を聞いていた勝久は少し浮かない表情をしていた。

 

「……」

 

「ん?お姫様、どうかしたのか?」

 

「い、いえ…もちろん挙兵の好機ができたのは嬉しいです。でも…」

 

「でも?」

 

「戦が始まるのは、やっぱり怖いです…本当に私たちは勝てるのでしょうか?あの毛利家に…」

 

 総大将として覚悟を決めたとはいえやはり勝久は未だに不安を隠しきれないようだ。直接戦に出ないとはいえ齢十三歳の少女が全軍の総大将となるなど今から考えても無茶な話だ。必要最低限の大将としての知識や心構えは久綱から学んだが後は自分自身の心と戦わなければならない。

 

「俺だって怖いさ、元々勝ち目の薄い戦いだ。でもどんな無謀な戦いでも俺は鹿之助たちと最後まで俺は一緒に戦う」

 

「…宗秀」

 

「ここで止めるのも一つの選択だぞ」

 

 宗秀の言うとおり今ならまだ引き返せるが一度足を踏み入れれば戻ることは許されない。尼子家を再興するまで宿敵である毛利家と戦い続ける宿命を背負わなければならなくなる。だが勝久は首を横に振る。

 

「いいえ…確かに怖いですけど、ここで逃げたらきっと私は一生悔やむことになるでしょう。もう逃げたりしません!宗秀や鹿之助…そして尼子家のみんなのためにも私は戦います!」

 

「…君は本当に強い子だな、俺が全力で君を支えるよ」

 

「はい、どうか未熟な私を支えてください宗秀。あなたが側にいてくれれば私は頑張れる気がするんです」

 

 その後、再興軍一同で今後の方針を話し合うことになり様々な意見が出たが最大の問題はどこで挙兵するかだろう。兵は再興軍の呼びかけで召集できるが再興軍には拠点がなく、せっかく集めた軍需物資を運ぶ場所がないのだ。どこを拠点にするかによってどう物資を輸送するのかも考えなければならないため未だに解決すべきことは山積みだ。

 

「うむ、問題はそこだ。何かよい手はないものか…」

 

「叔父上、私たちが京に向かったように船を使ってはどうでしょうか?」

 

「そ、そうですね、鹿之助の言う通り海路を使ったほうが移動も速いです。やはり、あとはどこで挙兵するを決めないと…」

 

「海路を使うのはええけど物資の輸送はどないするんや?」

 

「それに関して大丈夫だ、宗久が責任を持って現地まで商人を貸してくれるって言ってた」

 

 軍需物資に関しては宗久が商人を手配してくれるようで責任をもって現地まで物資を送り届けると言ってくれている。だが、やはり問題になるのは挙兵する場所だ。そんな時、地図を見ていた宗秀はある場所に目をつけていた。

 

「…なあ、ここはどうだ?」

 

「え?ここは…」

 

「隠岐諸島…ここなら出雲にも近いし、海路を使って物資も輸送できる。ここに一度、軍需物資を集めてここから兵を挙げるってのはどうかな」

 

 宗秀が指差したのは日本海北にある出雲に近い隠岐諸島だった。ここは出雲国内であるが未だに毛利家の支配が行き届いておらず中立地帯になっており、密かに挙兵するには絶好の場所だった。これを見た一同全員がこの地での挙兵に賛成していた。

 

「さすがは宗秀殿!挙兵するならここしかありません!」

 

「ふむ…悪くない、この地の領主・隠岐為清殿は尼子と多少ながら縁がある。事情を説明すれば軍を駐屯させてもらえるやもしれぬ」

 

「ですが叔父上、この周辺は奈佐日本之介の"丹後水軍"の支配下です。我らの輸送船を通過させてくれるでしょうか?」

 

「わしが日本之介殿に会い、船団の通航ができるよう交渉してみよう。もちろんダダでという訳にはいかぬであろうが…」

 

「つ、通航料が必要であればお支払いします、どうか奈佐殿と話してみてくれませんか?」

 

「御意」

 

 こうして再興軍は出雲近くの島である隠岐諸島を挙兵の地と定め行動を開始したのだった。

 

 




信奈気分が継続すれば続きを書くかもデス…
あと七難八苦戦記を全話確認して少し内容を整えたのでちょっと読みやすくなってるかなと思います!
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