七難八苦戦記   作:戦国のえいりあん

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続きを書きました!
実はストーリーの展開はずっと前から考えていました!
後は飽きずに書き続けられるかどうかですね…
やっと再興軍が挙兵に向けて動きはじめます!


第十三話  再興軍進撃!

 

 毛利家と大友家が筑前での開戦の報から二週間後、隠岐諸島を挙兵の地と定め、尼子再興軍は本格的に挙兵に向けて行動を始めていた。今井宗久に依頼していた軍需物資と兵糧がすべて揃うまであと数日後となり、再興軍の武将たちはそれぞれ各自の任務に勤しんでいた。

 

 久綱は輸送隊の通航交渉を行うべく丹後水軍の頭領・奈佐日本之介の元へ、鹿之助は十勇士たちと自身が集めた選りすぐりの浪人や武芸者を集め来るべき戦に向けて訓練に励んでいた。勝久は引き続き総大将と大名として必要な知識や教養を学びながら未だに潜伏している尼子家の旧臣たちと面会する日々を送っていた。そして、残った清河宗秀は屋敷の自室にて机の上にある書類と睨みあっていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

・堺  本阿弥光悦の屋敷 宗秀の部屋

 

 「……」

 

 難しい表情で机の前にある書類の山から一枚ずつ重要書類に目を通し印半を押す宗秀の姿があった。そんな宗秀の背後から傭兵として仲間になった雑賀孫市が上機嫌で宗秀の背中に抱きついてきた。

 

「あはははっ、宗秀は〜ん!難しい顔してどないしたん?」

 

「重秀か…見ての通り、重要な書類に目を通して印を押してるんだ。はあ~…首が痛ぇ…」

 

「な~んか面倒くさそうな書類ばっかで見よるだけでも萎えんなぁ、なぁなぁ~それよりも、もっとうちに未来の話聞かせてぇな」

 

「悪いが後にしてくれ。今、手が離せないんだ…というか、いい加減離れてくれないか?」

 

「意地悪~うち、すっごいヒマで退屈なんやけど~」

 

「……胸が思いっきり背中に当たってるんだが?」

 

「なに言うとるんよ、わざと当ててるんよ宗秀はん♪」

 

「ていうか酒臭いぞ…昼間から飲み過ぎだ」

 

「別にええやん〜♪あははははっ!」

 

 酔っぱらってにやにやと笑いながら孫市は腕を前に回して激しく密着していた。出会ってから宗秀のことを大層気にいったのか、それから宗秀に対してかなり過激なスキンシップを行うようになったのだ。そんな孫市の独特なペースに困惑しながらも今は仲間としてよろしくやっている。

 

「おいおい、もう少しで戦場に行くんだぞ?準備はいいのか」

 

「な~に言うとるんよ、雑賀衆二百…いつでも準備完了や!どんな戦にでも行ったるで!」

 

 すでに紀州から孫市が招集した雑賀衆の部隊が堺に駐屯しており、彼女の号令でいつでも行動できるよう待機していたのだ。

 

「そ、そうか。…重秀、今さら聞くのもなんだが本当によかったのか?こんな無謀な戦いに参加して…」

 

「ほんまに今さらやな!宗秀はんは気にせんでええんや、十分すぎる報酬も受け取ったし雑賀衆の連中も承知しとる。せやからあんたは自分のことだけ考えたらええねん」

 

「…ありがとな、恩に着る」

 

「そう思うんやったらもっとうちに構ってぇなぁ~…ていうか重秀って呼ばんといてや!うちの名前は雑賀孫市や!」

 

「ん?雑賀孫市って通り名で本名は鈴木重秀だろ」

 

「そんな地味でダサい名前カッコ悪いやん!せやからうちのことは孫市って呼んでや!」

 

「…全国の鈴木の苗字の人に謝ってこい」

 

 そんなやり取りをしている間でも宗秀は手を止めず、机の書類を一つ一つ処理していく。ちなみに光悦たちにを教える傍ら鹿之助に武術を教わっていた宗秀がなぜこんなことやり始めたのかというと…

 

「宗秀はん、最近になって書類と睨めっこしとるけど急にどないしたん?」

 

「まあ…何というか、正式に尼子家の家臣になっちまったからなぁ」

 

 聞けばつい最近、宗秀は総大将である勝久や鹿之助たちを始めとした再興軍の武将たちからの強い懇願によって正式に尼子家の家臣になったのだ。理由は言わずもがなこれまでの宗秀の活躍と功績に加え、未来の知識を持つ彼の才はこれから尼子家を再興するために必要不可欠であると勝久や鹿之助たちの判断によるものだ。

 

「…それで、宗秀はんはそれに応じたってワケやな」

 

「あんな状況で断れるわけないだろ…急に部屋に呼び出されたと思えば、いきなりお姫様に土下座までされた上に再興軍の武将全員から家臣になってくれって懇願されたんだぞ」

 

「まあ、宗秀はんほどの大人物をほっとくなんて勿体ないしなぁ。あ~あ…あのまま家臣じゃなかったら宗秀はんをうちのお嫁さんとして紀州に連れて帰る予定だったんやけど」

 

「それ、お前なら普通にやりかねないからなぁ…」

 

「ふっふっふ…!うちは狙った獲物は逃さへんで?ようやく見つけた天下一の男…ぜ〜ったいにうちの物にしたる!」

 

(いろんな意味で怖ぇよ…この女)

 

 こうして家臣になった宗秀は久綱が行っていた再興軍の機密書類の確認と必要な書類に印判を押すという仕事を任されたわけだ。ちなみに現在、再興軍でこういった事務処理のような仕事を任せられるのは久綱と勝久、新たに再興軍に加わった牛尾兵庫助、そして宗秀の四人しかいないのだ。実は残りの新宮党の残党を中心にした武将たちは戦闘だけに特化したいわゆる武闘派であり鹿之助や十勇士たちも同じ部類なのだ。

 

「前から思ってたんだが、再興軍の連中はみんな脳筋ばっかりなんだよなぁ…」

 

「強さは本物かも知れへんけど、それだけで戦に勝てたら苦労せえへん。ましてや相手は頭のキレる将兵が多い毛利家や、宗秀はん…この戦、あんたの存在が再興軍の命綱やろな」

 

「おいおい、それはちょっと買いかぶりすぎじゃないか?」

 

「冗談じゃあらへんで?多分やけど、宗秀はんがおらんかったら再興軍はあっという間に潰されてまうわ」

 

「……」

 

「まあ、ただの酔っぱらいの独り言や、気にせんといてぇな。あはははっ!」

 

 冗談交じりに話していたが、こう見えて孫市は数多くの戦場を渡り歩いた戦上手であり、戦場の呼吸や流れ…何より戦況を観察し見抜く眼力と勘は相当なものだ。この能力と自慢の鉄砲で傭兵でありながら戦国の世を生き抜いたこの猛者の言葉は確信を突いていた。

 

そんな彼女の言葉を真剣に聞いていた宗秀の元にお茶を乗せたお盆を手に光悦がやって来た。

 

「師匠〜お疲れやす。どないどすかお茶でも飲んで一服しまへんか?」

 

「ああ…光悦か、ありがとう。そうだな、ちょっと休憩するか」

 

「あれ?孫市はん、いたんどすか。っちゅうかお酒臭い!」

 

「あははははっ!こんな気分のええ日に飲まんでどないするんや!そや、光悦も一杯どうや?」

 

「いらしまへん!部屋がお酒臭なるさかいちゃんと酔いを覚ましてきとぉくれやす!」

 

 酒入りの瓢箪をぶらぶらと揺らして酒を勧める孫市を半ば強引に部屋から追い出すと、光悦は宗秀の隣にゆっくりと腰を下ろし正座する。

 

「最近、いろいろ忙しそうどすなぁ師匠。ず~っと部屋に籠って書類と睨めっこして」

 

「…悪いな、家臣になった関係で仕事が増えたんだ。ちゃんと絵の業は教えるから安心してくれ」

 

「あ…そ、そうどすなぁ、師匠はもう少しで戦に行くんどすなぁ」

 

 すると光悦は浮かない表情になる。宗秀たちが再興軍としていつかは堺を発つことになるのは分かっていたが予定より早く出発することになったのだ。覚悟はしていたがこんなにも早く師匠の宗秀が堺を去ってしまうはやはり戸惑いを感じていた。

 

 

「…な、なあ、師匠?戦に行くの延期できへんのですか?」

 

「…ん?」

 

「お、お願いどすえ!うち、もっともっと師匠に教えてほしいことぎょうさんあるんどす!」

 

「光悦…」

 

「師匠にこんなん言うたら怒るかもしれへんけど…あないなちょっとの兵で毛利家と戦うなんて無茶どすえッ!勝ち目なんて絶対にあらへんどす!!死んでまうでッ!」

 

「……」

 

 光悦が必死で止めるのも無理はない。素人が見ても勝ち目のある戦いではないと分かるほど戦力差は明白なのだ。だが、誰に何と言われても今さらやめるという選択肢は宗秀にない。そんな涙目で訴える光悦に対して笑顔で答えた。

 

「心配するな、また必ず帰ってくるさ。俺はまだ死ぬつもりはない」

 

「で、でも…!!」

 

「それにまったくの無策ってわけじゃない」

 

 無謀な戦いであるのは百も承知だ。だが、今の状況は再興軍にとって絶好の機会であり、少しでも勝算を上げるために宗秀もまた策を考えていたのだ。

 

「大丈夫だ!また絶対に光悦に会いに行く」

 

「……」

 

「次に会う時はもっとすごいイラストの業を教えてやるから。な?」

 

 少しの沈黙の後、何かを決意したのか光悦は真剣な表情になり姿勢を正すと改めて言葉を伝えた。

 

「....分かりました。師匠の覚悟を信じますぇ!そのかわり絶対に帰ってきとくれやっしゃ…!絶~~ッ対にどすえッ!!約束どすえ!!」

 

「おう!絶対にな」

 

「そうや!師匠の刀…ちょい貸してくれしまへんか?うちがピカピカに磨いたる!!」

 

「俺の刀…?っていうか、磨く?」

 

「忘れたんどすか?うちの本阿弥家は歴史の長い刀研磨の家柄どすえ?まあ、うちが認めた人の刀しか磨いてあげしまへんけどなぁ!」

 

 多芸多才な光悦だが本阿弥家は本来、刀の研磨と鑑定を生業としており光悦はすでに父親から研磨術の免許皆伝を受け取っているのだ。父親をして歴代の本阿弥家でも随一の腕前であると太鼓判を押されるほどであり将軍家や朝廷からも依頼が来るのだが光悦は自分が認めた人物の刀しか磨かないと固く決めていたのだ。

 

(…何でこんなすげぇ大天才が俺の弟子なんだろうな)

 

「師匠の刀やったら喜んで磨かしてもらいます。無事に帰ってこれるようにって願掛けも込める意味でもどうえ?」

 

「分かった、それじゃお願いしようかな」

 

 そう言うと宗秀は自室の刀掛けから自分の打刀と脇差の二本を光悦に手渡した。刀を受け取った光悦には丁寧に受け取ると出発までには仕上げておくと言い残し部屋から去っていった。そして、部屋に一人残された宗秀は引き続き仕事を黙々と処理し続けた。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

・数日後  堺 光悦の屋敷 勝久の部屋

 

 あれからさらに数日後、宗久に依頼していた兵糧と軍需物資が揃いようやく挙兵の準備が整ったのだ。出雲の反毛利勢力とも連絡済みであり潜伏している尼子家の旧臣たちもいつでも行動を起こせると伝達があったのだ。遂に境を出発するその日、勝久は再興軍の武将たちを部屋に招集し会議を開いていた。

 

「…ようやくこの時が来たな」

 

「はい!叔父上、機は熟しました。尼子家の再興…必ず成し遂げましょう!」

 

「この老骨も微力ながらお力添えいたします」

 

「この五郎左衛門もお供します!」

 

「は、はい!どうか皆様のお力を貸してください」

 

(物資と兵は揃ったな、遂に挙兵か…)

 

 意気込む一同の中、宗秀は難しそうな表情で考え込んでいた。ここまで来たらもはや迷いはないのだが、問題は挙兵した後のことだ。奇襲とはいえうまくいくだろうか?毛利軍の本隊は筑前で交戦しており、そう簡単に出雲の戦線に戻ってくるのは考えられない。一つでも間違えれば全滅してしまうかもしれない…そんな考え込んでいる宗秀を察したのか鹿之助が自信満々に言い放った。

 

「大丈夫です!再興軍には未来人である宗秀殿がついています!宗秀殿の知恵と私の武勇があれば必ずや再興軍は勝利します!」

 

「おいおい、鹿之助」

 

「宗秀、頼りにしています。あなたの力を私に貸してくれませんか」

 

「うむ、お主の知恵があれば毛利と渡り合える、よろしく頼む」

 

 再興軍の武将全員が宗秀に期待していた。この短期間で多くの功績をあげた宗秀の才を一同は全員認めており、もう彼を素性の分からぬ浪人だと言う者は再興軍にいない。これほど誰かから期待されたのは初めてだった宗秀は少し戸惑ったが笑顔で答えを返した。

 

「ああ、全力でお姫様とみんなを支える。…必ず勝とう!」

 

「「「おお~!!」」」

 

(御仏よ…どうか皆さまをお守りください)

 

 その後、挙兵先の隠岐諸島に向かうために宗秀は数ヶ月の間世話になった光悦の屋敷を発つべく部屋を片付けていた。そんな時、宗秀の刀を手に持った光悦が宗秀の部屋に入って来た。

 

「師匠…もう行ってまうんどすなぁ」

 

「ああ、光悦、本当にありがとうな。短い間だったけど世話になった、感謝してる」

 

「…この部屋は師匠の部屋やさかい残しとくね、約束…忘れんといや!」

 

「もちろんだ、また会いに来るよ」

 

「大した力にはなれへんけど…困ったことあったら何でも言うとぉくれやすね、うちにできることやったら力になるさかい!」

 

 そう言うと光悦は手に持っていた宗秀の刀を手渡した。鞘から刀身を少し抜いて確認してみると数日前に渡した時とはまるで別物のような刀になっていた。刀身は美しく磨き上げられ太陽の眩い光をこれでもかと反射しており、切れ味もより鋭くなっているように見えたのだ。

 

「す、すごいな…これ本当に俺の刀か?」

 

「正直、切れ味も形もあんまり良うない量産の粗悪な刀やけど師匠に死んでもうたらかなんさかいえらい綺麗に磨いときました。これならしっかり斬れると思います」

 

「…何から何までありがとな。これで百人力だ」

 

「うちにできるのんはここまでどす。師匠、ご武運を…」

 

「ああ、光悦…また会おうぜ」

 

 準備を済ませた宗秀は荷物を背負い、勝久たちが待つ屋敷の前の広場に走っていくと既に勝久や鹿之助たちが宗秀の到着を待っていた。

 

「宗秀殿!こちらです」

 

「おう、鹿之助。俺は準備完了だ」

 

「…いよいよですね、ずっと武者震いが止まりません…!」

 

「はは、お前は変わらないよなあ」

 

「もちろんです!…宗秀殿、私の武とあなたの知恵があればどんな困難も切り開けましょう、共に姫様をお支えし必ずや尼子家の再興を成し遂げるのです!」

 

「ああ、一緒に頑張ろうな。お前の武勇、頼りにしてるぜ」

 

 こちらこそ!と笑顔で答えた直後、鹿之助は背中に背負っていた穂先が布で覆われた槍を一本宗秀に差し出した。先ほどまでなぜか鹿之助は背中に槍を二本背負っていたのだ。

 

「この槍、どうしたんだ?」

 

「宗秀殿、これを受け取ってください!私からの贈り物です。この数ヶ月…よく訓練を乗り越えましたね、まだ少し足りない部分はありますけど、ひとまず合格です!」

 

「えっ?この槍…俺にくれるのか?」

 

 槍を受け取った宗秀は布を取り、穂先を眺めて見る。穂先の長さは約一尺(約30.3cm)で美しい彫刻が施されていた。柄と石突きを合わせて全長約198cmほどの"大身槍"だった。重量も重めで使い手を選ぶ難しい槍だが乱戦や敵との対決では無類の強さを持つ武器だ。

 

「本当にもらってもいいのか?けっこういい値段したんじゃないのか」

 

「はい!再興軍がこれほど早く挙兵できたのは宗秀殿のおかげでですし、その感謝の気持ちでもあります。どうか受け取ってください」

 

「ありがとう!この槍の持ち主に恥じぬ武将になってみせる」

 

 そう言うと宗秀は試しに槍を持ち構えてみる。鹿之助に教わった構えでその姿は一人前の武士の姿だった。少し重いが体格もあり訓練で鍛えられた今の宗秀になら十分に使いこなせる獲物だった。

 

「ふふ、宗秀殿も槍を構えた姿が様になってきましたね」

 

「はは、お前にそう言ってもらえるなら嬉しいぜ」

 

「その槍を自在に操れるようになれば晴れて一人前ですよ!早く強くなってくださいね、早く宗秀殿にその槍で私をボコボコに…はぁ…はぁ…絶対に気持ちよさそうです…!七難八苦です!」

 

「……はぁ~。…今、この場でお前の背中を突いてやろうか?」

 

 やっぱりお決まりのパターンで空気を台無しにする鹿之助に思わず宗秀はため息をついていた。そうしていると出発の時刻になったのか、再興軍の武将たちが目的地に向かって歩き始めた。

 

「宗秀〜鹿之助〜そろそろ行きますよ!」

 

「お主ら、何をモタモタしている!置いていくぞ!」

 

「す、すみません!叔父上」

 

「ああ!すぐに行く」

 

 振り向くと宗秀を見送りにきた本阿弥光悦や永徳や等伯、そして知り合った梵天丸や今井宗及たちの姿があった。

 

「師匠〜!また会いまひょね!!」

 

「嫌だ〜!まだ先生に教えてもらいたいことが山ほどあるのに…!」

 

「ええい、みっともないぞ永徳!弟子ならば師を堂々と見送るべきだろう」

 

「清河ー!!また我に会いにくるのだぞ!我は…我はまた清河と話がしたいにょだ〜!!」

 

「宗秀はん、ご武運をお祈りしてますわ」

 

 短い間だったが、これほど多くの人物が宗秀のことを案じていた。そんな彼らに宗秀は大きく手を振り笑顔で答えた。

 

「みんな!ありがとうな!必ず堺に帰ってくる、また会おうぜ!」

 

 堺の友人たちと別れ町の外へ出ようとした時、門前で雑賀孫市率いる雑賀衆が宗秀を待っていた。そんな孫市はいつもの一張羅に加えて頭に鈴木家の家紋をあしらった鐘ようなデザインの兜を被っており普段の自由奔放な雰囲気とは少し異なっていた。

 

「宗秀はん、待ちくたびれたで?ほな、行こっか…戦場へな!」

 

「孫市…お前の鉄砲、頼りにしてるぜ」

 

「任せときいや、うちの運命の人を死なせたりせえへん。あんたは絶対に死なせへんから安心しときや」

 

「…いつから俺がお前の男になったんだよ」

 

「言うたやろ〜?狙った獲物は逃がさへんって、この戦でええトコ見せてあんたの心を撃ち抜いたる」

 

 宗秀の腕に縋りつく孫市の背後に少し殺気を放ちながら忍びの蛍が音もなく現れ、ジト目で睨みながら言い放った。

 

「…宗秀様とくっつきすぎ…離れてよ尻軽女…宗秀様を守るのは…あたしの役目…」

 

「ああ〜ん?今なんて言うたこのガキ!その生意気な顔に風穴空けたろか!」

 

「…やる気なの?…いいよ、息の根を止めてあげる…鉄砲なんかよりも手裏剣のほうが…絶対に強い…」

 

「はっ!そんな時代遅れなモンでこの雑賀孫市さまを倒せると思っとるんか?ええで、撃ち殺したるわ!」

 

「…それはこっちの台詞…」

 

 なぜか妙に鉄砲に対抗心を燃やしている蛍はかなり殺る気であり、孫市も蛍の一言が癇に障ったのかこちらも本気だ。そんな二人の間に立った宗秀は蛍と孫市の額に軽く空手チョップを食らわせた。

 

「はぁ~…やめろ、お前ら。味方じゃなくて敵と戦え」

 

「痛ったぁぁ!?」

 

「…痛い…宗秀様ひどい…」

 

「二人ともちょっと頭を冷やせ、これから一緒に戦うのに仲間割れしてどうするんだ」

 

「せやけど!このガキが…!」

 

「……この尻軽女が悪い…」

 

 お互いに鋭い眼で睨み合うがそんな二人に宗秀は淡々と言葉を伝えた。

 

「キツい言い方をした蛍も悪いし、挑発に乗った孫市も悪い。喧嘩両成敗だ、孫市もいい大人なら笑って聞き流すぐらいの余裕を持たないと駄目だぞ」

 

「…はぁ~い…」

 

「…ごめんなさい…」

 

 こうして揉め事を収めた後、宗秀は再興軍、雑賀衆と共に挙兵の地である隠岐諸島を目指し行動を開始したのだった。尼子家の滅亡から半年も経たない内に尼子再興軍は挙兵の準備を整え、今まさに強大な敵である毛利家と戦おうとしていた。

 




次話から本格的に毛利家と戦闘に突入していきます。
原作ではあっけなく失敗に終わった尼子再興軍ですが、この後はどうなるのか…
お楽しみに!
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