七難八苦戦記   作:戦国のえいりあん

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第十五話 尼子家再興

 

隠岐諸島にて挙兵し尼子勝久率いる尼子再興軍は出雲の千酌湾に上陸、その付近の忠山城に続き真山城を陥落させ勢力を拡大、再興軍諸将の活躍により周辺の支城を六箇所を支配していた。

 

 その後、再興軍は宍道湖北岸に位置する末次という地に陣を構え出雲の要所であり大軍を幾度となく打ち破った難攻不落の堅城・月山富田城の攻略を開始しようとしていた。

 

 

・出雲 末次 尼子再興軍陣営

 

「姫様、布陣は完了しました!いつでも城攻めを行えます!」

 

「は、はい!分かりました」

 

「月山富田城を落とし、尼子家を再興致しましょうぞ!」

 

「「おおお〜!!!」」

 

 末次の布陣し山中鹿之助と十勇士たちは今か今かと会戦の合図を待っていた。周辺の支城はすでに再興軍によって陥落し残るは眼前の月山富田城のみ…この城を落とせれば出雲はほとんど支配したようなものだ。

 

(帰ってきたのか⋯半年前は俺たちが毛利軍に包囲されていたんだよな)

 

「⋯宗秀様⋯どうかしたの⋯?」

 

「いや⋯何でもない、基盤となる拠点を手に入れるためにもこの城は必ず落としておきたいな」

 

 早速、勝久は軍議を開き宗秀や鹿之助たちを集め城攻めの策を考えていた。忍びの蛍の諜報によって月山富田城の情報は再興軍の伝わっていた。城主は天野隆重率いる五百の守備兵しかおらずさらに九州攻めの影響で遠征軍によって備蓄米が持ち出されており城内の兵糧は不足していることが分かったのだ。

 

「五百の守備兵なら簡単に落とせます!姫様!この鹿之助にお任せください!」

 

「で、でも⋯五百とは言ってもあんなに守りの固い大きな城を落とせるのでしょうか⋯?」

 

「姫様の言うとおりです。守備兵は少数なれどあの難攻不落の月山富田城⋯一筋縄ではいきませんな」

 

「それに…あまりのんびり城攻めをしている余裕はないぞ。蛍によれば俺たちの動きが毛利軍に伝わったらしい。石見方面からこっちに援軍を出す準備をしているみたいだ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 ここまで抵抗らしい抵抗を受けなったのは相手の虚を完璧に突いた奇襲であったからだ。しかし、再興軍の存在が毛利軍に知れ渡り当初は混乱していたものの周辺各国から残存兵力をかき集め再興軍の進軍を阻止しようと石見方面に毛利軍が集結しつつあったのだ。

 

「やはり力攻めで攻略するしかないか」

 

「うむ、相応の被害は覚悟せねばならぬが⋯」

 

「叔父上、私と十勇士たちが先陣を切ります!」

 

「気をつけろよ?いくらお前でも正面からの城攻めは危険だぞ」

 

「大丈夫ですよ、宗秀殿!城攻めの経験は何度かあります!それに少しぐらい矢が刺さっても私は死にませんから!」

 

「そりゃ鹿之助だけだ⋯全員がお前と一緒じゃないんだよ」

 

「十本ぐらい身体に撃ち込まれても死なない自信がありますッ!(キリッ)⋯あ⋯!想像したらすごいことに⋯!私は矢の雨を受けて針鼠のような姿に⋯はぁ⋯はぁ⋯七難八苦です!」

 

「⋯⋯はぁ~⋯」

 

 そんなやり取りをしていると陣幕の外から馬廻り衆の一人が何者かを縄で縛って勝久の前に連れて来たのだ。

 

「む?この者は何者だ?」

 

「はっ!久綱様、どうやらこの者は月山富田城主、天野隆重からの使者とのこと!」

 

「何だと⋯!?」

 

 馬廻り衆によって連行されて来たのは城主である隆重からの使者であり、その意向を伝えるために勝久に手紙を渡したいとのことだった。 

 

「て、手紙⋯ですか?隆重殿から?」

 

「はっ!我が主よりの書状がここに」

 

「わ、分かりました。拝見しましょう」

 

(⋯なんと、こんな幼子が尼子家の大将だと⋯!?)

 

 使者は勝久の姿を見てこんな幼子が一軍の大将なのかと信じられないような表情をしていた。書状を受け取った勝久は使者を解放するように命じ、その後ゆっくりと書状を読み上げる。

 

「⋯⋯」

 

「お姫様、隆重はなんて言ってるんだ?」

 

「は、はい!どうやら隆重殿は私たちに降伏したいと考えているようです。多勢に無勢ゆえに無駄な血は流したくないと⋯」

 

「な、なんと!それは誠でございますか!?」

 

「おお!それは吉報だな」

 

「⋯は?降伏だって?」

 

 書状には城主の隆重は勝久に降伏したいと記されており、戦う意思はないことを伝えために使者を遺したとのことだ。勝久や鹿之助たちはあの難攻不落の堅城を被害なく落とすことができると歓喜していたが、宗秀だけは何か腑に落ちない表情をしていた。

 

「待ってくれ、この降伏⋯少し怪しくないか?」

 

「え⋯?ど、どうしてですか?」

 

「宗秀殿?城主の天野隆重はきっと我らに恐れをなしています!これで尼子家を再興することができるのですよ!」

 

「…妙だと思わないか?あの元就ほどの男がそんなあっさりと敵に寝返るような奴に後方の重要拠点を任せるか?」

 

「「「⋯⋯」」」

 

 その一言に勝久たちは驚いたような表情で固まった。言われてみばそうであり相手は"謀神"と恐れられるほどの稀代の名将だ、それほどの人物が後方の守りを疎かにしているはずは絶対にないと宗秀は睨んでいたのだ。

 

「た、確かに⋯」

 

「だが、宗秀よ聞けば天野隆重は元々は大内家に属していた豪族衆だ。この戦国の世では時勢と利によって豪族衆たちが主を変えるのは当たり前のこと、警戒しすぎではないか?」

 

「俺が元就なら絶対に裏切らないと確信できる奴を後方の城主にするな。頭がキレる人間はいつでも最悪の事態を想定に入れてるもんだろ?」

 

「宗秀殿、それでは隆重の降伏は⋯」

 

「多分、偽装降伏だろな」

 

 この降伏が偽装降伏ではないかと宗秀は疑っていたのだ。降伏するように見せかけて尼子軍を城へ引きつけて油断している無防備なところを奇襲し大打撃を与える⋯敵はそんな作戦を企んでいるのだろう。

 

「お姫様、その書状に何か他のことは書いてあったか?」

 

「え、えっと⋯隆重殿は降伏を考えていますが他の多くの将兵たちは徹底抗戦を主張しているので、この者たちを説得するためにあと五日ほど時がほしいと書いてありましたね」

 

「なるほどなぁ、それでギリギリまで時間を稼いだ上で俺たちを城に誘き寄せて油断しているところを奇襲する⋯まあ、そんなところだろう」

 

「で、では⋯宗秀殿、天野隆重は降伏する気はないということですか?」

 

「ああ、一日でも多く時を稼いで元就と両川の姉妹が九州から戻ってくるまで城を死守するつもりだろう」

 

 すでに尼子軍の動きは元就にも伝わっているはずであり、本国である安芸に近い出雲が奪回されるのは毛利家の支配体制を大きく揺るがす事態であり、ほぼ間違いなく九州から早々に軍を撤収させるだろう。

 

 そうなってしまえば兵力で大きく劣る尼子再興軍に勝ち目はほとんど無い。今の再興軍の状況は一つでも判断を誤ればあっという間に全滅してしまう極めて危険な状況なのだ。

 

「そ、そんな⋯私たちはいったいどうしたら⋯」

 

「うーむ⋯天野隆重が降伏する気がないのであれば当初の予定通り力攻めで落とすより手段はないであろう」

 

「急がなければ毛利軍本隊が九州から戻って来てしまいます。そうなってしまえば私たちに勝ち目はほとんどありません⋯!」

 

「⋯⋯」

 

 難しい状況に鹿之助や久綱たちも頭を抱えており再興軍諸将の意見はやはり力攻めによって一気に月山富田城を陥落させるべきであるという声がほとんどだった。しかし、宗秀だけはじっと思案し黙り込んだままだった。

 

「あの⋯宗秀、何かいい考えはありませんか?」

 

「宗秀殿、あなたの策を教えてください!」

 

 勝久や鹿之助たちが全員が視線が宗秀に注目している。この軍中でただ一人敵の偽降伏を見破った彼の知恵に皆が期待を寄せていたのだ。

 

「⋯よし!いい作戦を思いついたぞ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、俺が考えた作戦だがな⋯」

 

ーーーーーーーーー

 

・出雲 月山富田城 大居間

 

 城の天守閣には城主である天野隆重とその家臣たちが軍議を開いており、城の目前で布陣している尼子再興軍について話し合っていた。

 

「なんとしてもこの城を尼子軍に渡すわけにはいかぬ!元就様が九州より戻って来られるまで守り抜くぞ!」

 

「ははっ!我ら天野様に従いまする!」

 

 隆重は齢六十ほどの初老の武将であり、若い頃から元就同様に大大名たちの間を巧みに渡り歩いた有力な豪族衆の一人であり、幾度なく戦にも参陣した歴戦の武将だ。勢いのある毛利家に早くから目をつけ、早い段階で大内家に見切りをつけその傘下に加わり厚遇され元就からも評価されている男なのだ。

 

「天野様、しかし我らの手勢は五百足らず。この堅城を持ってしても持ち堪えられるでしょうか⋯?」

 

「うむ、まずは作戦通りに尼子軍に降伏すると伝え城内の将兵たちを説得し開城させると偽り時を稼ぐ。そして、開城させると見せかけ敵を城内の奥深くまで引きつけて一気に叩くのだ」

 

(元就様には多大な恩義がある⋯この命に代えてもこの城死守してみせようぞ!)

 

 やはりというべきか隆重は毛利家への忠誠厚く、尼子家に降伏するつもりなど毛頭なかったのだ。予定通りに時間を稼ぐつもりだったがここで思いもよらぬ事態が起こったのだ。

 

「申し上げます!天野様にご報告!」

 

「どうしたのだ?」

 

「尼子家からの使者と名乗る者が城の城門前に現れました!天野様とのご対面を求めておられまする」

 

「尼子からの使者⋯?」

 

(降伏する書状は渡したはずだか⋯?どういうつもりだ)

 

 とにかく尼子家からの返事を聞いてみるべきと考えた隆重は将兵たちと共に城の正門前に向かうべく大居間を後にした。それから本丸から三ノ丸まで移動し正門に登り見下ろすとそこには武将鎧を身にまとった立原久綱の姿があった。

 

「お主が使者殿か?」

 

「拙者は尼子家家臣、立原源太兵衛久綱でごさる!天野隆重殿にお伝えしたき儀があり参上致した!」

 

「何用か?我らの意思はお伝えしたはず」

 

「降伏の申し出、ご主君はしかとお聞き受け申した!されど我らには時があり申さぬ!五日も待つのは承認致しかねる!」

 

「な、何だと!?」

 

「降伏する意思があれば直ちに開城されよ!さもなくばすぐにでも城を攻めるぞ!」

 

 尼子軍からの予想外の返答に隆重は困った表情になっていた。彼としてはこの五日という間に尼子軍を迎撃する準備を整え万全の体制で城内に引き込み一網打尽にするつもりだった。だが、現状は迎撃する準備はできておらず守りも不完全な状態でありこのまま尼子軍を城内に迎え入れては逆に不利になってしまう危険があった。

 

(むぅ⋯尼子軍がこうも強気とは⋯!敵の大将は年端も行かぬ幼子だと聞いたが、まさか⋯偽降伏が見破られたか?)

 

「隆重殿!如何されたか!まさか、降伏というのは偽りで我らを騙すつもりでありませぬな!」

 

「い、いや!そのようなことは⋯!」

 

「ならばすぐに門を空けられよ!我が主君はすでに来ておられるぞ!」

 

「な、なんと!?」

 

 すると久綱の背後から尼子十勇士たちによって護衛されながら弱々しくも再興軍の総大将、尼子勝久が姿を現した。その姿を見た隆重や守備兵たちは驚きを隠せなかった。

 

「た、隆重殿!私も戦によって無益な血が流れるのは耐えられません!徹底抗戦を主張する者がいるのであれば私が説得します!どうか城を空け渡してくださいませんかっ!」

 

(信じられぬ⋯!あんな子供が再興軍の大将だと!?)

 

「天野様、これは好機ではありませぬか?」

 

 よく見れば勝久を守っているのは十勇士たちと数百の馬廻り衆だけであり、敵の総大将がノコノコと城の門前に僅かな護衛で現れたのだ。隆重の降伏を信じているのかまるで襲ってくださいと言わんばかりに無警戒であり、眼前の尼子勝久を捕らえることができれば勝利したも同然だ。

 

「あの程度の兵ならば容易く捕らえられましょうぞ!」

 

「所詮はただ子供⋯戦というものが分かっておりませぬな。まさか、あれだけの護衛でのこのことやって来るとは⋯」

 

(確かに⋯好機よ!勝久の護衛は数百の馬廻り衆のみ⋯さらにこの周辺は山中ゆえに逃げ難い、奴を捕らえればこの戦、勝てる!)

 

 勝久を捕えることができると確信した隆重はこっそりと配下に命じ、密かに矢倉と城門に兵を集合させていた。勝久とその護衛を可能な限り正門に引きつけて一気に襲いかかる腹づもりだ。

 

(城内に引き入れて捕らえるのも手だが、まだ迎撃の準備はできておらぬ⋯ならば、全力で打って出て尼子勝久を捕らえるまで!)

 

「なんと、勝久殿が自ら来られるとは⋯!分かり申した、直ちに城を明け渡しましょう。門を開けよ!」

 

 月山富田城の三ノ丸の門が開かれ、隆重と毛利軍は勝久を迎え入れようとしている。それを見た勝久と久綱たちはゆっくりと城門に向かって歩き出す。

 

「か、感謝致します!」

 

「さ、姫様。参りましょう」

 

「は、はい⋯!い、行きましょう」  

 

 しかし、勝久と久綱はすでにこれが隆重による罠であることに内心勘づいており、久綱は勝久にこっそりと耳打ちしながら言葉を伝える。

 

(姫様、お気をつけを⋯守備兵の様子が不穏です。やはり⋯)

 

(わ、私なら大丈夫です⋯!みんなのために⋯頑張りますから!)

 

(そのお覚悟⋯しかと受け取り申した。姫様は我らが必ずやお守りします!)

 

 勝久一同が城門に入城しようとした時、門の奥から武装した数百の兵たちと城門の上から弓兵が勝久たちに向かって射撃準備を整えていた。

 

「馬鹿め!我らが元就様を裏切るとでも思ったか!総大将がのこのことやって来るとは実に愚かよ!」

 

「おのれぇッ!天野隆重ッ!我らを謀ったか!!」

 

「尼子勝久!貴様を捕らえれば尼子軍など烏合の衆!者ども、勝久を捕らえよ!」

 

 隆重の号令と共に城門上と左右の矢倉から無数の矢が降り注ぐが、奇襲を予想していた久綱と十勇士たち尼子軍は勝久を守るように囲み、そのまま後退を始めた。

 

「⋯ひっ⋯!!」

 

「「姫様!我らにお任せください!!」」

 

「姫様、私の背後に!者ども退けっ!退けぇー!!」

 

 戦死者を出しながらも勝久を守りながら尼子軍は全速力で三ノ丸から離れて後退していく。これを好機と見た隆重は配下の将兵に追撃を命じ、自身も槍を取ると城から打って出たのだ。

 

「逃がすな!勝久を捕らえよ!奴を捕らえれば勝ったも同然だ!」

 

「「おおおっ〜!!」」

 

 三ノ丸から隆重率いる二百の追撃隊が出陣し、逃げる勝久の部隊を追撃していく。周辺が山中である影響で尼子軍の後退する速度は遅くあっという間に矢の届く距離まで接近してきた毛利軍は再び勝久たちに襲いかかる。

 

(勝ったぞ!尼子勝久⋯これで終わりだ!)

 

 この戦は毛利の勝利だと確信した隆重だったがその考えは瞬く間に覆されることになった。突如、四方八方から銅鑼の音が鳴り響く。周辺の草むらや密林の陰から無数の雑賀衆が出現し、隆重率いる毛利軍を包囲するように布陣し銃口を向けていた。

 

「あはははっ!引っかかったなぁ!ド阿呆!」

 

「な、何ッ!?伏兵か!!」

 

「野郎共ぉ!撃てぇぇ!!」

 

 孫市の号令と共に雑賀衆の鉄砲による轟音が響き渡る。狭い山道に加え、四方八方からの銃声に毛利軍が大混乱に陥り戦意は完全に失っていた。

 

「作戦成功だ!行くぞ!俺に遅れるなよ!!」

 

「牛尾兵庫助⋯いざ参る!」

 

「我が大太刀の錆にしてくれるわ!」

 

「「おおおっ〜!!」」

 

 今度は宗秀と兵庫助率いる伏兵が現れ、毛利軍は壊滅寸前の状態になっていた。隆重も槍を振るって奮闘していたがもはや部隊は立て直せないと判断し残った将兵たちのみで月山富田城に敗走を開始した。

 

「くっ⋯!偽降伏を見破られたか⋯!」

 

「あ、天野様!城へ撤退を⋯!」

 

「退けっ!退けぇー!!城へ退却するのだ!!」

 

 隆重と配下たちは月山富田城へ退却していたが、戻って来た城の姿を見た隆重は言葉を失っていた。

 

「なん⋯だと⋯」

 

 なんと月山富田城が山中鹿之助率いる尼子軍によって攻撃を受けていたのだ。すでに三ノ丸と二ノ丸まで陥落しており本丸だけが何とか持ち堪えているが城主が不在の今の月山富田城の守りはほとんど無に等しいだろう。

 

 実は隆重が城から打って出た直後に付近に潜んでいた鹿之助の部隊が奇襲を仕掛けたのだ。さらに忍びの蛍の裏工作によって城門のかんぬきを開けられ城内も迎撃の準備が整っていなかったことも重なって一気に突破されてしまったのだ。

 

(馬鹿な…こうもあっさりと城を奪われるとは…)

 

「待てやコラァ!!首を置いて行けや!」

 

ズドォォォン!!

 

 唖然と立ち尽くしていた隆重を追いかけて来た孫市が愛銃の八咫烏で撃ち抜いたのだ。弾丸は隆重の肩に命中し被弾した隆重は肩を抑えながらその場に倒れた。

 

「ぐぅッ!!⋯も、もはやこれまでか」

 

「天野様ッ!!城はもう駄目です!お逃げください!!」

 

「この失態⋯元就様に合わせる顔がない。ここで腹を斬ってお詫びする!」

 

「なりませぬ!我らは生きて元就様にこの状況を伝えねば!そうなれば出雲は尼子家に全て奪われます!」

 

「⋯⋯不覚ッ!」

 

 その後、隆重は配下に身体を支えられながら多数の犠牲を出しながらも生き残った将兵たちと共に撤退に成功し戦線を離脱したのだった。それから隆重を追撃してきた尼子軍の伏兵隊と雑賀衆も城攻めに加わり堅城・月山富田城はあっけなく尼子再興軍によって陥落することになった。制圧した本丸に勝久と将兵たちが集結し勝ち鬨の声をあげていた。

 

「姫様!やりましたよ!これでこの城は我ら尼子家のものですよ!!」

 

「姫様は尼子家再興を成し遂げたのです…!おめでとうございます!」

 

「「えいえいおおッ〜!!」」

 

 出雲の要所である月山富田城の陥落により、尼子勝久率いる再興軍は基盤となる国を持ち、再び戦国大名として復興を遂げたのだった。鹿之助や久綱、そして新宮党の将兵たちが涙を流して尼子家再興を喜んでいた。そんな姿を見ていた勝久もつられるように泣いていた。

 

「よかったな、お姫様。これで尼子家はひとまず再興だ」

 

「は⋯い⋯!ありがとう⋯ございます⋯!宗秀、あなたと皆さまのおかげです⋯本当に⋯ありがとう⋯」

 

「今回の作戦、恐ろしいぐらいうまくいったなぁ⋯さすが宗秀はん!うちの運命の人やなぁ〜♪なぁなぁ!今回の戦もうち大活躍やったで!」

 

「ああ、今回の戦は雑賀衆の活躍が大きかった。ありがとな、頼りになるぜ孫市」

 

「あははっ!!せやろせやろ?」

 

「うおっと!?抱きつくなって!」

 

(今回の作戦も上手くいったな…はぁ~…よかったぜ…)

 

 宗秀の考えた作戦は敵の偽装降伏を利用し逆に城を攻める策だった。五日という期限を指定してきたのも時間稼ぎのほかに城内の迎撃体制ができていないからだと睨んだ宗秀は迎撃準備ができていない今が城攻めの好機であると考えたのだ。そこで危険な上に賭けでもあったが総大将の勝久と少数の護衛を囮に敵兵を誘き寄せ伏兵によって一網打尽にすると同時に周辺の地形を知り尽くしている鹿之助を三ノ丸付近に潜伏させて手薄になった月山富田城を落とす…これが宗秀が思いついた策だった。

 

 しかし、当初は勝久を囮にするつもりはなく宗秀自身が行おうとしたがこれに名乗りを上げたのはなんと勝久本人だったのだ。全員が反対したが決めたことは曲げない頑固な一面もある勝久は囮の役を引き受け見事にこれを成功させたというわけだ。

 

「大丈夫か?お姫様、怖くなかったか?」

 

「⋯あ、あはは⋯まだ震えてます…やっぱり、戦は怖いです⋯」

 

「なら、無茶しなくてもよかったんだぞ。囮役は俺がやるつもりだったんだがな」

 

「い、いえ⋯!私が頑張れば皆さまが助かるなら構いません⋯!戦えないですけど、私にできることならなんだってやってみせます!」

 

「⋯立派だな君は。それじゃ早速、君にしかできないことをやってくれないか?」

 

「え、え?何でしょうか?」

 

「皆の前に姿を見せて声を聞かせてやってほしい。君はこれから尼子家の当主だ、主として立派な姿を俺や臣下たちに見せてくれないか?」

 

「⋯⋯はい!や、やってみます!」

 

 宗秀に見守られながら勝久は大広間の上座に立ち、それを見た宗秀と鹿之助たちも跪く。少し震えながらも勝久は精一杯の大声で臣下たちに向かって高らかに宣言した。

 

「み、皆さまのお力のおかげで私は尼子家を復興することができました!ですが、これから先もきっと数々の苦難が待ち受けています⋯私一人では乗り切ることは絶対にできません!私はこの出雲の国を戦のない平和な国にしたいです⋯これからも未熟な私を支えてくださいッ!!」

 

「「「おおおっ〜!!」」」

 

 こうして一度滅びた尼子家は尼子勝久によって再び戦国大名として出雲に復活を遂げたのであった。尼子再興軍による月山富田城の陥落は中国地方や近隣諸国を震撼させ、中国の動乱はさらに激しいのものになっていく…

 

 そして、この出来事は再興軍の運命を大きく変えることになり、この先に様々な苦難が待ち受けることを彼等はまだ知らない。

 

 史実では敗北する運命であったこの戦いに勝利したことで歴史は変わりもう一人の未来人・清河宗秀はさらなる激戦に身を投じていくことになる。

 




史実や原作では再興軍はこの戦いに敗北し、最終的には滅亡する運命でしたがこの勝利で少し運命が変わりました!
もしあの時、尼子家が月山富田城を落としていれば…自己解釈や自分の好みもありますが頑張って書いていきます!
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