第二次月山富田城合戦は毛利家の勝利に終わり尼子家は滅亡し出雲は元就に支配されることになった。出雲を手中に治めた毛利家は中国八ヶ国を支配する大大名となりその勢力は強大なものになっていた。しかし尼子家は滅亡はしたものの、その影響力は完全に無くなった訳ではなく出雲国内には毛利への恭順を拒む者や未だに抵抗する勢力も少なからず存在したのだ。
この反毛利勢力による尼子家の再興活動が後に大きな合戦を引き起こすことになるなどまだ誰も知らない。
そんな彼らが何処で何をしているのかというと…
・山陰近海
「うお~!!海だ!海ですぞ!!鹿之助様!」
「見てください!今、魚が飛びましたぞ!」
「よし!!それがしが捕ってくる!!いくぞ!!」
「なんだと!?抜け駆けは許さんぞ!私が先だ!尼子十勇士ばんざーい!!」
(…元気だなぁ)
山陰近海をゆったりと進む一隻の船。初めての船にハイテンション状態の尼子十勇士たちの叫び声を聞きながら宗秀は海を眺めていた。第二次月山富田城合戦の後、尼子家の降伏を期に宗秀たちは城を脱出し米子へと逃れるとそこから日本海へと出航したのだ。その一同の中には山中鹿之助、立原久綱そして尼子十勇士たちの姿があった。
「まったく、奴らも困ったものだ」
「そういえば、鹿之助や十勇士たちは船に乗るのが初めてだって言ってたが、そうなのか?」
「うむ、これまで船を使う機会などまず無かったからな」
「へぇ、俺は何度か乗ったことがあるぞ」
米子から出航して数日、悪天候や時化もなく船は順調に目的地へと向かっていた。
「予定通りに行けば、もう数日で宮津に着く。そこからは歩きだ」
「結構、大変だな。京までの道のりは遠そうだ」
宗秀たちの行く先は京、現代で言う京都だ。ある目的の為に宗秀一同は京へと向かっていた。
そう、ある人物を探すために…
・数日前 出雲 月山富田城内
時は数日前に遡る。月山富田城では投降者が続出しこれ以上の戦闘継続が不可能と判断した尼子義久は毛利元就に降伏することになった。しかしこの決断に鹿之助と久綱や十勇士たちは断固反対で、彼らだけで毛利陣営に斬り込もうとしたほどで宗秀の必死の説得でなんとか思い止まったものの鹿之助たちは毛利家に投降する気は断じてなかった。
「宗秀殿、なぜ止めるのです!私は決して屈しません!こうなったら敵陣に斬り込んで、討ち死にするまで!」
「いいから落ち着けッ!そんなことしたら降伏を決めた義久の立場はどうなる!」
「いくら殿の命でも、そればかりは聞けぬ…卑劣な毛利などに降るなど断じて出来ぬのだ!!」
「気持ちは分かるが少し冷静なれ、もっと他に方法があるだろう」
いったいどんな方法があると言うのですか!?と血走った目で顔をぐいぐい近づけて言い寄る鹿之助に若干引きながら宗秀は淡々と自身の考えを話し始める。
「俺たちが取れる手段は一つだ、城を脱出して再起図る…これしか最善の手段はない!」
今の自分たちにはもはや成すすべはない、ここは城を脱出し戦力を整え再び再起を図ることが現時点での最良の方法だと考えていが久綱と鹿之助は黙り込んでいた。
「考えなくても分かるだろ?今の俺たちにはどうすることもできない。だからここは逃げて再起を図ればいい」
「確かにそうかもしれません…しかし、それでは逃げるだけでなく義久様も見捨てることになります。本当にそれで良いのでしょうか」
「殿には恐らく尼子家の再興など頭には無いだろう…わしらだけが生き残ったところで何ができるのだ?やはり敵陣に斬り込んで最後の意地を見せん!」
何故、武士という者はこうして死を急ぐのか?せっかくの生き残れる好機を自ら捨てようとしている。それこそ尼子家の未来を託してくれた久兼や死んでいった者たちが報われないではないか。
「まだ何もしていないのに諦めるのか?生きてさえいれば好機は必ず来る。死ぬのは簡単だがそれは楽な道に逃げてるだけだ」
「宗秀殿…」
「どんなことがあっても諦めない…お前が俺に教えてくれたことじゃないか鹿之助」
「あ…」
「生きるんだ、生きてさえいれば何とかなる!」
そうだ、この命がある限り尼子のために戦い続けると誓ったではないか。彼の言うとおり自分の死に場所はここではない、生きて尼子のために戦い続けることこそ久兼や散っていた者たちに少しでも報いられる方法ではないのかと鹿之助は考えていた。
「…叔父上、ここは宗秀殿の言うとおりかもしれません。一か八か城を脱出し再起を図りましょう!!私たちはまだ負けていません!」
「鹿之助、お主まで…」
「ここで逃げるのは主君を見捨てる行為だということは分かっています…ですが、私は諦めません!必ず…必ず私の手で尼子家を再興させてみせます!」
「それでこそ鹿之助だ。あんたはどうする?久綱さん」
「う~む…」
実は久綱も話を聞いている内に宗秀や鹿之助と同じ考えになっていた。ここから脱出し再起を図ることには賛成だったのだが、その後のことを久綱は考えていたのだ。
「確かに再起を図るのは良いがその後はどうするつもりだ?先ほども言ったが、義久様に尼子家再興の志がない限り我らが何をしようと無駄だぞ」
仮に宗秀たちがここを脱出し兵を起こし毛利と戦ってもそれは尼子家の残党が勝手に行っているだけの私闘に過ぎないのだ。尼子家の当主だった義久に尼子家を再興する気持ちが無いのなら宗秀たちの戦いはまったくの無意味だ。そればかりか残党の蜂起を理由に義久に危害が及ぶ可能性もあった。
「なるほど…つまり尼子家再興のための『大義名分』が必要ってわけだな」
「そう言うことだ。義久様の代わりに尼子家の当主となるお方が必要なのだ」
「う~ん…義久に子供か親戚はいないのか?」
「義久様にはご嫡男はいられませんでしたし…他に尼子家の一門がいるという話は聞いたことがありませんね。叔父上、心当たりはありませんか?」
「…残念だが、尼子家の一門はある事件で多くが殺されておるのだ」
「事件?いったい何があったんだ?」
では話してやろうと久綱は語り始める。
それは義久の父である晴久が当主だった時、尼子家にはある軍団が存在していた。その軍団の名は「新宮党」と呼ばれ、謀聖・尼子経久の弟である幸久によって組織された精鋭部隊が新宮党だ。
この新宮党は尼子家の勢力拡大に大いに貢献し尼子家が出雲を始めとした周辺諸国を切り取ることができたのも新宮党の力があったからだと言ってもいいだろう。しかし、その一方で非常に重用された結果、その権限は主家にも匹敵するほどに大きくなっていた。晴久の代に新宮党の当主だった経久の次男・尼子国久とその嫡男の尼子誠久はそれらの権限を鼻にかけ、尼子家中で傲慢に振る舞っていたことから主家である晴久との関係に軋轢が生じ始めたのだ。
新宮党の増長を危惧した晴久はついに新宮党の粛清を計画。国久、誠久親子を暗殺しその一族の多くが殺されたのだ。この粛清で新宮党は壊滅し、晴久は家中を統一することに成功したが、尼子家が誇る精鋭部隊を自らの手で潰してしまったことで、尼子家の軍事力は大幅に低下することになった。この事件は「新宮党事件」として後世に伝わるが、その真意は未だに謎に包まれている。
「あの時、晴久様が何を思ってあのような行動に出たのかはわしにも分からぬ」
まだ尼子家に仕えて間もなかった久綱は事件に関与しておらず事件の真意は分からなかったのだ。
「そんなことがあったのか、その事件の時に生き残った奴はいなかったのか?」
「ああ、あの事件で新宮党の一族の多くが殺された。生き延びた者も僅かにいたが、尼子の一門でない者たちばかりだ。生き残った者など…いや…待てよ…」
思い当たることがあったのか久綱は深く考え込んだ。しばらく考えていると突如、そうだ!思い出したぞ!と言って久綱は話し始めた。
「一人だけ…!一人だけ生き残った者がいたのだ。誠久様には娘が一人おられたのだが、まだ年端もいかぬ赤子であった為に殺されず、寺で保護されたと聞いたことがある!」
「本当か!?何処の寺か分かるか?」
「う~む…確か京の寺の何処かに預けられたと聞いた。すまぬが何処の寺かはわしにも分からぬ」
「…いや、ちょっと待ってくれ。その子って赤子だったんだろ?いったい今何歳なんだ?」
「事件があったのは十年ほど前…おそらくだが十二か十三だな」
「…やっぱり無理だ。そんな小さい子を戦争に巻き込むわけにはいかない。別の人を探そう」
「だが、その娘以外に尼子家の一門は思い浮かばん。そのお方が我らにとって唯一の希望だ」
いくらなんでも無茶だ…主家再興のためとはいえそんな幼い少女を戦争の道具にすることなど間違っていると宗秀は思った。自分ですら戦場を経験して心が折れそうになるほど苦悩したのにその少女にも同じ思いをさせなければならないのかと。
「心配するな、戦場には決して出さぬ。ただ尼子再興の旗頭になっていただければそれでよいのだ」
「そういう問題じゃないだろ!それは俺たちの勝手な都合だ」
「…では、どうするのだ?他に何かよい策でもあるのか?」
そう言われると、宗秀は何も答えられなかった。 その少女を旗頭として擁立する以外に尼子再興の方法はないのだ。乱世だから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが自分たちがこれから行おうとしている事を考えると宗秀はやるせない気持ちになった。
戦国の世はどこまで残酷なのだと…
「分かった…でも、それを決めるのはその女の子だ、道を選ぶぐらいの権利はあってもいいだろ」
「いや、どんな手段を使っても説得してみせよう。出来なければ尼子家再興の夢は潰えてしまう」
「はい、叔父上!そのお方を必ず説得しましょう!」
「……」
「ところで宗秀。お主はどうするのだ?元はと言えばお主は尼子家とは無関係だ。これ以上我らに付き合うこともないと思うが?」
尼子家が滅んだ今、宗秀もまた身を寄せる場所を失ったことになり自身もこれから先のことを考えなくてはならなかった。
「あの…もし、よろしければ共に行きませんか?こうして一緒に生き残ったのも何かの縁です。どうですか?叔父上」
「…まあ、そうだな。今は同志が一人でも多く必要だ。宗秀よ、我らに手を貸してくれぬか?お主は何かと物知りだ居てくれば心強い」
ここで誘いを断れば晴れて自由になり未来へ戻る方法をじっくり探すことができるとも考えたが宗秀の答えはすでに決まっていた。
「…乗りかかった船だ、俺も手伝うよ。何よりほっとけないしな」
もし仮に尼子再興の旗頭を擁立できたとしても相手は中国八ヵ国を支配する大勢力の毛利家なのだ。誰がどう考えても勝ち目が薄い戦いだが鹿之助たちはすでにやる気のようだった。恐らく死ぬまで毛利家に抗い続け、いつかきっと命を落としてしまうだろう。しかし、そうはさせない…今度は俺が彼らを助ける番だと宗秀は考えていた。
「宗秀殿…!これからもよろしくお願いしますね!」
「ああ、長い付き合いになりそうだ。こちらこそよろしく頼むよ」
「うむ、そうと決まれば善は急げだ。早く城を脱出するぞ」
「ああ、城を脱出する手ならもう考えてある。急ごう」
その夜、宗秀たちは投降する兵や女子供たちに混じって密かに月山富田城を脱出した。そして、宗秀たちが城を脱出した翌日に義久は毛利家に降伏し尼子家は滅亡したのだ。その後、宗秀たちは尼子一門、最後の生き残りである尼子誠久の娘を探すために京へと向かったのだ。必ず彼女を見つけ出し尼子家再興の軍を起こすために一同は志を胸中に秘め出雲を後にしたのだった。
・現在 山陰近海
「…とは言っても、気が遠くなる話だな。寺と言ってもごまんとあるだろうし、一つ一つ探してたら何年かかることやら」
現状で分かっているのはその誠久の娘が京の寺の何処かに居る、ということだけなのだ。しかもその話は久綱が噂程度に聞いたものでしかないため確実に京にいるという保証はないのだ。さらに事件から十年近く経っていることもあり彼女がそのまま寺に居るのかどうかも怪しいもので手がかりはほとんどないと言ってよい。
「それでもやるしかないのだ、見つけられなければ、尼子家再興の志は露と消える」
「そうだな、少しずつ地道に探していくしかないな」
そうは言っても悠長に探している時間はあまりない。尼子家が滅亡して間もないこの時だからこそ挙兵の好機であり今なら尼子家の再興活動に協力的な勢力が少なからず存在する上に毛利家はまだ完全に出雲を支配したわけではないのだ。この状況をうまく利用するべきだと宗秀は考えていた。時が長引けば長引くほど反毛利勢力は各個撃破されますます状況が悪化することになるのだ。
「宗秀殿!叔父上!ここにおられたのですね」
「鹿之助か、初めての船はどうだ?船酔いはしてないか?」
「はい!私は平気です。それよりも今でも驚いています…!海はこれほどまでに広いのですね!」
鹿之助もまた船に乗るのが初めてだったが生まれて初めての航海が楽しいのか鹿之助はとても嬉しそうでウキウキしているように見えた。
「ああ、海はすごく広いんだ。この世界のほとんどは海なんだぞ」
「ほ、本当ですかっ!?田舎者の私はそんなこと知りませんでしたよ!」
「…ふ~ん、じゃあ世界が丸いっていうのは知ってるか?」
「え、ええっ!?そうなのですかっ!?この世界が丸い…そんなの信じられませんよ!!」
…いい反応するな、面白いと純粋な鹿之助をちょっとからかってやりたいと思った宗秀はあることを話し始めた。
「本当だ、嘘だと思うならここからこの海をずっと真っ直ぐ進み続けてみるといい、地球が丸いって分かるはずだぞ」
「嘘ですよ!そんなこと有り得ません!宗秀殿!嘘はよくないと思います!」
「その通りだ、お主の言うことをすべてわしらが信じるなどと思わぬことだ。この世が丸いなど信じられん」
「いやいや!?あんたも話に乗るのかよ!」
なぜか久綱まで話題に乗ってきたことに驚きながらも宗秀は気にせずに話し続ける。しかし、この世界に来てからこうして落ち着ける時間が無かっただけにこの気分の休まるひとときは嬉しく思えたのだ。
「まいったなぁ、地球儀でもあればいいんだが…あ!そうだ、俺にはこいつがあったな」
そう言うと宗秀は懐からあるものを取り出す。
そう…スマホだ!!
手慣れた手つきでスマホを操作し画面を見せる。ちなみに鹿之助はというとああっ!!そ、それは!!と驚きながら宗秀から慌てて距離を取った。実はまだスマホを警戒しているのか口をへの字にしてスマホを睨み付けている。
「む?なんだこのおかしな箱は?」
「お、叔父上!気をつけてください!それは未来のまやかしの道具です!油断すると顔を吸いとられてしまいます!」
「まったく意味が分からん」
ちなみに鹿之助の変顔お宝写真はこのスマホにしっかりと保存されている。もちろん本人は知る由もないが…
「き、きっと!魂を抜いてその箱に写しているのですよっ!!ああ、なんて恐ろしいのでしょうか!!そして抜かれた私の魂は地獄の魑魅魍魎どもに八つ裂きに…はあ、はあ…七難八苦です…!」
「そんなわけあるか!!ほら、見てみろ。この小さいのが日本だ。この海の先がこうだ」
勝手に一人で興奮する鹿之助をよそに宗秀は久綱に世界の大陸が載った画面を見せる。
「な、なんと…目を疑うぞ!?この小さい島が日ノ本だというのか!!」
「ははっ、すごいだろ。日本がどれだけ小さい国なのか。世界はこんなに広いのさ。こんな小さい国で俺たちは終わりの無い戦争をずっとしてるんだぞ。戦ばかり続けてたらあっという間に世界に置いていかれちまう。だから、さっさと乱世なんて終わらせないとな」
「……」
「宗秀殿…」
その後、しばらく三人で世界地図を眺めながら時を過ごした。途中から二人が急に話を真剣に聞き始めたことを不思議に思いながら宗秀は心行くまで会話を楽しんだ。そして、時はあっという間に過ぎ日が暮れようとしていた時だった。
「もう暗くなってきたな、そろそろ船内に戻ろう。話なら中でもできるだろ?」
「そうですね!行きましょう!早く続きが聞きたいです!!」
「う〜む…興味深いな、宗秀よ詳しく話を聞かせてくれ」
「はは、興味津々で聞いてくれて話し甲斐があるな。世界についてもっと教えるよ」
三人は船内に戻って話の続きをしようとするがその背後から複数人の声が聞こえ気になった三人は振り向くとそこには釣り糸を垂らして釣りに興じる十勇士たちの姿があった。
「鹿之助様!見てくだされ!!拙者、魚を釣ったでごさる!」
「ふっふっ!あまいな!それがしのはもっと大きいぞ!」
「待て待て!よく見ろ、私の奴のほうが大きいぞ!!」
相変わらず十勇士たちはハイテンション状態でほぼ一日騒いでもその熱気と興奮は止まることを知らない。どうやら十勇士たち全員で船釣りを競い合っているようだ。
「十勇士たちよその魚はどうしたのだ?」
「「「釣りました!!鹿之助様もいかがですか?」」」
まさに息ぴったり、十勇士全員が声を揃えて言う。
「へぇ、船釣りか。ずいぶん釣ったんだな。しかも全部でかいな」
十勇士たちの足元には魚が大量に入った釣籠が何個も置いてあった。ちなみにどの魚もかなり大きいものばかりだった。
「はい!誰が一番大きい魚を釣れるのか勝負をしていたらいつの間にかこうなっておりました!!」
「しかし、なかなか決着が着かないのでござる…」
確かにどの魚も大きいが飛び抜けて大きな魚は一匹も見当たらなかった。十勇士たちが唸っている中、急に鹿之助が甲高く笑いながら言い放った。
「ふふ、お前たちもまだまだだな!ならば私はお前たちよりも大きな獲物を捕ってみせようではないか!」
「「「おお!さすがは鹿之助様!!」」」
「見ろ!話していたらさっそく大物が現れたぞ!私が奴を捕ってみせよう!」
鹿之助たちの視線の先には確かに巨大な魚がいた。釣籠の魚よりも二倍ぐらい大きい魚だ。しかし宗秀はただの魚にしては少し大きすぎないか…?と首を傾げていた。次の瞬間、鹿之助は思いもよらぬ行動に出た。
「鹿之助、いざ参る!!」
「…は?」
なんと上着を脱ぎ捨て、甲板にあった縄を身体に括り付け流されないようにすると銛を片手に海に飛び込んだのだ。どうやら素潜りであの魚を捕ってくるつもりのようだ。
「ば、馬鹿っ!なにやってんだ!鹿之助っ!早く戻ってこい!!」
「宗秀殿!心配無用です!私は泳ぎは得意なんです!見ていてくださいね、必ずあの大物を捕ってきますから!」
「違うっ!!そうじゃない!そいつは…!」
そう宗秀たちが見ていた巨大な魚はただの魚ではなかった。その巨体と海面からのぞく大きな背びれ、その魚は紛れもなく…
「そいつはサメだぞ!!」
「……え?」
「「「鹿之助様っ~!!!??」」」
鹿之助の顔が瞬く間に青ざめていく。敵も恐れる猛将・山中鹿之助でもさすがにサメには敵わない、鹿之助は全速力で船に引き返す。というかサメに負けない速さで泳げるなんてあいつ化け物か!?と内心ツッコミながら鹿之助に手を伸ばした。
「は、早く手を出せっ!!」
「がぼ、がぼ…!!…そうなんですねっ!!…私は、サメに食べられて死ぬ運命だったんですね…!これから私は食いちぎられて…滅茶苦茶にされるんですね…!!がぼ、がぼ…七難八苦…ここに極まれり!!」
「アホかッ!?こんな時に興奮してる場合かぁぁ!!」
その後なんとか救出された鹿之助は宗秀と久綱に拳骨を入れられ十勇士たち共々一晩中説教されることになった。その数日後、宗秀たちの船は宮津へたどり着き一同は京へと向かった。
序盤からシリアス展開ばかりでしたけど、今回はちょっとほのぼのしてます!
次回はついにこの作品初のロリが登場しますよ!
実はイラストを描いてますので楽しみにしててください!