GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜【修正版】   作:夜無鷹

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お久しぶりです。
仕事が多忙だったのと、人理修復の旅に出ておりました。

久々の投稿のため、不安と緊張が入り乱れています。


第十話 廃都の幽火

エリックイベントを経て、俺は《鉄塔の森》から場所を移し《贖罪の街》に来ていた。理由は定住場所を探すためだ。

 

今は特にあてもなく街中を歩いている。

 

今のところ差し迫ったイベントは無いだろうし、これから起こるリンドウの退場イベントは完全な退場ってわけじゃない。一悶着あるが、復帰することは確定している。変なちょっかいを出さなければの話だろうが……。

後の展開で生存という結果さえあれば、半アラガミ化していようが現段階で首を突っ込む必要性はない。

 

というか、俺が介入したせいで物語の筋が拗れると面倒臭い。

そう考えると、必要最低限の行動以外は自制した方がいいか。

アホ面ひっさげてむやみやたらに神機使いとエンカウントするより、ほとんど人目につかないような場所に籠ってるのが最善だろう。

 

よし、ニートするか。

 

そんな訳で、定住場所を探すことにした。

かの弩級アラガミ、ウロヴォロスと同等であろうこの巨体が休める空間って時点で選定難易度高めな訳だが、この他にゴッドイーターとアラガミに睡眠を極力邪魔されない場所という条件が加わる。

するとどうだろう。候補地なくね?

 

まあ広さに関しては、無ければ作ればいいじゃない理論で用意するのもひとつの手だが、それは地上の場合のみに限られる。

ゴッドイーターやアラガミとの遭遇率を下げる条件を優先すれば、地下なんかが候補になる。あんな暗がりで見通しも悪く、行動範囲が地上よりも限定される地下に喜び勇んで足を踏み入れる輩はそうそういないだろう。

そんな俺にとって好条件の地下で、空間確保のためにブレスやらなんやらブッ放せば、あら不思議。生き埋めゼノの完成だ。

 

とまぁ生き埋めはあくまで極論だが、地道に掘るにしても時間が掛かるし効率が悪い。

広さを取るか、安眠を取るか。選択肢があって無いようなものだ。野外で行動する限り敵勢に遭遇しないなんてのはまずあり得ない。

 

 

って、思うじゃん?

全くとまではいかないまでも、俺が望む条件に近しい場所がない訳じゃない。

《贖罪の街》には、あの場所がある。俺がオギャった地下空間だ。

 

しかし、ここでさらに問題がある。恥ずかしながら、場所を覚えていない。

なんせ一年以上も前のことだ。道なりにただ歩いただけで、生誕の地から地上への順路を覚えようと思ったことは一切ないし、また戻ってくるなんてのも当時は全く頭になかった。

 

ここに来てから早一週間。廃れた公園を寝床とし、俺が生まれたあの場所への入り口を探して街を練り歩く日々。

手がかりはこれっぽっちも無かった。

 

だが、ひとつだけ気になる事はある。

 

《鉄塔の森》からここに移動してきた初日、小型アラガミの洗礼を受けた。

その時は特に腹が減っていたわけではなかったため、ある程度の傷を負わせ撤退を促すようにした。

 

思惑通り、小型アラガミは傷を癒すため俺の前から撤退。遠ざかっていく後ろ姿を目で追っていたところ、地下通路に降りていく階段へ真っ先に向かって行っていた。

小型アラガミは特に躊躇う様子もなく、まるで何処に向かうか決めているかのように階段を降りていった。

 

地下に餌場があるということだ。

地上のよりも回復効果の高い餌場が。

 

本家ではゼノ・ジーヴァ生誕の地には、生体エネルギーが凝縮し結晶化した龍結晶がある。

ゼノがいる本家フィールドほどではないにしろ、それなりに大きい結晶が、俺がオギャった空間のそこかしこにあったのを記憶している。

 

結晶の元となる生体エネルギーは本家とこっちで違うだろう。本家(あっち)は古龍の死骸が瘴気の谷で分解されて……って感じだったと思うが、こっちには瘴気の谷なんて場所はない。

 

じゃあ、こっちの龍結晶の元になった生体エネルギーはどこから来るものなのだろうか。

古龍のような生物に限らない、超自然由来のエネルギーとか? それこそ純粋な地脈エネルギーが……とかだろうか。

 

あ、駄目だコレ分からん。

つか龍結晶とか生体エネルギーとか今考える事じゃない。そもそもこっちの結晶を龍結晶と呼んでいい代物なのかが疑問だが……。

とにかく、便宜上こっちの結晶も龍結晶と呼ぶとして、生体エネルギーの塊である龍結晶はアラガミにとってこれ以上にない体力回復の糧となる。たぶん。

 

どのキャラか忘れたけど、本家でも「力が湧いてくる」って言ってた気がする。

触れるだけでそんな感覚が生まれるなら、龍結晶に宿るエネルギーが何かしらの影響を与えていることになる。

力が湧くという言葉から連想するとしたら……細胞の活性化、身体機能の向上あたりか?

影響範囲は治癒力とか筋力とか……アラガミだったら細胞同士の結合力、だろうか。

 

もしそんな効果があるなら回復薬……こっちじゃ回復錠だったっけ。作られそうだな。まあ、人体に害が無ければだけど。

つかそもそも回復錠って作られてなかったっけ?

ゲームではハーブとかが材料だった気がするけど、回復アイテム使用して回復するHPゲージってゲームの仕様だからなぁ。

 

あれ、HPゲージって現実世界に変換すると何になるんだ?怪我の度合いか? 無くなったら戦闘不能になるから、その認識で大丈夫な気がするけど……だとしたら、怪我が瞬時に治癒する薬なんて作れるわけないよなぁ。

 

てか、あれ? そういえば俺、最初なに考えてたんだっけ?

 

そう思い至ったあたりで、ここ一週間の寝床となっている公園に戻って来ていた。今日も何の収穫もなく街を一周してしまったようだ。

 

数十年前までは子供が遊んでいたであろう遊具は、錆びと風化、アラガミの捕食により元来の姿がほぼ消え失せている。

辛うじて遊具周りの鉄柵や支柱が残っている程度だ。

そんな寂れた公園の中央で腰を下ろし一息つく。

ついでに翼も地面に付け力を抜く。

 

考えていた事の掘り出しと整理をしようと空を見れば太陽が傾いており、爽やかな青が鮮やかな橙色に染まっていた。

 

俺が生まれた地下空間を探して一週間。どんな順路で地上に出たのか、どこから地上に出たのか、夜の内に集中して思い出さないと、建造物を破壊して強行手段を取るしかなくなる。

それか、原点回帰を諦めるしかない。

 

体が小さかったら、こんなに悩まなくて済んだのになぁ……。

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

夕陽が地平線の彼方へと去り、静かな廃都に降りた夜闇の中、青白い淡光を放つ幽幕は炎のように揺らめく。おいで、おいで、と誘うように。

 

思考に耽る彼の真後ろで、関わることに消極的な彼の思惑とは裏腹に、ふらふらと尾の幽光に引き寄せられたソレは、しばらく幽幕を不思議そうに目で追って白い手を伸ばす。

長大な尻尾が左右にゆっくりと揺れるたび、幽幕もひらひらとなびいて伸ばした手から逃げていく。

 

「うー……?」

 

白い少女は滑るように離れていった幽幕と、何も掴んでいない自身の手を見比べて小首をかしげる。

あっちへひらひら、こっちへゆらゆら。

淡光に釣られた少女も、あっちへとことこ、こっちへぱたぱた。

 

けれど、気付かれてはいけない。

一口で食べられてしまうかもしれないから。

 

でも、興味を駆り立てられて仕方がない。

少女は勉強熱心だから。

 

だから、この生物のことを知りたい。

アラガミではないのに、アラガミと似た気配を感じるから。

 

知りたいという一心のままに幽幕を追い掛けていると、大きく左右に振られていた尾の振り幅が次第に狭まっていき、ついには地面の上でゆったりと伸びたまま動かなくなった。

 

少女は恐る恐る歩み寄り、夜風に揺れる幽幕を手に取る。

 

持っているという感覚がないほどに軽く、薄い。

千切ろうと思えばいとも容易く出来そうでありながら、意外にも頑丈で、親指の腹で撫でると滑らかで非常に手触りが良い。

 

そしてよく目を凝らすと、何百、何千と枝分かれした青白い淡光の線が葉脈、あるいは毛細血管のように幽幕の表面を走っていた。

この淡光の線が集中している幽幕の縁とその付近は特に頑丈で、アラガミの気配が入り交じった不思議なエネルギーを感じる。

 

少女は興味の引かれるままに、唇で幽幕の端を()んだ。

 

「んー……うー?」

 

もごもごと何度も唇で食むうちに、今までに食べたどんなものよりも味があることに気が付く。と言っても、あれらと比べたらマシ程度で、けれど少女はそれが「美味しい」ことなのだと思った。

 

今度は幽幕の表面を削るように噛んでみる。

削いだ薄皮を何度か咀嚼する。

 

「うーんー……」

 

小首を傾げ、確かめるようにゆっくりと噛み、眉間にシワを寄せてまた噛む。

 

少女は考える。

これは何なのだろう、と。

人としては幼い思考回路で、何回も何周も考えた。

けれど本能が、細胞が告げている。

 

これは混ざりモノ。解明不可。模倣不可。

形を真似たところで、意味がない。本質が違う。

どの形になれば速く走れるとか、力が強くなるとか、泳げるとか、そういう次元の話ではない。

 

この白く大きな生物は、《そういうもの》としてここに在る。

形の無いものが形を持ったかのような生物。

 

概念(そういうもの)》を真似ることは出来ない。

けれど、《コア》を取り込むことが出来ればあるいは──。

 

そこで少女は、考えるのをやめた。

いや、やめざるを得なかった。

 

視界の端にチラリと映る、中空の発光体。

恐る恐る目を動かし、顔を向けて正面からソレを捉える。

 

「あ………」

 

息が詰まる。掴んでいた幽幕がはらりと落ちていく。

この青白い幽幕が唯一の灯りである闇の中、ついさっきまでそこには無かった橙色の光が八つ。

 

──少女を、凝視していた。

 

地の底から這いずり出てくるような低い唸り声。

威嚇にも聞こえるけれど、巨龍の纏う空気が、伝わってくる微かな気配が、強張る少女に疑問を抱かせる。

 

 

『なぜこの生物は動揺しているのだろう』と。




活動報告におまけを投稿しました。
ゼノは少女らしいので、擬人化少女verを描きました。
擬人化認めない、という方はスルーでお願いします。

話は変わりまして、昨年末から仕事が繁忙期状態になり、なかなか時間が取れずにいました。
ただここ数日は早めに帰れたので続きを書いた次第です。

また明日から仕事が忙しくなるので当分、投稿は出来ないと思います。すみません。

それでは、良いお年を。

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