GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜【修正版】   作:夜無鷹

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この話はスルーで構いません。
なので、もう一話投稿します。

【加筆修正:なし】


第三話 魚は上手い

廃村を発って三日後。俺は海沿いの街に降り立った。

街と言ってもお察しの通り、アラガミによって踏み荒らされた荒廃した場所だ。

元オフィスビルと思われる建築物も形を保って残っているが、飛行中に数棟視界に捉えただけで街なんてのは見る影もない。

 

俺は砂浜に伏せて、半身を海水に浸らせていた。

鳥が水浴びをする要領で翼を動かし、海水を叩き上げ全身に浴びる。

 

あ~、気持ち~………。水浴び、砂浴び、日光浴………動物でもリラックスっていう感覚があるんだなぁ。

温かい風呂が良かったけど、汚れは取れるからまあ、いっか。

 

それにしても、初めましてのゴッドイーターが第一部隊の橘サクヤだったとは………ただ、ゲームとは少々服装が違っていたな。何歳か若い感じもあったし……ゲームの時間軸よりも前の時間軸なのか?

だとしたら、第一部隊に主人公(プレイヤー)がまだ所属していないことになるな。

あーけどなぁ………それでも怖いよなぁ、あの部隊。本当に接触は控えたい。もう遅いけど。

 

さて、と……狩るか。

 

この近辺は海沿いだけあって、水への適応能力を持つグボロ・グボロが体感として多く感じる。

現に海水浴で(くつろ)いでいる俺の左右から、グボロが二体ずつにじり寄ってきている。

 

まずは、一体が先陣を切って突進してくる。

俺は頭を上げて、そいつの顔面に熱球をぶつける。

 

ビームは物体を融解して貫く感じの技だが、熱球は燃焼の性質を持っており消滅させずに焼くという調理工程を可能としている。

見た目はともかく、熱球は火球と同じ扱いでいいらしい。まあ、やろうと思えば火力は上げられるため、呼び方は熱球のままにしておく。

 

熱球が直撃した一体目のグボロは、白煙を上げて真っ黒焦げになってしまい動かなくなった。

火加減間違えたな………。「こんがり上手に焼けましたぁ!」を狙ってたんだが、うん………練習あるのみだ。

 

俺は完全に砂浜に上がってから後脚だけで立ち、残り三体を見やる。

一体目が丸焦げになったことで奴らの警戒度が上がったらしく、俺から距離を置いて中長距離の攻撃を仕掛けてくるようだ。

グボロといえば突進攻撃以外に、砲塔からの水球連射攻撃が印象的だ。

三体が歩みを止め俺に砲塔を向けていることから、三方向からの水球同時発射を予測する。

 

念の為、攻撃は何としても回避しておきたい。

同時発射の水球………バラバラだったならともかく、同時ならタイミングは取りやすい。

水が相手なら、熱量の極めて高い技で蒸発させてしまえばいい。

 

だが、俺はアラガミを食糧としているので、グボロ自体は形を残したまま仕留める必要がある。

だから、水球を蒸発させたあとで、直接仕留める。

 

俺は上げた上半身を前に倒して、地面についた両前脚に力を込め砂の下に手を埋める。

 

三方向のグボロが、同時に水球を一発ずつ発射した。

直撃するタイミングを見計らって、地面に押し込む様に更にグッと力を込める。

瞬間、俺を覆う範囲で円柱状に蒼白い炎が地面から噴き出した。ゼノ自身が持つエネルギーの奔流と言うべきか。砂中に埋めた両前脚から流し込んだエネルギーが、物理的な影響力を得て地上に顕現。

原理は、ゼノビームや熱球と同じだ。その性能も、性質も。

 

俺が発生させた蒼炎柱に、三発の水球は当たった傍から蒸発していく。

さすがの熱量だな。水なんかものともしねェ。

 

エネルギーの炎柱が徐々に砂の中へと鎮まり、グボロ三体がここぞとばかりに距離を詰めて来ていた。

まだだ。まだ、終わらんよ!奴らの移動中は俺のターン同然だ!

 

両手を砂に埋めたまま、俺は一つ咆哮を上げる。

 

至る所で砂を巻き上げながら、蒼炎が地雷の様に爆発が起こり始めた。

這いずるグボロ三体の足下でも埋められた地雷が反応する様に、一回、二回、三回………爆発で吹っ飛んだ先でも一回、二回と、軽くお手玉状態だった。

初使用にしては、なかなか手応えがよろしい。

 

爆発が終わった頃にはグボロは瀕死で、自慢の砲塔やヒレがボロボロになった身体を引きずりながら方向転換をしていた。

三体中の一体はあまり爆発に巻き込まれなかったのか、潰れた砲塔を未だに向けている。

まず最初に、ソイツへ接近し砲塔ごと頭を砕いてトドメをさす。

二体目、戦闘不能。

 

続いて、逃亡を図るグボロ二体。

俺から見て左側にいたアイツらは、無理なものは無理だと悟る頭を持っているらしい。端的に言えば、左二体のグボロは頭脳派、右二体のグボロは脳筋派だったようだ。

まあ、小さい子の思考力に毛が生えた程度でしかないが。「攻撃が効かない!瀕死になった!よし、逃げよう!」的な。

 

さて、俺の意外な俊敏性を見せてやろう。巨体だから、一歩の距離が長いぞ。

 

大量の砂を巻き上げながら猛進し、ボロボロのヒレを一心不乱に動かして逃げる片方のグボロの背ビレを噛み砕き、やっとこさ一体目実食。

んー……肉と魚を掛けた様な味だ。生肉の食感に近いが、厳密に味を表現するとしたら焼いたクジラ肉の味に近い。

今まで喰ったアラガミの中で一番マシな味だし、魚の様な生臭さがあるものの上手く焼けばどうということはなさそうだ。

 

そう悠長に喰っていたら、逃げた二体目との距離が妙に開いてしまった。

食べる量なら今喰ったグボロと、先に仕留めた二体で事足りるな。四体目は……練習がてらゼノビームの餌食になってもらおうか。

 

ゼノ技の根源であるエネルギーは普段身体中に溶け込んでいる様な感覚で、「魔力がこんなに……!」とか、そんな少年漫画みたいに感じ取れるものではない。潜在している感覚がない点で言えば血液と同様。エネルギーの底が分からない点で言えば、出し切るまで分からない体力と同様。

しかし、エネルギーを寄せ集めるその場所に意識を少しでも向ければ、エネルギーは形を得て一つの技に昇華される。

まあ、ゼノビームと熱球における俺の見解だけどね。

炎柱と爆破は、地中に流し込んだエネルギーの意図的な暴発っていう表現が正しいかと思われる。

 

さあさあ皆さん、ゼノビーム発射準備が整いましたところに、標的となるグボロが背中を見せて直線上にいるではありませんか。

こんな絶好の機会において某誤射姫さんのように、「射線上に入るな」と言うのは野暮でございましょう?

 

それではゼノビーム、いっきまぁすッ!

 

集中して一点に溜めたエネルギーを口から解き放つ。

一直線に放たれたエネルギー光線は、ゼノ・ジーヴァ特有の蒼白い輝きを纏ってグボロの背後へと迫る。

直撃。接触したものをことごとく溶かしながら、無慈悲にその胴を貫いていくほぼ防御力無視の一撃。

身体だけじゃなくコアさえも溶かすのだから、アラガミにはひとたまりもない。

 

ん?ビームの行き先?グボロ通過して………えーと……ど、どっかに当たって消滅すんじゃないかな、多分。

ま、まあ、それはともかく、コアを失ったグボロはいつも通りご臨終なされた。

 

よし、お焼きになられたグボロとミンチになられたグボロを喰うとしますか。

 

さっきも言った通りグボロは、味に関しちゃあほぼ普通の魚だ。生食に関しては、な。

まず、お焼きになられた方にかぶりついた。

火力調整が失敗したこともあり、鱗や表皮が焦げ臭い。だが、うん……結構イケるぞ、焼きグボロ。

アラガミの特徴である形質を真似るという点が良い働きをしているのか、魚を多く捕食してきただろうグボロは焼いた時の風味が魚に似ている。

 

オウガテイルやコクーンメイデン、シユウはギリギリ肉の風味を感じられたが、様々な物を捕食したせいで旨味がなく雑味が混じっていた。

だが、それら全てを克服!とまではいかないが、グボロは一番いい味を出してる。

 

焼きグボロ、主食にしちゃおっかな。

あ?生グボロ?いや、もう焼きグボロで腹八分目だからいいや。

 

俺は焼きグボロを喰い終わったあと、横にあったミンチグボロを手で払い飛ばして海に沈めた。

はー、満足満足。あとはどっかで睡眠取れれば文句なしだな。

雨風しのげる場所………はどう見たって無いから、瓦礫山に寝そべるしかないか。

なるべく平坦な瓦礫山………まあ、なかったら力業で平坦にしてやる。

 

そんな俺の思惑を知ってか知らずか、意外とあっさり平坦な寝床が見つかった。

まだ倒壊しきっていないビルの真ん前。俺が丸くなっても余裕のある空間だ。

ふう………まだ日は高いけど、その分直接日光が全身に当たって暖かく野宿日和だな。

と思いながら体を丸めて瞼を閉じた。

 

しかし、どーも眠れない。なんか、ザワザワってする。

………は!これがあれか!少年漫画でよく見る「殺気を感じる!」って奴か!

おー、良いぞ良いぞ!

 

って、いいわけあるかァァァ!

 

俺はすぐさま飛び起き、勢いよく首を振って周囲を見渡す。

だだだ誰だ?おおお俺、俺だってやればできるんだよ!い、いいのか?ぜ、ゼノビーム撃つぞ!

首を伸ばして恐る恐るビルの陰を覗き込むと、さらに陰へと回り込む人の足が見えた。

 

逃げてる……?また難民か?なら俺は、早々に退散した方がいいかもしれないな。

 

人影を追うのをやめてこの場から離れようと頭を持ち上げた時、ガラス板の無くなったビルの窓辺で腰を抜かした人達が俺を見上げていた。

これは本当に退散するしかないな。

ビルから視線を外して一歩下がると、俺の後脚に何かがぶつかった。

咄嗟に振り返る。すると、足元に尻餅をついた少女が大粒の涙を流して固まっていた。

 

ビルの上階から女性の叫び声が聞こえる。

なるほど、隠れ家を抜け出して来ちゃったのか。んで俺を見かけて、ビルの周囲を走り回り撒こうとしてたんだな。

でもおかしくね?あのザワザワって、人の気配って事だったのか?

うーん……まあ、いっか。

 

少女から目を離し前を向こうと首を動かした瞬間、俺の横っ面に一発の光弾が直撃した。

あ"ー!イッタァ!流血はしねェけど、(すね)ぶつけた並みにイッテェ!

あの子以外にいたのか!つーか、俺目掛けて銃ぶっ放すつったらあの方々しかいねェじゃねーか!

被弾した衝撃で俺が呻いていると、ビルの陰から見覚えのある派手な格好の青年がちらりと姿を見せた。

赤い髪をかき上げ、したり顔で銃を構えていた。

 

「僕の華麗なる陽動を、有効に使ってくれたまえよ」

 

え、え………エリック上田氏ィィィ!

エリック・デア=フォーゲルヴァイデ氏じゃないですかァァァ!まだハイスピードハンティングされてなかったんだな!

まぁ、お前の陽動には乗ってやらねェけどな!

 

そして俺の後ろ、ちょうど少女が腰抜かして泣いてる辺りにもうひとつ別の気配があった。

 

「チッ………余計な事しやがって………」

 

こ、この声は………!

俺はビルから離れようと、右手側の瓦礫山へ方向転換しながらチラッと背後を見やる。

すると、フードをかぶった褐色の青年が少女を抱えて、俺の動向を窺っていた。

ソ、ソーマ・シックザールさんじゃないですかァァ!もうヤァダァ!にーげーるー!

そう決断した時の行動力は凄まじい。俺は即座に、瓦礫山へと駆けだした。

 

小山の頂上で振り返ると、疑念と困惑、警戒の眼差しで睨んでくるソーマと、髪をかき上げ鼻につくキザな表情で

俺を眺めるエリックが少女を挟んでビルの前に並んでいた。

 

ゴッドイーターに見つかっては、長居は出来ない。また、移動しなければ。

俺は、瓦礫と砂を舞い上がらせて空に羽ばたいた。

 

 

 

 

空を飛行しながら、俺は思う。

もし、俺の働きかけで未来が変わるなら、この世界での目標………夢にしてもいいのではないか、と。

原作の改変が俺に出来る唯一のこと………特権として考えてもいいのではなかろうか。

 

エリック上田氏。お前を、ネタキャラから脱却させてみようと思った。

 

 

 

 

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極東支部アラガミ観測記録

 

・華麗なる第三の記録

最近、極東で話題になっている新種のアラガミに遭遇したけど、僕の敵じゃなかったよ。

僕の華麗過ぎる射撃に恐れをなして、負け犬のように飛んで逃げてしまったからね。今までの記録を読んだけど、そこまで危険視するほどでもないんじゃないかなぁ。

でも、あのアラガミの幻想的な姿には僕も少々見惚れてしまったよ。

何はともあれ、まことしやかに噂される程の危険性は感じなかったね。

それより、僕の華麗なる撃退劇の一部始終を知りたくはないかい?

アラガミの頭部に命中した弾丸………実に華麗だ、華麗過ぎる。

君たちも、華麗なる僕の妙技を見習いたまえよ。

 

報告者『エリック・デア=フォーゲルヴァイデ』

同行者『ソーマ・シックザール』

 

 


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