GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜【修正版】 作:夜無鷹
この話から、旧版との差異を明確には書けなくなります。
特に今回と次々回までの三話分は、コミュ方法が変更になったため、その影響が出た話となっています。
なので、旧版のどの話が元になったかを記載することにします。
加筆修正のみなら【加筆修正の有無】、全体的な書き換えなら【元になった旧版の話】を前書きに載せておきます。
読むかスルーか、一つの判断基準にしてもらえればと思います。
【旧版:第五話 遭遇】
『嘆きの平原』を離れて一日が経った。
俺は今、住む人の居なくなった難民キャンプからある程度離れた場所に横たわっている。
ゴッドイーターに見つけてもらおうとアラガミを蹴散らしながら歩いていた時、背中に乗っていたショウが食べる物が無くなったから探したいと言ってきたのだ。
そこで、ちょうど目に付いた難民キャンプで食べ物を探す事になり、現在に至る。
俺みたいに、アラガミが喰えりゃあ苦労はないんだがな。
そもそもアラガミ倒せねェから、どうしようもないんだけど。
それで、食料を漁りに行ったのはショウのみで、リイサは俺と一緒にお留守番。
暇潰しがてら、俺の名前当てを始めた。
やり方は簡単。だが、地味かつ根気がいる方法。
リイサが五十音順に一文字ずつ言い、それに対して俺が首を振ってイエスかノーを答える。
忘れないようイエスと答えた文字のみを順番通り地面に書き出し、やっと俺の名前を伝えられるという寸法だ。
いやー……ひたすら地道。
最初は俺の名前を知らなくてもどうにかなるという事で昨日は過ごしたのだが、今日になって二人の心境が変わったらしく、「知らないのは何か嫌だ」と率直な感情論で五十音順ローラー作戦が決行された。
そして、やっと『ぜの・じー』まで伝えられた。
やったよ俺!首が痛い!
「えーと次は……『ば』!」
濁音の“は行”が始まり、俺は頷いて少し首を傾げる。
音はほぼ同じだが、細かいことを言うとちょっと字が違う。
「同じだけど同じじゃないの?じゃあ……『ゔぁ』?」
リイサは、自身が口にした音を近くに落ちていた鉄パイプで地面に大きく書き出し、俺が聞き間違えないようにしてくれている。
発音に関しては微妙な違い。字面で言ったらそっちです。
正解ということで、俺は頷いた。
これまでに伝え、リイサがメモ書きした文字列の最後尾に『ゔぁ』を付け足し、やっと俺の名前が完成。
あー長かった……まあ、一番苦労したのはリイサなんだが。よく声枯れなかったな、偉いぞ。
「えーと、次ね」
そう言ってリイサが五十音の頭を口にしかけた時、俺は終わりの意味を込めて軽く鳴いた。
「どーしたの?」
俺の声に気付いたリイサは、不思議そうに首を傾げる。
ストップ。それで終わり。
要望付け足すと、平仮名のままだと『ゆるふわキュート』な感じがするから、こうカチッとしたカタカナに変換してほしい。
俺は鳴き声で伝わらなかった『終わり』の意思を、首を横に振ることで再度表した。
「これで終わり……なの?」
そうそう、そうです。
あとはカタカナに変換してくれると………。
「リイサ!食べ物いくらか見つかったぞ!」
脱け殻の難民キャンプで食料を発掘していたショウが、両手に幾ばくかの缶詰めを抱え走ってきた。
息を切らしつつ、リイサの傍らに見付けてきた缶詰めを広げ、どれを食べたいかと兄貴らしく気を配りながら相談している。
缶切りは必要ないようで、プルトップに指を引っ掛けフタを開けるタイプのもの。子供でもイージーオープン。
二人はひとつひとつ手に取り、楽しげに言葉を交わして子供らしく無邪気に笑う。
いいなぁ……この二人もあと数年したら、いっちょまえに青春を謳歌するんだろ?
同年代の男女が人目を
それに比べ、俺はいつまでゴッドイーターとアラガミ相手にキャッキャウフフ(戦場鬼ごっこ)しなきゃならねェんだよ。もう殺伐し過ぎてて……あ、思い出したら目から汗が……。
それより、カタカナ変換をお願いしたく……。
「これ、歯触りがちょっと……」
と、ショウがひよこ豆を頬張ってボソリ。
言うわりに食ってんじゃねぇか。つか、あのさあのさ、俺の願い聞いてくれませんかね。喋れないけど。
不満を伝えようとして怪物らしく唸ってみるが、気にされず。
今度は懇願するように情けない声を出すが、見向きもされない。
出会った当初はあんだけ怯えてたのに、たった一日で何だこの落差。飼い主に構ってもらえない犬の気分だよ。
……って、誰が犬だ!ゼノ・ジーヴァの威厳はどこ行った!お兄さん、泣いてもいいかなァ!
届かない心の声を並べるたび、涙が滲んでこぼれそうになる。上向いていよう……。
諦めと同時に首を持ち上げると、遠くの方で何かが動いているのが見えた。
人……じゃないな。黒い四肢と特徴的な赤いマント、猫科動物のような顔つきの……ヴァジュラか、あれは。
とりあえず、念のため二人にはアラガミの事を伝えなければならない。
俺はどうすれば気付いてくれるか頭をフル回転。
導き出された答えに従い、俺は───右手でたしたしと地面を叩いた。
俺は真剣だぞ。
「な、なんだよ急に……砂が目に入ったんだけど」
ショウは心底迷惑そうに顔をしかめ、むず痒い感覚を除こうと目を擦る。
そんなあからさまに……反抗期か。
なあ、缶詰め食ってる場合じゃねぇんだよ。
伝わる?このフィーリング。
「……食べたいのかな?お腹すいたの?はい、あげる!」
わざわざフタを開け、満面の笑みでツナ缶を差し出してくるリイサ。
違う、そうじゃない。
素っ気ない態度を取って断りたいのだが、ああ何てこったい!
紳士な俺じゃあ断れねェ、ありがとう!
ツナ缶を口に入れてもらうため、頭を二人の手の届く一にまで低くし、顎を下げて舌を出す。
考えを汲み取ったリイサは、俺の舌の上でツナ缶をひっくり返す。
──って、アラガミがいるって伝えたいんだよ、俺は!
伝わらないじれったさに、再度地面をたしたし叩けば……。
「もっと食べたいの?ちょっと待ってね!」
「食いしん坊だなぁ……ツナ缶って、そんなにうまいんだ……」
問一、俺の気持ちを答えなさい。
A…伝わらない!
B…もどかしいよ!
C…焦れったいよ!
アンサー………全部です。
頭を抱えて巨体をごろんごろんと右へ左へ転がると、次第に心情が鳴き声に現れ始める。
「アウゥゥ……」とか「グゥゥゥ……」とか、悶えながら砂を巻き上げてジタバタを繰り返す。
「ど、どうしたの?サバ?サバがいいの?」
「水煮か?味噌煮か?えーと、全部あげるから落ち着けよ!」
俺の反応をどう捉えたか、二人は自分が食べる分も構わずに、かき集めた缶詰めのフタを全て開け始める。
違うんだよなぁ……けど、微笑ましいな。
久々に人の優しさに触れて……涙がこぼれそうになるわ。誰か、ハンカチ持ってきて。
俺に好き嫌いはあるのかと二人が相談している脇で、腹と顎を地に付けたまま遠方を警戒する。
辺り一帯がほぼ瓦礫と化しているなか、この目立つ巨体を隠すには視界を遮るものが少な過ぎる。
辛うじて、人間二人が身を隠せる壁跡が点在している程度だ。
で、俺がのたうち回って目を離してしまったヴァジュラの行方を探しているのだが……おかしい。見付からない。
壁跡が点在しているからと言って視界が悪い訳ではなく、逆に見易いくらいだ。ヴァジュラだって壁跡には身を隠せない。なのに、見付からない。
どっかに走り去ったか?
なぜ?
なら、どうして騒がしくなかったんだ?
違う。別の理由がある。
だとしたら……。
「……のちゃん。ぜのちゃん。どーしたの?」
呼び掛けられてハッとする。
意識を向ければ、フタの開いた缶詰めを手に、不思議そうに見上げてくるリイサ。
「眠くなったのか?それとも、昨日眠れてなかったのか?」
「じゃあ、お寝んねする?」
すまん、お寝んねという言い方はやめて欲しい。子供みたいじゃねーかよ。
しかしまあ……いなくなったアラガミをどうこう言っても仕方無いか。
眠気はないことを示すため、両前足を立て、ググッと背筋を伸ばしお座りの格好をする。
それから肘を少し曲げ、二人の傍へ頭を近付ける。
ゆっくりと口を開いた。
「なんだよ、忙しいやつだなぁ……」
「ふふっ、でも……」
──その瞬間。突如として鈍器で殴打されたような衝撃と鈍い痛みが、油断していた俺の頭部を襲った。
左側から叩き込まれた、強烈な横凪ぎの斬擊。鱗に傷を付けるには至らなかったが、斬擊が重い打撃に変化してしまった。
意識外からの重擊により脳が揺さぶられ、視界が歪むと共に
頭がぐわんぐわんする……。
あーマズイ……これはマズイ……。何がマズイって色々とあるが第一に、俺にとって嫌なモンが見えたのが非常にマズイ。
あーもう、面倒くさい……。
体勢を崩しかけ、歪む視界をハッキリさせようと首を振れば、身の丈程もある武器を携えた人物が隙ありとばかりに跳躍し突進してくる。
俺の目の高さより少し上。軽々と跳んだその人物は両手で、重厚感のある赤いチェーンソー型の神機を上段に構えた。
今度は脳天狙うつもりか!容赦ねぇなオイ!
下痢やらハゲになったらどうすんだ!ふざけんじゃねェ!
……って俺、髪生えてなかった。
低い風切り音を鳴らし振り下ろされた神機を、寸でのところで顔を横にずらして避ける。あっぶなッ!
そんな的確に頭ばっか狙わないでくれるかなァ!頭を集中的にタコ殴りされるモンスターの気持ちが分かったわ!
神機を空振った彼は俺の目を真っ直ぐ見据えながら、顔のすぐ横を落下していく。
着地すれば必ず奴は、追撃行動を取る。距離を置ければ体勢を整えられるだろう。
……いや、着地するまでのたった数秒の間に、距離を取って体勢を整え、正面から対峙できるよう身体を回転させられるのか?
……どう考えたって時間が足りない。
右斜め前に跳び、身体を反転……跳んでから反転させる間に背後を狙われる可能性がある。
迷えば迷うほど……着地の瞬間が差し迫るほど、焦りと危機感が増大していく。
時間が足りない。距離を稼ぐより、動かないで何かしら行動を起こすのが現実的か?
奴の足先が、地面に触れる。
着地の反動を和らげるように両膝を曲げ、また狙いを定めるようにキッと睨んでくる。
時間切れだ。行動を起こさねば。
俺は、右の前足に体重をかけ更に力を込めて粉砕。足下の細かくなった多量の瓦礫片を、着地直後の奴に向けて
砂と細かい瓦礫片による目眩まし。
一瞬面食らったように目を見開いたかと思えば、彼は冷静に神機の盾を展開し砂と小石を防ぐ。
一時的に視界を遮ることに成功した俺は、この隙に翼を羽ばたかせ身体を少々浮かせてから百数十メートル後退。
その際に起こった風により、煙幕のように舞い上がった砂が二度目の目眩ましとなった。
後退後、慣性に従う巨体を両手両足の踏ん張りで支え、着地と同時に姿勢を低くし、砂煙の先にいる天敵を警戒。
ぼんやりと浮かび上がる人の影。
前触れもなく吹いた一陣の風が、双方を遮る砂の煙幕を奪い去っていく。
目眩ましの消えた静寂の中、赤い神機を携えたその人物は、呆然とする子供二人と俺の間に仁王立ちし、ベテランの余裕からか警戒する素振りを見せずタバコをふかす。
その堂々とした出で立ちはさながら、怪物に立ち向かう
数秒の睨み合いの後、ベテラン
「ヴァジュラの討伐に来たんだが……例のアラガミがいるなんてなぁ。ツイてんだか、ツイてないんだか」
突然の出来事に硬直する子供二人を背に庇い、赤い神機を肩に乗せて正面から俺と対峙する。
雨宮リンドウ。
俺が勝手にラスボス認定しているゴッドイーター。
……最悪だ。いつかは接触してしまうだろうと思っていたが、唐突過ぎる。
心の準備は当然のこと、逃げの一択だった俺じゃあゴッドイーター相手にどう立ち回るかの経験も積んでいない。
発狂事案だよチクショウめ。
………泣いていいですか?
唐突ですが、古龍は死なない設定って公式なんですかね?
まあ、そうじゃなくてもゼノのモチーフで設定の穴埋め出来るかな、とは思ってたんですけど……死なないのか、死んでも復活するのかが気になってしまった次第です。
死体(?)は放置? それとも研究で回収?
ちょっと調べる必要がありますね……。
それでは、また次回。