GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜【修正版】   作:夜無鷹

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【旧版:八話 変化】



原作開始《無印編》
第八話 誰が呼んだかその名は


夕暮れの小高い丘に、巨躯の龍が鎮座していた。

 

初観測から一年と数ヶ月。

とあるゴッドイーターからの報告により『ゼノ・ジーヴァ』という名称が付けられたそのアラガミは、非常に稀有な存在であった。

 

幾度かの目撃情報はあるものの同一個体と思われる行動が多く、個体数が極端に少ないと考えられている。

アラガミの習性なのか、強大であるにも関わらず直ぐ様飛び去ってしまうため交戦記録が少なく、また討伐に至っては一つとして例がない。

 

斬撃が斬撃の意味をなさない超硬度の体表。

今日までの期間に目撃した『未知のエネルギー』を行使する能力。

そして、あの巨翼で一目瞭然の飛翔能力。

 

大まかに判明しているアラガミとしての特徴は、以上の三点。

攻略法は掴めず未だ模索中。

可能性として、斬撃が無意味なら打撃武器を用いる、トラップを多用するなどの案があげられている。

 

───だが。

アラガミが一目散に逃げるため、試す機会がない。

更に、先程も言ったように潔い脱兎であるため自然と交戦記録が減り、それに伴って手に出来る情報も減る。

 

寝床、または住処(すみか)を決めたらしく、ここ一年は『鉄塔の森』付近での目撃が一段と多い。

そのため、任務の合間を縫って調査班が派遣されたりする。

 

双眼鏡を覗き、かのアラガミの観察を続けながら無意識に息を吐く。

アラガミは一向に動かない。退屈だ。

 

「……あのさ、ゴッドイーター見て逃げるんだったら、ほっといてもいいんじゃね?」

 

そんな事を言えば。

 

「アホ。今は害がなくても、今において脅威と思える要素があるなら、この先俺達にとって無害になり得る絶対の保証はない。早めに対策練らないと、ただ犠牲者が出るだけになる」

 

なんて言葉が返ってくる。

だから偵察しているんだ、と付け足されて。

可能性の話をされたら、ぐうの音も出ない。

 

そうやって初観測から一年以上経った今でも、ゼノ・ジーヴァの情報を地道に集めているのだ。

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

夕暮れの空って、綺麗だなぁ……。

 

身体は巨大、心は臆病、その名は俺、ことゼノ・ジーヴァです。

視界の端にチカチカと嫌な奴等が見えるが、襲ってくる様子は無いので放置しておく。

手に持ってる何かに光が反射して居場所がバレていることに、奴等自身は気付いていないらしい。

 

間抜けなんだか慎重なんだか……。

 

まあ最近は、ゴッドイーター相手の荒事が目減りしてるからな。俺の努力が報われた気がする。

 

目指せ、好感度マックス。

 

 

さて話は変わるが、日々あてもなく飛び回っているうちに、ゲーム上で戦闘フィールドになっていた場所の位置を頭に叩き込むことが出来た。

現在地からどの方角に位置するか、多少考えはするものの辿り着ける。極東支部も例外ではない。

行く気はないけど。

 

大体の土地勘は掴めたから、本格的に拠点が欲しいところだ。殆んど誰の干渉も受けず、身を隠して熟睡できるような隠れ家的な拠点が好ましい。

いや、拠点というか巣だな、巣。

 

そうそう、あのガブリンチョされる華麗な彼の、最期の舞台も把握している。

華々しく散ってしまわれぬよう、事前に頭上注意を促したい。

 

そこで、俺のイレギュラー特権を行使させてもらおう。

通用するか分からんがな。

 

俺が覚えているゲーム知識にはない、いわばモブに関する不測の事態はどう足掻こうと拾いきれるものじゃないが、せめて脱線が決定している路線は変更させてやりたい、と切に願う。

 

その為に行った俺の努力は、定期的に見に行くことである。

 

現在地は例の現場『鉄塔の森』から少々離れた場所に位置する。

丘とは言っても自前の巨体で視界の高さをカバーしているだけで、斜面はなだらかなものだ。

 

本来ならもっと離れた場所、一帯を一望できる場所がいいのだが、『鉄塔の森』から随分と離れてしまったら異変を感知出来ないし、そもそも視力は常人より少々優れている程度。

どこぞの民族でもない限り、米粒以下の動体を目で見付けられはしない。

 

 

そして今日も日課の、『鉄塔の森』巡回の時間が来る。

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

(とび)のように『鉄塔の森』上空を旋回すること五分。

結論から言えば今日も成果はなかった。

 

オウガテイルが群れで追いかけっこしてたり、コクーンメイデンが地面から「こんにちは」したり、ザイゴードが暇そうにしてたりと、上空から見ている分には非常に平和だった。

 

途中でボルグ・カムランが乱入し、手当たり次第に食い荒らして行ったが、まあそれはそれ。

傍観していた俺にとっては対岸の火事に他ならない。

 

触らぬ神に祟りなし。

エリックさんのためにも、キレイに掃除していってね。

 

小型アラガミの楽園を蹂躙していくカムランさん。

一通りお掃除が終わり、悠然と歩き去ろうとするカムランの背後に不穏な影が───。

 

 

「あっはは! 見ぃつけたぁ!」

 

 

トレードマークのブラストを携えて、ハイテンションな彼女に味方は戦々恐々。

射線を気にして立ち回っても、被弾すればキツイお言葉が飛んで来る。

誰が呼んだか彼女は誤射姫。

素晴らしき誤射率で多くのプレイヤーをハートキャッチ(物理)してきた第二部隊の紅一点。

 

台場カノン様、降臨でございます。

 

「その盾、何発打ったら壊れるのかなぁ! 試してもいいよねぇ!」

 

あらやだ怖い。「答えは聞いてない」って続きそう。

カムランの振り向き様にブラストをぶっ放す。避ける余地がなく、正面から高火力の銃撃をくらう。

しかしカムランさんは倒れない! めげない! 逃げない!

 

逃げてェェェ! 超逃げてェェェ!

俺は我関せずを貫くけど、応援してるからさ!

 

お空で。

 

 

と、ここで攻防を繰り返していたカムランが、誤射姫様に背後を見せるという暴挙に出た。

体力回復のため、一時撤退し飯食いに行くらしい。

 

現在の交戦地はマップの大体M地点。

そこから引き返し、反時計回りでA地点へと向かう。

ミッション開始時にプレイヤー達が待機している辺りだ。

 

「逃げちゃうのぉ? ねぇ、今すっごい無様だよ! あっはは!」

 

ハイテンション誤射姫様は逃走を図るカムランを射程範囲内に納めながら追いつつ、隙あらばその後ろ姿目掛けブラストをぶっ放す。

 

「逃げるなら、ちゃんと逃げてよねぇ! 当たっちゃうからさぁ!」

 

鉄塔の森にカノン様の高笑いが木霊する。

追いかけっこを楽しんでおられる……。

楽しげな誤射姫のことは露知らず、A地点の餌場に辿り着いたカムランは体力回復を試みる。

 

──が、餌にはありつけなかった。

瞬間、餌場を前にしてカムランは前肢を持ち上げ、現れたもう一人の敵に向かい威嚇行動をとった。

 

「すまない、遅れた。これより討伐に加勢する」

 

カムランを挟んで向かい側にいるカノンさんに、そう声を発した。

青のジャケットを着用し、使用する神機はバスターブレード。放つ言葉の端々に生真面目さが滲む短髪の青年。

 

ブレンダン・バーデルが合流した。

 

直後、彼は攻撃の隙を作るためスタングレネードを投げつける。

同時にカムランは盾を構え自身の視界を遮り、ブレンダン先生に向かって一直線に突進を行った。

 

咄嗟にブレンダン先生は右へと飛び退き、投げたスタングレネードは勢いを得たカムランの盾によってあらぬ方向へと弾き返される。

 

宙を舞うスタングレネード。

目視で砂粒程の大きさだったのが、段々と大きく見え───って、え?

 

 

刹那、視界が真っ白に染まった。

 

 

 

──目が、目がァァアアアア!!

声を圧し殺し、滞空したまま両手で頭部を覆う。

何というミラクル。

カムランが傍観してる俺を恨んでやったのでは、という考えが(よぎ)る。

 

だが、安心召されよ俺。

目が利かなくなるのは一瞬だけだ。

落ち着け……落ち着け……どうせ地上の奴等は、滞空してる俺に気付いちゃいねぇだろ。

 

しかしカムラン、テメェのことは疑ってるからな。

カノンさんのブラストとブレンダン先生のバスターの餌食になればいい。

 

騒がず、下手に動かず、その場でただ時間が過ぎていくのを待つと、真っ白だった視界が次第に色と風景の輪郭を取り戻していく。

 

同時に、下方に垂れている尾先にヒヤリとした感覚が伝わる。

どうやら予想外のハプニングに気を取られ、ずっと同じ高度で滞空していたつもりが徐々に降下してきてしまったらしい。

 

これは、いかんぞ……。

 

現在の位置関係はまず俺から見て最奥の、初期待機地点すぐ傍の餌場付近に固定砲台もといカノンさん、そしてB地点とC地点をカムランが右往左往し、ブレンダンが隙あらばと縦横無尽に翻弄している。

俺はそんな彼等を、C地点の海側にある壁越しに見ている。

 

極力目立たないよう翼を折り畳んで全身を縮こまらせ、壁に爪を立ててへばりついた上で、上部の平らな箇所に顎を乗っける。

コンクリートの壁とボルグ・カムランという遮蔽物はあるが、恐らく、二人にはオペレーターから何かしらの連絡が入ったはずだ。

この巨体では隠れられる場所もないし、どう頑張ったってバレる確率が高い。というか、バレる未来しか見えない。つかもうバレてるだろ、コレ。

いっそのこと海に入って泳いでどっか行こうか……。

 

「ああもう、小賢(こざか)しいなぁ……!」

 

カノンさんのお怒りボイスも聞こえてくる。

そして、盛大な射撃音が一発。

 

放たれた弾丸はカムランの上を通り過ぎ、俺へと一直線に向かって──横っ面に直撃した。

爆弾の破裂をもろに受けたような衝撃。

間も無く訪れる浮遊感。

 

あ……落ちる……。

 

そう認識したときには既にコンクリートの壁から手足が離れ、巻き上げられた大量の海水が白い飛沫となって視界を覆っていた。

体が沈む。海面が遠ざかる。水が全身にまとわりつく。

 

あばばば…泳がなければ……泳がなければ……。

 

まず翼は畳んだまま浮上を試みる。

骨格的に人間の泳ぎ方が出来ないため、必然と犬掻きの要領で手足を動かす。

首を限界まで伸ばし、空気を求める。

 

窒息するかもしれないという危機感に煽られ、泳ぐという行動に無駄な動きが加算されてしまう。

端から見れば、じたばたと溺れているように見えるだろう。

今あのハイテンション罵倒誤射姫に見付かったら、俺のメンタルがマッハで溶ける。

 

慣れない犬掻きで藻掻いて頭が水上に出ると、鼻腔を通る空気の感覚に一瞬安堵した。

 

しかし、変わらず響く戦闘音。

興味本位で覗きに行けば、また誤射姫の餌食になってしまうかもしれないと、岸を目指して泳ぎながら身震いする。

 

願わくば、もう二度とカノンさんにはエンカウントしたくない。

 

 

出来るだけ音を出さないよう泳ぐこと十分弱。

俺が目指した岸は、『鉄塔の森』マップのF地点付近から確認できる灯台のある場所。

陸地から沖の方へ突き出たここは、アラガミがいなければフィッシングスポットになり得そうな場所だった。

 

まあ近場に工場跡があるから現実的には難ありだろうが、景観だけであれば実に雰囲気がある。

 

しかし、上がれそうな場所がない。

浮力があるとはいえ、この巨体だ。手足が疲れる。

上陸場所を探し岬をぐるりと回れば、陸沿いに消波ブロックが積まれていた。

 

ブロックに手を掛け崖をよじ登るように上陸した。

そして数歩も歩かないうちに泳いだ疲れが手足に押し寄せ、長年放置されたアスファルトの上で腹這いになる。

普段使わない筋肉を集中的に使った時の感覚。

重りを乗せられている気分だ。

 

あーもう疲れた。歩きたくない動きたくない、働きたくないでござる。

今日の見回りはカノンさんがいるからいいよね、終わりで。

飛んでゴッドイーターのいる場所にも戻りたくねぇし、ここに休憩場所移動するか。

 

幸い灯台のあるこちら側も、俺が寝そべっている海岸沿いのボロ道路を挟んで工場跡地が広がっている。

やる気を出して掃除すれば寝床として申し分ない。

 

 

 

……はぁ、エリック早く来ねぇかな。

 

 

 




お久しぶりです。
書きかけだったものをどうにか締めて投稿させていただきました。
書き方を忘れたのは内緒。
次はどうしましょうか……考え中です。

それと、MHWのアップデート来ましたね。
いやぁもう……まだやっていない方がいらっしゃるかも知れないので一応伏せますが、アイツが滅茶苦茶カッコ良かったです。
あの必殺技見て、この作品に出してゴッドイーター達と敵対させてみたいと思いました。マジやべぇ、どれくらいヤベェかと言うとマジやべぇ。

ということで、また次回お会いしましょう。

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