その日は、もう秋が始まった、通り雨の後の少し冷える夕方だった。
誰もいない公園のブランコに座り、私―――渋谷凛は風に揺られていた。
(どうすれば、いいのかな…。)
新たな可能性に賭けてみたい気持ちはある。きっと私は、新たな景色を見れる気がする。そのためにアイドルになったんだから。でも、ここまで私を連れてきてくれた卯月と未央を裏切ることはできない。卯月は、迷ってくれてる。私と一緒にやりたい気持ちと、私に頑張って欲しいという葛藤で、今すぐにでもどうにかなりそうだ。未央は私を怒ってくれている。私の裏切りを、抜けがけを、怒ってくれているのだ。
でも、加蓮も、奈緒も私を信じて、待ってくれている。そこにある可能性を夢見て。二人で。
『でも、私、このチャンス逃したくない…!私は、凛と奈緒ともっと三人で歌ってみたい…!』
加蓮に、言わせてはならないことを、言わせてしまった。
彼女は、私に『裏切れ』、と言っているのだ。
こんなこと、言わせてはならなかった。
友達に、こんなこと。
「何泣いてんの?お前。」
気が付けば、目の前には少年がいた。私と同じか1個上くらいか、そんな少年が泥だらけになって話しかけてきた。
「別に…何でもいいでしょ。」
「あっそ。何でもいいけどそこどけよ。」
その言い方に、カチンときた。多分、苛立ちの理由は他にもあったけど、私は少年に冷たい声で返す。
「嫌…。私がどこに行くかは、私が決める。」
嘘つけ。自分の進む道すら、分かってない癖に。
「へぇ。じゃ足どかせ。早くしないとパンツ見えるぞ。」
そう言って少年は地面に耳をつけ、まるで覗きのような態勢をとる。私は咄嗟にスカートを抑えた。
「な、何!?」
もしかして、こいつが最近出るっていう不審者なの…!?こんな人通りの少ない場所で遭遇するなんて、なんて不運な…。
「あ、そういうのいいから、マジで足邪魔。おーあったあった。」
少年は手に掲げたそれをドヤ顔でこちらに見せてくる。
「…何それ。」
仕方なく聞いてあげた。この男面倒くさそうだな。
「友達がなくしたって泣いてっから探してやってんだ。にしてもマジでアイツ黒猫大好きだな。」
少年が持っているのは、黒猫のストラップだった。少し汚れてしまっているが、大切に扱われてきたのだとひと目でわかる。
「てかあんた暇だろ?探すの手伝えよ。」
「私達初対面だと思うんだけど?」
「だから何だよ。探せや。」
「…別にいいけど。」
どれだけ考えで答えは出ていない。ならば、気分転換に捜し物に乗ってみるのも手かと、少年は砂場を探し始めたので、それに倣って砂場を掘り始める。砂場…?
「本当にこんなところに埋まってるの?友達って同年代の子じゃないの?」
「いや、同い年だぞ。こんなストラップしてるくせして黒猫にかっ攫われたんだと。今探してんのは猫好きじゃなくてうどん好きの方だからうどん探せよ。」
「うどん…ね。分かった。」
「…探してる間くらいなら好き勝手話していいぞ。俺が答えるとは限らないけど。」
「ッ…。何か知ってる訳…。」
「知るかよ。でもあんな顔でブランコで揺れてたら気付くわ。今時ドラマでもあんな分かりやすい演技しねえぞ。テレビには出れないタイプだなお前。」
「なんかムカつく…!」
「
「え?」
顔を変形させるほどに引っ張ってみた。
「ギブギブギブギブですはいごめんなさい…。」
「…じゃあ、勝手に悩みとか言ってていいの?」
「言ってろってんのが分かんねえのかこのひん…。品のある女性め。」
ちょっと脅すとビビるのか。なんか面白いな。
私はゆっくり口を開く。いつもならこんなことは絶対しないけど、どうしたんだろ。弱ってるのかな、私。
「…ねぇ、あんたならどうする?ずっと仲の良かった2人と、新たな可能性を秘めた2人。どっちを選ぶ?」
「はぁ?ずっと居た方に決まってんだろ馬鹿じゃねぇのお前…。金と権力でダチ売る気かよ…。」
「そ、そうじゃなくて…!例えが変になっちゃうけど…。お父さんとお母さんに、2人ずつ人を紹介されて、どちらかと付き合わなきゃいけない。でもどっちも裏切れない。どっちも大切な友達だから。でも舞踏会に誘われた日は一緒で、5人一緒に行くことも出来ない。そんなことがあったら、あんたならどうする?」
「俺には仲のいいやつなんて2人しかいねぇ。そいつらと行くに決まってんだろ。」
「…屁理屈ばっか。まともに答える気ないでしょ。」
「誰も答えるなんて言ってねぇぞ。お前が勝手に話し始めただけだ。」
「ッ〜!ホントムカつくッ!」
イタズラを成功させた後の小学生みたいな笑顔で笑われる。もう1回ほっぺた引っ張ってやろうかな。
でもすぐに、少年の顔から表情がなくなった。
「…選べねぇんなら最初から行くなよ。5人揃ってお留守番だ。」
「でも!それじゃあ奈緒と加蓮が…!」
彼女達にとってのチャンスを、潰すことは出来ない。
「じゃあどっちか見捨てろ。たった1回きりだろ。1回くらいいいだろ。」
「…よくない!」
一緒にここまで来た仲間を裏切ることなんて出来ないッ!
「よくなくねぇよ…!ダチってんなら、そんくらい笑って許せなくてどう済んだよ…!友達が輝けるなら、それに越したことはねえだろ!?いい加減に現実を見たらどうだよ!ああッ!?…お前は飛びたいんだろ!?じゃあ飛べよ!お前を地に堕ちたままでいて欲しい誰かの言うことなんて聞くな!重りは全部切り捨てろ!薄情になれ!」
少年は吠える。立ち上がって吠える。覚悟の足りない灰被りに、覚悟を見てきた少年は叫ぶ。
「それがッ!アイドルってモンだろ…!」
「………………!」
「一人取り残されるのは悲しいよ。自分だけ輝けないのは悔しいよ。でもさ!だったらお前はそいつら全員のために一生お家でお茶会か!?そんな事のためにアイドルになったのか!?そうじゃない、『何か』を見るためにここまで来たんだろ!その『何か』が何だか分かんねえからここまで走ってきたんだろ!その『何か』を確かめたかったから!ここまで飛んで来れたんだろうが…!これまでの仲間の想いを、これまで仲間の努力を!無駄にするってのか!?ああ!?」
「なんで私が…アイドルだって…。」
「新しい世界を、景色を見たいんだろ?…進めよ。んでさ、加蓮も連れてってくれよ。一緒に景色、見させてやってくれよ。…もうその涙はいい加減に見飽きたんだよ。ったくどいつもこいつも、人を笑顔にする仕事のやつが、そんな顔してていいのかよ。」
少年は、ハンカチを投げ渡してきた。
「でも…うどんは…。」
「ハッ。んなの方弁に決まってんだろ。俺がアイツらの事で分かんねえ事があるわけねーだろ。」
その手からぶら下がるのは、うどんのストラップ。
そして彼が浮かべた顔は。
軽薄そうで、気だるげで、でも真剣な時はいつだってその目に鋭さを宿すその顔は、どこかで見たことがあって。
「じゃあ…もしかしてアンタ…!」
「姉貴、泣かしたら殺す。」
「うん………!」
信じよう。
羽ばたこう。
奈緒と加蓮と、三人、一緒に。
「これでいいんだな、ビッチ。」
「いい加減に名前覚えてくんない?美嘉、あるいは美嘉姉で。」
「悪いな。俺の姐さんはこのみ姐さん、姉は加蓮とあともう1人だけだと決まってるんだ。」
「…にしたって、あんたが乗るとは思わなかったわ。あんたならあえて崩壊させて、加蓮をアイドルにさせないようとするのかと思ったのに。」
「馬鹿言え。…これ以上、アイツから夢奪われて、俺が平気なわけねーだろ。」
そう言うと、ビッチはキョトンと、不思議そうな顔をした。
「だったら…どうして止めるのよ。夢を目指す加蓮が、あんたはずっと見たかったんでしょ?」
「馬鹿も休み休み言えってんだ。頭ゆるゆるビッチかお前。そういやビッチかお前。」
「はぁ…。一回一回毒吐かなきゃ人と喋れない訳?」
「…一瞬の夢のために、一生を投げ捨てるなんて馬鹿のすることだって言ってんだよ。まだアイツは高校生で、これから楽しいこといくらでもできんだぞ。それがアイドルやってたせいで一生歩けませんとか、あと三ヶ月の命ですじゃあ…あんまりにも報われねえじゃねえか。」
「見てきてるあんたが言うと説得力が違うわねー。…こういうときだけ、かっこいいと思えちゃうんだから。ホント、あんたって卑怯だよね。」
「加蓮のこと、頼んだぞ。美嘉。」
「…うん、任せて★」
まあまあ真剣な過去編だったので、ふざけた話はコッチでしようと思うんだ。異論は認めん。或いは飛ばすんだ。
シャニ次のユニット発表ってマ?幼馴染要素あるの?大河とどう絡ませんの?え?詰んだ…?しかも4人ユニット…?というこてゃ3周年で4人ユニットも来る…?というか毎年増えるとしたらそのたびにこの小説に絶望が巻き起こる…?早く終わらせないといけないのか…?無理やん、はー諦めよ。
それはそうとがわ゛い゛い゛な゛ぁ゛あ゛ざぐら゛ぐん゛
書いたらその通りになると聞いたのでシャニ2ndがコロナで潰れませんようにとだけ言っておく。