流星堂の居候 - Unintended hareM - 作:津梨つな
導入が下手すぎて長くなってしまったので、いずれプロローグとして出せたらなぁと思っております。
ひとまず、1話宜しくお願いします。
東京都内、とある質屋。
今日も一日が始まる。
「ん、この匂い…。万実さん、流石早起きだな…。」
朝食であろう素敵なにおいに釣られ、もそもそと起き出る。
寝起きのだらしない顔のまま着替えを始める男―――――俺こと、
「おはようございまーっす。」
居間へ向かうと、柔らかい佇まいの老婦人が食卓に3人分の食事を並べているところだった。
「あら、今日は早いのねぇ。何か予定でもあるのかしら?」
この方は市ヶ谷万実さん。
俺を拾って住まわせてくれている、恩人だ。
この質屋、『流星堂』を切り盛りしている方でもある。
「あれ?有咲はまだ?」
「あの子、いつも朝は遅いから…」
「ちょっと様子見てきますねー。ご飯冷めてもアレだし…。」
有咲というのは万実さんの孫娘で、同じくこの家に住んでいる。
今ではすっかり打ち解けたが、最初は人見知り?が酷くて大変だった。
「有咲ー。まだ寝てんのかー。」
障子の前に立って呼びかけるも返事はなく。
「?あけるぞー。」
開けてみるとそこには。
「…まーたすげえ寝相だな…。」
掛け布団を下敷きに大の字で寝ている女の子の姿があった。
「おいおい…仮にも年頃の娘だろうが…。
おーい、飯冷めちまうぞー。」
揺すってみる。
「んー……。…ん?」
モゾモゾと体を捩った後、ぼんやりと目を開ける。
「…んぅ?」
「おはよう。飯だぞ。」
「おはよう…?」
寝起き直後の緊張ゼロの表情でこっちを見つめてくるこの子が有咲、市ヶ谷有咲だ。
まだ寝ぼけているのか、なかなか間抜けで面白い顔をしている。
「ほれ、顔洗いに行くぞ。」
「んー…」
差し出した手につかまり、立ち上がる。
まぁ、さすがに洗面所までは付いていかなくていいだろ。
「コケんなよー。」
ふらふらしながらも洗面所へと向かう有咲を見送り、何気なく庭を見やる。
「しっかし、初めて見た時も驚いたが中々の風情だなあ…。」
俺がお世話になっているここ市ケ谷家は、趣のある立派な日本家屋だ。
表向きは質屋ということで小綺麗な印象だが、居住スペースに関しては歴史というか、いい意味で時間の流れを感じられる空間がある。
しっかりした造りの蔵まである。
蔵に至っては俺の作業場でもあるんだが、それはまあおいおい話すとして…。
と、和の空気に浸っていると
「どうしたのそんなところで立って。」
軽く身支度を整えた有咲が戻ってきたようだ。
「ん、やっぱ和風建築っていいなぁって思ってな。」
「ふーん…。ご飯、食べないの?」
「お、そうだったそうだった。
万実さん待ってるよな。」
「いこ。」
その後、万実さんの朝餉に舌鼓を打ち、今日も今日とて任された仕事に取り掛かる。
質屋ということもあって、ジャンル問わず様々な物がこの蔵には詰め込まれている。
それを整理・検品・管理するのが俺の担当だ。
初日こそ久々の筋肉痛に苦しんだものだが、今じゃすっかり慣れたもの。
中にはとんでもない値打ち物も眠っていたりして、まるで宝探しでもしている気分だ。
そんな調子で、仕事に慣れて来たのを見兼ねてか、昨日万実さんよりもう一つの仕事を任されていた。
「あのねえ、仕事って言うほどじゃあないんだけど。
有咲がねぇ。」
「有咲?あの子がどうかしたんです?」
「あの子、今年から高校生なんだけどねぇ。
…まだ、一度も学校に行ってないのよ。」
「…まじすか。」
「なんでも、勉強は出来ているから行かなくていいんですって。」
そんなんアリか。
いやでも勉強以外でも行っといたほうがいいんじゃないのか…。というか、
「え、あの子友達とかいないんですか。」
「見たことはないわねぇ。小学生の頃なんかは、お友達のお話もする子だったのだけど…。」
「なるほど…。それはちょっと心配ですね。」
「だからね、大樹さんには」
「学校に行くよう説得するってことですかね。」
「お願いできるかしら?」
「任せといてください。ついこの間まで、俺も高校生だったんですから。」
「そうねえ、お願いするわねぇ。」
…とは言ったもののなぁ。
不登校だとかいじめられてるだとか、そういう方面ならまだしも
『勉強ができるから登校は不要』ときたか。新しいパターンだ。
「んー……。」
「どうしたの、すごい声で唸ってるみたいだけど。」
「んお、有咲か。」
「今日は片づけ、しないの?」
「……。」
「無視?」
「有咲。」
「?」
「学校行こうぜ。」
特に何も思いつかなかったんでストレートに言ってみた。
「えー?いやだけど。」
ストレートに返ってきた。
「なんでよ。」
「めんどいし。知り合いも、いないしさ。」
「…まぁ、ほら、知り合いとかは作ればさ」
「うっさい。
あのさ、大樹さんがどういうつもりで急に言い出したのかわかんないけど、行かない理由も行きたくない理由も私が決めてるわけ。
それを行けとか知り合い作れとか、どういう目線で言ってんの?」
めっちゃ怒られたやん。おこやん。ぷんぷんやん。
「勉強だけじゃなくてさ、人とのつながりとか友達とか…
そういうのってやっぱコミュニティの中に入っていかないと、な?」
「あんt…大樹さんは何?お父さんにでもなったつもり?」
お父さんて。3歳しか違わんぞ。
「とにかく、私にはそんな必要もないことに割く時間なんてありませんから。」
「えぇ…。」
行っちゃったよ。ぷんぷん有咲。
「さぁてどうしたもんか。」
早速困ったな。思い付きで喋るとホント碌なことがない。
ひとまずこの問題は後程考えるとして、今日も蔵の中身に着手しよう。
**
「…ふぅ。」
黙々と作業すること数時間。
途中万実さんとの一服など挟みつつ、片付けやら仕分けやらと過ごした。
意外と向いてるのかもな、こういう単純作業。
気付けば辺りは暗くなりはじめ、夕日のせいか風景が赤で塗られていた。
暗くなったら上がっていいとの事なので、片付けに入る。
万実さんを探して店の方→台所→廊下等家の中、と探したのだが見つからず
次はどこを探そうかと考えていた時
「……!」
「…………!!」
蔵の方から声が聞こえた気がした。
「…客か?」
向かってみると。
「泥棒!」「ご、ごめんなさいぃ!」
ぷんp…有咲ともう一人、丁度有咲くらいの歳の女の子が何やら揉めていた。
「あんた誰?何狙いで蔵に入ったわけ?」
「わ、私は…その…」
ははぁ。あの子が侵入したところとっ捕まえたってとこかな。
もう少し見ているのもアリだが、有咲がマジで通報でもしたら面倒だ。
「有咲ー。何かあったのかー?」
近づきながら声をかけてみる。
「あー?あ、大樹さん。
こいつ、蔵に侵入してたからさ。きっと骨董品か何か狙いの泥棒だよ。」
「違うんです!私はその、キラキラを集めてたらここに辿りついちゃっただけで!」
…キラキラ?
「えーっと。
有咲、取り敢えず一旦その羽交い絞め解いて。話聞こ。」
「…嫌だけど。女子だからって甘くするところじゃないでしょ。
泥棒だよ?泥」
「わかったから、俺が見てんだから簡単に逃げるわけにもいかないだろ?」
「はぁ…。」
渋々といった様子で腕を解く。
「あ、ありがとうございます。」
「で、早速なんだけど。君は?」
「あ、私、戸山香澄です!花咲川女子学園高校・1年A組です!」
「花咲…川…。」
「ほー、有咲と同い年か。」
「そうなんですか!?アリサ…ありさ…。
あ!市ヶ谷有咲…さん?」
「え?そ、そうだけど。」
「そうだったんだ…。クラスで凄い頭のいい人がいるって教えてもらったんです!
会えてよかった!」
「はぁ!?私は別に…誰にも会いたいとかないけど…。」
「まぁまぁ…。で、香澄ちゃん?だっけ??」
「はい!香澄です!」
元気良いな…。
「君はなんでこんなとこに入ってきちゃったの?」
「それは…」
数秒ウンウンと唸り言葉を探した後、「あっ」と何か気付いたような素振りを見せ
何かを差し出してきた。
「…なにこれ。」
「これ、帰り道の途中で見つけて。
辿っているうちに、ここに着いて…」
「…シール?かな?」
ずっと握りしめていたのか、端の方は手汗でしんなりしているが
それらは星形のシールだった。
「あぁ、星かぁ。これがキラキラ?」
「そうなんです!私、星型の物とか見るとつい意識がそっちに行っちゃって…」
あー、わかるわ。俺も赤いものとか見るとつい買っちゃう。
「なるほどな。じゃあ本当に偶然でここに来たってわけか。
…にしてもこのシール、一体何の…」
有咲に訊こうと隣を見やると
「……ッ!」
真っ赤な顔の有咲と目が合った。
え、なに。またぷんぷん有咲?
「有咲?それどういう表情?」
「それ…貼ったの、小さい時の私だ。」
「えっ」
「そうなの!?有咲も星好き?小さい時ってどれくらい?ずっとここに住んでるの?このシールどこで買ったの?
あ、学校も同じなんだっけ!どうして学校来ないの?一緒に行こう?それとも」
「ちょ、ちょっとまて!急に食いついてくんな!」
すげえ食いつきだ。
流石にいきなり泥棒扱いされたからか、最初こそ一歩引いて話していたのに
今では逆に有咲を組み伏せそうな勢いで質問攻めだ。
星のシール、チートアイテムか何かかよ。
でも今いいこと聞いたな。
「香澄ちゃん?…学校、楽しい?」
とりあえず星のシールについては後回しとして
「はい!毎日新しいことばかりで、ドキドキするっていうか、見るもの全部がキラキラしてるって感じです!」
「なるほど。すげえ楽しいのは伝わった。」
テンションたっけえ。
「…有咲と一緒に学校行ったらもっと楽しそうだよな?
一緒に登下校したり、飯食ったりさ。クラスが同じかどうかはわかんないけど、同学年だろ?」
「―――!!!」×2
「ちょ、おま、何勝手に…!」
「行きたいです!いこ?有咲!」
「お前も急に何言って…てかそんなんでいいのかよ。
私が…その、どんな奴かだってわからないじゃんか…。」
「えー?うーん…」
しばし考える香澄ちゃん。
「んー…でも、有咲も私の事、わからないでしょ?
わからないことを知っていくのって、すっごいドキドキするしワクワクするんだよ!
それで、その先で有咲とすっごい仲良しになったら、きっともっとキラキラした毎日になると思う!」
「全然わかんねえよ!
…わかんねえ…けど…。
いいよ、学校、いくよ…。」
「!!有咲ー!」
香澄ちゃんが飛びつく。
「だー!もうくっつくなよ!!
それと!一個条件な!!」
「なぁにー有咲ー」
「…早く私の事、知るためにもさ。
お昼とか通学とか、ずっと一緒にいること。そうじゃないなら、行かないからな!」
「もちろん!ずっと一緒だよ!!有咲!」
あー…うん。
なんかあっという間に問題解決しちまったけど、何かこう、目の前の風景がすごく儚いや。
「よし、じゃあ香澄ちゃん。有咲の事よろしくな。」
「あ、はい!任せといてください!えへへ~」
「いい加減離れろよ!もう…」
名残惜しそうに離れる香澄ちゃん。
「あ、そういえば、お兄さんは何てお名前ですか??」
「あー名乗ってなかったな。ごめん。
常盤大樹ってんだ。」
「大樹さん…大樹さん…。覚えました!」
「うん。よろしくな、香澄ちゃん。」
「呼び捨てで良いですよ!」
「そ?おっけい。」
**
ひとまず、時間も時間なので香澄は帰った。
その後の有咲はというと。
「なんであんな余計なこと言ったの。」
ちょいおこだった。
「余計っていうか、この子なら有咲と仲良くしてくれるかなーって何となく…」
「それが余計っていうの。」
有咲の部屋でプチ説教をかまされていた。
「あぁ…ごめん。」
「それに…。
そ、その、大樹さんが仲良くしてくれてるから、別に友達とか…いいんだけど…」
「え?俺は俺、友達は友達だろ。」
「そうじゃなくて…あーもういいや。」
「??あ、そうだ。このシールなんだけどさ。」
有咲が途中で話を放棄したところで、香澄から渡されていた例のブツを思い出した。
「これ、貼ったの有咲なんだよな?
どういった…」
「あ?…小さい時にさ、ピアノ習ってて。
そこで一曲弾けるようになる度にご褒美って、一枚ずつもらってたんだよ。」
「ほー…ピアノねえ。
今は弾いてないのか?」
「今は別に。特に弾きたいとも思わないかな。」
ふーん。飽きたとかかな。
因みに俺もピアノを習っていた。シールこそ貰わなかったが、小さい頃は同じようにご褒美があったっけ。
「さて、明日は学校か。」
「迎えに来るって言ってたもんね。準備面倒くさ…」
「ま、いいじゃんか。可愛い子と二人で登校なんて、憧れちゃうわ。」
「は?」
「香澄と一緒なんだろ?」
「……。もう寝るから部屋出てって。」
「はい?いつももっと夜更かしするじゃ」「出てって。」
追い出されてしまった。
なんだよ、もう…。
「明日から学校頑張んな。おやすみ。」
そう言い残し、返事ももらえないまま自室へ向かう。
…俺も寝るか。することないし。
香澄可愛いです。
仕事の合間に書いているため、更新は不定期になりそうです。
一応書き溜めを作ってから投稿の流れで行けたらとは思っています。