流星堂の居候 - Unintended hareM - 作:津梨つな
折角流星堂に住んでいるのにほぼ有咲と絡みがない感じがしますね。
追々増えてくるでしょう。というか増やします。
「おっはよーございまーす!!」
次の朝、いつものように居間へ向かうと、元気のいい挨拶が飛んできた。
「…おはよう、香澄。」
「有咲はまだ寝てますか??」
「うん。てか早くない?」
「有咲と学校行くって考えたら眠れなくって!」
可愛い。
「あら、大樹さんおはようございます。」
「おはようございまーす。」
「おばあちゃん!この玉子焼きすっごくおいしいです!」
「あらあら、それはよかったわ~。お替わりは?」
「いただきます!!」
元気いっぱいかよ。
「俺、有咲起こしてきますね。」
「はい、お願いしますね。」
毎度思うが、起こしてから二人で居間に向かえばいいんじゃなかろうか。
二度手間だ。などと考えている間に有咲の部屋。
昨日追い出された障子に手をかける。
「あけるぞー」
「ちょ、ちょっとまって!」
いつも通り声かけながら部屋に入った俺が目にしたのは
パジャマ姿で慌てる有咲と床に散らばった大量の下着だった。
「えーっと…。」
「待てって言ったろ!つーか返事するまで開けんな!!」
「悪い!」
バーンと音がなるほど戸を閉めつつ退室した。
中ではまだ何か喚いている声が聞こえる、が。
俺の頭の中はその声を聞き取る余裕がないほど、下着のことでいっぱいだった。
なんだあれ、あんなでけえの付けんのか。
最近の高校生はその、発育がいいというか何というか…。
「背は、低いのにな…」
「おい変態。」
背中から低く冷たい声が聞こえる。
「…お、もう着替え終わったのk」「何も見てないよな?」
「えっ」
「何も 見て ないよな?」
何だ?どれを見られたことに怒ってらっしゃるんだ?
「えーっと…下着のバーゲンセールでもやってたのか?」
「……。いうな。」
「何を。」
「香澄には、言うな。」
「…なんで。」
「下着で迷ってるとか…知られたく無いだろ。」
あーそっちか。
てっきり下着を見たことに怒ってんのかと思った。
「それは言わないけど、有咲って結構胸有るんだな。」
「…あ?」
「背もちっさいからあんまり気にしてなかったけどなかなか…」
「…殺す。」
「えっ」
物騒なことを言い残して廊下をズンズン歩いて行かれた。
「なんだったんだ…。」
大きいことも気にしてたら申し訳ないし、もう触れないようにしよう。
「…と、俺も飯食わなきゃ。」
居間へ向かう。
その後は特に何もなく、初々しく学校へ行く二人を見送り、また蔵の作業に取り掛かった。
作業しつつも頭の中に下着の画像がこびりついていたのは、まあ仕方ないだろう。
**
昼過ぎだろうか。
疲れた腰を伸ばし、日の下へと出てきたところで、またも見慣れない来客を見つけた。
水色の髪をサイドで括り、きょろきょろと回り見渡しながら泣きべそをかいている女の子だ。
…ここは女の子を惹きつける何かでもあるのだろうか。
視線を下へずらすと制服で、学生であることがわかる。しかもその制服は…
「あぁ、有咲や香澄と同じ学校の…なんでこんな時間にこんなところに…?」
暫く観察しているとついに涙がぼろぼろ零れ出し…たところで目が合った。
「………。」
「………。」
えーっと…。
声をかけるべきか否か。
不審者扱いされるのもアレだしなあ。
でも泣いてる子を見て見ぬふりってのも…うーん…。
この間もただ見つめあっているだけである。
近づいてみる。
ビクッと怯えたような態度を一瞬見せたが、逃げずに居てくれた。
「君…花咲川の子?」
「ふぇ??えっ、あの……そ、そうです、けど…。」
「あぁ、いきなり声かけてごめんね。
怪しい人とかじゃなくて、ここに住んでる者なんだけど、泣いてるのが見えたからついね。」
「す、すみません…でした…。」
「………学校の時間じゃないの?」
「そうなん、です、けど…。」
まさか素行の悪いタイプか。
そんな風には見えないが…。
「学校に行こうと思ったら…迷っちゃって…。」
「???え、いつも違うルートで通ってるとか?」
「ふぇぇ、ちがうんです。いつも通りの道が、工事とかで通れなくて遠回りしてたら知らないとこに来ちゃってそれで…あうぅ。」
あー。
ちょっと方向感覚がアレな子なのか、要は。
「そっか。
スマホとか、持ってないの?GPSで地図とか見れるでしょ?」
「地図を見ても、いつも迷ってしまうみたいで…。」
詰みです。便利ツールも意味なしじゃどうしようもないよね。
でもなんだろう、この庇護欲をそそられる感じ。
「…俺、常盤っていうんだ。常盤大樹。」
「ふぇ?あ、わ、私は…ま、松原…花音といいます…。」
「そか。花音ちゃんな。
いっぱい歩いて疲れたろ?取り敢えずここダイレクトに日光浴びるし、日陰で一回足休めよ?」
「え、いやでもそんな…。」
「あ、怪しくないから大丈夫だよ。ここの、質屋の店員さんもいるしね。」
「そう、ですか…。じゃあ、ちょっとだけ。」
「ん、こっち来て。」
縁側に案内し、休んでもらう。
知らない場所に来ちゃって困惑しながら歩き続けて…きっと足にもだいぶキてるだろうし。
**
「―――そうだったんですね。ここが市ケ谷さんの…。」
「あいつ、先輩の間でも有名なの?」
そこから話をすること数十分。
ようやく打ち解け、花音ちゃんのこともいろいろと聞けた。
何でも、有咲達の通う花咲川女子学園の2年生らしい。
少しでも気を緩めると迷子になる体質だとか。どんな体質だ。
「でも、さすがに今日はもう学校いけないよなぁ…」
「この時間じゃ、行ってもあまり意味ないですね…。」
時刻は14時を過ぎたところだった。
午前中いっぱい歩き回ってたとして、体力的にも厳しいだろう。
「ずっとここに居るわけにもいかないし、今日はタクシー呼ぶから帰んなよ。」
「え!そんなタクシー使うなんて…勿体ないです…。」
「いいからいいから、また迷子になっても俺探しに行けないしさー。
確実に送ってもらえたほうが安心だろ?」
言い合っていてもアレなのでもう呼んじゃう。
タクシー配車アプリマジ便利。
「5、6分で来るってさ。自分の家の住所は言えるかい?」
「あ、ありがとうございます。大丈夫です。」
「そ。」
沈黙。
何か言いたそうにこちらをチラチラと見てはいるんだが、何も話しかけてこない。
話しかけられないのかな。
「どうかした?」
「ふぇ?あ、その…何か御礼をしなくちゃ、と、思いまして…。」
「えーいいよ。
俺としちゃ、可愛い子とお喋りして過ごせたってだけでラッキーだしさ。」
「かわいいだなんて…そんな…。」
「…照れてんの?」
真っ赤ですよ。いわないけど。
「もう、冗談はやめてください。それじゃ、ええと…連絡先交換しても、いいですか??」
そんな顔真っ赤の上目遣いで訊かれたら断れないでしょうよ。
断る気サラサラないけど。
「ん、いいよ。
…悪用しないでね?」
「し、しませんよぅ。今度、御礼をさせてほしいので、その時に使うんです。」
メッセージアプリでお互いを登録しあう。
そういえば上京してきてから初めてだな、こういうの。
有咲とも交換してねえや。
「御礼ね…。別に無理してそんなことしなくていいんだよ?
また会えるってんなら、楽しみにはしとくけどね~。」
「無理してないです!あと、メッセージとか、送っても迷惑じゃないですか??」
「全然いいよ。作業中とかは返せないかもしれないけど、そこは勘弁してね。」
「…やったぁ。」
そんなに嬉しそうにするもんかね。
何だろう、香澄とはまた違った感じだけど、可愛らしさってのが溢れ出てる気がする。
守ってあげたくなる的な。
と、癒されているうちにタクシーが到着した。
「今日はゆっくり休むんだよ~」
帰り分の運賃と自販で買ったお茶を渡し、見送る。
最後まで顔真っ赤だったけど、熱とか出てないといいな。
熱中症とか、怖いしね。
かのちゃん先輩も可愛いので好きです。
今作中だと主人公より後輩って感じですけどね。