流星堂の居候 - Unintended hareM - 作:津梨つな
本筋も考えずに書いていると、もうゴールを見失いつつあります。
一つ新たに物事を学習したとして。
『ソレ』について覚え、慣れが出始める。要するに習慣化する。
すると、次第に飽きが来る。
悪い意味ではなく、つまりは『トキメキ』がなくなるのだ。
それにより幼少期より成人以降の人間の方が体感時間が短いなどとも言われている。
何が言いたいかというと。
「新しいことを始めたい。」
任されている仕事にもやりがいはあるし、のんびりした時間も好きだ。
だが、あまりにもそれ以外が無さすぎる。
毎日関りがあるのは万実さんと有咲だけだし、
時間の使い道も作業・食事・睡眠くらいしかない。
「うーん、若いのに勿体ないぞ…」
爺さんみたいなことを言ってしまったが、新しい刺激が欲しい。
「相談してみるか…。」
交渉の結果。
万実さんに休みをもらい街の探索に来ている。
「たまに外歩くと新鮮だなぁ」
取り敢えず、学校でも目指してみようと思う。
それまでの道のりで何かしら見つかるだろ。
目的地を有咲の通う花咲川女子学園高校周辺とし、ブラツキを兼ねて合流を目指す。
今日は一日歩いちゃうぞー。
流星堂から出て橋を渡り…直感を頼りに歩く。
「ほー、ライブハウスか。」
"CiRCLE"と看板にある、ライブハウスを通過し。
「すげえ、横溝さんが2件続いてる!」
住宅街でどうでもいい発見をしつつ。
都市開発の進んでいると思われる、高層ビルなどの立ち並ぶエリアに来た。
どうやらショッピングモールなんかもあるらしい。
ふむ、買い物やゲーセン目的にも使えそうだな。
ゲームといえば、地元に居た頃は一軒だけあった駄菓子屋のゲーム筐体に熱中したりしたものだが…
「いや、せっかくの散策日だ。ゲーセンでつぶすのは無いだろ…。」
頭の中で浮かびかけた案を却下し、そろそろここから離れようかとしたとき。
「なんだあの人だかりは…」
有名人でも来ているのだろうか。
そんなに大勢でもないが、まぁ目に付く程度には集っている。
同時に聞こえる声・音に惹かれ、
そこで見たものは少々異様な光景、というか
「…いじめ?」
エラく顔の整った少女が二人居た。
一人――日本人離れした綺麗な長い金髪を靡かせ、金色の瞳を輝かせる少女――が
生き生きとした表情で歌い
その隣で、見覚えのある青髪の少女が泣きながらドラムを叩いている。
…どういう状況だこれ。
とりあえず面白そうなのでしばらく見ていると、青髪――花音ちゃんの真っ赤な目と
視線が重なった。
…が、あのメッセージの事もあるので逸らし
隣で歌い続けている金髪の子を観察する。
花音ちゃんが冷たい目で見ているような気もするが無視だ。気にしない気にしない。
「綺麗な髪だな…。外国の子かな?」
よく手入れがされているのか、日の光を反射し眩しいほどだ。
香澄がいたら「キラキラ~」とか言って突撃しかねないなこりゃ。
顔立ちの幼さから言って、中学生くらいだろうか。
何にせよ私服じゃわからん。
「ん」
いつの間にか歌は止み、金髪の子もじっとこちらを見つめていたことに気づいた。
周囲の野次馬もぞろぞろと解散していく中、金色の目は瞬き一つせずにこちらに向いていて――
「大樹さん。」
「ぅお!?」
吸い込まれそうな瞳に見惚れて(?)いたせいで彼女の接近に気づかなかった。
「なんだ花音ちゃんか…。
今日は何してんの?私服だけど学校は?」
「どうして目、逸らしたんです?」
「あー…いや、まあ色々あってね。」
君が怖いからさ。とは口が裂けても言えない。
…なに、怒ってんの?
これくらいの歳の女の子ってみんなそんなよくわからんところに沸点あるの?
「へぇ。あの子がそんなに気になったんですか?」
「あの子?あぁ、歌ってた子でしょ?
髪とか目とかきれいだなーって思って…。」
「…。」
「ともだち?」
「いえ、別にそんなんじゃ。」
「フーン…。」
何か不機嫌そうだし、散策に戻ろうか。と歩き出そうとしたとき。
「ねえ!あたしの歌はどうだったかしら!」
結構な声量で声をかけられた。
声量というより、通る声なんだな。
店で注文とかしやすそう。
「あぁ、いい声だったよ。よく知らない曲だったけどね。」
「そう!でも、不思議なの。
楽しくなるように歌っていたのに、集まった人はみんな不思議な顔で見ているだけだったの。」
そりゃそうだろ。
こんな路上で、しかも歌とドラムだけの組み合わせって。
おまけにドラムは泣いてるし。
「うーん…。多分だけど…」
簡潔に思った点を述べてみる。
「なるほど!いーっぱい人を集めて、みんな笑顔で演奏したら楽しんでもらえるってことね!」
いっぱい集めてみんな泣き顔にならなきゃいいね…。
「ところで、あなたお名前は?
私は弦巻こころ!こころって呼んでくれていいわ!」
「こころか。わかったよ。
俺は常盤大樹。呼び方は…まぁ好きにやってくれ。」
「大樹ね!どういう漢字を書くの??」
「大きいに、樹木の樹だ。」
「素敵な名前ね!生命力を感じるわ!」
そんな言い方されたことはないな…。
「…大樹さんって、そういう字書くんだ…。」
「そういえば花音ちゃん?」
「ふぇ!?な、なんですか??」
「あぁ、ごめん。考え事の最中だったかな。
…さっきは、なんで泣きながらドラム叩いてたん?」
「あ、あれは…」
流れはこうだ。
朝から何だか気分が落ちていた為、学校は欠席。
前々から練習はしていたものの上達している気がしないドラムの存在を思い出し
折角一日暇になったので中古としてでも売りに行こうと楽器屋を目指す途中
この金髪の子に声をかけられたと。
名乗られたため自分を自己紹介を…と律儀に返していると
話の流れから抜け出せなくなり、ドラムの話になった。
上手くならないからやめようと思う、と伝えるとそんなの勿体ないからと
その場で叩くよう言われ、渋々演奏してみると当の金髪は歌いだしてしまい
人だかりが―――と。
いや災難すぎでしょ。
この子、こころと言ったか。そのうちデカい事件とか起こしそうだな。
「そっか…なんというか、ご愁傷様。」
「はい…。」
「?2人とも、どうしてそんな苦い顔をしているのかしら?
そうだわ!大樹も一緒に歌って、3人でもう一度演奏したらもっと楽しく」
「あ、俺ちょっと用事あるからごめんねー。」
巻き込まれちゃたまらん、と逃げ出すことにする。
「あら、それは残念ね。
それじゃあ、また会いましょう!」
また、会うのか…。
「そうだねー。」
「ま、まってください!大樹さん!」
「ん」
呼び止め、駆け寄ってきた花音ちゃんに耳打ちされる。
あ、いい匂い。
「この状況から、できれば抜け出したいので、協力してもらってもいいですか??」
「…えー…。」
「私の事、置いていきますか…??」
あぁ、この上目遣い。俺弱いんだよな。
「…わかったよ。
こころ?花音ちゃんのドラムなんだけどさ。ここに置いとくわけにいかないし、一旦家に持ち帰ろうと思うんだ。
で、手伝おうにも花音ちゃんの家分からないし、花音ちゃん借りて行っていいかな?」
話の脈絡もないのに多少強引だったか?
「それもそうね!楽器を外に置きっぱなしってのも可哀そうだし、手伝ってあげて!
あたしも何か手伝えることはないかしら??」
「そこは俺に任せといていいよ。力仕事になるしね。」
「そう。…それじゃあ、今日は帰るわね!」
一瞬シュン…とした表情になったがすぐに持ち直し言った。
「また会いましょっ!」
手を振りながら駆けていく姿は、完全に子供のそれだった。
それを手を振り返しながら見送り、花音ちゃんに向き直る。
「…これでいいかな?」
「ありがとうございます。助かりましたぁ。」
「凄い子だったな。」
「…可愛かったってことですか。」
「まあ見た目はかなり整ってたけれど、勢いというか思考がなぁ…。」
流れや空気を読むっていうより、あの子が世界って感じだったな。
「あぁそういう…。」
「うん。じゃ、さっきもああ言ったし、花音ちゃんの家まで案内してもらえる?
ドラム、運ばないとね。」
「あ、はい。売るのは今度にしますね。」
あの事件の後で売りに行くのも嫌だよな。
その後家までの道を教えてもらい、ドラムを運搬。
自分の家には迷わず行けるんだなと、変なところで感心しつつ
全てが終わったころには結構な時間がたっていた。
「…よし!これで完了だなー。」
「ほんとありがとうございましたぁ。すごく助かりました。」
「ん、ならよかったよ。
じゃあ、俺はそろそろ行くねー。」
「え?え?上がっていかないんですか??」
「え。なぜそうなった。」
そんないきなり女の子の家に上がり込むような男じゃあないぜ俺は。
てか実家だし。何か色々ハードル高いしいやだわ。
「この前のと、今日のと、御礼とかできてないので、その」
「大丈夫大丈夫、御礼なんて気にしなくていいからさー。」
「ふぇぇ、そんなわけには…」
おどおどしているように見えて意外と強情だ。
御礼をしたいの一点張りで退いてくれない。
「うーん…それなら、今日はもう遅いからアレだけど。
今度どこかに出かけるってのはどうかな。
俺もこっちに出てきたばっかで色々歩いて回りたいし、花音ちゃんみたいな子となら一緒にいるだけでご褒美みたいなもんだ。」
「ふぇぇ、そんなことはないですけど…。
でも、私も大樹さんとお出かけしたいです。」
「おっけ、じゃあそうしよう。
日程とかはまたおいおい決めよか。」
「はい!」
まさに満面の笑みといった感じで頷く。
まぁ、普段迷っちゃってお出かけどころじゃないだろうしな。
ところで…
「ところでさ、俺の事下の名前で呼んでたっけ?」
「あ…その、嫌、でしたか…?」
「全然嫌じゃないけど、ちょっと気になっただけ。」
「そうですか…。
…その、市ケ谷さんには、どっちで呼ばれてるんですか?」
「なぜ急に有咲が出てくるんだ。
えーっと…大樹さんって呼ばれてる気がする。あんま気にしたことないけど。」
「へえ…。」
お気に召さなかったのだろうか。
呼び方で個性出したいとかそういう年頃かな?
「市ケ谷さんのことは呼び捨てなんですね。」
「まあね。年齢的にも雰囲気的にも妹みたいな感じなんだよな。やんちゃな。」
「そうですか。」
「花音ちゃんも呼び捨ての方が良い?」
「ふぇ!?あ、いやそのそれは…あぅ、どっちでも、呼びやすいほうで構いませんので…」
「そ?花音ちゃんは"花音ちゃん"って感じするんだよなぁ。可愛い感じ。」
「かわいい!?私がですか??」
「うん。ふわふわした感じ?可愛らしいと思うよ。」
「…えへへ。」
喜んでるようで何よりだ。
でもほんと、雰囲気からしてまさに可愛らしいって子なんだよな。
こういう妹ほしかったよ…。
「じゃあ、またね?
今日もあちこち探検して帰りたいんだ。」
「あ、はい、また…メッセージ、送りますね?」
「おっけー。まってるね。」
街の探索は、その後もちょっとだけ続いた。
――久々の運動により、膝が笑い出すまで。
こころちゃんも何とか取り上げたかったんですが
メインヒロインになってしまうほど濃すぎる子なので
追々分岐かifストーリーで書いてみたいです。