流星堂の居候 - Unintended hareM - 作:津梨つな
いくつか評価もありがとうございます!
すごく嬉しい半面、これから下がっていくんだろうなぁ…と恐怖でございます。
家を出てから数時間。
もうすぐ日が落ち始めようとするころ。
花音ちゃん宅からまた都市部へ向かった後、時間的にもよさげだったために
高校を目指して歩いていた。
「ちょうど帰る有咲に会えたら一緒に帰れるしラッキーやな…と、ここか。」
校門と思わしきコンクリートの壁が始まったので、沿って歩く。
角を一度左折すると、門と下校し始める生徒たちが見えた。
「おぉ、ナイスタイミング。」
待っていれば有咲が出てくるかと思い、校門の少し横、邪魔にならないあたりで待機する。
道に突っ立っているのもどうかと、壁に背中を預ける形で生徒の流れをぼんやり見る。
「…そっか、女子校だっけ。」
当然、出てくるのは女性ばかり。
…俺、不審者っぽくね。
誰かに話しかけられでもしたらどうしよう。
俺、こう見えてあんまり女性得意じゃないんだ。
「…?」
そういえば、何か違和感があるな。
見た感じ学校だし、女子ばかりだから女子校ってのもあってるんだろうけど…
どこだ、どこに違和感感じてるんだ。
「ねーねー。この学校に用事?それとも、誰かと待ち合わせー?」
ふと感じた違和感の正体を探ろうと、道行く女生徒をガン見していると
不意に明るい声が飛び込んできた。
「えっ?俺?」
「そだよー。男の人なんて珍しいなーって思って。」
「あー…そうだよな、女子校だもんな。」
振り向くと、何が楽しいんだかニコニコ顔の少女がいた。
恐らくこの学校の生徒だろう。
にしても初対面の不審者とも取れるような異性にこうも気軽に話しかけられるとは。
恐ろしいコミュ力・若しくは勇敢さといったところか。
「誰か待ってるなら連れてきたげようか??」
「いや、初対面でそんな面倒掛けるわけにもいかないし、大丈夫だよ。」
「そう?丁度暇だったし、面倒とか気にしなくていいのになー。」
「そうかい。ところで君は…」
「あたし?あたしはねー日菜っていうんだー。
氷川日菜。」
「自己紹介どうも。日菜はこれから帰るとこ?」
「まあねー。色々寄る所はあるけど、学校からは離れるかなぁ。」
「そか。」
「……。」
「………え、帰らないの?」
「えー?まだ名前も聞いてないし、何か面白そうだからもうちょっと居たいなーって思って。」
何ということだ。
知らない男の人にこれだけ距離を詰めて、挙句自ら一緒の時間を作るなんて。
危ないからはよ帰んなさい。
「確かに、名乗らないのは失礼だよな。
俺は常盤大樹。待ってても面白いことなんかないから早く帰んな?」
「ヒロキ、ヒロキ…。
うん!ロキって呼んでいい??」
「は?…あぁ、あだ名ってことか。」
一瞬意味が分からなかったのだが、どうやらそういうノリの子らしい。
にしてもあだ名のセンスよ。
「もうちょっと何かないかね。
それだと最悪呼ばれても気づかんよ。」
「えーっ?うーんとねー…
じゃあ、ヒロくん?ヒロさん?」
何とかしてあだ名をつけたいらしい。
「もうなんでもいいや。
くんでも、さんでも、好きなほうにしてくれ。」
「わかったー。」
ヒロくんヒロくん…とブツブツ繰り返しながら、俺と同じように壁にもたれる。
「……。で、まだ帰らないのか?」
「…そんなにあたしと居たくないの?」
「居たいか居たくないかの前に、さっき会ったばっかだろ?
逆に何故ここに居ることに拘るんだ?」
「んー。直感?て言うのかな。面白そうだなーって感じ?」
なーんにも答えになってません。
「…はぁ。
じゃあ俺そろそろ行くから。またね。」
絶対厄介なことになる。直感がそう告げたので、取り敢えずこの不気味なぐらい距離が近い少女――氷川日菜から距離をとることにした。
「えー、まってよー。」
…が、取れなかった。
この子すげえついてくる。
「……ついてきても面白いことなんかホントないぞ。」
「面白いがどうかはあたしが決めるんだもーん。」
「じゃあ、せめてそのぴったりくっつくのはやめてくれ。」
「えー?別に普通の距離だと思うんだけどなー。」
そう、歩いていても思うが近いんだこの子。
すげえいい匂いしてくるよ…。
もう有咲と帰るとかどころじゃなくなったため、適当に歩く。
本当に面白いことなんかなくて、飽きてどこかに行ってくれたらいいのに。
と心から願っていたはずなのに。
「―――日菜?」
途中すれ違った人が後ろから声をかけてきた。
日菜に。
「?あ、おねーちゃん!!」
おねーちゃん?
振り返ってみると、酷く訝しげな眼でこちらを伺う女性がいた。
なるほど。日菜をキツく・鋭くしたような顔立ちだ。
可愛いというより美人に属するタイプだな。
「日菜。
それに、そちらの方は一体…。」
「帰ろうとしたら校門のところで会ったんだよー。
ヒロくんっていうんだ。」
「ヒロくん…?」
「あー…えっと、常盤大樹といいます。日菜とはさっき会ったばっかりなんです。」
「そうでしたか。妹がご迷惑をお掛けしたようで…。
私は、氷川紗夜といいます。日菜の双子の姉です。」
「双子かぁ。道理で似てるわけですね。」
「なんでヒロくんも敬語なの?」
「初対面なんだからマナー大事だろ。」
「え!あたしには最初からため口だったじゃーん!」
「日菜も最初からそんなんだったろ…。」
この子、疲れる。
ただお姉さんの方は話ができそうなタイプだな。
「えと、紗夜さん、でしたっけ。」
「ええ、何でしょう常盤さん。」
「紗夜さんは、花咲川の生徒さんですよね?」
「ええ、制服でわかるとは思いますけど。」
これだ、違和感の正体。
制服が違ったんだなぁ。
そりゃ人混みが違和感まみれなわけだ。
てことは
「姉妹で別の学校に通ってるんですね。」
「そだよー。」
「ええ、おかしいですか?」
「あ、いや別にそんなことは」
姉つえーな。
圧が実体化しそうな勢いだ。
話を変えよう。
「花咲川ももう学校終わってますよね??」
「えぇ、終わってなきゃ私がここに居るのはおかしいでしょう?」
「はい、まぁ…」
じゃあこの辺に居れば有咲にもワンチャン…
「あ!大樹さん!」
「お」
この声は…!
「大樹さーん!こんなところで、どうしたんですかー?」
香澄ちゃんだ!
「ちょっと色々あって気づいたらここに居たんだ。」
「えー?大樹さん、迷子ですかー??」
「ちがわい。」
「えへへー、ですよねー。」
どうも可愛がってしまう。
懐いた犬みたいなんだもん。
「…戸山さん、もお知り合いなの?」
「え?…あ、氷川さん…。」
サッと俺の陰に隠れる香澄。
「えっと…その…お、お知り合いです。」
「なんで隠れてんの。」
「香澄ー!急に走り出すと追いつけないだろうが…って、大樹さん?」
有咲も来たか。
「おうお疲れ有咲。」
「市ケ谷さんまで…。一体どういう関係なのかしら?」
「げっ、氷川…さん…。」
早々に顔を顰める。
有咲も、隠れこそしなかったがこのお堅いお姉さんが苦手なようだ。
わかるよ。俺もなんか苦手だ。美人だし。
「おねーちゃん、怖がられてるよ?」
「うるさいわね。私が何かしているわけじゃないわ。」
「えー?また怖いこと言ったんじゃないのー??」
「私は、風紀委員として当たり前の事をしているまでです。
さっき戸山さんを注意したのも当たり前の事だったでしょう。」
「…香澄、何かやらかしたの?」
「そんな、何も、私は、全然、別に」
「あー、さっきな。部活とかの体験で周ってた香澄がちょっと無茶なこと言ってさ。」
「無茶にも程があります。全部に入りたいだなんて。」
「あー…。」
香澄だしな。わかる気がするわ。
視線を背中側で震えている香澄に向けると、今にも泣き出しそうな子犬がそこにはいた。
なんかあうあう言ってるし。
「全部入るのー?面白そうだね!!
あたしもできるなら全部やってみたいかなー。」
「日菜は黙ってなさい。今あなたが喋るとややこしくなるのよ。」
「ぶー。」
頬を膨らます妹の方。
不思議なもんだな。
妹はあれだけ表情も豊かで、割と無茶苦茶そうなのに姉はまるで鉄のようだ。
表情はほぼ変わらないし、声のトーンなんかもほぼ一定だ。
こんなに似ないこともあるんだろうか。
「…とりあえず、さ。こんな往来で話すのもアレだし
今日のことはもう良くないか??」
「香澄も、理解はしたんだろ?」
「はい…無茶だってちゃんとわかりましたぁ…」
「……そうね。元より、ここで話し込む予定もなかったのだし。」
「うん、まあお姉さんみたいな風紀委員がいるとこの学校も安定だよな。」
「どういう意味?」
「…そのままの意味です。」
「あ!ねーねー。ヒロくん?
言った通り、面白いことになったでしょー??」
にしし、と笑う日菜。
「俺は疲れたけどな。」
「へへー。でも、あたしはこの場に居合わせられてすっごい楽しかったよ!
るんっ♪てきたって感じ~。」
「るん…?」
「また今度遊ぼうよ!連絡先教えてー??」
「あ、あぁ…」
よくわからんが俺は一体何人と連絡先を交換するんだ。
そのまま自然に消滅するような関係じゃなきゃいいけど。
「ちょっと日菜。今日会ったばかりの人に失礼でしょう。」
「えー。でもヒロくんはいいって言ったもーん。」
「…あなたも、私は信用しているわけじゃないので。
あまり日菜に変なことしないように。」
誰がするか。
「じゃ、おねーちゃん帰ろー。
ばいばいー。」
「あ、こら日菜、引っ張らないで。」
騒がしく帰っていった姉妹だった。
騒がしいのは片割れだけだが。
「…俺たちも帰るか。」
「そうだな。」
心なしか有咲が静かで怖い。
またどこかで機嫌損ねたか??
ほんと沸点がどこにあるか謎すぎるせいで、一国の姫でも相手にしている気分だぜ。
「香澄も、帰ろうな?」
「うぅ……。」
もうすっかりしがみついてる。
程よい高さの頭に手を載せてみる。
「!!」
そのまま撫でつつ、
「そんな怖かったか??
もう大丈夫だから、取り敢えず離れて帰ろうな?」
「えっ……はい。」
しぶしぶといった様子で離れ、自然な様子で有咲と手をつなぐ。
めっちゃ仲良しになっとるやん。
俺だったら即行振り払われてるわ。
「大樹さん、香澄の事甘やかしすぎじゃない?」
「そんなことねえよ。普通だ。」
「私とは全然対応違うじゃん。」
「それは…まぁ…。
あ、そうだ。もういい時間だし何処か寄って帰ろうか?」
「はあ。」
「何。」
「露骨に話逸らすなって思って。」
えー。
俺このまま家に帰りたくないなぁ。
絶対気まずくなるか機嫌悪くなるよこの子。
「あ、私いつも行くファミレスがあるんですよ!」
いつの間にか復活していた香澄が言う。
うん、元気なほうがかわいいぞ。
「大樹さん、おなかすきました??」
「まあね。昼も食わずに歩き通しだったし。」
「よかった!いきましょう!」
「ん。有咲も行くだろ??」
「………。
いくよ。二人きりで行かせたら、何しでかすかわからないし。大樹さんが。」
俺かよ。
その後は有咲の言うようなことも当然なく。
それなりに賑やかに過ごし、それぞれ帰路に就いた。
今日、盛沢山すぎだね。
流石に少し疲れちまったぜ。
でも、やっぱり新鮮さって大事だ。
明日からの仕事に向けて、活力を充電できた一日だった。
今回は氷川さんちの姉妹が出ましたが、これからより一層キャラや関係性が崩壊していきますので
ご注意くださいませ。