流星堂の居候 - Unintended hareM - 作:津梨つな
「おかえり。どこいってたの。」
「た、ただいま。ちょっと散歩にな。」
気まずい。
帰ってくるなりこれだもの。
なんで朝からそんな顔真っ赤なんだ。
「あのさ、今日、なんだけど。」
「…ん。」
「学校、行かないからさ。」
「いや行けよ。」
「…?」
「何でそんな不思議そうな顔ができるんだ。
学校行かないのが当たり前になっちゃいけません。」
「あっ。…今日、日曜日だよ?」
「あっ。」
学生じゃなくなって働くなり何なりすると曜日の感覚ってなくなるよね。
うん、あるあるだ。
俺だけじゃないはずだ。だよな?
「それは悪いことをした。」
考えてみれば、あの二人だって学校がないからこそあんな時間からアグレッシブだったのだ。
そうだよな。休みならきっとそうだ。
…てことは。
「だから、一日一緒に居られるなーって…思ったんだけど。」
「お、おう…。」
そんな見んなよ!
君そんな子だったっけ!
「………。」
「………。」
ほら気まずいだろ。
「…嫌?」
「全然?ただやっぱり、照れるなーって。」
「そう、だよね…。」
「あらあら、二人とも玄関で何してるの??
入ってきてお話したらいいのに~」
万実さんナイス。
「そうだな。
取り敢えず中入ろうぜ。俺靴脱ぎたい。」
「う、うん。」
その後も妙にそわそわしつつ時間は流れ。
有咲に「聞いてほしいことがある」と言われたのは日も高くなった昼前の事だった。
居間で向かい合って座る。
対局でも始まるかのようだ。
何やら、昨日あの後真面目に考えてみたらしいのだ。
昔から素直に甘えるのが苦手、というより経験のない有咲が俺とより仲良くなるためにどうしたらいいのか。
考えた末たどり着いた答えが――
「え、マジで言ってんの?」
「マジ、です…。」
真っ赤になりプルプルしながら頷く。
彼女の提案は、「お兄ちゃんになってほしい」だった。
続けて言うには、兄が欲しいのではなくそういった関係性のように振舞えば
仲良くしやすい状況ができるんじゃないかとのこと。
一見冗談かとも思える提案だが、この有咲の照れっぷりを見るに真剣なのだろう。
「そういう願望があんの?兄妹プレイがしたいとか?」
「ぷ、プレイっていうなぁ!
一人っ子だし友達もいないしで、特に異性なんてどうしていいかわかんないんだもん…。」
「俺は構わないけど…」
最終的にどこに向かいたいのか。
関係性の着地点が謎すぎるがこの提案を呑むことにより有咲の可愛い面をもっと見られるなら
俺は喜んで兄になろう。
「じゃ、じゃあ…ヒロにいって呼んでもいい?」
「お、おう。」
恥ずかしい呼び方だとは思うが、悪い気分ではない。
あまり外で呼ばれるとアレだが。
「ありがと。私、頑張るね。」
「おう。がんばれ。」
「うん。」
?
話は終わったんじゃないだろうか?
まだもじもじしつつ、時折こちらを伺うようにちらちら見てくる。
どうでもいいが、俺の心の声擬音多すぎね?香澄かよ。
「えっと…ヒロ、にい?」
「んー?」
「これから、頑張ることにしたから、その…
頭、撫でてほしいな…。」
「………。」
い、いかんいかん。
思わず真顔で固まってしまった。
ホントに誰なんだろうかこの子は。これが素だとしたら今までの殻固すぎやしませんか。
「あ、嫌だったら別に…いいんだけどさ。
前に香澄が撫でられてるの見て、ちょっと羨ましかったっていうか…。」
「あ、あぁ…
……おいで。」
「――!…うん。」
そばに擦り寄ってきたので目線の高さにある頭に手を載せる。
一瞬ビクッとしたが、されてみると心地よかったのか
手のひらに頭を押し付けてくる。
もともと小柄なのもあって、小動物でも愛でている気分だ。
暫し時間も忘れ撫で続ける。
そのうちだんだんと有咲の体から強張りが解けていき
最終的には胡坐をかいている俺に背中から体重を預けるようになった。
今じゃすっぽりと抱きかかえているような形になっている。
…落ち着くなぁこれ。
―――すぅ。すぅ。
どれくらい時間がたったか。
目の前の少女からは寝息が聞こえ始めた。
俺と同じで、昨日寝てないんだろうな。
寝ずに考えて「お兄ちゃんになって」は可笑しかったが、結果としては良い。
毎日でもこうしたい気分だ。
**
「……ん。」
有咲が目を覚ましたのは、すっかり日が落ち、休日の終わりを実感してしまう頃だった。
「よく眠れたかい。」
撫でる手を止めずに聞く。
「うん…おはよう、ヒロにい。」
「ん、おはよ。」
人生でトップクラスの有意義な日曜日となった。
何もしてないけど、贅沢な一日。
俺に、妹ができた日。
どんどんキャラが崩壊していきます…。