JOJO、友と杖を得る
数日後の休日にホグワーツの先生が訪ねてきた。私この人知ってる、副校長のミネルバ・マクゴナガル先生だわ。そして今年は1991年だわ。つまりハリー・ポッターの入学年と同じ。お、主人公と同級とか詰みか???
イギーたんに遊んでもらいながら放心していると、大人たちが話し合いを終わらせて庭に出てきた。今から私の学用品を買いに行くらしい。ちょっとちょっと、私の意思は無視ですか?まだホグワーツに進学するなんて言ってな……どうせ行くんだろって?よく分かってるじゃあないか。こんなに楽しそうな学校に私が飛びつかないはずないでしょう?
両親に別れを告げ、マクゴナガル先生は私を連れて姿あらわしをした。ぎゅるんっと狭い箱に詰め込まれたような感覚の後、目の前にビッグ・ベンがあった衝撃が理解できるか????さっきまでアメリカ合衆国ニューヨーク州に居たんだぞ????私はちょっと凍りついた。人間って混乱が極まるとほんとに何も考えられなくなるんだね、おっどろき。
「すみません、ミス・ジョースター。初めての付き添い姿あらわしですから、少し酔ってしまったでしょう?」
「大丈夫です、マクゴナガル先生。驚いただけですから!」
「それはよかった、慣れないうちは乗り物酔いのような症状を起こす人もよくいるのですよ。そうそう、今回の買い物ですがもう1人マグル生まれの女の子も一緒なのですが、よろしいですか?」
「もちろんです。入学前からお友達ができるなんて嬉しいな!」
「ふふ、その快活さに彼女も虜になるでしょうね。さあ行きましょう、真面目な子ですからきっと待ち合わせ場所に到着しています」
かの有名な漏れ鍋に入ると、お客はみな時代錯誤なローブやドレスを着込んでいる。わあ、映画のセットみたいだ。金ローで毎回欠かさず見てたくらいだけど、実際に見るとまた違う感動があるなぁ。ん、おや?端の方に茶髪の女の子が座っているぞ。まだ幼い子だ、こんな酒場には相応しくないね……?
「ミス・グレンジャー、お待たせしました」
「先生!いいえ、私が早く着いただけですからお気になさらず」
グ レ ン ジ ャ ー ?
気持ち目を見開き、華奢な少女をマジマジと観察する。毛量の多い縮れ毛、大きめの前歯、机には本が3冊……あっハーマイオニー確定ですね。初めての場所で読書ができるなんて豪胆すぎないか???その肝の太さ、JOJOはとても素敵だと思います。
マクゴナガル先生に続く2人目の主要人物をじぃっと目に焼きつける。かわいい……よしよししたい……かわいい……と煩悩に塗れた視線を向けていたせいか、ハーマイオニーが先生の後ろからひょいと顔を出した。
「先生、後ろの彼はどなたですか?」
「彼?……ああ、紹介が遅れましたね。さ、前にいらっしゃい」
「はい、先生!はじめまして、ミス・グレンジャー。私はジョアンナ・ジョースター、こう見えても女なんだよ」
「えっ……ええ〜!ごめんなさいミス・ジョースター!とても背が高くてかっこいいから、てっきり男の子だとばかり……私、ハーマイオニー・グレンジャーよ。ミスなんていらないわ、ハーマイオニーって呼んでちょうだい」
「あはは、気にしないで!よく間違われるの。良ければ気軽にJOJOって呼んでくれよな、ハーマイオニー」
あわあわしてるハーマイオニーをつついて遊びながら、先生に急かされて裏口に出る。映画のごとくレンガを叩けば、瞬く間に魔法界の入口が開いた。珍しくニッコリ笑う老魔女がようこそ、と手招いた。
「わぁ……素敵!まるでおとぎ話の世界だわ!」
「……すごいな、ここが魔法界か」
ああ、ここがダイアゴン横丁。始まりの場所か。すごいなぁ、右を見ても左を見ても異世界みたいだ。こんな光景、中世の気配が残る文化遺産でだってお目にかかれない。
2人してあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ。あまりにもお上りさん感が強かったのだろう、マクゴナガル先生は生暖かく微笑みながら私たちの手を取り、歩き始めた。どうやらこのままだといつまで経っても目的を達成できないと判断したようだ。その予想は正しい。だって私、めちゃくちゃはしゃいでいるもの。
「まずは……換金からですね。銀行へ行きましょう」
「銀行?魔法界にも通貨制度があるんですね!」
「もちろんです、ミス・グレンジャー。道すがら単位を教えますから、きちんと覚えるのですよ。さ、ミス・ジョースターもおいでなさい」
「はい!」
皮の余った手のひらに銅貨、銀貨、金貨が並ぶ。魔法界では順番にクヌート、シックル、ガリオンと呼ぶそうだ。1シックルが29クヌート、1ガリオンは17シックル、493クヌートと換算する。単位がめんどくさい。なんで10とか100とかで次の通貨に変換されてくれないの……なんでわざわざ素数なの……
グリンゴッツの小鬼に換金してもらい、銀行を出た。1000ドル分のガリオン金貨くそ重い。きゅっと顔を顰めて皮袋を持っていると、見かねたマクゴナガル先生が浮遊魔法を使って袋を浮かせてくれる。ありがたすぎて涙が出そうだわ……
「気を取り直して……最初はやはり杖選びでしょうね。イギリス魔法界ならオリバンダーが1番ですよ」
「杖……!いよいよ魔法使いらしくなってきたわね、JOJO!」
「そうだね、ハーマイオニー。私の杖はどんなものかなぁ……」
オリバンダー老か、目が月のように輝く矍鑠とした老人らしいけど……映画の俳優みたいな人なのかな?JOJOはミーハーですのでとても楽しみです。
先生の先導で歩くこと数分、目的の店に到着した。剥がれかけた金色の文字が扉に書かれている。なになに、オリバンダーの店───紀元前382年創業 高級杖メーカー?おお、ここが噂の杖屋さん……入ってみよう。
「おお、天井まで箱でぎっしりだな」
「ええ、すべてワシが自らの手で作ったものです。そしてその中の1本があなたの杖になります」
突然の第三者の声に振り返る。いつの間にか、店内奥のカウンターに老人が立っていた。この人がオリバンダー老……癖が強そうだわ……
オリバンダー老はマクゴナガル先生と2、3言言葉を交わし、私たち二人に杖腕を伸ばすように言った。たしか利き腕でいいのよね?どうぞお使いください。おお、巻尺が勝手に測っていく……
「ジョースターさん、オリバンダーの杖は一本一本、強力な魔力を持つ物を芯に使っております。一角獣のたてがみ、不死鳥の尾の羽根、ドラゴンの心臓の琴線。どの生物も一体一体違うのじゃから、オリバンダーの杖に一つとして同じ杖はない。もちろん、他の魔法使いの杖を使っても、けっして自分の杖ほどの力は出せないわけじゃ。そして、杖を魔法使いが選ぶのではなく、杖が魔法使いを選ぶのです。……さあ、振ってみなされ。トウヒにドラゴンの心臓の琴線。19cm、苛烈」
差し出された杖を手に取り、振る。瞬間、窓ガラスがバキリと悲鳴をあげた。オリバンダー老がさっと杖を取り上げる。
「おおいかん、これではないようじゃな。黒檀に不死鳥の尾羽。35cm、しなりにくいが忠誠心が高い。次はこちらを試してくださいますかな?」
杖を振る。今度は床が裂けた。マクゴナガル先生とハーマイオニーが慌てて飛び退く。またもオリバンダー老が年齢に似合わぬ素早さで杖をひったくった。
「ははは!久しぶりの強敵じゃな、腕がなるものじゃ!」
杖を振っては何かを壊し、取り上げられ。また振っては壊し、取り上げられ。それを何度繰り返しただろう。あまりに私に合う杖が見つからないものだから、一旦ハーマイオニーと交代することになった。
はあ、なんで私の杖は見つからないのかしら。私の何がそんなに気難しいっていうの?こんなにフランクな11歳女子も珍しくてよ……はあ……
沈みきった私をマクゴナガル先生が慰めてくれる。たまになかなか杖が決まらない生徒がいるだとか、私のときも2、3本試しただとか。先生優しい、JOJOグリフィンドールの子になる……
「JOJO!私の杖が決まったわ!ブドウにドラゴンの心臓の琴線ですって!」
「お、よかったねハーマイオニー!君らしいシャンとした杖じゃあないか?いいな、私の杖もさっくり決まってくれないかな……」
「大丈夫よ、JOJO。どうやらオリバンダーさんに候補の心当たりがあるみたい」
「本当かい?そりゃあいいや!ちょっと待ってて!」
ハーマイオニーと入れ違いでオリバンダー老の前に出た。古めかしい店の中でも一際古いであろう2つの箱を恭しく抱え、彼は心底嬉しそうにしている。
「まずはワシが初めて作った杖を振ってみてくださるかの?ナナカマドにドラゴンの心臓の琴線。21cm、決闘向き」
華奢な杖を手に取る。ふわり、赤い梅がこぼれ落ちた。これが私の杖か?そうなのか?待ってたぞ相棒!!!……オリバンダー老、なんでまた取り上げちゃうんです?
「おお、やはりこの方向性で間違いないようじゃな。ならば、こちらを試してはいただけないか?セコイアにセストラルの尾毛。38cm、逆境に強い」
セストラルの尾毛?珍しい芯材をつかってるんだなぁ、なんて驚きながら杖を握る。するとなんということか、散々ごちゃつかせた店内が時間を巻き戻すように修復されていく。初めに割ったガラスのヒビが埋まると杖先から優しい光が現れ、店内を照らした。
「素敵。修復と、転じて回復を得意とするのかしら」
「Exactly、お嬢さん。この杖も先程の杖も、攻撃的な魔法よりは防御や回復を得手とするのじゃ。これは先代が最後に作ったものでの、大層選り好みが激しくて誰も選ばないままここまで来た。上手に使っておやりなさい」
「ありがとう、ミスター。大事にします」
ようやく見つけた自分の杖を抱え、ほっと一息つく。なんとこいつ、12ガリオンもするらしい。人気の高いセコイアの木とレア中のレアなセストラルの毛を使ったせいだと。まあ金に糸目はつけないので気にしませんがね!どうぞお納めください!
オリバンダー老のお辞儀に見送られ、いろいろなところでものを買って回る。制服、教科書、錫の鍋に秤に折り畳み式望遠鏡。これで一旦、必要なものは買い揃えたかな?
すっかり疲れ果てたハーマイオニーと2人、通りのお店でアイスを買ってかぷかぷ食べていると、マクゴナガル先生は愛おしいものを見るような顔をしてとろけるように微笑んだ。たぶん孫扱いを受けてるぞこれ……
「さあ、これで入学準備はおしまいです。2人ともアイスを食べ終わったらミス・ジョースターを自宅へ送ってあげましょう」
「JOJOはロンドンに住んでいないのですか?」
「彼女は以前はイギリスに住んでいましたが、今はアメリカのニューヨークに在住しています。お母様がホグワーツ出身なので、ミス・ジョースターが生まれたときに入学者名簿に記載されたのです」
「へぇ、そうなんですか」
「なんで本人が知らないのよ……」
「事情があって……?」
「そう……なら深く聞くのは辞めておくわ。じゃあね、JOJO、入学式で会いましょう」
「うん、またね」
手を振ると、ハーマイオニーは恥ずかしそうに口を結んで振り返してくれた。
これからJOJOはハーミーとズッ⸜( * ॑꒳ ॑*)⸝⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝トモ