教科書を読んだり魔法を試してみたりイギーたんと遊んだり承太郎(とスタープラチナ)のラッシュを受け止めたりして遊んでいると、あっという間に9月1日になってしまった。じかんがすぎるのははやいなぁ(震え)
わざわざロンドンまで送ってくれたパパやスージーママにしばしの別れを告げ、キングス・クロス駅の9番線ホームをうろりちょろり。あ、今人が柱に吸い込まれていったぞ、あそこが9と4分の3番線ホームへの入口か。
「行くぜイギーたん、乗っちゃって!」
「バウ(仕方ねぇな)」
ぴょいんとカートに飛び乗ってくれたイギーたんと共に柱に向かってダッシュ。あああほんとにぶつからないのかなぁこれ!怖いんだけど!
「んひぃいいい……あっ大丈夫だったよかった」
割とあっさり通り抜けられたでござる。JOJO一安心。よし気を取り直してコンパートメントを探しに行こうかな、まだ出発前だし空いてるといいんだけど……あれっ意外と埋まってるぞ……
一番前から一番後ろまで見て回ったけれど、どこもかしこも場所取りされてたり友達とおしゃべりしてたりで丸々ひとつのコンパートメントが空いていない。困ったな、どうしよう……あ、映画でめちゃくちゃ見た覚えがあるほぼシルバーなブロンドを発見。場所借りようかな。
「なぁ、ここ使ってもいい?他のコンパートメントが全部埋まっちゃってて」
「構わないよ、どうぞ」
「ありがとう!」
意外と紳士的であるな、やはり根っからの貴族は立ち居振る舞いが違う。原作で3人組にめちゃくちゃ突っかかってた理由、性格の相違もあるだろうけど、貴族ならではの品位が鼻についたんだろなぁ。特にロンは家計のコンプレックスが強そうだし……
つらつらとくだらない考察をしながら荷物番をお願いしていたイギーたんを肩に乗せてトランクを引っつかみ、戸口の段差を乗り越える。すると、駆け寄ってきた男の子がぽかんとして声を上げた。
「で、出遅れた……」
「はは、ごめんな。重そうだからって手伝おうとしてくれたんだろ?見ての通りこっちは大丈夫だから、ほかの子を手伝ってやってくれよ」
苦笑しながら近寄ってきた彼は足元にあったもうひとつのトランクを持ち上げ、戸口に下ろしてくれた。優しいなあこの人、炎みたいな赤毛だからたぶんフレッドかジョージだと思うんだけどどっちだろ?
「ほい、どうぞ。なあ君、見たことない顔だけど、1年生か?」
「ありがとう、そうだぜ。そういうあんたは上級生?」
「おう!俺はフレッド・ウィーズリー、3年生だ」
「私はジョアンナ・ジョースター、気軽にJOJOって呼んでくれよ」
「ジョアンナ……?待って、もしかして女の子か!?」
「ん、ああ」
「うわあああごめん、俺と同じくらいの身長だからてっきり男だと……」
「いいよ、よくあることなんだ。髪短いし背ェ高いし、初対面だとみんな間違える」
「ごめん……ほんとごめん……」
「まあまあ、そう気にしなさんな。ほら、お連れさんかな?こっち見てるぞ。私も人待たせてるからもう行くな?」
「あっ待って!俺、グリフィンドールなんだ!君が来るの待ってるぜ、JOJO!」
「ありがとうフレッド!そうなるように祈っといてくれ!」
ブンブン手を振ってくれるフレッドに片手を上げて返し、荷物とともにさっきのコンパートメントに向かえば、先客の彼がドアを開けてくれる。君キャラ崩壊してないか?なんで初対面だってのに優しいんだい……?
「少し遅かったな、変な輩にでも絡まれたのかい?」
「いいや、荷物を汽車に上げる手伝いをしてもらったんだ。そこで話し込んでしまってね」
「そうか、それならよかった。いくら体格に恵まれているとはいえ、女性が持つには重すぎる」
「……え?」
「?なんだ、そんなにマジマジと見て」
「あんた、私が女だってわかってたのか?」
「当然だろう?粗野に振る舞っているが、育ちは隠しきれない。端々に洗練された淑女の振る舞いが見られるぞ」
「……はは!凄いな、初対面で女扱いされたのはこれが初めてだよ!」
なら、君の周りにいた人間の目は節穴だったんじゃないか?揶揄するように片頬を上げて、少年──────いや、ドラコ・マルフォイは微笑んだ。
「改めて、初めましてミスター。私はジョアンナ・ジョースター、気軽にJOJOって呼んでくれ」
「初めまして、JOJO。僕はドラコ・マルフォイ、どうかドラコと呼んで欲しい。ジョースターというのは……もしや、NYの不動産王と血縁関係にあるのか?」
「そうだよ、不動産王ことジョセフ・ジョースターは私の父親さ……ねえドラコ、君は外国の非魔法族のことを知っているの?確かマルフォイ家はイギリス魔法界でも有数の名家だろ?」
「まあ、学園のマドンナだった君の母上が恋に狂って全てを捨てたって話は有名だからね。それにしても……父親?孫の間違いではなく?」
「私は愛人の子だからね、父からすれば遅い娘なんだよ」
「……あー……すまない」
ちょっと気まずそうに俯いたドラコ。別に「聞いちゃいけないことを聞いてしまった……」なんて気に病まなくていいのにな、私本人も大して気にしてないんだから。
どうしたら慰められるだろう?それかよそに思考が移ればいいんだけど……。膝の上でコーヒー味のチューインガムをくちゃくちゃしてるイギーたんを撫でながら、ブロンドで顔を隠してしまったドラコをそっと見つめる。だいぶどんよりしてるんじゃが……
「ねえ、そんなに沈まないで?私はこれでも私の人生を楽しんでいるんだ、腫れ物のように扱われちゃ困っちまう」
「う。……気にしたことはないのか?」
「全く。あの一途さは我が母親ながらいい女だと思うよ」
「……そうか。じゃあ、僕も気にしないことにするよ」
「そうしてくれ。あ、そうだ聞いていい?……純血主義ってどういうものなのかな?」
突然の問いにドラコはきょとりと目を丸くした。すぐにすました顔をつくったけどお姉さんは網膜に焼き付けましたよ……ああいや本題はこれじゃないんだった、脱線するのやめろよな。
ドラコいわく純血主義とは、古き血を守り、次代に伝えていくことである。純血の者は血自体に力を秘めていることが多く、その血をできるだけ薄めないままに子孫を成すことが重要、と。
へえ、意外と考えられているんだな。血に力がある、か。少し毛色が違うかもしれないけど、それは私にも覚えがある。
ジョースターの宿敵……DIOがスタンドを得たことがきっかけでホリィ姉さんにもスタンドが発現し、暴走した。あの男の首から下は、我らが偉大なるジョナサン・ジョースターのもの。擬似的な血縁関係を結んだが故に、本来縁もゆかりも無いはずの姉は触発されてしまったんだ。
「魔法界の王たるブラック家が没落した今、聖28一族を束ねるのは次席のマルフォイ家だ。いずれ僕は、純血のものをまとめあげなければならない」
「なるほどねぇ、そりゃ重労働だな」
「まあね。でも、これは重要なことだ。穢れた血を入れることなく血をつなぐこと、それが僕達次世代の使命なんだよ」
「ふうん、そうかい。じゃあ、近親婚を繰り返すと血が途絶えるって話は聞いたことあるか?」
「……え?」
両親の血縁が近ければ両者が共通の劣性遺伝子を持っている可能性が高くなり、結果として先天的な病気や障害の発現率が高まること。スペイン王家のハプスブルク家は三親等以内での近親婚を繰り返した結果、最終的に王の生殖能力が失われ断絶したこと。いとこ婚が比較的盛んな地域では遺伝的背景による精神的・身体的障害児が頻繁に生まれやすいこと。バイ、ウィキペディア。
淡々と近親交配の危険性を並べると、どんどん顔が青ざめていく。まさか血を守るための行為が血を途絶えさせることに繋がるなんて思ってもみなかったんだろう。わかるぜ、私だって高校生物で初めて習ったもの。
「そんな……我々聖28一族はその中で何度も結婚を繰り返してる!今や純血の一族はみんな親戚同士と言っても過言じゃないんだぞ!?」
「なら、どこかで血が濃くなれば滅んでしまう可能性もあるわけだ。きっと君の周りにもいただろう?常軌を逸した、狂人が」
「……父上から聞いたことがある……ベラトリックス・レストレンジは純血至上主義者の中でも異様だったって……ああ僕は……どうしたら……」
「ここである種の特効薬になり得るのがマグル生まれの魔女・魔法使いなんだから皮肉だよな……あああ泣くなよドラコ、ほら涙拭いて、チョコレート食べるか?」
「ぐすっ……もらう」
……今までずっと純血主義教育を受けてきたドラコには厳しい話だったか?いやでも知っていてやるのと知らないでやるのとじゃ、わが子が先天性の病を持って生まれたときの心構えが違うし……ううん、私はどうしたら良かったんだろう?
自前の高級ハンカチーフで目元押さえるドラコ。丁度車内販売に来たマダムに胡乱げな目で見られたけど、端から端まで買い占めることで彼女の思考の着地点をずらすことに成功した。ほら新しいお菓子もあるよ、お食べよドラコ。
「……ずっ……そうか、そういう考え方もあるのか……僕は今まで、ぽっと出のマグル生まれが魔法を使うのがいやだったんだ。誉れ高き純血が代々受け継いできた魔法を、よそ者が使うなんて……許しがたかった」
「うん、それで?」
「……でも、これからの魔法界を真に考えるなら、マグル生まれを受け入れることも……必要なんだな?父上や母上はきっとお許しにならないだろうが……」
「私はそれがひとつの正解だと思ってる。ご両親のことは……まあ、気長に説得すればいいさ。どうしても頑固ならこんな話をしてやればいい。“魔法使いだって一番最初はマグルから生まれたんだ、そう考えればどれほど高貴な純血にもマグルの血は流れている”……ほら、こうすれば全員滅ぼすしかなくなるな?」
「……君、怖いぞその思考」
「そうかぁ?」
……まあ、この年でヒトゴロシなんてやったら、怖い思考にもなるわな。
不穏じゃないよ、ほんとだよ