【完結】Azur Lane for Answer 作:塊ロック
舞い上がるネクスト。
グレイゴーストは、何を思う。
ユニオンの軍港は完全に包囲されていた。
セイレーンの量産型艦艇が絶え間なく砲撃している。
先遣隊からの報告によると、ネームドは確認出来なかった。
「全艦抜錨!!輸送艦は後方に待機し負傷者救命に当たれ!!」
「「了解!!」」
久しぶりのネクスト…ストレイドのコックピットに座っている。
機体とリンクする。
機体とつながる者、リンクス。
それが、傭兵の形。
「ストレイド、出るぞ!!」
白い鳥が、甲板から飛び立つ。
調子は変わらない。
整備班には頭が上がらないなと苦笑する。
「エンタープライズ!速度そのまま!敵影が見え次第ぶっ放せ!片っ端から沈めろ!」
『了解だ、指揮官』
通信越しの彼女の声は落ち着いている。
これなら大丈夫だろう。
(さて、ネームドは…この装備じゃ見えないか)
ネクストにはこちらの世界に飛んできたままの装備しかない。
当然増設レーダーなんて物は載せてない。
頼りになるのは頭の電子戦装備だけ。
レーダー上の赤い点が消え始める。
ネルソンとロドニーが砲撃し始めたのだろう。
「綾波。ネームドは見えるか?」
『こちら綾波…量産型だけ…です』
「わかった。無理しない程度に警戒」
『了解』
今回のセイレーンの動きは少し妙だ。
目的が見えてこない。
(ま、奴らの考えなんて理解出来ないんだがな…)
行動パターンなんて把握するだけ無駄、と言わんばかりに神出鬼没。
アズールレーン上層部もぼやいていた。
唯一分かっていること。
(イレギュラーを望んでいる)
この世界の異分子、イレギュラー…すなわち俺を待っている。
前回の北方戦で、ヤツは確かにそう言っていた。
思考している間に、足元に映る量産型をライフルで片っ端から沈めていく。
友軍もやっと艦隊を展開して反撃を開始している。
ネームドが居なければ通常戦力でも何とかなる。
…視界の端に、紫の光が見える。
「なっ、」
直撃。
機体が揺れ、海面に激突した。
「こ、のッ!!」
ブースターを全開。
水没だけは避ける。
機体を起こし、オーバードブーストを起動。
プライマルアーマーが減衰しただけ。
本体に損傷は無い。
回線を開き、艦隊に通達する。
「ネームドだ!個体は…ピュリファイヤー!!」
『さぁ、首輪付き…私と遊ぼうよ!!』
彼我の距離はネクストの推力なら一瞬で詰められる。
しかし、ヤツの弾幕は厚い。
「くっ…何でEN兵器積まなかったんだ俺!!」
牽制で放つライフルも、肩にマウントされているグレネードも全て実弾な為、ピュリファイアーのレーザーに全て撃ち落とされる。
『素早いだけ!?』
「抜かせ!」
海面から離れられないあちらより、三次元的な動きのできるこちらの方が有利。
必ず隙が突ける…!
クイックブーストを吹かし、狙いを定めさせない。
時折ライフルを放ち牽制する。
『なら、こういうのはどうだ!!』
「ゲッ…!」
どこからとも無く量産型セイレーンが出現する。
…駆逐級から戦艦まで様々な砲がこちらを向く。
『指揮官ッ!!』
…戦闘機の集団がこちらへ飛来する。
抱えていた爆薬を投下、爆撃を行う。
「エンタープライズか!」
『こっちは粗方片付けて向こうに任せた!援護する!』
「気を付けろ!ネームドだ!」
『わかってるわ!指揮官、デカいの撃ち込むから避けなさいよ!!』
「ちょ、おまっ!俺がまだ居るだろ!!」
『アンタなら避けるでしょ!!ロドニー!』
『はい、姉さん!』
BIG SEVENと呼ばれた七隻の戦艦。
そのうちの二隻がロドニーとネルソン。
そして、その船の力は特殊な弾幕である。
具体的に言うと、
砲弾の雨が降り注ぐのだ。
「だァァァァクッソ!!覚えてろネルソンッッッッ!!」
砲弾の雨をクイックブーストを駆使して掻い潜る。
流石に戦艦クラスの主砲はプライマルアーマーが貫通されかねない。
『ちゃんと避けたじゃない』
「あのなぁ…!」
『指揮官!まだ!』
「っと、流石に沈まないか…」
ピュリファイアーはまだ沈まない。
所々焦げ付いてはいるが、まだまだ健在だ。
このままではジリ貧に陥る。
その最中、ネルソンに照準が向けられ…。
「ネルソン!!」
『!!』
レーザーが発射される。
射線上に割り込む。
「ッッッッ!!」
『何やってんのよ指揮官!!?』
「うるせぇ!マークされ過ぎだ!」
ダメージチェック。
…プライマルアーマーを貫通されて装甲にダメージが入っている。
「いってぇ…」
『だ、大丈夫か!指揮官!』
「エンタープライズ!次の艦載機は!」
『いつでも!』
「合図したら出せ。それまで回避に専念!」
この泥仕合、そろそろ決めに行きたい所だが…。
「やらせなきゃ、意味が無いか…」
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side:エンタープライズ
指揮官が合図するまで、回避に専念する。
というより指揮官がピュリファイアーの周りを飛び回り散発的に攻撃しているからあまり狙いが飛んでこない。
しかし…。
「あれが、ネクスト…」
「エンタープライズ、貴女見るのは初めてだったわね」
隣で砲撃していたネルソンが独り言を拾っていた。
思わず漏れた言葉に反応されるとむず痒い。
「ああ」
「普段からあんな風に真面目なら良いんだけど」
「そうか?適度に息を抜いて締めるときに締めればそれで良いと思う」
「それがユニオン流?全く、呆れるわね!」
再び砲撃。
量産型が増えてきた。
前衛艦隊も合流する。
「エンタープライズ。前衛艦隊も合流よ」
「プリンツか。指揮官の援護に回ってくれ」
「了解よ…!」
ロドニーから主砲の援護を受け、プリンツ、シュロップシャー、綾波が突貫する。
「指揮官…まだか…!」
合図は来ない。
艦載機は軒並み準備万端だ。
タイミングを待っているが、焦りの方が鎌首をもたげている。
(まだか…)
指揮官は機会を待っている。
何の?
ピュリファイアーの隙を。
どうやって作る?
ネルソンか、ロドニーか、綾波か、プリンツか、シュロップシャーか。
誰かがやるのか?
…違う。
違う!
やるのは私だ。
私にしか出来ない。
奴が見ているのは目の前の艦船と、ネクスト。
注意が向くのはその二つ。
新たに3つ目を出せば少なからず動揺が生まれる。
その、僅かな隙を、突く。
そして、それに必要な物を、私は持っている筈だ。
『今だッ!』
「終わりだ」
引き絞っていた弦を離す。
…いつもと、違う感覚。
そうか、これが。
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side:リンクス
『終わりだ』
エンタープライズから発艦する艦載機達の攻撃に晒され、ピュリファイアーの動きが鈍る。
「そこ、だっ!!」
左腕にマウントされた発振器から、光が伸びる。
かつて破れた仲間の形見。
MOON LIGHT。
その青白い光の剣が振り抜かれた。
「…獲った!」
ピュリファイアーの艦装が丸ごと両断され、本体も焼き切れていた。
「はぁぁぁぁ…やったか…」
セイレーンが沈黙した。
…軍港から部隊が展開してくる。
量産型も粗方掃討し終わった様だ。
「おつかれさん…さ、帰ろうか」
背後のピュリファイアーの残骸は、跡形も無く掻き消えていた。
恐らく、回収されたのだろうか。
(…ネクストの装備、どうにか調達しないとな)
ネクストのカメラが足元を捉えた。
腕を組んでふんぞり返るネルソン、口元に手を当てて笑うロドニー。
その間で、エンタープライズが照れくさそうに笑っていた。
…憑き物が落ちたように、純粋に。
「良い顔してるじゃねぇか」
セイレーンのユニオン軍港襲撃から一夜明け。
「指揮官、ここに居たか」
「エンタープライズ?」
ネクストのメンテナンスハンガーにて。
今回の損傷を照会して整備の依頼を出した所であった。
ちなみに修理費と弾薬費はユニオンに請求した。
今回のユニオン側の条件を呑んだ戦闘を達成したのだから、それくらいは払って欲しいものである。
「その、何だ…改めて言おうと思うと照れくさいな」
「?」
「…ありがとう。私を信じてくれて」
「何だ。そんな事か」
「そんな事って…貴方は」
「部下を信じなくてどうする」
「それは…」
「今回、ユニオンの窮地を救ったのはお前だ。エンタープライズと言う英雄がユニオンの危機に立ち上がり脅威を撃退した。全く、上のシナリオも安っぽいったらありゃしねぇ…テルミドールならもう少しマシなシナリオ書くさ」
「テルミドール?」
…思わず懐かしい名前を出してしまった。
「…忘れてくれ」
「そうするよ。指揮官、私は…エンタープライズだ」
「え?…………ああ、そうだな」
エンタープライズは嬉しそうに笑った。
彼女のスキル、LucyEがぎりぎり発動したお陰で今回の戦闘を無事に帰ってこれた。
「頑張れよ英雄」
「からかわないでくれ、指揮官」
「甘んじて受け止めろ…その資格があるんだ、お前には」
「なら、私を指揮する貴方にもその資格があるんじゃないのか?」
「…俺が、か」
「私は貴方に着いていくよ。指揮官、教えてくれ。私はなんの為に戦えば良い?」
「この世界の未来を作るために。着いてこい…エンタープライズ」
「ああ!」
…英雄は嫌いだ。
けど、時代はそれを必要としている。
好き嫌いも言っていられないか。
「人間の可能性、か」
俺が英雄になる。
そんな可能性もここにはあるって事なのかな。
と、言う訳でエンタープライズ回でした。
スキルが使えない彼女に発破掛けてなんとか使わせる。
ちょっとやってみたかった内容ですね。
次回をお楽しみに。