【完結】Azur Lane for Answer   作:塊ロック

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なんてことの無い、日常の1ページ。


ロドニーだって首輪を握りたい

 

「指揮官、ロイヤルから新しい船が来るようですよ」

 

「…え?何故」

 

ある日の昼下がり。

最近ロドニーが秘書艦になった時は日課となりつつある散歩をしているときだった。

 

「女王陛下が指揮官の事を気に入られたからですね」

 

「…会ったことも無いんだが」

 

「ベルファストの心を動かした事で注目をされた様で、ずっと動向は目を通されていらっしゃるようで」

 

「マジか…」

 

「本当ですよ。指揮官は義務を果たされています」

 

「それは…面と向かって言われると」

 

「照れますか?」

 

 

ここで、彼女がずっと笑みを浮かべていた事に気が付いた。

 

 

「揶揄うな」

 

「うふふ…どうでしょうね?」

 

「ロイヤルのお国柄はどうにも馴染めん」

 

「あら、心外ですね指揮官」

 

「いっそネルソンみたくストレートな方がやりやすい」

 

「…姉さまも姉さまで相当ねじれてますけど」

 

「そうか…?」

 

 

顔を合わせれば取り合えず罵倒。

 

奴の求める指揮官像に俺は遠く及ばないと自分もわかっているので気にしてはいないが。

 

 

「素直じゃないのは、指揮官も同じですけど?」

 

「俺が?どうだろうな…自分には正直に生きてきたつもりだ」

 

 

常に答えを出す為に戦い続けたあの日々。

 

俺の求めるもの、人類の黄金の時代には興味は無かったが、この選択の先に待つものに俺は惹かれていたのかもしれない。

 

 

「…指揮官は、戦う事以外に素直になったことはありますか?」

 

「戦うこと以外?」

 

「そうです…なんだか、指揮官は欲が薄いといいますか」

 

「そう…か?食いたいものは食ってるし欲しいものはなるべく手にしてるが」

 

「いえ…何と言ったら良いのでしょう。上に上り詰めたいとか、本国に覚えを良くしたいとかは」

 

「無いな」

 

 

俺は傭兵だ。

好きなように生き、そして死ぬ。

 

そこに余計な足かせなんて要らない。

 

 

「…指揮官は傭兵ではなく、アズールレーンの司令官なんですよ」

 

 

ロドニーが窘めるように言ってくる。

 

 

「それに、指揮官が居なくなったら困ります。死ぬなんて言わないでください」

 

「わ、悪かったよ…」

 

 

「指揮官!こんなところに居たのね!!」

 

 

背後から起こったような声音…まぁ実際怒っているのだろうが。

 

 

「姉さん」

 

「ロドニー。貴方達いつまでその辺ほっつき歩いてるわけ!?」

 

「姉さん。今日の秘書官は私ですよ…私と指揮官の時間を奪わないでくださいます?」

 

「なっ…アンタこいつのどこが良いわけ…?」

 

 

酷い言いようである。

 

 

「そういう姉さんこそ、指揮官の事ホントは気に入ってるじゃないですか。『前線で戦う稀に見る勇敢な奴』だって」

 

「わー!わー!わー!!」

 

「…お前そんな事」

 

「言ってないわ!!誰がアンタみたいな新米!夢見るなら階級上げなさいよ!!」

 

「昇格の話は何故か来ないんだよなぁ…」

 

 

アズールレーン内でユニオンとロイヤルが俺の所有権で争ってるらしく、どっちの国で昇格させるか揉めてるらしい。

俺、一応ユニオンの所属って事になってるんだけど。

 

 

「そんな事言わずに。指揮官だって姉さんのこと好きですよね」

 

「え?ああ、そうだな。お前の事は好きだよ」

 

「は、ハァ!?」

 

 

怒りで赤面からさらに顔が赤くなる。

 

 

「ば、ばばばばばばば馬鹿じゃないの!?あんたなんて…」

 

「勿論、ロドニーの事も好きですよね」

 

「ああ。好ましく思っている」

 

 

ぴしり。

何かにヒビの入った音がした。

 

 

「…どうした?」

 

「知らない!」

 

 

怒ったり騒いだり忙しい奴だな…。

 

 

「ふふふ…姉さんも素直じゃないですね」

 

「ロドニー!」

 

「で、ネルソン。何があったんだ?」

 

「何よもう…指揮官宛に女王陛下から文書よ」

 

「…マジで?それはどこに」

 

「執務室。そんなもの持ってアンタ達探し回れるものですか」

 

 

それもそうである。

ロイヤル所属艦船の優先度最大クラスのアイテムなのだから。

おそらくベルファストが部屋で見張っているのだろう。

 

 

「わざわざすまない。端末に連絡を入れてくれれば良かったのに」

 

「…はぁ?あんたの連絡先なんて知らないわよ」

 

「…えっ、あ、そうか」

 

 

彼女たちに自分の連絡先を渡していなかった。

勿論、綾波やロングアイランドにも。

 

 

「今持ってるか?渡しておこう」

 

「え?ええ…」

 

「ロドニーも良いでしょうか」

 

「良いぞ」

 

 

二人の端末に連絡先を送った。

 

 

「何だかんだお前らが最初だな」

 

「な、なによ…寂しい奴ね」

 

「言ってくれるな。やっと余裕ができたって事かな」

 

「あ、指揮官の連絡帳の一番上はロドニーですね」

 

「なつ…」

 

 

本当だ。

こっちの方が登録が早かったらしい。

 

 

「指揮官、寂しい時はロドニーに連絡しても良いですよ?」

 

「ははは…その時は頼もうかな」

 

「し・き・か・ん!!妹に変な気を起こさないでよ!?」

 

「?ああ…」

 

 

変な気、か。

彼女たちに俺が何をすると思っているのか。

 

 

「さて、ロドニー、ネルソン。昼食にしようか」

 

「あら、もうそんな時間ですね」

 

「昼からも頼むぞ」

 

「はい」

 

「ちょっと指揮官!」

 

「何だネルソン。お前も行くぞ」

 

「え、ちょっと、ひっぱ…ロドニー、押さないでよ!?」

 

 

今日は、何だかんだ平穏だった気がする。

…何でだろうか。

 

 

「…何でも良いか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルファストさん!そこをお退きになってくださいまし!指揮官様の所へ行けません!」

 

「なりません、赤城様。ご主人様とロドニー様、ネルソン様の逢瀬を邪魔させる訳にはいきません」

 

「くっ…この女中隙がありませんよ、姉さま」

 

 

…なんか執務室の前でちょっとした駆け引きが行われていたので、そっと窓から入った。

 

 

「指揮官!何でアンタ窓から入ってくるのよ!」

 

「ちょ、ネルソン声…」

 

「指揮官様ぁー!?」

 

「あ、ちょ、たすk」

 

 

ドアがけ破られた。

 

 

今日も結局こうなるのか…。

 

 

 




ロドニーってペースを乱さないから基本的に余裕のある強キャラ感がありますよね。

なんか、赤城がオチ要因になってる気がする。

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