【完結】Azur Lane for Answer 作:塊ロック
「指揮官!?指揮官!!返事をして!指揮官!」
「指揮官様!?指揮官様ぁー!!」
赤城とプリンツが、指揮官と通信を繋げようと躍起になっていた。
その周囲では、加賀が落ち着かなく尾を振り、シュロップシャーは顔を真っ青にしていた。
「ネクストのプライマルアーマー…だったか?アレは一撃で破られるものなのか?」
唯一、冷静に分析しているティルピッツが…綾波に尋ねた。
「分からない…です。指揮官は衝撃で減衰するから、連続で被弾すると拙い…って言ってたです」
「なる程…強力過ぎる一撃で撃墜された様に見えたけれど…」
砲撃の音がしたと指揮官は言っていた。
でも、私達に聞こえていないというのは…?
「何だ、アレは…!?」
加賀が、水平線の向こうへ指を指した。
その場に居た全員の視線が吸い寄せられた。
…水平線の向こうの、巨大なシルエット。
まるで、海の上に6つの足で立っている亀のような…。
「…マズイ!!今すぐこの海域を離脱する!」
「加賀!指揮官様を見捨てるというの!?」
「姉さまも聞こえただろう!?ミサイルと重砲がもうすぐ殺到する!!」
瞬間、すぐ近くに水柱が立つ。
至近弾だ。
相手の精度は高い。
「加賀!偵察機は!?」
「もう飛ばしている…駄目だ!距離が離れ過ぎている!!」
戦術リンクですぐさま全員に情報が伝達された。
「ちょ、ちょっと…数十キロ先で…指揮官のストレイドより大きく見えるんですけど…」
「指揮官…ごめんなさい…これには、勝てる気がしないわ…」
「…逃げるわよッ!!」
プリンツさんが動き出し、全員がようやく動き始めた。
「何よアレ!本当にこの世界の兵器なの!?」
「少なくとも赤城の記憶にはございません!」
「ひゃっ…撃ってきた…!!」
「うわぁぁぁぁぁ!?」
----------------鏡面海域。
「グラーフ…ツェッペリン」
『如何にも』
「鉄血が唯一保有してる装甲空母がこんな所で何やってんだ」
『知れたこと。我が祖国は貴様を消したくてしびれを切らしている』
「だろうな」
回収予定だったティルピッツを横から掠め取ったんだからそりゃ恨まれもする。
『鉄血の親セイレーン派が目の敵にしていてな…この様な場を設ける運びとなった』
「なる程な…」
セイレーンから何かしらの技術提供でも受けたのか、それとも面白半分で利用されたかは定かではない。
首輪付きと言うイレギュラーをセイレーンが期待している…それだけだろう。
「それで、相手はお前だけか?」
『否』
ゆらり、と蜃気楼の中からいくつもの影が現れる。
「量産型如きで俺を止められると思うな」
『量産型では確かに貴様の相手は厳しいだろう…だがな』
赤い外套に、巨大な砲を備えた戦艦が現れる。
金の長い髪をふた房に束ね、不敵な相貌を讃えている。
「ネルソン…!?」
それだけではない、その後からエンタープライズ、プリンツ、クリーブランド、赤城…部下の艦船達が次々と現れた。
『では、始めようか』
「悪趣味な…!」
ネクストのバーニアが激しく火を吹く。
クイックブーストを発動、距離を取る。
相手は本人達が操られている…とは思わない。
この世界には同型の艦船がごまんといる。
同じ顔、同じ性格、そして同じ性能。
彼女達もまた『量産型』なのだ。
慈悲はない。
こちらに銃口を向けているのだから。
「やりにくいったらありゃしねぇ」
エンタープライズにライフルを叩き込む。
クリーブランドにミサイルを放つ。
ネルソンにグレネードを撃ち込む。
…トリガーを引く度に、何かが抜け落ちていく感覚が襲ってくる。
しかし、段々と…ネクストの動きが洗練されていく。
まるで、元の状態へと戻るかの様に。
「…」
『流石ネクスト…だが』
鉄血製艦載機が飛来する。
海上から飛び上がり、高度を制しライフルとミサイルで撃ち落としていく。
『まだ終わらぬぞ』
艦船10隻、量産型が無数。
ノーマルならどれだけ集まろうと一蹴出来るが、この数は中々骨が折れそうだ。
「弾が保てば良いけど」
通信には相変わらず応答はない。
何とかして自力で切り抜ける必要がある。
とりあえず…目の前のスカした女を叩き潰せば良い。
「こちとら陸海空全てを制したんだ。今更お前らなんかに遅れを取れるかっての!」
『くっ…!?』
グレネードをグラーフに撃ち込む。
直撃ならず至近弾。
『手緩いな!鬼神の如き活躍と耳にするぞ!』
「うるせぇ!どうにもやりにくい…!」
直接戦っていてふと、こいつ手を抜いてるのでは…?と思ってしまう。
本体は最低限の攻撃に留め、艦船や量産型を使って攻めてくる。
何かしら、別の考えでここに居るのでは無いのか…?
『くっ…』
「…」
だが、外が心配だ。
やりにくいが、やれない事は無い。
「悪いが、終わりだ…!」
『な、にっ!?』
グラーフの正面に着水、右方向へバーニアを吹かして更に前方へ。
2段クイックブースト。
流石にこの奇襲は想定外だったのか、相手の反応が遅れる。
『ご、はっ…!?』
…結局、その推力のままぶつかる。
散々迷ってしまった末での手加減。
(女に甘い、か…セレンさんも余計な事言ってくれたなホントに)
グラーフが吹っ飛ぶ。
本体に手を伸ばし、難なくキャッチする。
…霧が晴れていく。
『フッ…強いな…』
「なぁグラーフ。教えてくれ」
『なんだ』
「お前、負けたかったのか?」
『…なんの事やら』
「全て憎んでる…そう言ってたけど、本当は信じたかった…とか」
『…そちらの判断に任せよう』
図星か。
意外とわかり易い性格してるのかもしれない。
「とりあえず、皆んなは大丈夫かな…え」
目の前に広がる景色に、絶句する。
…艦装が半壊し、沈みかける艦船達。
そして…水平線の向こうに見える、巨大なシルエット…。
「アームズフォート…スピリットオブマザーウィル!?」
アームズフォート襲来。
数の暴力を体現する城砦が、目の前に現れた。