【完結】Azur Lane for Answer 作:塊ロック
しかし、こちらの世界ならば?
「…マジかよ」
ストレイドのコックピット内で、思わず漏らしてしまった。
相当彼我の距離は離れている筈なのに、その巨体は存在感を誇示している。
スピリット·オブ·マザーウィル。
俺…リンクスがいた世界にあった、ネクストを超える為の巨大兵器…アームズフォートだ。
リンクスと言う替えの効かない戦力より、代替可能な一般人を多く搭乗させる事で圧倒的な火力を実現する要塞。
幾人ものリンクスを退けてきたソレが、はるか前方に鎮座していた。
「拙い、拙い拙い拙い!」
『こちら輸送船!正体不明の大型兵器から砲撃を受けている!指示を!』
後方に残してきた筈の輸送船から緊急の通信が入る。
つまり、そこも射程圏内。
「直ちに反転!全速力を持って海域から離脱しろ!!艦船の修復準備も同時に行え!!」
『しかし、指揮官!貴方達も回収していません!』
「『俺』なら追い付ける!!行け!!」
回線を切る。
とにかく、プリンツ達を回収する。
クイックブーストを吹かせて反転、沈みかけている六人を引き揚げる。
『卿よ!アレは!?』
「グラーフ、そっちの味方じゃねぇのか!?」
『少なくとも我は認知していない…恐らく、他の者たちも…』
じゃあアレは、セイレーン達が勝手に持ち出したってことか…?
「ほんと、イレギュラーが好きな連中だな…!」
『ぬ、お!?』
「口は閉じとけ!舌噛むぞ!あとそいつら押さえといてくれ!落とすと面倒だ!」
『ま、待て!何をす』
背中のオーバードブーストが爆音を上げて盛大に火を吹いた。
「逃げるんだよ!!」
…遙か後方の要塞は、沈黙を保っていた。
ーーーーーーーー5時間後。
退避させた輸送船の臨時会議室に、クルーと修復した艦船達が集まっていた。
…流石にグラーフについては居室の一角に監視付で待機させているが。
「さて、諸君…緊急事態が発生しているのはご存知の通りだ。あの正体不明大型兵器…呼称をアームズフォートとする。アレの存在だ」
スクリーンに映し出される先遣隊からの映像。
どれもこれも馬鹿みたいにデカい。
その様子に息を呑むクルー達。
「何これ…ふざけてるの?」
「冗談に思えるがこれは事実だ」
「今我々が持つ手札を確認しておこう」
「僭越ながら私から。艦船の燃料と弾薬はあと1戦出来るかどうかの量しか残されていません」
資源担当からの報告に苦い顔をする艦船達。
…こちらからは見えなかったので、闇雲に撃ち返しでもしたのだろうか。
「続いて…ネクストの方ですが、背中のグレネード弾薬は枯渇、ライフルは辛うじて残っては居ます」
「グレネードが使えないのは痛いな…」
「ですが、前々から進められていた兵器開発でネクスト用の新しい装備が…一応、船に乗っています」
「完成していたのか…本国脅しといて正解だった」
クルー達が困ったように苦笑いしている。
構わずに続ける。
「で、その兵器とやらは?」
「…無誘導ロケットランチャーです」
「よりによってそれかよ!!」
ネクストの火器管制装置による演算補助無しで運用する…つまり、手動で当てる必要のある火力だけの武器だ。
これをネクストの機動力で当てる変態が存在していたから恐ろしい話だ。
「それを2門用意しています」
「えぇ…ユニオンは堅実なイメージがあったんだけど」
「いえ、ロイヤルからの出資です」
「あのクソジジイどもめ!!」
ロイヤルへ思わず罵倒してしまった。
シュロップシャーが若干引いている。
「仕方無い、ストレイドの両肩をロケットに。ライフルとレーザーソードはそのままにしといてくれ。予備のハンドガンは残ってるな?そいつも格納。整備班は解散、作業にかかってくれ」
「了解!」
整備班達が抜けていく。
さて、艦船達はどうすべきか…。
正直、置いていきたいと言うのが本音だ。
彼女達の武器ではアレに有効打は与えにくい。
「艦船達は…」
「嫌よ」「嫌です」
「まだ何も言ってないんたが」
プリンツと綾波が二人同時に異を唱えた。
…二人共、最も付き合いが古いから、こちらの意図に勘付いたのだろう。
「どうせあなたの事よ。アレの事を知ってるから自分一人で行く、だなんて言うに決まってるわ」
「そうです。指揮官が負けるなんて思わない…です!けど、指揮官が居なくなるなんて嫌です」
二人がそう言うと、赤城と加賀が同調した。
「指揮官様!赤城は指揮官様と共にあります!置いていくなんてあんまりですわ!!」
「指揮官、あんな獲物を前にして待っていられると思うか?」
「あ、あはは…わ、私的にはあんなの相手にしたくないんですけど…指揮官を見殺しにするのは後味悪いと言うか…やっぱり私も嫌ですね〜」
シュロップシャーまで反対してきている。
そして、今まで黙っていたティルピッツが口を開いた。
「指揮官。勇気と蛮勇は違うわ。あのアームズフォート周辺には量産型の鉄血艦も展開されているようね。単騎で行くには相手が多すぎるとは思わない?」
「まぁ…確かに」
「性質上ネクストは空を飛ぶからとても目立つわ。対空砲火も馬鹿にならない筈よ」
「…そうだ」
「なら、私達が随伴して対空砲火を片っ端から叩くわ。それなら文句ないわよね」
「…」
ぐうの音も出ない反論。
アームズフォートの護衛に鉄血艦が展開しているとは言え、アレの移動方法は巨大な6つの脚部による歩行…つまり、波が立つのだ。
その為、随伴艦も相当な距離を離している。
その随伴艦達になら、彼女達も接近するのは容易だ…。
「…ただし、ヤツの主砲はそれでも届く」
「主砲なら発射の間隔は長い筈。避ければ終わりよ」
「…しかし」
「クドいわよ指揮官。アンタはただ私達に命令すれば良いのよ…一緒に戦えって」
6人の決意は硬い。
「…6人の戦術データリンク、速力を綾波に集中させろ!速さが命だ、調整ミスはするなよ!」
「指揮官…」
「ったく、いつからお前らそんな頑固になったんだか…」
苦笑が自然と漏れる。
だが、悪くない。
たった二人で立ち向かったあの時より、何故だが心が軽いのだから。
ーーーーー作戦開始一時間前。
デッキの上で、一人風に当たっていた所に…プリンツがやってきた。
「…どうした?」
「別に」
「そうか」
お互い、何も言わずに海を眺める。
「…悔しかったか?」
「何がかしら」
「ロイヤルのクソジジイに、あんな事言われて」
「…そうね」
「素直じゃないか」
「そうすれば、貴方が慰めてくれると思って」
「…何だよそれ」
プリンツが俺の肩に頭を預けてきた。
「嘘よ…ホントは、私達の為に怒ってくれる貴方を失いたくないだけ」
「そんな事は…」
「無意識にやってるのは知ってるわ。だから、私達は貴方と並びたいし守りたいの」
「やけに、饒舌だな」
「茶化すな。ねぇ指揮官私達を、信頼してる?」
「…当たり前だ」
「ならいいわ。指揮官、私、サンディエゴ結構好きなのよね。姉が本国に居るの。今度呼んで良いかしら」
「構わない…まぁ、呼べるならな」
「そう」
それだ言うと、プリンツは離れた。
後ろを指さしながら蠱惑的に笑う。
「そろそろ行くわ。こわーい狐さんも来たことだしね」
「しーきーかーんーさーまー?」
「エッ、赤城!?」
「ずっと探してましたのよ指揮官様…?それなのに、赤城を差し置いてプリンツさんと…」
「うわ、ちょっと、待て!作戦前!」
「指揮官様!もう我慢できませんわ!赤城を指揮官様の女にしてくださいまし!」
「や、やめろー!!」
「指揮官、ここに居たのか…何をしてるんだ貴様らは」
ティルピッツが物凄い呆れ顔をしていた。
「全く。作戦前だぞ…」
「良いんじゃない?変に緊張する訳じゃないし」
「プリンツ…何だか、機嫌が良さそうね」
「フフフ、どうしてかしらね?」
綾波が割り込んできて、赤城を引きずって行った。
スピリットオブマザーウイル撃破作戦、始動。