【完結】Azur Lane for Answer   作:塊ロック

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アームズフォートを撃破し、鏡面海域問題も一応の解決を見せ…サンディエゴにも束の間の休息が訪れる。

溜まった仕事を片付けるべく、今週の秘書艦エンタープライズと共に立ち向かう。

首輪付きの過去も、少し垣間見えるかも。



エンタープライズとの一日

 

「おはよう、指揮官。ゆっくり休めたか?」

 

ある日の朝。

アームズフォート海域事件の後日。

片付ける書類とか、整備とか、報告とか諸々あったのだが…ネクストをフル稼働させAMSによる負荷により母港サンディエゴに到着した途端ぶっ倒れたのだった。

 

「…頭痛え」

「大丈夫なのか指揮官…本来ならまだ休息が必要だろう?」

「お前たちに休息やる為に無理しなきゃいけないんだ」

 

頭を押えながらフラフラと立ち上がる。

それほどの激痛では無いが頭の片隅に引っ掛かる様な痛み。

過去にアンサラー…企業がORCA旅団を排除すべく投入したアームズフォートと対峙した時のことを思い出す。

 

「その為に指揮官が倒れたら意味が無い。無理はしないでくれ」

「いや、大丈夫だ…それほどキツい訳じゃない」

「…判った。今日は私が手伝おう」

 

何を言い出すかと思えば、エンタープライズがそんな事を言い出した。

俺が復帰した後、KAN-SEN達の負担を考えて秘書艦業務を免除していた。

 

…赤城が恨めしそうに見ていたが、加賀に宥められて渋々休んでくれていた。

 

話が逸れた。

その為、一人で回して居たのだ。

エンタープライズの申し出は有り難い…のだが。

 

俺個人として、公私混同も甚だしいが英雄と言うものを苦手としている。

 

彼女を見ていると、眩しい。

ユニオンの英雄足らんその姿は、ただ生きる為に殺し続けた自分には明る過ぎるのだ。

 

…何を間違えたか、彼女からの信頼も厚いのが複雑だ。

失望されているならともかく、彼女は俺に懐いている。

KAN-SENは指揮官に対して必ず親愛の情を示すんじゃないかと勘ぐる程に。

 

「…お願いするよ」

「任せておけ。私が来たからには百人力さ」

「自分で言うのか…」

 

すると、自室の扉が勢い良く開かれた。

 

「指揮官様ぁ!おはようございます!本日の秘書艦はこの赤城にお任せを!」

「おはようございますご主人様、本日の秘書艦業務を受けるべく、このベルファストが参りました」

「指揮官、おはよ。仕方ないから手伝いに来たわよ…要らないとは、言わないわよね?」

「お前らまで来たのか…」

 

全く同じタイミング…と言うか、こいつらお互い牽制しあってたな…。

赤城、ベルファスト、プリンツまで入ってきたのだった。

 

「…あれ」

 

いつも見ているKAN-SENの姿が見えない。

…いつもならこのタイミングで雷を落とすのに。

 

「ベルファスト、ネルソンは?」

「ネルソン様は先の戦闘の報告の為に女王陛下の下へ向かわれました」

「女王陛下…例のロイヤルの」

 

と言うことは、ロドニーも今は居ない訳か。

 

「…いつまでたってもここに居てもしょうがない。着替えるから執務室で待っててくれ」

「指揮官様!赤城がお手伝いします!」

「出てけ!!」

 

今日も騒がしく一日が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母港の資材、改修、修理に開発等々、書類には本当に事欠かない。

机の上に溜まった紙束に、俺とエンタープライズは立ち向かっていた。

 

…他の三名はまたヤバそうになったら頼むと伝えてある。

素直に引き下がったのは意外だったが。

 

「指揮官、この書類は」

「シュレッダー。要らん」

「指揮官、ユニオンから」

「印鑑押しといて」

「…ロイヤルから、例の装備について」

「クソジジイ共め、後でまとめるからこっちにくれ」

「指揮官、重桜から技術支援の申し出があったぞ!」

「本当か!?見せてくれ…………は?射突型ブレード…何でこんなイロモノばかり…」

「鉄血からパーティーの誘いだ。どうする?」

「行かねーよ…」

 

ここまで処理してから、一息入れる。

 

「各国も好き放題言ってくれるな…」

「私達も、すっかり有名になったからな…」

「こんな一傭兵に無茶言うなっての…」

「指揮官、前から気になってたんだ」

 

向かいの席から、エンタープライズが俺をじっと見つめていた。

…真剣な質問なのだろうか。

 

「何だ?休憩がてら聞こうか」

「指揮官は、何を探してるんだ?」

 

探してる、と来たか。

…思えば、俺はずっと探し続けて彷徨ってるのかもしれない。

 

「…昔話をしよう。大地が汚染され尽くし、人々が清涼な空気を求めて空を飛んでいた時の話だ」

 

自分でも突拍子も無い語り出しだが、エンタープライズは黙って聞いていた。

 

「神様は人間を助けたいと思っていた。けど、そのたびに邪魔者が現れた。そいつは………」

 

黒い鳥、そう呼ばれていた。

 

「黒い鳥…」

「そいつはずっと『答え』を探してたんだ。戦いの先に何があるのか。何もかもを焼き尽くしてきたそいつが、戦うことしか知らないそいつが。傲慢にも向こうを見たがったんだ」

 

今でも覚えている。

ORCA旅団にスカウトされた時のことを。

 

❝諸君、派手に行こう❞

 

空に逃げた人類達への、最悪の反抗勢力として。

 

今の人類を殺し、未来の人類へバトンを渡す。

そんな飛躍した答えを求めた。

 

理想に共感した訳じゃない。

ただ、殺す理由が欲しかった。

 

生きる為に、金の為に。

戦い続けた俺は、綺麗事が欲しかったんだと。

 

「…私は、指揮官の言ってる事が多分…半分も分かってないんだと思う」

「いくら何でも酷い話だと自分でも思った」

「でも…貴方は人間だ。機械じゃない」

「…どういう事だ?」

 

エンタープライズは優しく微笑んだ。

 

「戦って、ただ殺す事を苦痛に思っている。でも戦い続けた。そんな矛盾を抱えるのは人間くらいさ」

「…お前は、どうなんだ?」

「私か?…私は、戦うことしか知らない。戦い続ける事しか出来ない…戦い続ける歓びしか知らない」

 

窓の外、何処までも澄んだ蒼をエンタープライズは見る。

 

「…私も、答えが欲しいのかも」

「それは、どんな?」

「この戦いが終わったあとの、かな」

「…やっぱり、俺はお前の事嫌いだわ」

「…傷付くな、面と向かって言われると」

 

エンタープライズが、笑ったまま、目を伏せた。

 

「お前は何処までも…KAN-SENで、英雄だ。俺なんかと違う」

「英雄、か…見た事もないユニオンの為のクレイゴーストに、意味なんてない」

「それは何故?」

「私の答えじゃないから」

 

はっきりと、彼女は断言した。

…俺の気弱な思考を否定する様に。

 

「指揮官、貴方はまだ勇気が足りないのかも知れない」

「…勇気?」

「ああ。一歩踏み出すための勇気。指揮官が、したい事の為の勇気」

「俺の、したい事か…」

 

…綺麗事を、血で染めた手で欲しかったもの。

理想に伸ばした手を。

 

「…世界を救いたい、なんて壮大過ぎるか?」

「いいと思う。やっぱり指揮官はその顔が似合う」

 

自身がなかったが、惚れ惚れする笑顔で即肯定された。

…彼女は茶化さない。

ひたすら真っ直ぐ俺を見詰めてくれる。

 

それが、エンタープライズなのだから。

 

「指揮官、私は…この戦いが終わったあとも、貴方と共に有りたいと思う」

「なっ…!?意味わかってるのか、それ」

「私を私たらしめてくれたのは、他でもない貴方だ。今更、離れるなんて考えられない」

「…いやに情熱的だな」

 

こうもストレートに好意を伝えられるとは。

少し恥ずかしい。

 

「今の指揮官は、何だか消えてしまいそうだから…」

「どこにも行かないさ。セイレーン達をぶっ潰すまでな」

 

俺がこの世界に来た答えを探すまで。

 

「なら、安心だ…」

「そ、こ、ま、で、で、す、わ!!」

「うわっ!?赤城!?」

 

執務室の窓がいきなり開かれ、赤城が飛び込んできた。

 

「エンタープライズ!指揮官様にその様な事を言うなんて、赤城の目が黒い内は許さないわ!」

「…ようやく、産まれてからお前達に並べたんだ。また負けるつもりはない」

「…!ふ、ふふふ!宣戦布告かしら!?」

「そう取ってもらっても構わない」

 

何だか気が付いたら話がどんどん拗れている気がする。

 

「指揮官!」「指揮官様!」

「同時に叫ぶな!赤城も来たなら丁度いい、休憩終わるぞ、手伝え!」

 

…英雄って言うのは、人々を惹きつけて止まない存在だ。

 

俺がテルミドールに憧れたように、エンタープライズを羨望していたのかもしれない。

 

でも、俺が英雄になるっていうのも…悪くないのかもしれない。

 

 

母港、サンディエゴは小さな変化と、変わらない平穏が訪れようとしていた。

 

 




指揮官がエンタープライズに絆されていく
英雄の人を引き付けるの才能に当てられる。

首輪付きが英雄になる日は、来るのだろうか。
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