【完結】Azur Lane for Answer 作:塊ロック
通称VOBと呼ばれるそれは、大小様々なブースターと大容量コジマタンクの集合体である。
ネクスト単騎で挑むには強大すぎる相手へ接近するための切り札だ。
切り札の切どころを、間違えてはならない。
『…VOB、使用限界にゃ!』
「パージしろ!」
『VOB、パージ!』
高速の景色がクリアになる。
俺の背中に接続された馬鹿みたいに大量のブースターが次々と切り離される。
「これより通常航行に移行する」
『了解にゃ…大変にゃ!セイレーンの数が増えてるにゃ!艦隊を包囲してるにゃ!』
レーダーに多数のセイレーン反応。
しかし、全て鉄血KAN-SENの量産型である。
「蹴散らす」
『にゃ!?』
右腕に握られたライフルから放たれた弾丸が、次々と量産型のセイレーン達へ突き刺さり、爆散する。
『左舷!ミサイルです!指揮官!』
「わかってる!」
ロドニーの声。
それよりも早く、サイドブースターが作動。
一瞬で機体がスライド移動、もう一度ブースターが起動する。
クイックブーストにより、巨体ながら回避行動を機敏に行う。
『カメラで見てるこっちが酔いそうにゃ』
「いい反応をする。やるな、明石。オペレーターとして雇ってやろうか?」
『珍しく指揮官が褒めてるにゃ…』
左肩のグレネードを発射、不用意に固まっていたセイレーンはまとめて吹き飛ぶ。
『指揮官!今の攻撃で最短ルートが開けました』
「了解、突っ込む!」
背部に多数あるバーニアに火が灯る。
この世界にある、全ての物を置き去りにするスピード。
本来ならばコジマ粒子を用いて行使される力。
だが、セイレーン由来の技術で実現されたこれは、本来のそれと遜色はない。
オーバードブーストと呼ばれるそれは、凄まじいスピードで距離を詰めて行く。
「…見えたッ!!」
視界に映る、人型セイレーンと、第一艦隊。
シュロップシャーとネルソンの損耗が酷い。
セイレーンのうちの一体が何かをネルソンに向けている。
「…!」
接近は間に合わない。
一か八かで照準を合わせ発砲する。
ライフルが火を吹いた。
「来たな!首輪付き!イレギュラー!最後のORCA!!」
「なっ…!!」
ネルソンを、ネクストの空いていた左手で海上から拾い上げた。
「よう、生きてるか」
「…指揮官?それに、これは…」
「相棒だ」
ライフルで牽制しつつクリーブランド達の位置まで下がる。
「ストレイド…」
「綾波?」
綾波が呟く。
「飛べたんですね…指揮官」
「セイレーン。うちの艦船をよくもまぁ可愛がってくれたな」
油断なくライフルを向けたまま、吠える。
「首輪付き。どうかしらこの世界は」
「…お前らが呼んだのか」
「ええ。私達が望んだ、イレギュラーのひとつ」
「…」
「テスター!首輪付きと遊んでいい!」
レーザーを撃とうとしていたセイレーンが、テスターと呼んだセイレーンにそう言った。
「ピュリファイアー今日は顔見せ。帰るわよ」
「ちぇー」
「逃げる気か」
「またね首輪付き。今度は素敵な逢瀬を楽しみましょう」
セイレーンの姿がブレたかと思うと、初めからそこに何も無かったかの如く水平線が広がっているだけだった。
「…………帰るか」
誰も、言葉を発さなかった。
セイレーンの顔見せ、そして指揮官がこの世界へ渡ってしまった理由。
ただ、彼女たちのイレギュラーへの渇望を満たすために、呼ばれただけなのだろうか。